中島ブラザーズ ”弟”の「外で遊ぼう!」

近頃は日本海で、ヒラマサを追ってばかり。よって磯釣りや渓流釣りは休止状態ですが…。

導火線に火が着いた高原川

2011-05-28 12:30:00 | 渓流&管理釣り場での釣り
■ようやく本格スタートの高原川■

 厳しかった今冬の影響なのか、聞こえてくる話は不調という言葉しかなく、実際に訪れたボク自身の釣果も空振り続きだった高原川。漁協に対する良からぬ噂を立てる者も一部に現れるなど、ロクなニュースが流れてこなかったが、いつもお世話になっている地元の釣具店=宝フィッシングさんの情報では、5月も中盤の大水が出た後にようやく本格的に釣れ始めたとのこと。それを受けて早速釣行と相成った。


●夜中の1時過ぎ、峠の気温は17度を指していた。●


 但し、川の状態はベストではない。大雨に雪解けの雪代が加わった増水の後は、やや高止まりしたままであるうえ、当日午後も天気予報では降雨の予報が出ており、更なる増水を考慮すると「勝負は午前中になる」と初めから予想していた。運のないボクのことだ。果たしてその短時間の間に復調の恩恵は受けられるのだろうか…。


■予想通りの増水■

 朝一番は、今まで何度か入ったことのある、葛山の堰堤から釣り上がることにした。これは上記したような増水傾向から、ある程度予想がつく区間でなければ、更に増水した際に危険が伴うという予想があったためだ。それに、前回、前々回と減水のために潰れていたポイントが復活している可能性が高いことも要因の一つだった。


●スタート地点の葛山堰堤前●


 早速入川するも、予想通りの増水で川幅は前回に訪れた際の3倍くらいになっている。しかも雪代の影響で川はやや白濁気味だったが、前回に訪れた際に感じた川の冷たさは無くなっており、その分だけ期待が持てそうであった。


●増水傾向の高原川本流●



■いつものポイントへ■

 スタート時点での反応は薄く、「またやってしまったのか?」という感もあったが、やがて昨年にヤマメをまとめて抜いたポイントへと差し掛かった。
 様子を見ると、水位がほどよく上昇して窪みの中で渦を巻き、見事に復活しているではないか!。


●チョッとブレた写真だけど、いつものポイント●


 早速仕掛を投入開始したが、増水の影響で今までとは逆にポジション取りが難しく、持ち込んでいた7.5mの竿ではヒジを伸ばした片腕で保持するという、無理な姿勢をとらないと届かない距離になっていた。
 腕がツリそうになりながらも仕掛を投入し、なんとか渦の中で馴染ませる。仕掛が渦の中で1周するまでの間に、アタリを捉えることに成功。しかし、無理な姿勢のおかげでアワセが遅れたせいか、1匹目のヤマメは水面から抜こうとした瞬間にハリハズレで逃してしまう。
 ガックリうなだれながらも投入し続け、何とか次のヤマメは無事に取り込めた。続いて小型のイワナが続く。
 

●高原川らしい体型のヤマメ●



●18cmほどののイワナ●


 サイズは大したことはないが、今シーズンの高原川では初めてのまとめ釣りに気をよくして更に釣り上がってゆく。


■押しの強い流れ■

 魚の反応が一段落ついた後は移動し、更に釣り上がってゆくが、思った以上に流れが強くてポイントが少ない。特に流れ込みのようなポイントは、水量に押されて流芯とその脇との流れの差があまり付かなくなってポイントが潰れていることが多く、投入した仕掛が落ち着かない。更には、この季節にしては低い水温のせいか、流れの速い部分には魚が入っておらず、自ずと大石裏の淀み狙いの方が成果が上がりそうだ。
 そして如何にも魚が着いていそうな石裏を見付けては、ソコに仕掛を打ち込み、シツコク粘ってみることにした。


●「如何にも」なポイント1●


 狙いは的中し、マズマズのサイズのイワナをゲットする。しかし、その姿は無惨にも尾ビレの一部がカットされていた。これは去年にも書いたことだが、フライ・フィッシング界の一部に居る自称愛好家によってカットされたものと聞いているが、しかるべき機関が行う学術的な調査ならいざ知らず、個人でやることに何の意味があるのだろうか?。カットされたヒレの回復は放流魚の例を見れば判るが、そう簡単なものではない。これだけ大きくカットされれば尚更のことだろう。


●尾ビレがカットされた25cmのイワナ●


 押しの強い流れが続く中、ここまで石裏を中心に狙ってそこそこ数を稼いできたが、ようやくボクの好きなタイプの、力強いハッキリとした流れが深瀬に流れ込み、その周りに引き込まれるような流れが生じているポイントに到達した。


