■道東観光へ■
カントのオーナーさんは、前回に紹介した北海道フードマイスターに加えて北海道観光マスターでもある。従って道東地区の観光にも当然詳しい。そこで2日目の朝は、ボクがあらかじめ練ってきたプランに、オーナーさんに教えてもらった「『るるぶ』等に載る機会が少ない箇所」を加えたルートを想定して出発する。まず、目指すは世界自然遺産の知床半島だ。
■知床半島へ■
大空町を出発し、一度国道344号線に出てしまえば、あとは道なりで知床半島へ到着する。前日降った雨もこの日には上がり、曇り空の間から時折日が差す天候に回復していた。
国道を進んで行くが、停滞とは言えないまでも時折観光バスが連なって流れが悪くなることがある。そんな時、ボクは裏道へ逸れることが多いのだが、ここ北海道は裏道と言ってもメインの幹線と並行して走る道が多く、多少の起伏があったりするが、基本的に路面は舗装されて幅広なモノが多い。そしてそんなところには国道とは違った風景が広がるので退屈しない。
当初はダイレクトに知床5湖方面に向かうつもりであったが、前方の国道脇に見える壮大な滝の姿に目を奪われ、吸い寄せられるように車を駐めた。これがかの有名な「オシンコシンの滝」だった。
滝のシブキを浴びて体がクールダウンした後は再び国道を走る。「ウトロ」という名の知床観光のベース・タウンを抜けた頃から、道の両サイドは原生林っぽくなってくる。そしてそのあたりからは野生動物の姿がチラホラと見え始める。
主な野生動物はエゾジカだ。彼らはそこら中で見掛けるが、人に対しては我関せずで、悠々と道端の草々をはみ、ほほえましい姿を見せてくれる。
そんなエゾジカとは違って、とあるカーブを曲がった先にフラッと出てきたキタキツネには少々問題があった。本来キタキツネは夜行性であるはずなのだが、真っ昼間にウロついているのは様子が変だ。車の前に出てこようとするので、こちらも慌てて車を駐めたが、何の警戒心もなくこちらに対して物欲しそうに近付いてくるのだ。様子を見ると、去年に見掛けた多くの個体とは大違いで、かなり痩せている。どうやら観光客がエサをやったために、それがクセになって自分でエサをとることが出来なくなった、あるいはその気がなくなっているようだ。
こういった問題は、ここに限らず、飼いきれなくなった飼い主が野に放したがために繁殖しているアライグマやカミツキガメ、餌付けされて増え続けるヌートリア、魚類の無秩序な放流等々も同根であり、全国各地に広がっている。それに関連した人間の無責任きわまりない偽善行為によって破壊されてゆく生態系と滅びゆく固有種に対して、本来の姿に戻す努力はされてはいるものの、それに伴うコスト(=人手と我々の税負担等)は高く付くうえ、もはや手遅れになっている事象も多いのだ。だから、こういった野生動物に出逢った場合もエサをやる善意=偽善よりも、エサをやらない善を選択して欲しいものだ。(でも、そのことが解っていたら初めっからエサはやらないワケであり…。)
そんなキタキツネに複雑な心境に陥りつつも、車は知床5湖の玄関へと到着した。
■知床5湖■
知床5湖巡りは知床観光の定番コースだが、今年からルールが変わって、ヒグマの活動期である5月中旬から7月末まではプロの引率者(有料)無しでの地上散策は不可となり、一般客のみでの散策は1湖付近まで伸びている高架木道を使ったコースのみに絞られている。
上記の時期以外=ヒグマの危険性が減る時期にも規制はある。規制内容を見れば判るが、これは無秩序に観光客を入れた後の影響を恐れての規制だと思われる。
これ以上の規制が出来て、入場禁止に近い状態にならないようにするためにも、こういった自然公園に入る際には自分の都合で行動するのではなく、「自然環境の中に自分達がお邪魔している」という感覚を忘れずに行動して欲しいものだ。
高架木道を進みつつ、ベストショットが撮れるポイントを探す。そしてパチリ!。
知床1湖への高架木道散策が終わると、次なる目的地である羅臼(らうす)へと向かう。
■羅臼へ■
羅臼へ向かうには知床半島を横断する国道334号線に入って知床峠を抜ける必要がある。その途中にある展望スポットから眺める羅臼岳はこの地の素晴らしい景観の一つだそうだが、当日はガスが上部にかかって見渡せず、残念な風景だった。
