中島ブラザーズ ”弟”の「外で遊ぼう!」

近頃は日本海で、ヒラマサを追ってばかり。よって磯釣りや渓流釣りは休止状態ですが…。

釣り味・食い味 ~その3(メダイ編)

2013-04-27 12:30:00 | 釣り一般
 釣行予定日になると荒天となる悪循環にハマリ込み、もどかしい日々が続いている。よって、今週も、「釣り味・食い味」のシリーズだ。

■不思議な魚■

 「海の底は空の上(宇宙)と同じくらい謎が多い。」と、どこかで聞いたことがあるが、今回採り上げるメダイも、その謎の中にある不思議な魚だ。
  船釣りしかしない人が想像するメダイの行動範囲は、釣果実績から想像するに、300m~50mくらいに思うだろうが、実はこの魚、目で見える範囲、つまりは水面近くまで浮上してくる。それを知るのは離島遠征に向かう磯釣り師たちだ。
 磯からの大型魚狙いで有名な長崎県五島列島沖にある男女群島では、大型尾長グレを狙うのに一番楽なアプローチは夜釣りだとされている。その夜釣りでは集まった魚が、オキアミのマキエサを拾う際に夜光虫が反応して、蛍が飛び交うようなイメージの”淡く尾を引く光”が水中に走ることがある。そしてその光の尾が大きい場合は、大型魚が接近していると判断できるから、それを見た釣り人の心は期待で胸が膨み、アタリが来るまでの間はドキドキの瞬間となる。そして、その動きの中で電気ウキが消し込まれると、すぐさま強烈な引きを味わうことになる。
 以前であれば、その引きの正体は尾長グレ、そうでなければサンノジやイズスミといった磯魚であったのだが、ここ近年ではそれが大型のメダイであるケースも増えているのだ。
 男女群島での夜釣りでのウキ下は4ヒロ前後=6m前後からスタートすることから、そのあたりまでメダイは確実に浮いてきているということになる。反対に深い方では300m以上の水深でも釣れていることから、同一個体の移動ではないのかも知れないが、生息域として水深差が300m以上もある魚は極めて珍しい存在だと思う。

 以前は釣りの対象魚として大きく採り上げられることが少なかったように記憶しているのだが、資源量が増えて、現在では各地の沖釣りで盛んに釣られている。これには理由があって、実は前回ブリ類のところで触れた養殖業の衰退が関係しているそうだ。
 ブリの幼魚であるモジャコとメダイの幼魚はよく似た条件下で育つため、養殖魚の元となるモジャコ(ブリ~ハマチの幼魚)を獲る際にメダイの幼魚が混入してしまうのだそうだ。そして、ここでメダイの悲劇が起こるのだが、養殖業者にとってメダイは商品価値がない魚だから、発見されると除外されてしまうのだ。しかしそれは「捨てられる」のであり、一度捕獲されてしまうと彼らは恐らく生きてはいないか、成長できなかったであろう。
 それが現在では、ハマチの養殖量が減り、それと共にモジャコ漁が減って、本来の生態サイクル内に入るメダイの幼魚が増え、その結果、資源量が回復しているのだそうだ。
 沖縄の美ら海水族館の深海コーナーにも展示されているということから、沖縄近海にも生息しているのは間違いないだろうが、実際に釣りの対象魚として成立し、「狙って釣っている地域」を調べてみると、南は種子島あたりから始まって太平洋側は伊豆七島近海あたりまで、日本海側は新潟県沖あたりまでがそれに該当する。
 関西一円では、日本海側に大型が多く、最大で1m近いサイズがゲットされているのだが、太平洋側、特に和歌山県田辺沖で釣れているサイズはほとんどが65cmクラスまでであり、何故か小さい。


■メダイの釣り味■

 メダイは引きが強烈で、それがなかなか衰えずに下層から上層まで抵抗し続けるファイターだ。ブリほどのスピードはないのだが、トルクフルな引きが執拗に続く。これは体内に浮き袋を持っていないために、水圧の変化に強い体質となっているからのようだ。それとは反対に口腔内の肉質が柔らかいため、途中で口切れが起こって、ハリ外れるこることもある。その点、口が硬い上に後半になると浮き袋が膨れてだらしなく腹を返すマダイとは違って、船縁までハラハラ・ドキドキさせてくれるのは好敵手の証だ。

 しかし、生態の不思議と同じく、釣り味も掴み所がない要素があって評価が難しい。
 他地域のことはあまり知らないが、ボクの向かう若狭湾一帯では、一昔前であれば10号ハリスの5本バリ仕様の胴付き仕掛けでも十分な効果があり、一船30~40本という釣果もよくあって、釣れすぎて嫌になることもあったそうだ。
 その為、魚種の少ない冬場の「お土産釣り」としての位置づけであることが多かったようだが、次第に荒食いの機会が減って専門に狙わなくては釣果が伸びないようになってきたそうだ。
 そして、近年では仕掛もハリスが長く、より自然にエサが流れる天秤ズボ仕掛にしか反応しない魚が増え、ハリスも若干細くした方が食いが良くなるようになっているようだ。
 更に今シーズンに入ると天秤仕掛への反応も悪くなり、よりエサが自然に流れる「完全フカセ」での釣果のみが目立つようになってきた。同様にハリに着けるエサの種類も、ホタルイカで充分に釣果があったものが、イカの短冊→オキアミと、より食い渋りに強いタイプ、逆に言えばエサ取りに弱いタイプへと変わってきているから、その面でも難易度が増している。
 それらに対しては、各船の船長も同意見を述べているし、「魚探に反応がある位置にポジションを決めて釣りを始めても、群れが薄いために警戒心が強いせいか、アンカーを降ろした音に驚いてすぐに散る。」という話も聞いたことがあるから、個体数が減ってスレた魚が中心になっているのは事実であろう。
 船から釣る場合は「完全フカセ」を至上とするボクのような釣り師だと、より繊細になる傾向は喜ぶべきことなのかも知れず、その立場であれば釣り味の評価は高くなる。しかし、以前の若狭湾を知る釣り人や、他地域で竿を出す釣り人であればそんなに高くないのかも知れないから判断が難しい。
 だから、釣り味の評価は近年の若狭湾における「完全フカセ」での釣果であれば10段階の7.5をつけたいが、天秤ズボであれば6、胴付きで数が釣れる場合は5.5くらいが正当な評価であろうか?。そんな感じがする。

