■梅雨時を迎えて■
梅雨時は長雨によって、どうしても増水傾向になるので、釣行日の近辺に降った雨がどのように影響しているのかを、ある程度理解していなければ現地に到着してから慌てることになる。
昨年1年しか経験がないのでエラそうなことは言えないが、何度か通った川の中では、支流部からの流れ込みが多い岐阜県北部の高原川の本流部は特に増水しやすく、流域のどこかでまとまった雨が降れば、釣っている最中でも、それこそみるみる内に増えてくるから厄介だ。
今回は富山県中南部の久婦須川へ向かったのだが、ここは去年の梅雨時に釣行した際、夜明けに増水状況を確認した途端に「ダメだこりゃ!」と引き返した経験がある。
しかし、同じ梅雨時に、ここをワザワザを選択したのは、気象庁のホームページ内にある「気象観測データhttp://www.jma.go.jp/jma/menu/obsmenu.html」で流域近辺の1週間の降雨量を確認し、国土交通省の「川の防災情報http://www.river.go.jp/」で、近日間の水位変化を確認したうえでのことだった。高原川は釣行前日までの雨の影響で、ピーク時には2m近い増水だったが、久婦須川では昨年の釣行時に釣りが可能だった水位(=69cm)に対して今回は20cmほどしか増水しておらず、それが徐々に下がりつつあるのをボクは事前に知っていたのだ。
距離が40kmほどしか離れていない両川であってもこれだけの差があるので情報収集は大切だ。
■朝一番■
今回の入渓点は、昨年始めてここを訪れた時に入った場所からだった。ここはヒザくらいの水深しかなく、一見何でもないように感じるが、ヤマメ達のエサ場になっているのか、朝一番はライズ(=水面が盛り上がるほどのところまで魚が表層のエサを追っている様子)を繰り返すところだ。今年も現場に着くと時折ポコッとかバシャッという音が聞こえ、仕掛けを作るボクを歓迎してくれていた。心配していた川の濁り具合も笹濁り程度だった。
●何の変哲もないポイントだ●
とりあえず、キヂ(ミミズ)をハリに刺して、ライズしている上流側から流し込んでみる。何度か流す位置を修正していると目印を引き込むアタリが出て、最初の1匹をゲットする。いつも感じることだがここ久婦須川のヤマメは体高が高い「幅広タイプ」が多いのでよく引く。
●当日の初ヤマメは体長約20cm●
■エサのローテーション■
最初のポイント付近で3匹ゲットした後は反応が無くなったので、「魚は釣り切った」と判断し、その周辺で川虫取りを開始する。この川で採取できるのは主にクロカワムシ、オニチョロ、そしてのカワムカデの3種だが、中でも安定して獲れて釣果が堅いのはクロカワムシだ。ここまでキヂ(ミミズ)、とブドウ虫の市販エサを使っていたが、コレにクロカワムシが入って、以後3種のローテーションで攻めていくことにした。
●左上がブドウ虫、右上がクロカワムシ、下がキヂ●
(キヂは写真の「ミミズ通し」という器具を使って装着した方が、ハリ掛かりが良い)
■様子を探る■
次に目に入ったのは、やや水深があって中央に白泡を伴って強く流れる流芯が明確な
ポイントだった。昨年に入った際は何も出なかったので、サッサと軽く流して済ませようかという気もしないではなかったが、今回は、この日全体の傾向を探り、状況判断するために少し粘ってみることにした。
その日の戦略を決める際に、「移動のピッチを上げつ活性の高い魚を釣る」のと、「じっくり攻めてスレた魚に口を使わす」の、どちらの方が結果的に魚を多くゲットできるのかを判断するのは難しい。ボクの場合は、それを気分で判断して失敗することも多いのだが、この日のように「お試しポイント」を設定し、そこで判断するのも良い方法なのだ。
●白泡の立つ流芯●
まず最初はミミズを刺し、次いでローテーションをさせつつ、最下流の白泡の消える辺りから攻め始め、その両サイドと流芯部を攻め上ってゆく。当然オモリもB~3Bを付け替えつつ探りを入れてみた。そして10投を越える頃になってようやくアタリを捉えた。
それまでの魚よりも確実にサイズが大きそうだったので、魚が流芯に入っていかないように注意しつつ慎重に玉網に誘導する。
●25cm級のヤマメ●
