完全フカセ釣りのTV番組やホームページ等の解説を見ていると、一部を除いて例えば「ラインは触らず、できるだけ無抵抗で送り込み…」であるとか、「サルカンの数を増やして…」であるとか、以前のようにヒラマサの回遊数が多かった頃に通用していた釣法のみを解説しているモノが多いように思う。まぁ、これは初心者向けにあまり複雑な事を言っても理解してもらえないだろうし、取っ付きにくくなるのを避けた結果なのかも知れないが、そんな簡単な対応だけで釣果が伸びるのならボクは苦労はしないし、その内に釣り飽きてしまうかも知れない。だが現実は違う。
「回遊数が多かった頃とは違って、近頃ではアタリの出る位置が変わっている。」
これは付き合いのある優秀な各船長が言っている事だ。それはボクも実感しているので、以前の釣法のみでは対処出来なくなって試行錯誤を繰り返している。今回はこのあたりを記していきたいと思っているが、その前に今年の春~夏までの傾向から。
■今夏までの傾向■
「玄達瀬は春の経ヶ岬=白石グリの傾向を引き継ぐ」と、以前にも記した。今春の白石グリは例年よりも釣れ出しが遅く、3週間遅れで釣れ始めたが、一部の特異日を除くと乗船者全員で5本前後と数は釣れないものの、アベレージサイズは80cm程度で、状況としては良好だった。だが収束も早く、6月初旬に急潮傾向になって以降、ポツポツと顔を見せる程度になり、やがてアタリは途絶えていった。
玄達瀬の釣りも同様の傾向で、解禁と同時に好釣果が出ていたが、急潮が差すようになった7月中旬以降はポツポツとアタる程度となり、次第にブリ族に占拠されるようになると、ヒラマサボーズも続出していた。
と書くと、「急潮流が原因なのか?」と、思うかも知れないが、瀬に入って来るヒラマサの量が多ければ群集心理?が働いて、先を争って喰ってくるハズだ。例を挙げると一昨年に75cm級が大量に入った玄達瀬では、まさしくその状態で、急潮の上層でバンバンとアタリが取れていた。
よって、今年の経ヶ岬~玄達瀬は「回遊量が少ない中、急潮が差してしまった。」というのが、失速の原因だとボクは思っている。
■ヒラマサの捕食傾向■
「ヒラマサは縦方向への意識が強く、ブリ族は横方向への意識が強い。」と、ボクは考えている。
根周りに着く性格のヒラマサはそれに沿ってエサを捕食する傾向があるし、実際に掛けてやり取りをすると、執拗に下方向へと突っ込むが、ブリ族の殆どは横方向に走る。また、ヒラマサは条件が変わらなければ一度アタッた距離で次のアタリが拾える事も多いが、これはそこにヒラマサが付いている沈み根があるからだ。それまでアタリがあった距離よりも極端に短い距離で急にアタッてくるのは大概がブリ族で、これも横方向への移動が激しいからだが、もし仮に短い距離でアタッて来たのがヒラマサだったなら、そこには別の沈み根がある事が殆どだ。但し、これらは中マサ(70cmクラス)以上の話で、警戒心が薄くマキエサに群がり易い60cm以下のチビマサは違う傾向になる。
そういった捕食傾向のあるヒラマサだが、大型は警戒心が強いのか、周囲でライバルがエサを奪い合う等、状況に焦れた時は浮上するが、通常は沈み根の周囲かその手前の底層で上からこぼれ落ちてきたオキアミを悠然と小範囲に移動しながら拾っているように思う。実際に、この位置で掛けた大型の多くが一気に走るアタリではなく、ズルズルと出た後に急加速するアタリが多い事から裏付け出来るように思う。また、中間の75~85cmクラスは、サイズ的にも性質的にも中庸なので、ライバル数が増えると、チビマサのように上層に出て来る率が上がり、ライバル数が減ると底層中心でエサを拾うようになると思う。
■近頃の攻めパターン■