●「如何にも」なポイント2●


 丹念に下流側から攻めてゆくが、このような誰もが狙うポイントは前日の土曜日に攻められて居るであろうから、反応は薄い。そして、空からは事前に予想していたモノよりも大きな雨粒が落ち始め、同時にやや強い風が吹き始めた。
 そこで3Bオモリを打って風に対抗させるがそれでも流し辛いので4Bに打ち直し、オモリが根掛かりしない程度のテンションを掛けて底を転がすようなイメージで仕掛を流してゆくことにした。
 この作戦が当たって1匹目は20cmほどのイワナだったが、続いて久しぶりにヤマメをゲットする。


●20cmのヤマメ●


 このポイントでは結局3匹ゲットした後に移動し、再び石裏狙いの区間に入る。
 降り出した雨と共に気温が下がり始め、寒いことこの上ない。それと同時に各ポイントでの魚の反応が鈍くなってアタリが渋くなってくる。それでもイワナは低水温に強いのか、なんとか食い込んでくれるが、ヤマメらしき魚はアタリがあってもハリに乗らない、もしくはやり取りの途中でハリハズレが連発し始める。

 ここまで使用したエサはミミズと川虫類だったが、特にアタリが多いのはクロカワムシとキンパクの2種類だった。


●クロカワムシ●



●キンパク●



■今季初の尺オーバー■

 明らかに下降する魚の活性を感じつつ釣り上がって行く内に、気付けば区間の最終地点が近付いていた。残りポイントが少ない中、その近くにある、とある石裏ポイントに目が向いた。このポイントは大石の裏に、もう一つ二回りほど小さい水没した石が見え、その石と石との間が「如何にも」な雰囲気を醸し出していた。
 強風対策で打っているオモリが大きいので、直接仕掛を打ち込むと、着水音が伝わってそこに潜むであろう魚に警戒されそうだ。そこで奥側に打ち込んだ後に引き込むイメージで仕掛を馴染ませてみることにした。


●「如何にも」なポイント4●


 この作戦が一発で成功し、目印の動きが止まると同時に「ゴンッ!」という衝撃がボクのロッドを襲った。
 スピードはないがトルクのある引きから容易に相手がイワナだと想像できたが、サイズはそこそこありそうだ。
 天候具合とアタリの遠退き具合からこれが本日のラストチャンスだと思い、逃したら後がないことが判っていたから、やり取りは慎重になる。
 何度か空気を吸わせて充分に弱らせた後、無事玉網に誘導したイワナは尺を少し超えていた。ホッとしたのも束の間で、そう喜んでも居られない。ナゼならこれまた尾ビレがカットされていたのだ。


●尾ビレにカット痕のある31cmのイワナ●


 その後も同じ石裏を攻め続けたが、大きめの魚にはナワバリ意識があるのか、一等地ポイントに「二匹目のドジョウ」のイワナは居なかった。
 程なく最終地点の芋生茂(おいも)橋に到達したが、この下にあったハズのポイントも増水のために消滅しており、何も手だてが打てないまま、退渓を決意した。


●芋生茂(おいも)橋●



■最後っぺ■

 退渓後は車で移動しつつ各ポイントの様子を覗いて回ったが、降り出した雨により更に上昇した水位の影響で、ほとんどの区間で釣りにならない状況に陥っていた。
 唯一何とかなりそうだったのが景勝地の杖石(つえいし)裏だった。早速竿を出してみたが、ブッ飛ぶ流れに仕掛が馴染まず苦労の連続だ。


●杖石裏のポイント●


 それでも何とか仕掛が落ち着くところを見つけ出し、イワナを1匹を追加する。


●24cmのイワナ●


 その後も少し粘ってはみたが、続く魚は居なかった。
 釣果が20を超えていることもあって、この魚を機に「これ以上の続行は危険」と判断し、高原川を後にすることにした。


■本番はこれから■

 帰り際に立ち寄った宝フィッシングさんの話では、遅れに遅れていた渓魚がマトモに釣れ出したのは、ほんの一週間前のことだそうだ。
 渓魚自体の「本番はこれから」ということであるらしいし、更には今年も鮎の解禁が遅れるそうなので、7月上旬までは充分渓流釣りが楽しめるということであった。
 釣行当日は前日に30℃近くあった気温が10℃以下に下がり、加えて冷たい雨の影響で急に水温が下がったせいか、釣果のほとんどが、より低水温に強いイワナだった。しかし、これから水温が上がればヤマメも本格化するだろうから、楽しみが増えるだろう。

 ここに来てようやく導火線に火が着いた感がある高原川の現況だった。今後は、遅れていた分だけ凝縮されて大爆発するのかどうかはボクには予想できないが、「そうあって欲しい」と願うばかりだ。
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ガス燃焼器具の話 ~ガス缶編