●ウマそう…●



■実釣時のエピソード■

 生まれて初めてこのメダイに出会った釣り人が口にするであろう台詞は、「何やこのヌルヌルは!」だと思う。それくらいこの魚の体表は多量の粘液で覆われている。その様子を表現するのなら、お笑い番組で「ローション・プロレス」というヤツがあるが、あれと同様の、したたり落ちるほどのヌルヌル具合なのだ。
 これは体表を細菌や寄生虫から守るために出すそうだが、浮き袋がないことと共に、これがあるために、行動範囲が広いのかも知れない。だが何れにせよこれが一旦ボートにしたたり落ちてしまうと、滑ること滑ること。荒れた日などは危険が伴うほどの滑りだ。
 このブログでもメダイを手に持った写真を何度か掲載しているが、その際に、どうしてもこのヌルヌルがウエアに付着するので、その後取るのに一苦労する。しかもこのヌルヌルはしたたったその時ばかりでなく、執拗だ。
 ヌルヌルがウエアに着いた後の処理は、ブラシを使って入念に洗い落とすようにしている。とある日もそのように洗い、乾燥させたのだが、ウエアを仕舞う際、一部に洗い残しがあって、ヌルヌルがガビガビッとなっいていることに気付いていた。しかし、「まぁいいや」と、あまり気にせずにいたのだが…。
 そして後日そのウエアを使用したのだが、途中でパラつきだした雨の水分に反応したガビガビが元のヌルヌルに復活していたのだ。慌ててティッシュで摘むように拭き取ったのだが、今度は綺麗に取れ、不思議と跡が残っていなかった。何とも不思議なヌルヌルである。
 韓国の化粧品でカタツムリのヌルヌルを使った物があって、好評だと聞くが、このメダイのヌルヌルは何かとてつもないパワーを秘めているに違いないとボクは思っている。しかし、「今から特許をとろうか?」と思ってもその能力もないし、乱獲でメダイが減ることも嫌だ。だからこの話は内緒にしておきたかったのだが…?。


■メダイの食い味■

 希に寿司ネタで提供されたことを経験しているが、そんなに感動があったワケではない。それが一変したのは一昨年の、秋のことだった。
 「メダイっていう魚を釣ったから、レシピを調べといて。」と、船上から妻に連絡しておいたのだが、帰宅すると妻が嬉しそうに「何やっても美味しいんだって。」と言うので、翌日に、まずは定番である刺身と手巻き寿司にして味わってみた。そしてこれが抜群にウマかったのだ。
 それでも80cmで10kgくらいはある魚なので、当然身が余る。それを翌日は鍋、更に残った身を西京味噌に漬け込んで5日後に味わったのだが、これまた全て激ウマであった。また、捌いた時点で出るアラに加えて頭部は兜割にして煮付けたのだが、これもまた絶品であった。そして、それ以降、我が家では「マダイは要らないからメダイを釣ってきて!。」との声があがるようになった。
 この魚の良さを付け加えるのなら、「不思議なことに骨が柔らかく、スッと刃先が滑るように切れてしまう」ということを挙げておきたい。頭部にしても同様で、マダイのように出刃を当ててハンマーで殴るような、危険なマネはせずともよく、スパッと割れてくれるのだ。その意味でも有り難い存在である。
 食したサイズは小は55cm、大は91cmまでと、ワイドだが、マダイのように大きくなればなるほど加速的にマズくなることはないが、80cm以上は身に入った筋が少しだけ気になる。食味的なベストサイズは75cm前後で、脂の乗りきった味が好みであれば、年末までに釣った物がベストになり、それ以降はやや脂が落ちて少しだけあっさり気味にはなるが、身のコクなど、基本的な味わいはそんなに変わらない。
 因みにボクの通う若狭湾周辺を中心に鳥取沖~新潟沖の個体の評価が高く、市場価値も高いそうだ。それに反して太平洋側の評価はここまでに及ばないので、地域差があることを考慮した方がイイのかも知れない。

 上記理由から、若狭湾のベストサイズであれば、食味の評価はかなり高く、10段階の8.5をつけたい。また、前評判の高い地域産であれば、それ以上の大型やそれ以下の中型サイズでも8をつけて構わないと思う。


■総合評価■

 釣ることよりも食いたくなる魚の一つであることから、総合評価は10段階の8としたい。ただし、上述したように近年の若狭湾での状況下においての判断だ。
 ここ近年の若狭湾では資源量が減る傾向にあるだけに、今後の動向が気になる存在である。
 釣り人は職漁者ではないので「元を取る」ことを優先する人は少なく、ゲーム性も求めるハンターであり、「釣れ過ぎては面白くない」が、「釣れなくては辛い」というジレンマを抱えている。若狭湾におけるメダイの現況は「掛かればデカイが、ある程度のテクニックが必要」な状態なので、バランスが取れた状態であるのかも知れず、喜んでイイ状態なのかも知れない。