羅臼町内に入ると倉本聰氏のドラマ「北の国から」の大ファンである我が家一行は、「純の番屋」なる施設へ向かう。
余談だが、BSフジでは「ドラマ 北の国から」の放送開始30周年を記念して、一番最初のドラマシリーズ全24話を毎週月曜日午後10時スタートで再放送している。第1話は7月18日だから、既に放送済みだが、8月1日は第3話なので、見たことがない人や内容を忘れた人(そんな人いるのかな?)は必見だ。
「番屋」は、2002年に放送された最終話の「遺言」で、富良野を追われた純が流れ着いた先として登場するのだが、実際にロケをした本物の番屋は個人の持ち物なので、公開はされていないそうだ。そこで、有志が集まって新たに建て直したのだそうだが、内部は食堂になっており、商売っ気タップリのおばさん達が我々を出迎えてくれた。
もとよりその点は行く前から調査済みだったので、素直に昼食をとる。そしてフンパツして鮭児とぶどうエビの入った豪華海鮮丼を注文する。
食事の後は北上し、ロケ地巡りを続行する。
次は、ドラマでは純と結ちゃんがデートした「ヒカリゴケ」の自生地へ。しかしながら、2年前に崩落があった模様で、広く分布している上部には入れず、手前の部分にしか入れなかった。結果は惨憺たるもので、表示板の方がよく光っていて何が何だか判らなかった。
続いては瀬石温泉。ドラマでは結ちゃんの義父に呼び出された純が、強制的に入らされる露天風呂として登場する。我々が訪れた際はタイミングが良く、干潮になって全体が露出していた。
羅臼に向かったのは、もう一つ理由があった。この目で北方領土を見ておきたかったのだ。
約30km沖に浮かぶ国後島はガスがかかっており、肉眼ではかろうじてボンヤリ輪郭が見える程度で、写真には写らないのが残念だった。
江戸時代後期から戦前に、日本とロシア(及びソ連)との間で結ばれた数々の条約を知れば、誰もが完全に「我が国固有の領土である」ということが理解できるのだが、にも関わらず、全くもって帰ってくる気配のないことには、一日本人として大いに苛立つ。個人の力が及ぶ問題ではないのかも知れないが、せめてもの抵抗として、かすかに見える国後島の、山の稜線に向かって「返せ~!」と叫ぶ、我が家の3人であった。
■さくらの滝■
羅臼を巡った後は知床半島を後にして一路、清里町方面に向かう。ここにはカントさんで教えてもらった「さくらの滝」がある。
この滝は名前の通り、海から遡上したサクラマスが「鯉の滝登り」よろしく、滝壺からジャンプし、乗り越えていく姿が見られるスポットだ。時期として7月中旬は良いタイミングだそうだが、日ムラや時間ムラがあるとのこと。この日は、訪問が夕刻だったことに加えて増水直後と曇り気味だったせいか、ベストに近い状態のようで、30秒に1回はジャンプするサクラマスの姿が確認できた。
一説には子孫を残すために遡上するサクラマスの約75%がメスだと聞くが、子を残すために何度も失敗を繰り返しつつ、こんなに大きな滝を越えてゆくなんて「母は強し」といったところだろうか?。そんな説明を家族にしていたのだが、「釣り師の性」からか、心中は釣りのことを考えていた。しかし、残念ながら北海道内において川を遡上するサクラマスは全面禁漁となっているそうなので、狙うことは不可能だ。だが不思議なことにヤマメを狙うのはOKだそうなので、これだけのサクラマスが遡上する川であるのなら、ヤマメの量もうかがい知れるところであり、「今度は竿を持って…。」との思いが募るばかりであった。
■大空町へ■
のどから出てくる手を無理矢理引っ込めつつ、サクラマスを観察した後は、カントさんへ戻る。帰る途中、と言ってもカントさんのすぐ近くなのだが、「メルヘンの丘」なる、この地の名物スポットで記念撮影。晴れていれば夕暮れに染まる時間帯であっただけに残念。今回の天候では精一杯の風景をカメラに収めた。
帰着すると、そこでは昨日に引き続いて美味しい夕食が待っていた。
~以下、その3に続く
カントのオーナーさんは、前回に紹介した北海道フードマイスターに加えて北海道観光マスターでもある。従って道東地区の観光にも当然詳しい。そこで2日目の朝は、ボクがあらかじめ練ってきたプランに、オーナーさんに教えてもらった「『るるぶ』等に載る機会が少ない箇所」を加えたルートを想定して出発する。まず、目指すは世界自然遺産の知床半島だ。