2011-05-21 12:30:00 | アウトドア・ギア
■「機能美」大好き■

 ボクだけの傾向ではないとは思うが、贅肉を切り落とし、必然から生まれた「機能美溢れる」デザインが大好きだ。例えば究極を言うと日本刀がソレにあたる。
 道具としての便利さから言えば、刀は峰と刃に分けず、直刀のように真っ直ぐで両側が切れる両刀にした方が片方の刃が欠けても使えるし、どちらに振り込んでも刃が対象物に向くので利点が多いように思う。
 しかし、ご存じの通り日本刀は片方にしか刃が付いていない。これには東北の騎馬武者が使っていたのをマネした等、諸説あるそうだが、ボク的には対象物に当たった後に力が逃げて刃が滑り、より深く切り込んでゆくようにするため、独特の湾曲した反りが必要になったことと、軽量化による取り回しの良さと強度の両立のために片刃を採用したという説を信じている。だからあの独特のデザインの美しさは「敵を切る」ということに特化したために生まれてきたものだろうと思っている。しかも他国の刀に比べると工程数が多く、更には折れにくくなるようにと不純物が少ない良質の鋼を使っているから独特の輝きを放っている。正にこれこそが必然から生まれた「機能美」なのだと思う。

 そういったモノに出逢うと、ボクはついつい手が出て購入してしまいがちになる。対象は高機能な道具や器機類などに存在するが、デジタル器機の中にはほとんど存在しない。ただし、これを日本刀の世界でやってしまうと「銃刀法違反」になるし、自動車や時計のような世界でやってしまうとお金がいくらあっても足りない。そこはそこ、次元は全く違うが、お手軽価格帯の中にある工業生産品での話だ。そんな感じで集めてしまうモノ中にアウトドア用のバーナー(ストーブ)やランタンがある。「高効率さに感心して一品」、「機能美に感心して一品」、「収納性の高さに感心して一品」と買ってゆく内に、気付けば随分と数が増えている。


●現在所有中の「ランタン」の数々●


 同様の趣味を持つ「お仲間」は少なからず居るみたいで、Googleで検索すると結構な量の情報が流れているが、それらを参考にし、自分でも経験する内に知識の集積が進んでいる。
 「食うこと」と「暗がりに明かりをともすこと」は瀬泊まりをする釣りやキャンプ等では欠かせない作業となるので、これから数度にわたって皆さんにボクなりの燃焼器具に対するノウハウを伝えていきたいと思う。


●現在所有中の「バーナー(ストーブ)」の数々●


 以前に触れた話であり、少し内容がカブってしまうが、まず第1回目は、本題の器機の話に入る前に避けては通れない、使用するガスの話から。


■ガスボンベの種類■

 アウトドアで使う缶入りガスは、ずんぐりした形の「アウトドア缶」と呼ばれるモノと、ややスリムで鍋物用コンロでお馴染みの「カセット缶」の2タイプの缶に充填されたモノが一般に流通している。しかし、一般向けにボンベ内に充填できるガスの種類は決まっており、アウトドア缶だからといっても特別なモノが入っているワケではない。ただし、缶強度の差から混合するガスの比率には違いがある。


●カセット缶の数々●


 家庭用で鍋物をする際は、問題なく装着できればメーカーにはこだわらないで、ホームセンターやディスカウントショップで売っている1本(250g)¥100以下のカセット缶を使用する人が多いが、アウトドアユースでは燃焼器具のメーカー(ブランド)とボンベのメーカーを合わせる人がナゼか多い。缶内にある弁を押し下げるためのピンの長短による相性の善し悪しが少しはあるものの、基本的には装着に互換性があるハズなのにである。
 これは器具やボンベに「専用の物同士で使用すること」と大きく記入してあるからだと思うが、家庭用コンロ等であってもこの記述がほとんどの場合でなされているのに不思議な現象だ。
 実は、万一の事故があった際にボンベと燃焼器具のメーカー(ブランド)が違うと、責任がどちらにあるかがハッキリとしない場合は「生産物賠償責任保険=PL保険」の適応がし辛くなるからこの記述があるということらしい。
 だから、このブログを読んでいる人々にも「他社間での缶の流用はあくまでも自己責任で!」ということをボクとしてはまず最初に示しておきたい。(万一の事故の責任は自分でとること!)