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釣り味・食い味 ~その2(ハマチ~ブリ編)

2013-04-20 12:30:00 | 釣り一般
■青物の代表■

 日本の青物を代表し、出世魚を代表する魚でもあるブリ。その出世魚としての呼び名は、関西では釣りの対象魚となる小さい方からツバス(40cmまで) → ハマチ (60cmまで)→ メジロ (80cmまで)→ ブリ(80cm以上)と呼び、関東ではワカシ → イナダ → ワラサ → ブリと呼ぶ。他の地域でも呼び名は様々だが、四国ではメジロ(ワラサ)サイズに相当する呼び名がないので、「ハマチが釣れている」との情報が流れていて「な~んだハマチかよ」と思っても、実際は70cm級だと言うこともあるので注意が必要だ。
 スプリンター系の魚体は砲弾型で、色彩も背が青、腹は白銀で、その中間に黄色のラインがあって、F1や耐久レース、あるいはバイクレースでお馴染み?の「ロスマンズカラー」のようだ。ボクにとっては少年時代に釣魚図鑑を眺め、あこがれていた魚の一つであった。だから、初めてこの魚を釣った際に、釣りたての色彩を見て「なんてカッコイイ魚なんだろう。」と感動したことを思い出す。
 ボクが釣りを始めた少年時代は、現在ほど釣れている魚ではなかった。一説によるとこれは養殖業の衰退が関わっているという。
 養殖と言っても、ブリ類は卵からふ化させる完全養殖ではなく、モジャコと呼ばれる稚魚を採取して大きく育てる方法がとられているので、本来は畜養と呼んだ方が正しいのかも知れない。そしてこの養殖業は市価の下落と反比例して上昇するコストと、赤潮などの水質汚染による大量死の影響で一時ほどの勢いは既に無くなっている。その結果獲られるモジャコの量が減って天然の資源量が増えたことが、釣り場への回遊が増えた経緯だと言われている。


■ハマチ~ブリの釣り味■

 この魚(ブリ類)へのアプローチの中で、一番簡単な方法が、船(沖)釣りで、サイズが小さいほど数が出るし、大きくなるほど難易度が増すのは言うまでもないことだろう。実際に福井県鷹巣沖の船釣りでは、毎年のように晩秋になるとハマチクラスの三桁釣果(一船単位)が続くが、メジロクラス以上だとそんな釣果は起こりえない。そのことでサイズ別の難易度の違いが証明できると思う。
 ハマチとその下のツバスを含めたクラスは、居る場所でさえ竿を出せれば、ほぼ間違いなく食ってくる。本来、ブリ類はフィッシュイーターである一面を持っているが、このクラスだと、オキアミへの反応が良い状態である確率がかなり高いから、マキエサを切らさず、その遊泳層を攻めることさえ出来れば、それこそ8号以上の太いハリスであっても、短いハリスの胴付き仕掛けでもお構いなしで食ってくるし、サビキ仕掛の類である疑似餌への反応も良い。だから、ある意味アジやサバと同じような感覚で釣れてしまう魚だ。(もちろん標準的な活性に於いて)
 この傾向は磯からグレなどの上物釣りの外道で釣れる時も変わらず、この魚が欲しければ、回遊を感じたら如何にオキアミのマキエサを切らさずに、自身が立つ磯の周囲に足止めするかが数を釣る鍵となる。

 その上のメジロクラスだと、少し話が変わってくる。まずハリスの短い胴付き仕掛では釣果が得辛くなり、船の直下を狙う場合は天秤ズボ仕掛の方が釣果が伸びるようになる。そして更には、直下よりも仕掛が潮下方向に自然に流れる完全フカセ釣りの方が釣果が伸びることが多くなってくる。その原因は、サイズが大きいほど生存競争を勝ち抜いた魚であるために、警戒心がある程度強まっていることと、個体数が減っているから我先に競い合って無闇矢鱈にエサをとる必要が無いためだと思われる。また、よりフィッシュイーターの傾向が強まって、小魚を追うために、オキアミへの反応が鈍くなる群れも垣間見られるようになるが、こういった群れの魚は、ジギング(ルアー)や、活きエサを使った「のませ釣り」以外では釣り辛くなる。
 そして、更にその上のブリクラスになると、ボクの行動範囲の中ではオキアミのエサで専門に狙うことはなく、メジロクラスに混じって時折ドカンッ!と釣れてくる程度になる。