続いて23cmくらいのヤマメを連続ゲットしたが、そこで打ち止めになった。
いつもの感じで攻めているとゼロに終わっていたハズだから、この2匹は貴重だった。これが「目に付いたポイントは簡単には見切らず、粘ってみることが有効」だと判断できるキッカケになったのだ。そして上述したエサのローテーションと共に以後のパターンとして組み入れることになったのである。こうやって早い段階で試した結果を反映させれば、以降の攻めに迷いが減るのだ。
■大型イワナ■
次に差し掛かったのは、幅の広い浅瀬から落ち込んだ流れが前面の岩壁へとぶつかるポイントだった。
●攻めるスポットが多いポイントだ●
ここは、流れの筋同士がぶつかって収束するところと、流れの落ち込み、向かいの岩盤際、流れの中にある石の裏等、ポイント数は多い。先程の教訓から時間を掛けて一つ一つを潰してゆくように攻め始めた。
まずは岩盤際の最下流部で20cmチョイのヤマメを3連続でゲットする。
●ここでのヤマメのサイズは20~25cm程度●
続いて複数の流れが収束するところを狙ってもう1匹追加する。そして石裏では不発だったので、最後の仕上げとして、ややオモリを重い(2B)モノに交換して瀬の部分から最初に落ち込む部分を攻めてみる。
何カ所目かの落ち込みで「ゴンッ」というアタリが出たので反射的にアワせると、魚は下流に向かって一気に走り出した。相手の動きに合わせて慎重にあしらい、引きをイナしていると、竿を伝わる感触から「イワナだろう」と推測できたが、型が大きいうえに瀬から押してくる水圧が加わって玉網の位置までなかなか寄ってこない。それでもこらえている内に、なんとか水面まで引き上げるまでに至った。魚は、やはりイワナで、30cm台の中盤サイズのようだ。この時、今シーズンに入ってイワナの30cmオーバーはかなり釣っているため、心の中で何となく「なんだ、またイワナか…」と、つぶやいてしまった。
その瞬間事件は起こった。この奢った心を悟られたのか、その瞬間に「バカにするな!」とばかり、イワナは怒って?クルンッと反転し、見事にハリを外して逃げていったのだ。
呆然とする中、「ヤマメでなくて良かった…」と言い訳しながら立ちつくしているボクが居た。
■粘り勝ち■
イワナのバラシの後に続く魚は無く、更に上流を目指す。今度は淵に滝が流れ落ちるポイントだ。
●誰もが狙うポイントだろうから…●
このポイントはいわゆる「大場所」と言うべきところで、誰もの目に付き、誰もが狙うポイントだろう。この日のボクは、ゆっくり攻めることに対して自信を持っていたので、何だか「攻めがい」を感じてゆっくりと探ることが出来た。
まずは淵尻(最後の部分)にあるカケアガリを丹念に流して20cm強のヤマメを1匹ゲットし、続いて流れの中に見える石裏近辺を探るが、今度は反応が無い。しかし諦めずに攻めは続く。
一旦竿を置き、冷静になって滝の周囲を見回してみる。すると上流からの流れと滝がぶつかる部分に潜り込む流れを発見し、何となくそこに魚の気配を感じた。
1投目はオモリをBサイズにして流したが、仕掛が馴染む前に複雑な流れにハジキ飛ばされてしまう。そこで一気に3Bまでアップし、底の流れに合わせて送り込んでいると待望のアタリが!。
合わせた瞬間の抵抗とスピードから良型のヤマメと判断できた。いつものように慌てず、相手の動きを先回りし、竿を寝かして頭を持ち上げてやると、魚が深みから徐々に上がってくる。そしてようやく背ビレが水面から顔を出すに至ったが、魚影は尺近いサイズだ。だが、相手はそこからでも再び潜る抵抗を繰り返す。それを何度かイナしてようやく玉網に導くことに成功した。
安堵する間もなく、早速メジャーを取り出し計測してみる。引きが強かっただけに期待はしていたが、「ウ~ン残念!」尺には足りない28.5cmで、その差1.5cmにガックリと肩を落とす。
●28.5cmのヤマメ●
しかし、自己タイ記録であり、本日の最長寸であるヤマメを釣って気を良くしないわけはない。以後の攻めにも弾みがついた。脱渓点までの中間点近を前にして、釣果は既に「つ抜け」(ひとつ、ふたつのように、数に「つ」が付く状態を脱すること=2ケタ)している。このまま好調をキープして後半戦に突入だ!。 ( ~第二部に続く)