●缶にある「生産物賠償責任保険付」の表示●


 しかし、このあたりは管理する役所によって判断が違っており、最近では語気が弱められている様子だが、そんなことは初めから気にしない海外の人達はレポート等を見る限り、メーカーにこだわらず装着できるモノを適当に選んでいる人が多いようだ。


●アウトドア缶の数々●



■ガスの種類■

 ボンベに充填されるガスは「プロパン」「イソブタン」「ノーマル(ノルマルとも)ブタン」の3種類で、それぞれ価格と性能が違う。

 ホームセンター等で売られているカセット缶は、価格を抑えるためにノーマルブタンを100%充填したモノがほとんどだ。因みにアウトドア・ブランドから販売されているノーマルタイプにも同じノーマルブタン100%充填モノがあるが、なぜ中身が同じガスなのに、あれだけの価格差があるのかはボクには理解できないのだが…。
 ノーマルブタンの特徴は上述した「安価であること」以外に、3種の中で一番暑さに強いという点が挙げられる。
 したがって夏場のキャンプに向かう際でも安心して車で運べるが、これは裏返すと寒さに弱いということなのだ。沸点が-0.5度と一番高いから低い温度では管内でガス化しにくくなるうえ、蒸気圧が低いために気温が10度以下になると確実に火力が落ちてくる。そして使えば使うほど気化する際に気化熱を奪うので、悪循環が始まって、ついには火が消えてしまうことになるのだ。

 その点、イソブタンは沸点が-11.7度なのでノーマルブタンよりも低く、蒸気圧もそこそこ高いので実用上は氷点下チョイまでなら火が着いてくれるが、それ以下になるとノーマルブタンと同じ状態になる。高濃度に充填された缶の価格はノーマルブタン100%モノの3倍ほどする。

 残るはプロパンだ。このガスは更に高価だが一番低温に強く、極寒の冬山登山での使用に耐えるくらいだそうだが、その分沸点が-42.1度と低く、蒸気圧がかなり高いので缶の強度を考えると単体での100%充填は不可能だ。したがって、どうしても他のガスとの混合充填になってしまうのだ。当然暑さにも弱く、強度を上げたアウトドア缶に高濃度ブレンドしているメーカーもあるが、冬場に使用を限定して販売しているほどだ。

 3種のガスを燃やした際の、同じ重量単位あたりの熱量にはあまり差がないが、上述したようにガスの沸点と蒸気圧が違う。
 蒸気圧の高いガスは火口から吹き出す時間あたりのガス量が多くなるので、高回転型自動車エンジンの馬力と同じように、見かけ上(時間単位の)火力が強くなるという特性がある。しかし、これまた高回転型自動車エンジンの馬力と同じで、時間あたりのガス消費量が増え、燃費が悪くなるのだ。


■混合ガス■

 上で少し触れた寒冷地仕様ガス缶の他、各メーカー(ブランド)が販売しているハイパワータイプと呼ばれるガス缶は、ノーマルブタンの割合を減らして、イソブタンを混合したもの、あるいはイソブタンそのものを主成分にしたモノや、更にはプロパンを加えてその割合を増やしたモノまで、各社の狙いや思惑があってその混合比は多彩だ。


●イソブタン95%のユニフレーム・プレミアムガス●


 例を挙げると、カセット缶(250g入)の場合は最安のホームセンター製=100%ノーマルブタン(1本あたり¥100円前後)から始まり、イワタニ製のカセット缶=「オレンジ缶」がノーマルブタン70%+イソブタン30%(1本=250gあたり¥185前後)、ユニフレームの「プレミアムガス」はイソブタン95%+プロパン5%(1本=250gあたり¥320前後)、それに加えてプロパンが配合されたモノまで存在するが、JIS規格カセット缶の場合は缶内に充填するプロパンは5%までと決められているので、カセット缶に対するプロパン配合はメリットは少ないように思う。

 アウトドア缶(大=470g前後入)の場合は缶の耐圧強度が高いようで、それに合わせて充填の割合も多岐にわたっている。一般的なイソブタン+ノーマルブタンを始め、具体例を挙げると、スノーピークの「プロイソ(金缶)」はプロパン35%+イソブタン65%(1本=450gあたり¥914前後)、EPIの寒冷地仕様の「エクスペディション」はノーマルブタン42%+イソブタン18%+プロパン40%(1本=190gあたり¥720前後)、ユーザーの多いコールマンに関しては古いデータしかないが、「レギュラー」はノーマルブタン56%+イソブタン24%+プロパン20%(1本=470gあたり¥820前後)、「イソブタン450T」がイソブタン95%+プロパン5%(1本=470gあたり¥980前後)といったところのようだ。