 強引で知られるハマチ~ブリではあるが、上述したように小型であっても太ハリスを気にせず食ってくるから、掛かればガンガンと巻き上げれば良いだけなので、やり取りはかなり単調になる。だが、メジロクラス以上になると、引きとハリス強度のバランスが釣趣的に良くなってくるので、やり取りは、もう少しスリリングなモノになる。ただし、活きエサやジギング(ルアー)で狙う場合は更に太いハリスが使えるから、どうしても単調な「力対力」の展開になる傾向のままではあるが…。
 この魚は最も経験を積んでいるであろう、最大のブリクラスになっても「頭の良さ?」をあまり感じない。
 例えば、磯の上から釣る場合はもちろんのこと、船から釣る場合であっても頭の良い?魚であれば、海中にある根(上からは見えない大小様々な岩礁)に向かって疾走して岩穴に潜り込んだり、窪みに張り付くといった行動をとる、あるいは岩礁の合間を縫って走ることで危機を回避するのだが、ブリ類は基本的にそのような行動をとらない。一定の層をひたすら全力で突っ走り、下層に岩礁があってもその上を通過する習性があるようだ。
 だから釣り人は自分が使用しているハリスに合わせたドラグ設定を行い、あとは相手の動きに合わせて落ち着いたやり取りを心掛ければ獲れる確率は高い。
 磯からグレなどを釣る”上物釣り(うわものつり)”の外道で掛かった場合も同様で、根に入ったりしない習性を理解して、一番強烈なファーストランをオープンベイル(スピニングリールの道糸をフリーで放出すること)でかわし、あとは引きに合わせてオープンベイルと、レバー解放(レバーブレキ付きリールの場合)やドラグ調整をすることで相手の引きを凌ぐことができれば、ゲット率は低くない。ボクの磯での記録は82cmだが、これは2号ハリスで釣ったし、釣り友が同寸を1.75号で釣っていることでもそれが理解できるだろう。(どちらも偶然やラッキーといった感じではない。)

 「大型であれば、パワーに圧倒される面もあるが、やや単調で、無理な引っ張り合いをしなければゲット率が高い」といったところから判断してみると、釣り味はメジロクラスで10段階の6、ブリクラスで7がボクとしては妥当なところだと思う。(それ以下のクラスは評価外。)


■実釣時のエピソード■

 奇しくもマダイと同様のパターンになって申し訳ないが、この魚は寄生虫が入る率が高い魚だ。この寄生虫は「ブリ糸状虫」というのだが、ブリの成長サイクルに合わせて成長→産卵するそうだ。よく目にするのは春以降の水温が上がる時期で、逆に冬場は目立たないが、実のところは常在しているらしく、冬場に発見し辛いのは、その時期に形態が変わっているからだそうだ。
 だから、寄生虫が棲み着いているのは「天然の証」と言うべきであり、逆にこれが夏場であっても入っていないのは、発生しないような餌を与えられた「養殖物」と判断した方が良いとも言われている。ただし、この寄生虫はアニサキスとは違って、知らずに生食しても人に一切害を及ぼさないということだから、見た目は兎も角、食べた後に、どうこうなるということはない。
 今から、10年以上前、5月中旬にいつもの白石グリで、メジロクラスが入れ食いになったことがあった。サイズ的に、いかにもウマそうで、喜び勇んでの「お持ち帰り」となったのだが、このほとんど全てに数多くの寄生虫が棲み着いていた。ウチのキープ数は2本で、その他はもちろんお裾分けもしていたから、発覚後は近い知り合い平謝りしたことは言うまでもない。
 よくよく考えてみると、例えば日本海側の漁師さん達だと12~2月の旬に積極的に狙って獲るが、それ以外の季節は手をつけたがらない。その理由がこの寄生虫であり、これによって市場価値が無くなって「二束三文になる」からだそうだ。

●実は、これにも”虫”が沢山入ってたのだ。●


■ハマチ~ブリの食い味■

 「これほどサイズや季節によって評価が変わる魚はいないであろう。」そう思うほど味は変わる。
 小さいツバスクラスは時期によって多少の差はあってもほとんど脂が乗っておらず、スカスカなので、料理法は味噌煮などで無理に味を入れる方法がベストだと思う。伝聞によると初夏のツバスは脂が乗っているとも言うが、ボク自身はそんなツバスを釣ったことがないから、真偽のほどは判らない。もっとも、このサイズをボクが狙って釣ることはなく、もし釣れてしまった場合は、ハリを飲み込んで血を噴いている個体以外はキープせずにリリースするようにしているが…。
 では、ハマチクラスだとどうなるのか?。
 ハマチと言えば、寿司ネタでは定番になっているが、真冬以外でも脂が乗っているのはほとんどの場合で養殖物であって、天然物はこのクラスになっても、普段は脂分が少ない。真冬近くになり、水温が下がればそこそこ脂が乗ってくるし、成長が早い魚だけにこの季節になればハマチと言ってもメジロサイズ近くになってくるので、話が変わってくる。
 だが、本当に食って「ウマい」となるのは、個人的な好みかも知れないが、晩秋以降、晩冬までのメジロ~ブリサイズだと思う。この時期は「旬」であることから当たり前の話ではあるが、同時期に釣れる他の青物の中で一、二を争うほどウマくなる。平造りにして食べても良し、鍋や、しゃぶしゃぶで食べても良しで基本的に何の料理で食ってもウマいのだが、中でも一番ウマいと思うのが「カマ」と呼ばれる、エラブタを受ける側の半月状になった部位の塩焼きだ。(思い起こしてもヨダレが出そうだ。)
 だが、この一番ウマい季節のメジロ~ブリサイズは市場価値も高い。だから漁師さんが懸命になって追い回すせいか、残念なことにボク自身がこの時期に得た釣果は極僅かだ。

 上記から、食い味はハマチクラスであれば冬場のみ10段階の6で、それ以外の季節は評価外。メジロクラス以上は普段が6で、冬場のみが8という評価をつけたい。



■総合評価■

 気まぐれな青物の中にあって、ほとんど毎年回遊があり、釣りの対象魚として安定した資源量がある。その結果、昔は考えにくかったが、瀬戸内海でもメジロクラスが“狙って釣れる”ようになっているほどだ。だから、ポピュラーな魚で親しみ易いうえに強烈な引き味で釣り師を楽しませてくれるから、有り難い存在ではある。だが、釣り自体は単調な展開になることが多い。
 食味についてもサイズムラ、季節ムラが激しい。そこで、総合評価はハマチクラスは10段階の4.5、メジロクラスであれば6、ブリクラスで7.5としたい。
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釣り味・食い味 ~その1(マダイ編)