梅雨時は長雨によって、どうしても増水傾向になるので、釣行日の近辺に降った雨がどのように影響しているのかを、ある程度理解していなければ現地に到着してから慌てることになる。
昨年1年しか経験がないのでエラそうなことは言えないが、何度か通った川の中では、支流部からの流れ込みが多い岐阜県北部の高原川の本流部は特に増水しやすく、流域のどこかでまとまった雨が降れば、釣っている最中でも、それこそみるみる内に増えてくるから厄介だ。
今回は富山県中南部の久婦須川へ向かったのだが、ここは去年の梅雨時に釣行した際、夜明けに増水状況を確認した途端に「ダメだこりゃ!」と引き返した経験がある。
しかし、同じ梅雨時に、ここをワザワザを選択したのは、気象庁のホームページ内にある「気象観測データhttp://www.jma.go.jp/jma/menu/obsmenu.html」で流域近辺の1週間の降雨量を確認し、国土交通省の「川の防災情報http://www.river.go.jp/」で、近日間の水位変化を確認したうえでのことだった。高原川は釣行前日までの雨の影響で、ピーク時には2m近い増水だったが、久婦須川では昨年の釣行時に釣りが可能だった水位(=69cm)に対して今回は20cmほどしか増水しておらず、それが徐々に下がりつつあるのをボクは事前に知っていたのだ。
距離が40kmほどしか離れていない両川であってもこれだけの差があるので情報収集は大切だ。
■朝一番■
今回の入渓点は、昨年始めてここを訪れた時に入った場所からだった。ここはヒザくらいの水深しかなく、一見何でもないように感じるが、ヤマメ達のエサ場になっているのか、朝一番はライズ(=水面が盛り上がるほどのところまで魚が表層のエサを追っている様子)を繰り返すところだ。今年も現場に着くと時折ポコッとかバシャッという音が聞こえ、仕掛けを作るボクを歓迎してくれていた。心配していた川の濁り具合も笹濁り程度だった。
●何の変哲もないポイントだ●
とりあえず、キヂ(ミミズ)をハリに刺して、ライズしている上流側から流し込んでみる。何度か流す位置を修正していると目印を引き込むアタリが出て、最初の1匹をゲットする。いつも感じることだがここ久婦須川のヤマメは体高が高い「幅広タイプ」が多いのでよく引く。
●当日の初ヤマメは体長約20cm●
■エサのローテーション■
最初のポイント付近で3匹ゲットした後は反応が無くなったので、「魚は釣り切った」と判断し、その周辺で川虫取りを開始する。この川で採取できるのは主にクロカワムシ、オニチョロ、そしてのカワムカデの3種だが、中でも安定して獲れて釣果が堅いのはクロカワムシだ。ここまでキヂ(ミミズ)、とブドウ虫の市販エサを使っていたが、コレにクロカワムシが入って、以後3種のローテーションで攻めていくことにした。
●左上がブドウ虫、右上がクロカワムシ、下がキヂ●
(キヂは写真の「ミミズ通し」という器具を使って装着した方が、ハリ掛かりが良い)
■様子を探る■
次に目に入ったのは、やや水深があって中央に白泡を伴って強く流れる流芯が明確な
ポイントだった。昨年に入った際は何も出なかったので、サッサと軽く流して済ませようかという気もしないではなかったが、今回は、この日全体の傾向を探り、状況判断するために少し粘ってみることにした。
その日の戦略を決める際に、「移動のピッチを上げつ活性の高い魚を釣る」のと、「じっくり攻めてスレた魚に口を使わす」の、どちらの方が結果的に魚を多くゲットできるのかを判断するのは難しい。ボクの場合は、それを気分で判断して失敗することも多いのだが、この日のように「お試しポイント」を設定し、そこで判断するのも良い方法なのだ。
●白泡の立つ流芯●
まず最初はミミズを刺し、次いでローテーションをさせつつ、最下流の白泡の消える辺りから攻め始め、その両サイドと流芯部を攻め上ってゆく。当然オモリもB~3Bを付け替えつつ探りを入れてみた。そして10投を越える頃になってようやくアタリを捉えた。
それまでの魚よりも確実にサイズが大きそうだったので、魚が流芯に入っていかないように注意しつつ慎重に玉網に誘導する。
●25cm級のヤマメ●