●イソブタンが30%のイワタニ・オレンジ缶●


 各社がブレンドを工夫しているガスだが、缶内のガスは、蒸気圧の高いものから順番に燃えていくことをまず頭に入れておかなくてはならない。
 実は、缶内に混合充填されたガスは混合比通りに噴出されるのではなく、蒸気圧が高い順に徐々に入れ替わりつつ噴出されるのだ。
 例えばイソブタンとノーマルブタンを混合したイワタニのカセット缶「オレンジ缶」の場合だと、先にイソブタンから燃え始め、それが無くなり始めたら徐々にノーマルブタンが混じり始め、最終的にはノーマルブタンだけで燃えるといった具合だ。
 それでも気温が高ければ全てのガスが気化して噴出されるので、そう問題を感じない。しかし、10℃以下の気温になると、イソブタンが燃え尽きた後は沸点が高いノーマルブタンは缶内に残り始め、さらに気化熱が奪われて缶内の温度が5℃を切る頃になると顕著に気化しなくなって「ガス欠状態」となり、やがて火が消えてしまうようになるのだ。
 同様に気温が氷点下5℃の時に例えばスノーピークのプロイソ(金缶)を使用していても、プロパンが燃え尽きた後に残ったイソブタンは気化せず、その分は缶内に残ったままになる。

 このような特性から、寒い日に気化せず缶内に残った沸点の高い方のガスを同じ条件の日に使おうとしても、結局は使えずにずっと残ったままになることが理解できるだろう。

 では、「混合は無意味なのか?」と聞かれれば、何も工夫できないそのままの状態であるのなら「そうだ。」とも言え、「缶の強度上、仕方がないから有効なガスだけ使って、気化せずに火が着かなかった分は気温の高い日にでも…。」と答えざるを得ない。
 だからこそ本気で冬山登山をするような人達はガス燃料のバーナーを敬遠し、ポンピングという少々ジャマ臭い作業が付き物なうえ、機材自体も多少かさばる「ガソリン・バーナー」、もしくは、火力は低いがコンパクトな「アルコール・バーナー」を携行することが多いのだ。
 但し、「工夫できない」のであればと言ったのは、実は例外があって「燃焼器具側に、対策装置があれば有効」とも答えられるし、使う側の努力によっても何とかなる場合もあるからだ。その装置等については追々紹介する。


■ガス優先で選ぶ燃焼器具■

 結局、中途半端にガスが混合されていても条件によっては缶内に沸点の高いガスが残ってしまうので、割高になるだけだ。だからボクの場合は同じカセット缶規格の中で、一番安いホームセンターモノと、ユニフレームのプレミアムガスを使い分け、微妙な気温の場合は、燃焼器具に上述した、とある装置が着いているという前提の下でその中間価格帯であるイワタニのオレンジ缶を使うことにしている。
 特に、イソブタンが95%でありながら250g入缶が320円前後のユニフレーム・プレミアムガスが秀逸であることは間違いない。通常のファミリーキャンプや釣りにおいては氷点下の冷え込みの中で長時間居続けることはないだろうから、冬場はこのガスさえあれば事足りてしまうだろう。
 価格を他社製品と比較してみると、例えばアウトドア缶の中ではコールマンのイソブタン450Tが同じ混合比であるが、こちらは内容量470gで980円前後もするから、価格差がかなりある。
 たかがガスと言ってもその価格差はバカには出来ない。2~3泊のキャンプで複数のランタンとツーバーナーなどを使用するのであれば、その差がかなりついてしまうのだ。

 何度も言うが、ガス缶と燃焼器具を同じメーカー(ブランド)にしないことは、自己責任での使用になることを理解して欲しいが、もし、万一の際のPL保険の適用を考えて同じメーカー製にこだわる場合は、当然コスト・パフォーマンス性の高いプレミアムガスが純正で使える「ユニフレーム社製」の燃焼器具を文句なくお薦めする。ただし、このメーカーのレギュラーガスは混合比がプロパン他2%+イソブタン28%+ノーマルブタン70%でありながら、1本あたり¥270もするから、プレミアムガスとの価格差に違和感を覚えるが…。
 しかし、それはホームセンター等で販売されている安売りのカセット缶と比べた結果であって、他社のアウトドアブランドのカセット缶やアウトドア缶のノーマルガスより性能が同等以上でありながら、割安であるのは確かだ。

 これからアウトドア用の燃焼器機を購入しようと思うのなら、これまでに書いてきたように「ガス側の事情」を最初から考慮しておけば、コストパフォーマンス性の高い選択ができるということを頭に入れておいて欲しい。


 以下、気化促進装置編に続く。



※最近の原油高に加え、震災後の需給バランスの崩れが重なり、各社、特にアウトドア・ブランドのガスボンベに品不足と価格高騰が起こっているようだ。例えばユニフレームのプレミアムガスは、ここ1年ほどの間で250g入が1缶250円だったのが、最高値では320円くらいになっている。従って文中の価格は流動的な中の一時を捉えているに過ぎないのだ。その点にご理解を。
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春の荒城川

