~その1から
■ハリ選び■
ボクが玄達瀬で使っていたハリは、これまで、ヒラマサバリ系の13~14号がメインだったが、ここに出船している各船頭から「カン付きバリがイイ。」との声を時折聞いていた。理由は「ミミからスッポ抜けない。」からだとか、「ハリスの本線がミミの後ろに回らない」ということだった。しかし、釣りを始めて以来、ずっと外掛け本結びの信奉者であったボクは、初心者時代であればまだしも、結びに馴れて以降はスッポ抜けや回転を殆ど経験していないから、「カン付きバリなんてマトモにハリ結びができない人用のハリだ。」との偏見を持っていた。
しかし、自慢?の外掛け本結びが通用するのはハリスが10号までだった。スッポ抜けや回転防止のため、ミミ周りに工夫を凝らしたハリが各社から販売されているが、12号以上のハリスを結ぶ場合は、どうしてもズリ上がってミミに当たる側が膨らんでしまう。現状では揺すっても抜けそうにはないのだが、どうにも気持ちが悪いため、今シーズンから、カン付きバリを導入することにした。
●オーナー社のカン付きバリ「メジ・カツオ」●
いざ、ハリ選びの段になると、予想はしていたが、種類が少ないことに改めて気付かされた。形状としては使えるハズの「伊勢尼型のカン付き」もあるが、軸が細いので使用目的には合わない。やはり専用の「ヒラマサバリ」があれば最適だと思うのだが、この形状のカン付きとして販売しているのは、かなり在庫の豊富な店で探してもキンリュウ社の「超青物カン付」のみだった。しかしサイズが偶数号のみの、一つ飛ばしの展開であるし、後述するカンの部分の処理が気になるために、二の足を踏んでしまった。
なんだかんだで選び出したのが、上写真のオーナー社製「メジ・カツオ」というハリだった。これはシルバー、ゴールド、ケイムラの三色展開で販売されている。カラーについては好みで選べばイイと思うが、118cmのゲットは、「日照の少ない日にはケイムラかな?。」って感じで、曇り&雨がちだった天候時に使用した結果だったことだけはお知らせしておく。
このハリの形状は伊勢尼の短軸タイプになる。短軸バリの特徴は「かかりが良く、バレやすい」なのだが、対する長軸バリの特徴は「吸い込み易く、ばれにくい」となっていて、特徴だけ聞くと、やはり「ヒラマサバリの形状にこだわった方がイイのかな?」と思うが、この「メジ・カツオ」というハリは、カンの部分が、「ロウ付け」という手法で継ぎ目を埋める処理をしている点を評価したい。というのも他のハリでは曲げて輪にした先端がブッツリと切れていているからだ。勿論、輪に対してサルカン結びのように連結するのなら問題ないが、そういった簡単な結び方ではなく、より大物対応の結び方をした場合に、このカットした先端部に結んだハリスが擦れるように思うのだ。
■ハリ結び■
せっかくのカン付きバリの採用だから、結び方も「より強力に」、「より回らずに」を目指したモノを採用したい。一番簡単なのはハリのフトコロ側からカンの中にハリスを通して、外掛け、もしくは内掛け本結びで止めてしまう方法だが、この場合だとハリスとハリの軸に角度が付いて、真っ直ぐにならない点が気に入らなかった。
色々と探した挙げ句に採用したのが、クレハ合繊(シーガー)のH.P.「強いノットはこれだ!」内にある「中村式カン付き南方延縄結び」という結び方だった。
詳しくは
http://www.seaguar.ne.jp/knot/harris/harris_7.html
を参照して欲しい。
ただし、ボクの場合はカンへの通しが終わった後の、STEP5で示されているハリ軸に巻き付けた内部に通す作業をせず、普通の南方延縄結び
http://www.seaguar.ne.jp/knot/harris/harris_5.html
の、STEP3と同じ方法で通している。これは、巻き付けた内部を端糸を通す際にウマく通らず、巻きがバラけてしまうことがあるからだ。
●結び目の様子●
勿論、中村式を完遂させ、端糸が巻き付けの内部を通る方がベストなのかも知れないが、強度的な優劣はないと考えている。
●ハリ結び全体の様子●
■編み付けエダス■
玄達瀬や鷹巣沖だけに限らず、ボクが完全フカセで使用する仕掛は全長6mの2本バリが殆どだが、その全てを自作している。この場合、自分好みのハリとハリスを組み合わせることができるうえ、低コストに仕上がることが嬉しい。
仕掛け作りの際は、ボクの場合、全号数において「編み込み(編み付け)」を使って枝バリを出している。編み込みの利点は何と言っても、枝ハリスは本線に乗っているだけなので、一番大物が食う確率の高い先バリまでのハリス本線に結び目がないことだが、その他、絡みにくい点も有り難い。
「面倒だから」という理由で回転ビーズを使ってエダスを出す人もいるらしいが、「大きなヒラマサが掛かるとハリスが抜けたり、ビーズ自体が破壊されることがある。」と舞鶴の船頭から聞いたことがあるし、これを使う場合はビーズを固定するために、ハリスの本線に結びコブを作る必要があるから必ず強度が落ちるので、特にヒラマサ釣りでは使用を控えた方が良いと思う。また、三つ叉サルカンによる連結も考えられるが、仕掛が重くなり過ぎるので、完全フカセ釣りでは使い辛い。更には8の字結びの応用等の結び方もあるが、編み付け以外の方法では全てがハリス本線に結び目ができるため、これまた避けた方がイイと思う。
編み付けでエダスを出す方法は数種類あるが、ボクの場合はその昔、故大塚貴汪(おおつか・たかひろ)氏が推奨していた方法で編み付けている。詳しくは下記H.P.↓