■知床半島へ■
大空町を出発し、一度国道344号線に出てしまえば、あとは道なりで知床半島へ到着する。前日降った雨もこの日には上がり、曇り空の間から時折日が差す天候に回復していた。
国道を進んで行くが、停滞とは言えないまでも時折観光バスが連なって流れが悪くなることがある。そんな時、ボクは裏道へ逸れることが多いのだが、ここ北海道は裏道と言ってもメインの幹線と並行して走る道が多く、多少の起伏があったりするが、基本的に路面は舗装されて幅広なモノが多い。そしてそんなところには国道とは違った風景が広がるので退屈しない。
●樹木のトンネル●
当初はダイレクトに知床5湖方面に向かうつもりであったが、前方の国道脇に見える壮大な滝の姿に目を奪われ、吸い寄せられるように車を駐めた。これがかの有名な「オシンコシンの滝」だった。
●オシンコシンの滝●
●滝の説明板●
滝のシブキを浴びて体がクールダウンした後は再び国道を走る。「ウトロ」という名の知床観光のベース・タウンを抜けた頃から、道の両サイドは原生林っぽくなってくる。そしてそのあたりからは野生動物の姿がチラホラと見え始める。
●エゾジカ●
主な野生動物はエゾジカだ。彼らはそこら中で見掛けるが、人に対しては我関せずで、悠々と道端の草々をはみ、ほほえましい姿を見せてくれる。
そんなエゾジカとは違って、とあるカーブを曲がった先にフラッと出てきたキタキツネには少々問題があった。本来キタキツネは夜行性であるはずなのだが、真っ昼間にウロついているのは様子が変だ。車の前に出てこようとするので、こちらも慌てて車を駐めたが、何の警戒心もなくこちらに対して物欲しそうに近付いてくるのだ。様子を見ると、去年に見掛けた多くの個体とは大違いで、かなり痩せている。どうやら観光客がエサをやったために、それがクセになって自分でエサをとることが出来なくなった、あるいはその気がなくなっているようだ。
●問題のキタキツネ●
こういった問題は、ここに限らず、飼いきれなくなった飼い主が野に放したがために繁殖しているアライグマやカミツキガメ、餌付けされて増え続けるヌートリア、魚類の無秩序な放流等々も同根であり、全国各地に広がっている。それに関連した人間の無責任きわまりない偽善行為によって破壊されてゆく生態系と滅びゆく固有種に対して、本来の姿に戻す努力はされてはいるものの、それに伴うコスト(=人手と我々の税負担等)は高く付くうえ、もはや手遅れになっている事象も多いのだ。だから、こういった野生動物に出逢った場合もエサをやる善意=偽善よりも、エサをやらない善を選択して欲しいものだ。(でも、そのことが解っていたら初めっからエサはやらないワケであり…。)
そんなキタキツネに複雑な心境に陥りつつも、車は知床5湖の玄関へと到着した。
■知床5湖■
知床5湖巡りは知床観光の定番コースだが、今年からルールが変わって、ヒグマの活動期である5月中旬から7月末まではプロの引率者(有料)無しでの地上散策は不可となり、一般客のみでの散策は1湖付近まで伸びている高架木道を使ったコースのみに絞られている。
上記の時期以外=ヒグマの危険性が減る時期にも規制はある。規制内容を見れば判るが、これは無秩序に観光客を入れた後の影響を恐れての規制だと思われる。
これ以上の規制が出来て、入場禁止に近い状態にならないようにするためにも、こういった自然公園に入る際には自分の都合で行動するのではなく、「自然環境の中に自分達がお邪魔している」という感覚を忘れずに行動して欲しいものだ。
●木道の入り口●
●丘の上を縫う木道●
高架木道を進みつつ、ベストショットが撮れるポイントを探す。そしてパチリ!。
●これが知床1湖のベストショット●
知床1湖への高架木道散策が終わると、次なる目的地である羅臼(らうす)へと向かう。
■羅臼へ■
羅臼へ向かうには知床半島を横断する国道334号線に入って知床峠を抜ける必要がある。その途中にある展望スポットから眺める羅臼岳はこの地の素晴らしい景観の一つだそうだが、当日はガスが上部にかかって見渡せず、残念な風景だった。
●これで精一杯の風景●