2011-05-14 12:30:00 | 渓流&管理釣り場での釣り
■荒城川へ■

 例年だと鮎釣りシーズンが始まり、人が大勢押し寄せて渓魚が釣り辛くなるまでの間は岐阜県最北部の高原川へ向かうのがパターン化しており、それに合わせてここ2年というもの入漁証は年券を購入していた。
 勿論、年券は元を取らなければ買う意味がないのだが、高原川の場合は5回以上行かないとそうならない。しかし、何度かレポートしたが、今年は不調であり、実際に体験した手応えでも釣果の本格化は1ヶ月は遅れそうな気配があったうえ、今回の釣行直前の情報では雨+雪解けの増水で厳しさは更に増していた。それを受け、思い切って釣行地を変えることにした。フトコロには厳しいが、採算は度外視して…。

 増水に強い別の河川を選択しようとアレコレ考えた挙げ句に浮かんだのが、岐阜県の小京都といわれる高山市の北部を流れる荒城川だ。

●荒城川の流れ●

 今までは夏に訪問することが多かった荒城川を選んだのは、たとえ高原川が大幅に増水していても山一つ挟んで南側を流れるこの川では、上流部にあるダムの方針の違いで流量の制限法が違うのか、増水量が幾分かマシなことが多いように感じるからだ。
 ただし、雪の多い地区を流れる川だけに、まだ水温が上がっていないこの時期にどういう結果が出るのかは判らない。各河川が混雑するであろうゴールデン・ウィーク真っ只中にあって、そうは迷ってもいられないので、ここは思い切って釣行することにした。


■増水した荒城川■

 釣行前日朝まで降っていた雨の影響を考え、アレコレ入渓場所を考えつつ高山市内を車で抜けていたが、弱いながらも寒気が入っており、現地に近付くにつれてヒンヤリとした風が流れていた。

●夜中の1時過ぎの気温は3℃●

 おそらく明け方には氷点下に下がっていただろうから、増水に加えてその影響もあるかも知れない。だから水深のあるポイントから攻めることを考えていた。水深があると言えば過去に攻めたことのあるこのポイントがまず頭に浮かんだ。

●夏に攻めたことのあるポイント●

 ポイントを確認すると、やはり水量が多く、押し出しの強い流れが吹き出すように走っている。
 まずはセオリー通り、下流側の淵尻にあるカケアガリから攻め始める。いかにも水温が低そうな様子から流芯よりも、そのサイドのタルミを重点的に攻めるが、アタリが出ない。しかし、時間がかかるのは初めから解っていることなので、ていねいにシツコク流してゆく。
 何度目であろうか?低層を攻めている仕掛の目印の変化をようやく捉えた。今年になってマトモなサイズの渓魚は掛けていなかったので、ほどよい抵抗が懐かしい。そしてゆっくりと玉網に誘導して1匹目をゲットした。

●27cmのイワナ●

 しかし、粘り続けるも、この1匹のみでこのポイントでの釣りが終わった。


■傾向と対策■

 下界では既に晩春に入っているが、ここ飛騨地方の山間部はまだ春が本格化する寸前であり、その傾向は魚が着くポイントにも現れている。
 水流が適当に見えても水温が低いために、浅いところからの生命感の伝播は皆無だ。それがキーワードとなって自身のポイント選びに確信を持つことが出来る。そのキーワードは、この時期には当たり前ではあるが、ある程度水深があってゆったりと流れる部分だ。

●4月末だというのに、桜はまだ蕾が膨らみ始めたばかり●


■連続ヒット■

 次に目が向いたポイントは一見水深がないように見えるが、石裏が大きく掘れ込んでいるポイントだ。

●目に見える石より下流は結構深い●

 石裏を丁寧に攻め続けていく内に流芯の脇にある流れの緩い部分で明確なアタリを捉えてイワナをゲットする。

●20cmチョイのイワナ●

 そして、やや流れの速い淵尻で待望のヤマメをゲット。そう大きくはないが、狙っていただけにウレシイ1匹だ。

●20cmチョイのヤマメ●


■大場所発見■

 次に入ったポイントは、付近では一番水深が深そうに見え、そこに上の瀬から流れ込む芯のある流れが中央を突き切り、その真ん中に大石があるという、誰が見ても解る「如何にも」なポイントだ。それだけに誰もが狙うポイントだろうと思うから、攻めには慎重さと丁寧さが要求されそうだ。