2013-04-13 12:30:00 | 釣り一般
■長らく釣りを続けていると…■

 今年で齢(よわい)50年。思えば人生の半分はとうに超えたはもちろんのこと、もしかすると3分の2を越えたのかも知れず、自分の”オッサンさ”を改めて理解するのだが、重ねた年齢の中で釣り人だった時間は30数年に達している。
 しかし、何分にも飽き性なので同じ魚を狙って釣りを続けてきたワケではない。
 小学3年生に近所の港でアジ・サバ・イワシを狙っての”サビキ釣り”から始まった釣りは、中学生になって、夏場はキス、冬場はカレイやアブラメ(関西の方言で、アイナメのこと)を狙う「投げ釣り」に発展し、高校生前半には防波堤からの「夜釣り」でチヌを狙うようになっていた。
 ここまでが青少年期で、しばらく”陸釣り?”が忙しくなって、数年のブランクがあったが、20代中盤に防波堤でのチヌ、グレ釣りから再びチャレンジが始まった。そこから次第にそれらを磯釣りで狙うようになり、それと並行して底物のイシダイ釣りにもチャレンジしていたり、ブラックバスを狙って滋賀県の琵琶湖や奈良県の池原ダムへボートを車に乗せて通っていた時期もあった。そして、近頃の船釣り(沖釣り)や渓流釣りと、覚えた釣りは多岐にわたり、釣り上げた魚の種類は外道を含めると相当な数に昇っている。

 そんな釣り歴を歩んできたから、一部に存在する、「自身のやっている釣りを絶対化して、その中での価値観で他の対象魚や釣法を下に見る」釣り人とは対照的な目を持っていると自負している。
 また、基本的に「釣った魚は食べる」主義だから、ある魚が季節や産地によって、世間で思われているほど、ウマくなかったりすることもよくあるし、その逆もあることを知っているつもりだ。
 そこで今回から数度にわたり「釣り味・食い味」と題して、大胆にも対象魚についての、ボクなりの総合評価をしてみようかと思っている。
 釣り味は個人の性格や趣向で大きく変わるので、「簡単だけど、奥が深くて面白い」という釣り人いて当然だし、魚によっては「食い渋った状況」では全く違う習性になることがある。
 また、食味についても同様に趣向があるし、季節によって評価が大きく変わることもある。だから、ツッ込みたくなるようなこともあろうかと思うが、あくまでも釣り味は標準的な活性時についての話であり、そのランク付けに関しては「獲るための難易度が高く、釣り人側の努力がより必要になる魚」ほど高くしている。
 そして食味は、季節ごとの違いに触れた上での「淡泊な味よりも、ハッキリとした味が好み」であるボクの舌での判断であること、更に付け加えるなら、ボクが魚類学とは無縁であることは言うまでもないだろうから、まぁ、その辺はご理解のほどを…。


 そして今回はマダイから…。

■マダイの釣り味■

 マダイと言えば、「めでたい」の語呂合わせからか、相撲の優勝力士がこの魚を手に持って満面の笑顔で記念撮影をしていることもあるし、七福神の「えべっさん(恵比寿様)」が左手に持っていることからも、象徴的な魚であり、魚の王様(赤いから女王様?)とも言われている。だが、本当にマダイの存在は王様級なのだろうか?。
 面白いことに王様=キング、魚=フィッシュ、すなわちキング・フィッシュとは、ニュージーランドあたりではヒラマサのことを指すから、少なくともその地に住む人にとっては王様でないことは確かなのだが…。