続いて23cmくらいのヤマメを連続ゲットしたが、そこで打ち止めになった。
いつもの感じで攻めているとゼロに終わっていたハズだから、この2匹は貴重だった。これが「目に付いたポイントは簡単には見切らず、粘ってみることが有効」だと判断できるキッカケになったのだ。そして上述したエサのローテーションと共に以後のパターンとして組み入れることになったのである。こうやって早い段階で試した結果を反映させれば、以降の攻めに迷いが減るのだ。
■大型イワナ■
次に差し掛かったのは、幅の広い浅瀬から落ち込んだ流れが前面の岩壁へとぶつかるポイントだった。
●攻めるスポットが多いポイントだ●
ここは、流れの筋同士がぶつかって収束するところと、流れの落ち込み、向かいの岩盤際、流れの中にある石の裏等、ポイント数は多い。先程の教訓から時間を掛けて一つ一つを潰してゆくように攻め始めた。
まずは岩盤際の最下流部で20cmチョイのヤマメを3連続でゲットする。
●ここでのヤマメのサイズは20~25cm程度●
続いて複数の流れが収束するところを狙ってもう1匹追加する。そして石裏では不発だったので、最後の仕上げとして、ややオモリを重い(2B)モノに交換して瀬の部分から最初に落ち込む部分を攻めてみる。
何カ所目かの落ち込みで「ゴンッ」というアタリが出たので反射的にアワせると、魚は下流に向かって一気に走り出した。相手の動きに合わせて慎重にあしらい、引きをイナしていると、竿を伝わる感触から「イワナだろう」と推測できたが、型が大きいうえに瀬から押してくる水圧が加わって玉網の位置までなかなか寄ってこない。それでもこらえている内に、なんとか水面まで引き上げるまでに至った。魚は、やはりイワナで、30cm台の中盤サイズのようだ。この時、今シーズンに入ってイワナの30cmオーバーはかなり釣っているため、心の中で何となく「なんだ、またイワナか…」と、つぶやいてしまった。
その瞬間事件は起こった。この奢った心を悟られたのか、その瞬間に「バカにするな!」とばかり、イワナは怒って?クルンッと反転し、見事にハリを外して逃げていったのだ。
呆然とする中、「ヤマメでなくて良かった…」と言い訳しながら立ちつくしているボクが居た。
■粘り勝ち■
イワナのバラシの後に続く魚は無く、更に上流を目指す。今度は淵に滝が流れ落ちるポイントだ。
●誰もが狙うポイントだろうから…●
このポイントはいわゆる「大場所」と言うべきところで、誰もの目に付き、誰もが狙うポイントだろう。この日のボクは、ゆっくり攻めることに対して自信を持っていたので、何だか「攻めがい」を感じてゆっくりと探ることが出来た。
まずは淵尻(最後の部分)にあるカケアガリを丹念に流して20cm強のヤマメを1匹ゲットし、続いて流れの中に見える石裏近辺を探るが、今度は反応が無い。しかし諦めずに攻めは続く。
一旦竿を置き、冷静になって滝の周囲を見回してみる。すると上流からの流れと滝がぶつかる部分に潜り込む流れを発見し、何となくそこに魚の気配を感じた。
1投目はオモリをBサイズにして流したが、仕掛が馴染む前に複雑な流れにハジキ飛ばされてしまう。そこで一気に3Bまでアップし、底の流れに合わせて送り込んでいると待望のアタリが!。
合わせた瞬間の抵抗とスピードから良型のヤマメと判断できた。いつものように慌てず、相手の動きを先回りし、竿を寝かして頭を持ち上げてやると、魚が深みから徐々に上がってくる。そしてようやく背ビレが水面から顔を出すに至ったが、魚影は尺近いサイズだ。だが、相手はそこからでも再び潜る抵抗を繰り返す。それを何度かイナしてようやく玉網に導くことに成功した。
安堵する間もなく、早速メジャーを取り出し計測してみる。引きが強かっただけに期待はしていたが、「ウ~ン残念!」尺には足りない28.5cmで、その差1.5cmにガックリと肩を落とす。
●28.5cmのヤマメ●
しかし、自己タイ記録であり、本日の最長寸であるヤマメを釣って気を良くしないわけはない。以後の攻めにも弾みがついた。脱渓点までの中間点近を前にして、釣果は既に「つ抜け」(ひとつ、ふたつのように、数に「つ」が付く状態を脱すること=2ケタ)している。このまま好調をキープして後半戦に突入だ!。 ( ~第二部に続く)