羅臼町内に入ると倉本聰氏のドラマ「北の国から」の大ファンである我が家一行は、「純の番屋」なる施設へ向かう。
余談だが、BSフジでは「ドラマ 北の国から」の放送開始30周年を記念して、一番最初のドラマシリーズ全24話を毎週月曜日午後10時スタートで再放送している。第1話は7月18日だから、既に放送済みだが、8月1日は第3話なので、見たことがない人や内容を忘れた人(そんな人いるのかな?)は必見だ。
●純の番屋●
「番屋」は、2002年に放送された最終話の「遺言」で、富良野を追われた純が流れ着いた先として登場するのだが、実際にロケをした本物の番屋は個人の持ち物なので、公開はされていないそうだ。そこで、有志が集まって新たに建て直したのだそうだが、内部は食堂になっており、商売っ気タップリのおばさん達が我々を出迎えてくれた。
●番屋の内部●
もとよりその点は行く前から調査済みだったので、素直に昼食をとる。そしてフンパツして鮭児とぶどうエビの入った豪華海鮮丼を注文する。
●豪華海鮮丼●
食事の後は北上し、ロケ地巡りを続行する。
次は、ドラマでは純と結ちゃんがデートした「ヒカリゴケ」の自生地へ。しかしながら、2年前に崩落があった模様で、広く分布している上部には入れず、手前の部分にしか入れなかった。結果は惨憺たるもので、表示板の方がよく光っていて何が何だか判らなかった。
●看板の下には自生しているハズなのだが…●
続いては瀬石温泉。ドラマでは結ちゃんの義父に呼び出された純が、強制的に入らされる露天風呂として登場する。我々が訪れた際はタイミングが良く、干潮になって全体が露出していた。
●石のサークル内に湧き出す温泉●
●案内板●
羅臼に向かったのは、もう一つ理由があった。この目で北方領土を見ておきたかったのだ。
約30km沖に浮かぶ国後島はガスがかかっており、肉眼ではかろうじてボンヤリ輪郭が見える程度で、写真には写らないのが残念だった。
江戸時代後期から戦前に、日本とロシア(及びソ連)との間で結ばれた数々の条約を知れば、誰もが完全に「我が国固有の領土である」ということが理解できるのだが、にも関わらず、全くもって帰ってくる気配のないことには、一日本人として大いに苛立つ。個人の力が及ぶ問題ではないのかも知れないが、せめてもの抵抗として、かすかに見える国後島の、山の稜線に向かって「返せ~!」と叫ぶ、我が家の3人であった。
■さくらの滝■
羅臼を巡った後は知床半島を後にして一路、清里町方面に向かう。ここにはカントさんで教えてもらった「さくらの滝」がある。
●さくらの滝●
この滝は名前の通り、海から遡上したサクラマスが「鯉の滝登り」よろしく、滝壺からジャンプし、乗り越えていく姿が見られるスポットだ。時期として7月中旬は良いタイミングだそうだが、日ムラや時間ムラがあるとのこと。この日は、訪問が夕刻だったことに加えて増水直後と曇り気味だったせいか、ベストに近い状態のようで、30秒に1回はジャンプするサクラマスの姿が確認できた。
●ジャンプする50cm級のサクラマス●
一説には子孫を残すために遡上するサクラマスの約75%がメスだと聞くが、子を残すために何度も失敗を繰り返しつつ、こんなに大きな滝を越えてゆくなんて「母は強し」といったところだろうか?。そんな説明を家族にしていたのだが、「釣り師の性」からか、心中は釣りのことを考えていた。しかし、残念ながら北海道内において川を遡上するサクラマスは全面禁漁となっているそうなので、狙うことは不可能だ。だが不思議なことにヤマメを狙うのはOKだそうなので、これだけのサクラマスが遡上する川であるのなら、ヤマメの量もうかがい知れるところであり、「今度は竿を持って…。」との思いが募るばかりであった。
■大空町へ■
のどから出てくる手を無理矢理引っ込めつつ、サクラマスを観察した後は、カントさんへ戻る。帰る途中、と言ってもカントさんのすぐ近くなのだが、「メルヘンの丘」なる、この地の名物スポットで記念撮影。晴れていれば夕暮れに染まる時間帯であっただけに残念。今回の天候では精一杯の風景をカメラに収めた。
●7本の木立がキュートなメルヘンの丘●
帰着すると、そこでは昨日に引き続いて美味しい夕食が待っていた。
●2日目の夕食メニュー●
~以下、その3に続く