 まずは釣り味を検証してみる。
 これは釣り雑誌のカメラマンから聞いた話だが、水族館のエサやりで、撒かれたエサの中へ真っ先に突っ込んで来てガバガバと口を使うのがマダイだそうだ。そしてそれは釣り人としても頷ける話だ。
 例えば山口県萩沖ではウキ流し釣りといって、オモリ負荷70号以上でサイズは1mほどもあるウキを使って釣ることが多いが、この大ウキをスポンスポンと沈めてくれる魚の一つがこのマダイであるし、磯からのフカセ釣りでは小型のウキを目にもとまらぬ速さで引き込み、同時に竿、あるいは釣り人の腕ごと引っ張り込んでゆく魚でもある。そして、勿論、船からの天秤ズボ釣りその他でも大きく竿を絞り込んでくれる。だから、食い意地の張った魚であることは間違いなく、その意味では決してハリを口に掛けることが難しい魚ではない。
 では、その先の、掛けてからのやり取りではどうだろうか?。
 マダイを船から狙う場合、日本海の若狭湾周辺では5~6号のハリスが中心で、それ以上になると食いが極端に悪くなる。上述の萩沖では8~10号でも入れ食いということもあるし、逆に関東では2.5~4号というから、全国平均は5号といったところだろうか。
 しかし、磯釣りでのやり取りを経験したことがある人だと解ると思うが、マダイは根(水中の岩礁)に向かって走り込んだり、あるいは根そのもの潜ったりする習性はないので、リールから道糸を大きく送り出してやっても「根に擦れて仕掛が飛ぶ」ことは少ない。したがって走りたいだけ走らせて弱らせれば、後は比較的簡単に獲れる魚だ。だから、もっと細い糸でも獲れる確率は高い。しかも、間違って指を口に入れると指が潰れるかというほど噛む力がありながら、歯自体は鋭くもなくザラついてもいないため、ハリを飲まれていてもハリスが擦れて切れる率は高くない。
 その実、ボクの細糸記録だと長崎県五島列島の福江島でグレを狙っていて獲った75cmは1.7号ハリスでのやり取りだったし、その昔、取材で訪問した徳島県古牟岐の磯ではグレ釣り名人の小里哲也さんが、チヌ狙いの1.2号ハリスで85cmをボクの目の前で仕留めている。(しかも、驚くことに冗談を言って笑いながら…)
 しかも、この魚は水圧の変化に弱い。船から狙った場合だと、エサをとった(ハリを咥えた)層で一旦フルスピードで疾走した後は一度休憩したかのように失速する。そこから中層まで引き上げると再び抵抗するが、始めの勢いはなく、そこから更に引き上げると頭を振るだけになる。そして、水面近くまで引き上げてくると浮き袋が膨れてしまい、完全にバランスを失った姿勢になって「ただ重いだけ」に変わる。
 これが磯から狙った場合になると、掛けた層からの水深差が船よりも少なく、ハリスが細いので、もう少し抵抗時間が長くなるが、他の磯釣り対象魚と比較しても、最初のスピード以外は抜きん出るようなファイト感はない。
 また、数ある釣り対象魚の中でもマダイは、大型に出会い易い魚の一つだと思う。個体数は稚魚放流その他の努力で安定していて、それらが順調に育つことも多いのか、船で狙う限りであれば、通ううちに大型の80cm級を手にする確率は高い。それは、例えば舞鶴辺りの釣り船が発進しているホームページ内の釣果欄で、春の乗っ込みと秋の落ち前のシーズンの釣果を確認すればすぐに判る。定員4~5人という中、70cm級を2~3人が釣り、そのうち誰かが80cm級を釣っている写真は当たり前のように掲載されているのだ。(ただし90cmオーバーは極端に個体数が減るから、幸運が必要になる。)

 結果、上述した点から総合的に考えると、釣り味は10段階の6程度だと思う。(10が最高)

●昨年釣った73cmのマダイ●


■実釣時のエピソード■

 マダイには一定の割合で寄生虫が着いている。それは口の中にいるのだが、そいつが気持ち悪い。容姿は「歩いている状態のダンゴムシを平たくしたような」というべきか、「グソクムシのような」というべきか、はたまた「フナムシのような」というべきか、そんな形だ。色は「美白をした肌色」っぽいのだが、抱卵しているメスは青緑色の卵が透けて、より気持ち悪さを増している。そしてそのメスが大きく、大人の親指ほどのサイズで、周囲にそれよりも半分以下の小さなオスが、何匹か寄り添って、逆ハーレムのようになっていることが多い。(気持ち悪いので写真は載せないが…)
 正式名称は「タイノエ」と言うのだが、食べても害はない、と言うか、食べられる位置には着いていないので気持ち悪さは兎も角、安心して?それが着いていたマダイ自体は食べられる。
 そして、マダイ釣りのエピソードと言えば、ついこの寄生虫がらみの話を思い出してしまうのだ。それは愛媛県の日振島でのことだ。
 グレを狙っていた際、春先に入って食い渋るグレに反して、マダイのアタリが続いたことがあったのだが、数匹釣る内の一回でそれが起こった。例によってマダイのそれと解る、竿ごと引っ張り込むアタリがあって、しばらくやり取りした後に急に抵抗感が無くなってしまった。まさしくそれはハリのスッポ抜けだったのだが、そのハリ先にこの寄生虫だけがぶら下がっていたのだ。
 つまりは、「マダイがエサを食う→ボクがアワセを入れる→マダイの口腔内には刺さらず、寄生虫にハリ掛かりする→マダイが疾走する→やり取りが始まる→マダイが口を開ける→寄生虫だけが抜け出る」という流れでこうなったのだ。この時以外にも、もう一度だけ同じ体験をしているが、これも磯釣りでのことであることから、恐らくハリのサイズが船で使う際よりも小さいためであろう、と思っている。(大バリだと寄生虫ごと貫通するのだと思う。)
 ウソのようなホントの話だが、同様の経験をした釣り人の話を数回聞いているし、記事を読んだこともある。だから釣りをする人の間では、少しは知られた話ではあるのだが…。


■マダイの食い味■

 続いて”食い味”つまりは食味の話に移ろう。どんな料理にも合う蛋白な味わいで、それでいて深みがあるというのがマダイの一般的な評価だと思う。しかし、ボクの場合は好みに合わないのか、それとも巡り合わせが不幸というべきなのか、「これはウマいっ!」と唸るほどのマダイに出会ったことがない。釣った場所は覚えているだけでも、若狭湾~福井沖の日本海をメインに、和歌山県紀伊半島沖、長崎県五島列島、山口県萩沖から瀬戸内海まで、各地に広がり、季節は四季の全てで釣っている。ただし、この中に高級マダイの産地である、紀淡海峡の加太あたりの魚が含まれていないから上述の感想になるのかも知れない。
 マダイの”食べ頃サイズ”は40~45cmと釣り人の間で言われており、それより小さければ食えるところが減って料理の種類が限られるし、逆に50cmを越えてくると全長に正比例して旨味が減って不味くなり、70cm以上は確実に筋張って食感も悪くなる。
 また、個体差があるものの、産卵期が5~6月なので、4月中旬から6月中旬までは、腹に抱えた真子(卵巣)や白子(精巣)の成長に合わせて栄養がとられて身の旨味が減り、真子や白子が最大に成長する頃には”はらす”と呼ばれる部分は「骨と皮」だけの状態になる。しかし、四季を通して一番大型が狙えるのが「乗っ込み」と呼ばれる、産卵のために浅場に入ってくる時期だから、釣り人はジレンマを抱えてしまうのだが…。
 マダイの旬は春と言われているが、上記の理由からそれは、初春の”腹が大きくなり始める直前”に限定した方がイイと思う。