●大石の周囲と流れの白泡の周囲がポイントだ●

 ここでもセオリー通りに下流のカケアガリか攻め始める。ここで「なぜセオリーなのか?」を説明しておこう。
 渓魚は流れてくるエサを捉えようと、基本的には上流を向いて待ち構えている。当然視界は前方に開けているので、上流から攻めたのでは釣り人の姿が渓魚に見られ易くなる。一旦姿を見られると警戒心の強い魚たちだけに、以後の釣りの展開に悪影響を及ぼすのだ。
 したがって下流側、ついでに言うと釣り人の立ち位置から見て手前側から攻めるのがセオリーになる。しかし、これは絶対というワケではなく、諸説あるようだが…。
 ついでに言うと、この理論の下で多くの釣り人が移動するから、渓流釣りは「釣り上がり」が基本になるのだ。近年、人口が増えているルアー釣りでは、キャストできる分だけ制約が少ないせいか、「釣り下る」人も一部には居て、他の釣り人との間でトラブルが起きていると聞く。しかし、「ルアー専用区間」ならいざ知らず、様々なスタイルの多くの釣り人と共存しているのが現状なので、元からあるルールには従うのが筋だと思うのだが…。

●淵尻のカケアガリ部

 カケアガリ部の人頭大の石が点在する部分を流していると、目印が動きが止まってヤマメをゲット。先程のポイントよりもサイズがやや大きい。

●23cmのヤマメ●

 喜ぶ間もなく、エサのローテーションを交えて投入を再開するとポツリポツリとやや間の空く連続ヒットが始まった。

●25cmのヤマメ●

 因みに、使用したエサは…

●ブドウ虫●
  
●オニチョロ●
 
●ヒラタ●

 の他、ミミズと多彩であったが、釣れるエサに偏りはなく、目先を変えるために変えた瞬間にアタるということもあった。


■当日一番■

 一通り淵の後端周りを釣り切った後は、核心部である淵頭の大石周りを攻め始めた。
 まずは、奥側の川岸にポケット状の窪みがあって、そこを流れがグルグルと回る部分を発見したので、その中にオモリBを打った仕掛をブチ込んでやると、一発でアタリが出て、そこそこサイズのイワナをゲットする。

●26cmのイワナ●

 徐々に仕掛を投入する位置を石裏へと近付けてゆくが無反応。一目瞭然なポイントだけに、スレた魚を相手に執拗な攻めを繰り返す。
 エサをローテーションさせて反応を伺いつつ、仕掛を馴染ませる位置をオモリの重さと投入地点を調整して、徐々に相手を追い込むかのように距離を詰めてゆく。
 そして、何投目か、2Bのオモリを打ち、ミミズを刺して投入した仕掛の目印の動きに変化が出ると当時に「ゴツンッ!」とした反応が手に伝わった。

 引きのスピードが遅いので、イワナだと予測できたが、無理に食わそうとしてハリスを一回り細い0.2号に落としていたから慎重なやり取りになる。
 何度かのやり取りの後、顔を出した相手を見ると「今季初の尺モノか?」と思わせるサイズのイワナだ。
 空気を充分に吸わせて弱らせた後、無事に玉網に誘導し、メジャーを当てるが、何とも惜しい29cmだ。
●29cmのイワナ●

 やり取りに時間をかけたためにポイントが荒れてしまったのか、このイワナを釣った後は全く気配がなくなってしまう。しかし充分に釣り切った間があるので、満足したうえでこの区間での釣りを終えることにした。


■道端でヒョイッ■

 車で移動しながら、「ここぞ!」というポイントを探していたが、区間的には流れが速すぎて水温の低そうな当日の状況には向かないものの、ピンスポットとしては面白そうなポントを発見し、横着にも路上から仕掛を投入してみた。

●道端から見えるピンスポット●

 ここではすぐに反応があって、アマゴ(この川はヤマメ域だが、以前に放流していたアマゴの子孫)をゲットする。

●21cmのアマゴ●

 続いて投入を繰り返すが、連発はしないようだ。何度か後、諦め気分で何気なく回収しようとした仕掛の後方で、魚が反転し水中で「キラッ」と光る様子が見えた。その瞬間、猛スピードで走り出したが、ボクの立ち位置は川面から4mほど高い道路上なので竿が立てられない。こちらがアレコレと迷う間もなく流れの速い瀬に入ってしまい、更に加速した瞬間に仕掛が飛んでしまった。
 「初めから下に降りて釣っていれば…。」と思っても後の祭り。正しく油断であった。


■雪代の川■

 当日朝は気になるレベルではなかったが、時間が経つにつれやや増水し、川が更に白く濁るようになってきた。気温が上がって発生した雪解け水=雪代の影響である。
 この時点で正午過ぎ。まだまだ時間があるので、めぼしいポイントで竿出しし続けたが、午前中とは打って変わり、魚の活性が落ちてウソのようにアタリの数が減っていった。そんな中、貴重なアタリは3度あったが、いずれもアタリがマトモに出ないうえ食い込みが浅く、やり取りの途中でハリハズレ、もしくはハリ自体に掛からない状態で、納竿時間を迎えてしまった。
 午前中の17匹に対して、午後からはゼロ。走行するジェットコースターのような釣果配分であった。

