何年か前に「ヒラマサの回遊」について記事を書いたけれど、それから経験を積み、現場で感じた事を集積した現在では、「おおよそこんな感じでヒラマサが回遊しているのでは?」というのが、ボクにはあった。そんな中、息子の先輩に、釣り好きが高じて水産系の研究機関に就職した人が居て、この人と4月に釣りをしながら話す機会があった。その際、「ブリ属の生態」について、学会で聴いてきた事が話題になった。
その中で我々釣りバカの話と、ちゃんと学んできた人の話をすり合わせていったのだが、バカの勝手な予想があながち外れているワケでもなく、「やはりな…」と頷く場面が結構あった。
以下では、その際のやり取りを「釣りバカ説:研究者論」で記してゆく。
■ヒラマサの回遊の話■
釣りバカ説
「年ごとに差はあるが、ヒラマサは春分の日以降に白石グリにやって来て盛んにエサを取る。」→「体力が付き、水温が上昇する6月になると白石グリを離れ、対馬暖流に乗って北上して玄達瀬方面に移動する。」→「玄達瀬でも盛んにエサを取り、そこから先に北上する個体もあるが、居残った個体中の卵巣or精巣が熟した大型から次第にエサを取らなくなり、周囲で産卵&放精行動に入る。」→「玄達瀬周辺の深場で安息期間を過ごした後、次第にエサを取るようになり、体力が回復し、水温が下がり始めると逆ルートを辿って、西の越冬地へ向かう。」
これに対して研究者論
「水温の上昇と共に西から100mラインを伝って移動する。」→「エサ場となる浅場=白石グリ等に到着し、盛んにエサを取る。」→「体力をつけたら行き先は玄達瀬とは限らないが100mラインを伝って移動する。」→「玄達瀬に到着したグループはここでも盛んにエサを取る。」
と、ここまではほぼ合っているが、ここから先が違って、研究者はこう言う。
「玄達瀬などの浅場で過ごすうちに体力がつき、卵巣or精巣が熟すと大移動を開始する。」→「100mラインを伝って朝鮮半島の西=黄海周辺で産卵する。」のだそうだ。驚くのはそのスピードで、6日程度あれば若狭湾周辺から黄海周辺に移動出来てしまうのだそうだ。(勿論、例外もあって全てがというワケではないが…。)
8月に入って再び一部の大型が喰い出すのは産卵場所から戻って喰っているらしく、それは我々釣りバカには及びもつかない流れだった。
ここで釣りバカが「中浜のような沿岸を伝って移動して来る群もあるが、アレは…。」と質問すると、「ヒラマサは大きくなればなる程、産卵&放精を意識した行動になり、そういった個体たちが上述の回遊パターンを辿るから、小さめの個体は産卵&放精を意識を大きく持っていないからでは?。」という回答だった。
経ヶ岬沖でヒラマサを狙い続けている人は知っているが、中浜サイズと言って、普通に出るサイズは65~75cmクラスで、例外はあるが、最大は95cm程度というのが定説だ。まさに研究者論の通りだ。
■ハイブリッド・ヒラマサ■
釣りバカ説
「以前は『時期や産卵場所の違いで自然交雑は少ない。』と言われていたハイブリッド・ヒラマサだが、通常だと1m20cmクラスであれば13~15kgの個体が多いのに、近頃は17~18kgもある個体が釣れているので、もしかするとそれがハイブリッドに該当するのだろうか?。」
これに対して研究者論
「近年は水温上昇しているので、産卵場所やタイミングがズレている。」その結果、「遺伝子を調べると確実に交雑している個体が一定数存在する。」との事だった。
面白かったのは、「交雑個体は母親の影響を大きく受ける。」という点だった。玄達瀬での釣果欄の中で、「30~40m走られてからのやり取りで120cmオーバーをゲット。」という記事を見かけたりするが、個人的には「玄達瀬で長距離を走られ、根回りに突っ込まれなかったのは奇跡的。」と思っていた。だが、もしその個体が母親がブリのハイブリッドであれば合点がいく話になる。勿論、重すぎる個体もハイブリッドの可能性が高く、今後は釣った魚に変わった点があれば疑ってかかる必要がありそうだ。
■ヒラマサのタナの話■
釣りバカ説
「ヒラマサの数が多い場合は先を争って急浮上してエサを取り合うが、個体数が少ない場合は浮上せず中~底層でウロウロとしながらエサを拾う。」
これに対して研究者論
「ブリ、ヒラマサ、カンパチの基本的な遊泳層が違っていて、上層からブリ→ヒラマサ→カンパチとなる。」との事だった。
高活性時なのか、垂直方向に浮上してエサを拾う動画を見た事があるが、そういう個体だろうヒラマサは発泡ウキを積極的に使って、浮かせる方向に調整してゆくとアタリは「ビュ~ンッ!」とスプールの回転で明確に出る。恐らく群れて数が多い場合も先を争って喰うので、そういう動きをしているのだと思う。
だが、食い渋る中で「手前の深い位置からの探り」や「張りや誘い」を駆使してヒネり出した大型ヒラマサのアタリは徐々に「スルスルッ」と徐々に加速してゆく事が多い。恐らくそれは周囲に同族の個体数が少ない中、上層の状態が気に入らない、もしくは低活性故に基本の遊泳層から出たくない場合に起こっている現象だと思う。逆を言えばそんな状態なのにブリ族が闊歩している上層を攻め続けてもヒラマサのアタリが出る確率は低いので、それをかわす方向で攻めないとヒラマサ・ゲットの確率は下がるという事になる。
以上が会話の中で得た情報とのすり合わせだが、今後のお付き合いの中で新たな情報を得たら、このブログで紹介してゆくので、皆さんの戦略にお役立てを。