http://www.yawatahamacci.jp/fishing/shikake.htm
内の「添え糸を使った大物用枝ハリスの結び方」を参照して欲しい。なお、各編み込みの回数については、20回(10往復)ずつで、エダス側のみが26回(13往復)としている。
●添え糸を使ったエダスの編み付け●
とにかく「自分が甘えを見せたところから大物は仕掛けを切ってゆく」と考えれば、手抜きはできないだろう。面倒臭がらず、弱点の少ない仕掛を作ることだ。
■サルカンとその結び■
玄達瀬に通い始めた頃はステンレス製のインターロック・スナップ付きローリングスイベルの5号以上を使用していた。そのスナップ部に道糸の端を8の字結びで作ったチチワを連結し、浮力を付けるための発泡ウキを装着する際には、チチワのダブルラインになったところをウキの小さな穴に通していた。
しかし、この方法だと道糸が太くなるにつれて発泡ウキへ通し辛くなるデメリットがあった。そこで一考し、グレ釣りで使うような浮き止めを道糸に通して発泡ウキを止めるようにしたのだが、この方法だと通すラインは1本になるため、浮力調整時の入れ替えが非常にスムーズになった。ただし浮き止め糸だけで止めるとウキの穴に食い込むことがあるし、ゴム製の浮き止めは口径が大きく食い込みにくいが滑り易いので、それぞれのメリットを生かすために、両方を装着している。
●浮き止め糸と浮き止めゴムの同時装着●
この方式は、調整の度に結び直しが必要なため、結びっぱなしによる強度の低下が自動的に防止できる。また、スイベルにスナップが付いている必要が無くなり、選ぶ範囲が広がる。ボクは元々普通のスイベルがヨレを取る能力はテンションが掛かると“気休め”程度だと思っていたため、この方式を採るようになってからは、少しでもヨレが取れることを願ってボールベアリング入りのスイベルを使用している。道糸の太さに合わせて0号から2号までのサイズを使用しているが、2号の耐荷重は45kgなので強度も充分だ。ボールベアリング入りスイベルのデメリットはやや重い自重だが、スナップを省略した分だけ軽くなるので相殺できると考えている。
スイベルへの結び方についてはYGKよつあみのH.P.内にある、「新石鯛結び(最強結び/完全結び)」
http://www.yoz-ami.jp/line_knot/003.html
を参照して欲しいが、更なる工夫として、余った端糸7~8回編み込んで強度アップを図っている。
●B.B.入りスイベルと最強結び(端糸編み込み)●
■ヒラマサの習性■
先日、SHIMANO提供の釣り番組「釣り百景」で、磯から狙うニュージーランドのヒラマサ釣りを前後編に渡って放送していた。現在ではシマノのH.P.内のSHIMANO TV
http://tv.shimano.co.jp/movie/tv/tsurihyakei_035/
で見ることができるので、今後のために、鑑賞することをお薦めしておく。
ニュージーランドのヒラマサは厳格なキープ数制限を釣り人に求めており、資源量が豊富だ。そのため、スレてはいないようなので、磯の上から捕食の様子が見えるのだが、その放送中に現地在住の日本人ガイドはこう解説する。
「ヒラマサの習性として、大型は単独、またはごく少数の群れで磯の周りを小さく回遊する。その回遊コース上にイワシ&鮭のミンチ製のマキエサを入れると、まず最初にエサ盗り達が騒ぎ出し、その捕食音や漏れ出る臭いから大型のヒラマサが『おやっ?』といった感じで近付いてくる。そしてその鼻っ面に固形物(この場合イワシのブツ切り)が投入され、それを数切れ口にした瞬間にスイッチが入ったように貪り食いを始める。」
この様子を玄達瀬の釣りに当てはめてみると、ピッタリ合うことに気付かされる。前回の釣行ではレギュラーサイズを3本釣った後の4本目(結果はハリス切れ)、エサ盗りの連発後、レギュラーサイズが単発で数本食った後の118cmもそんなパターンで食ってきた。このことからも「『忘れた頃に大型がやってくる』ということを想定せず、『今日は小さい』と決めてかかり、より数を釣ろうとして細いハリスを使う」ということの危険性が理解できると思う。
釣り人心理からすると、「○号のハリスで獲った。」と自慢したくなるところもあるだろう。だが、その昔グレ釣りに真剣に取り組んでいた頃、取材で同行していただいたグレ釣り界の大御所から、「細ハリスでやり取りし、結果、大物をゲットするのに腕が必要なら、太ハリスで食わせるのにも腕が必要」との話をお伺いしたことがある。当時のボクは、口太グレ釣りとしてはやや太いハリスを使用していたのだが、この話をうけ、自身のプライドを傷つけることなく”自信を持って口太グレを獲ることのできるハリス(2号)”を使用し続けたことが、その後の自己記録更新時の大きな勝因だと思っている。一度釣ってしまえば、「一回り太いくらいの差なんて大したことはない。」と思うようになるのだが、太ハリスに関しては、このような発想の転換をすれば、すんなり移行できるのかも知れない。
巨魚が豊富に生息する海域への遠征へ何度も釣行できる釣り人を除けば、釣り人生の中で真の大型魚に巡り会うチャンスには限りがある。せっかくの大物を逃さないためにも、釣果欄などを参考にして単に他人の使用したハリスに合わせるのではなく、自分の技量に合った、「万全を期したうえで、相手を獲る自信が保てる仕掛」を使って対峙して欲しい。