 食味の評価は抱卵時期を除いた基本状態であり、個体差が判り易い刺身での判断を中心としているのだが、その刺身での味わいは、人によって「締めたての歯ごたえのある状態がイイ」とか、「一日あるいはもう少し寝かせた方がイイ」とか、意見がある。ボクはそれに倣って、ほとんどを試したことがあるが、歯ごたえ以外の旨味に関しては、言われたほどの差を感じることはなかった。また、最近の船長の中にはサービスで「神経締め(抜き)」と言われる方法で釣った魚の処理をしてくれる場合もあるが、ナイフによる「普通の締め」との差も大きく感じたことはない。

 また、食の好みは「年齢と共に変化する。」とよく言われるが、ボクがマダイを食う場合は、若い頃に好きだった刺身よりも煮付け、それも、最近ではあら炊き(あらの煮付け)が一番ウマく感じるようになっている。しかし、マダイの骨は硬く、特に頭は非情に硬い。したがって、あら炊きの下処理である兜割(かぶとわり)は大変な作業になる。また、ウロコ取りも大変な作業で、恐らく釣った魚の中で一二を争うほど硬くて周囲に飛び散るのがマダイのウロコだと思う。たから、三枚おろしを含めた料理全般の下処理で苦労する魚だ。(その他、刺身にしてもウマくない大型魚の身は、西京味噌を使った”味噌漬け”にすることをお薦めしておく。)

 そんなこんなを総合的に考えると、マダイの食味は釣り味と同じ10段階の6程度に評したい。一般の人やマダイを専門に狙う人にとっては意外な結果かもしれないが、要は「もっとウマい魚が他にもある」ということから、相対的に考えての結果だ。勿論、最初に記したように食味には好みの差があることは言うまでもないが…。


■標準点やや上の魚■

 奇しくもマダイは釣り味・食い味ともに「真ん中やや上」という評価になった。これを低いとみるよりも、「全ての魚の中心指標となる魚」捉えた方がイイのかも知れない。何度も言うとおり、ボクの、やや「独断と偏見」が作用しているために各人には反対意見もあるかと思うが、今後も様々な魚を評価してみたいと思うので、乞うご期待?を!。

 


 
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底を打ったか?若狭湾

2013-04-06 12:30:00 | 船釣り・釣行記
■相変わらずの白石グリ通い■

 今回も京都府舞鶴市から出港した。乗船したのは今年になって幾度もお世話になっている滝ヶ浦遊船所属の日本海41で、目指すポイントはいつもの白石グリだ。

●停泊中の日本海41●

 当日の天候は曇りベースながら、波高は1mという予報だったので、まずまずのコンディションだった。
 約1時間10分の航海で、丹後半島経ヶ岬沖の周辺海域に到達する。ここ白石グリでは入漁規制があって、エサ釣り船は午前11時にならないと、投錨することができない。したがって手前で各船が横一線に待機し、「用意ドン!」となる。白石グリは天然魚礁のため、地形が複雑かつ範囲が広く、その時期その時期で魚の付き場が変わるのは当然なので、各船が狙った位置を目指す。しかし、各船長の狙いが被ることもあるので、速度を上げての競争になる。
●各船が加速してポイントを目指す●

 そして、船長が着けた位置は75mラインからの駆け上がり部分だった。

■同船者■

 白石グリでの釣果は一時の”底状態”からは脱した、いわゆる「底を打った状態」へと移行しており、数を増した各船が競ってここを目指していることからもそれが裏付けられている。それ故ボクの期待も十分であった。
 今回も乗合船だったので、同船者は二人組と+一人とボクの合計4人だった。釣り座はくじ引きとなったが、近年まれに見るラッキーさで、何とボクが一番クジを引き当ててしまった。そしてボクはトモ(船尾)の右舷側を選んで、そこから実釣がスタートした。
 二番、三番クジは二人組だったので、彼らに左右から挟まれる状態だったのだが、その二人は完全フカセ釣りの経験が浅いようであった。それはそれで仕方がないことなのだが、問題なのはエサの量だ。ボクが一日普通にマキエサを撒く場合は、3kgのオキアミを5枚程度という計算になり、乗合料金に含まれるオキアミ2枚とは別にプラス3枚を用意する。しかし、この二人は追加をしていない様子だった。
 完全フカセ釣りでは船上からオキアミのマキエサを撒き、その流れてゆく潮筋にハリの着いたエサを流し込んでゆく。当然磯のグレ釣りのようにマキエサの中に刺しエサが漂うのが理想だが、比重の軽いオキアミ単体のマキエサとは違って、ハリに刺したオキアミは重い上に仕掛が付いていて更には当然ながら道糸も繋がってその抵抗の影響を受けている。それを、時には300m近くも流すことがあるため、実のところ、船上から撒いたマキエサと一致させて流すことは難しい。したがってマキエサがスロープ状に流れる筋の中に刺しエサが流れてくることくらいしか釣り人は演出できないのだ。そのためには「マキエサを一定間隔で間断なく撒き続けること」で、スロープに仕掛が入る確率を上げることが必要になってくる。上述の”5枚”はここから導かれた量なのだ。