●雪代の影響が強まった様子●


■本格化しつつあるものの…■

 「今年は遅れている」という話は、多くの川から聞こえてくる話であったが、完全本格化ではないものの、ここに来てようやく魚は動き出してきたようだ。
 「これからが本番!」と言いたいところだが、鮎釣り場も兼ねている河川では、残り時間は1ヶ月も残っていない。しかも、奥深い山々を流れてくる川では今冬の大雪傾向の影響を今後も受け続けて釣果が不安定だろうから、まだまだ注意が必要だ。それが更に痛いところだ。

●里ではようやく雪が消えたようだ●
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敗北を抱きしめて

2011-05-07 12:30:00 | その他
 震災とそれに連動した原発事故は、その破壊しつくされた様子と、その国難の度合いから「第二の戦後」とも言われている。
 では実際に終戦直後から占領が開けるまでの間に何が起こり、ボクらの父や祖父の世代の日本人がその国難をどう受け止め、どう切り抜けていったかについては学校教育の中では「全く教えられてこなかった」と言えるだろう。
 そんな時代について書かれているのが、ジョン・ダワー著「敗北を抱きしめて」という本だ。この本はアメリカのジャーナリストに贈られる最高の栄誉であり、最も権威ある賞であるピューリッツァー賞を受賞している。とは言っても「アメリカ人が見た日本人観」からは完全に抜け切れているわけではなく、記述に多少違和感を持ったり反論したくなる部分もあるのだが、それでも当時の様子を知るには貴重な一冊であることは間違いない。

●上・下巻の長編だ●

 この本には「敗戦という悲惨な状況の中、文字通り『何もかもなくした』日本国民達が秩序を守りつつも、如何に苦難を乗り越え、様々な創造性を発揮して立ち直っていったか」が書かれているが、それと同時に「如何なる問題が解決できずに残ったのか?」ということが書かれてもいる。

 今回の震災でも「何もかもなくした」人々が大勢居て、本当にお気の毒に思うが、「敗北を抱きしめて」を読んだ後に比較してみると、被災地と戦後の状況にはかなりの違いがある事に気付く。
 戦後の日本は国内主要都市部の多くが爆撃されて灰燼に帰しており、都市部と農村部の差は多少あったにせよ、全国的な食糧難と物資不足に加えて国民は恐ろしいスピードのインフレにさらされていた。当然輸出入も成り立っておらず、事態は深刻であったが、反面、物さえあれば売れる時代であったが故に、荒れ野に生える雑草の如く闇市が各地に生まれ、そこでの取引が盛んになることで「市民の持つパワー」の一面が発揮されていった。だから、「まずは物さえ生産、もしくは供給できれば…」それが復興の足がかりの一つになっていたのだ。
 対して今回の震災においては、被害を受けていない中部以西の西日本からの物資が豊富にあるうえ、諸外国からも被災地へ向けて物資が入り込んでくる。それを端的に示しているのが、ペットボトル入りの水や乾電池の供給過程だ。生産施設を失い、資金や体力を失った被災地の企業や商店が復活するには、ただでさえ相当の困難が待ち構えているのに、他から商品が流れ込み、シェアまで奪われてしまった後ではその困難さが更に増すだろう。だから軽々しくも「戦後の危機も乗り切れたんだから…」と言う言葉で括ってしまうべきではないと思う。

 しかし、「敗北を抱きしめて」を読んで感じた戦後の一番の問題点は、上述した「如何なる問題が解決できずに残ったのか?」という部分にあると思う。
 GHQは「民主主義」を自国(アメリカ)でも達成困難な実験的な部分を含めた内容をもって上から押しつけ、我々日本人もそれを多くの部分で善意に解釈して受け入れてきたが、成果が出る前に朝鮮戦争と冷戦が始まったがためにGHQいや、実質米軍は「既存の力を持った官僚や企業組織」を更に強化して再利用せざるを得なかった。その時に始まった流れによる弊害が今の震災の対応、特に原発事故で顕著に表れているように思うのだ。

 「敵を知り己を知らば百戦危うからず」とは「孫子の兵法」の有名な一節だが、これから先の日本は震災の復興を第一に、震災前から続く経済・財政問題や想定していた原発の数から15機も少ない状態での「京都議定書の批准」の履行等、百戦どころかそれ以上の問題が山積みとなっている。いつものパターンで申し訳ないが、近代史を勉強せず、放ったらかして己を知ることを怠り続けたから、「百敗の一部が始まっているのかも知れない。」そんな気がする今日この頃なのだ。
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