●マキエサは充分に用意しよう●

 経験が少ないと、流れに乗せて送り込む道糸の出具合や、いつ来るか判らないアタリを表現するスプールの回転にばかり目が行ってマキエサを撒く方がおろそかになる。それが気がかりだったのだが、案の定、左右の二人は仕掛を入れる際に一掴みを一度しか撒いていないようだった。
 これでは効果がないので、仕方なく声を掛けるのだが、それを言った時は慌てて少し撒くものの、すぐに注意が逸れてしまうようだった。まさか、人のマキエサに手を突っ込んで撒くわけにも行かないので、仕方なく、ボクは見て見ぬふりをしながら自分のペース撒き続けていた。
 イヤな予感がずっとしていたのだが、それはボクの場合はそれがよく当たる。この時もファーストヒットは左側の釣り人で、50cm弱のマダイを釣って上機嫌になっている。続いて右側の人にアタリがあって、同寸のマダイと、ボクが待ち焦がれているメダイを続けてゲットした。
 ヒットしているのは100m以上先なので、一掴みのオキアミが効いているようにも思えず、魚達はボクが撒き続けたエサに反応しているハズなのだが、そのことを左右の二人は気付いていないようだった。
 それでもアタリがボクにもあれば気にならないが、割に合わない作業を2時間ほど続けている内に嫌気が差して来る。これ以上言ってもギスギスするだけなので、多少意地悪だが、二人が流すタイミングからズラして仕掛を投入し、その刺しエサの周囲のみに絞ってマキエサを撒くようにした。
 「これで解ってもらえればいいのだが…。」との思いで、そのパターンで続けていたが、その甲斐もなく、また、そんな撒き方では釣れてくる魚もなかった。


■風向きが変わる■

 そうこうしているうちに陽射しが途絶え、やや強い風が北から吹くようになった。こうなると、船の角度が変わってオマツリが多発するようになった。ここでボクの左にいた人が移動し、ボクの釣り座が一番左端になった。
 「これ幸い」と、人より長い竿を使っていたことも利用して、他の人よりも、より左側流すように位置取りし、いつものペース=間断なく撒き続けるペースに戻して流し始めた。
 これが当たったのか、しばらく経つと、ついにアタリを捉えることに成功した。
●嬉しい、この日の初アタリ●

 ただし、風向きが変わってからは二枚潮気味に変わってしまい、アタリとして伝わるスプールの逆転は明確ではなかった。しかも魚引きは大したことはなく、既に正体はやり取りの途中で気付いていたが…。

●30cmチョイのイサギ●

 予想通り、まず最初はイサギをゲットする。
 続いてまたもや明確でないアタリを捉えてイサギばかりを2匹追加する。
 そしてその次もアタリは弱いが、少しは抵抗感のある引きが竿を絞る。

●少しだけマシな引き●

 そして小型のマダイをゲットする。

●40cmほどのマダイ●


■一番の引き■

 これまでの流れがウソのような展開となり、ポツポツながらアタリが続くようになってきた。しかし、ずっとアタリは不明瞭な状態が続いていた。
 近頃の電動リールの、”フカセ対応”を謳っているモデルは、リールが高速で逆転=アタリがあればアラームが鳴るように設定できるのだが、ここまでの魚達の活性とサイズではアラームが鳴るまでには至らず、目で変化を確認せざるを得なかった。しかし、次のアタリは、この日最初で最後のアラームを鳴らすアタリだった。
 そしてアワセを入れると大きく竿を絞り込んでいった。

●この引きは…●

 重量感を伴ってドラッグが滑り、シツコク繰り返す引きは、待望のメダイに違いない。メダイの口は柔らかめであり、時折口切れでハリが外れてしまうことがある。ましてや当日の状況下では、これを逃すと後はなさそうなので慎重にやりとりを繰り返す。
 そうやって何とか無事に取り込みに成功したのは、紛れもないメダイであった。

●80cm弱のメダイ●


■その後の展開■

 その後は一旦アタリが途絶えたが、北風が強まり船の揺れが大きくなっていた。船酔いや仕掛のロストで周りの釣り人はリタイヤし、気付けばボク一人が竿を出していた。
 こうなったら”独壇場”とばかりにマキエサを間断なく入れ、40cmほどのマダイを2匹追加することができた。
 そして程なく北風は更に強まり、「これ以上は無理」との船長判断から、予定の時間より1時間早く撤収の時間がやってきた。この時、例の二人のエサ箱に目をやると、割り当てられたオキアミの内、1枚すら消費することもなく、まだ4分の1ほどが残されていた…。(因みに舳先方向にいたもう一人の釣り人は”自身がコンスタントに打ち続けたマキエサ”によって、マダイの釣果をそこそこ得ていた。)

 当時前半はストレスがたまって「胃の痛くなるような」展開だったが、気付けばいつものペースを取り戻し、納得できる最低限の釣果を得ていた。そろそろ渓流釣りに取り組む時期にも差し掛かっていることもあり、今回を爆釣で締めくくって、すんなりと移行したかったのだが、この釣果では「…」だ。
 実のところ、春シーズンの沖釣りには、あと1回行くかどうか迷っているが、休みがいくらあっても足りず、懐具合も厳しくなっている今日この頃なのだ。
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