底層に沈んで簡単に浮上しない相手へサシエサを届けるには、通常の「昔ながらの越前方式」である「リールの回転は制御せずにフリーで流し、サシエサの盗られ具合で発泡ウキのサイズと個数で浮力調整する」だけでは太刀打ちできず、例えば今期の玄達瀬だと中盤以降に上層を占めていたブリ族のアタリばかりを取る羽目になる。
そんなブリ族ばかり、あるいはヒラマサであっても、玄達瀬では80cmクラス、白石グリでは70cmクラスばかりで大型が出そうにないと判断すると、ボクの場合は以下のようにアプローチ法を変えている。
例えば150mでブリ族ばかりがアタって来る時のアプローチが、「初めの送り出しが20m、発砲ウキ8番を1個装着した仕掛をフリーで流している」だとしよう。「そのまま続けても結果は同じ」と、判断すると、ボクの場合は、ウキの番手を7番に落とし、初めの送り出しを40m、ラインを130mまでフリーで出した後に30秒の停止を入れ、そこからリールのメカニカルブレーキをそれまでの2/3程度でスプールが回転するように絞って、リール前に糸フケが出ないよう、確認しながら流す事を試みると思う。
そしてそのままヒラマサのアタリが出れば大成功だが、アタリがない場合、160mまで流したらエサの盗られ具合を確認するために回収する。そこでサシエサが残っていれば停止の後、メカニカルブレーキを絞らずに流す。そしてそれでも残ったら発砲ウキを外して同じパターンで流し、それでも残れば送り出しの量を10mずつ増やしてみるだろう。
逆に最初のアプローチでエサが盗られたら、送り出しの量を30mに減らして停止の位置を10m手前の120mにする。それでもエサが盗られるなら更に送り出しの量を10m減らし、停止位置を10mずつ手前にと、アタリが出るか、エサが時折残るようになるまで縮めてゆく。
今年の玄達瀬では「これはデカい!」と思ったアタリのほとんどをこのようなパターンで取っている。ただし、海底や根際でアタる確率が高まるので、根ズレでバラす率も増えて来るのが難点だ。案の定だが、恥ずかしながらこれで「らしき魚」のアタリを5回も取ったのに、全てをバラシてしまった。
上のパターンでヒラマサのアタリが出なければ、逆の奥側を攻める事になるが、ボクの場合は、そう感じたらブリ族のアタリが出ているセッティングのままで100m辺りで30秒の止めを入れてメカニカルブレーキを絞り、以後30m単位で10mの巻き戻しを入れて160mからは完全フリーで流す方法か、ワザと発砲ウキの浮力を上げてブリ族のタナを通過させる方法を選択すると思うが、上潮の影響をモロに受ける分だけ手前を攻めるパターンより難易度が上がる。
尚、現代の完全フカセでは「糸フケを取る事は必須」とボクは考えている。初期段階での糸フケを取るには、停止して取る方法と巻き戻して取る方法の2パターンがあるが、ボクの場合は潮流が速い場合は停止優先、緩い場合は巻き戻し優先で行う。但し、その日のひらめきや状況判断でそれぞれを複合的に使う事も多々ある。それら全てを文章には起こせないので、曖昧な言い方になるが「そこは個人の経験則で」と言うしかない。
「止めたり、引き戻したり」と言うと、「マキエサと同調しなくなるのでは?」と思う人も居るだろうが、「同調させるのは最初っから不可能に近い。」と言っておく。と言うのも、ラインが1.5号、ハリスが1.5号程度の磯のグレ釣りであっても余程の神経を使わなければ、たった20m程度離れただけでサシエサとマキエサを同調させる事は難しくなる。これは、その昔の釣りサンデーでも水中写真で確認していたが、紛れもない事実だ。
従って、より抵抗のある6~10号ラインを使用し、複数のハリを引きずりながら50~300mも流すという、船からの完全フカセ釣りでは同調なんて狙って出来っこないワケで、実際には「何度も打ち分けたマキエサ溜りのどれかに偶然に入り込む」以外は、「マキエサが流れ込んでくる筋の中を仕掛が通過している」、もしくは「根の手前のどこかにマキエサが滞留する位置があって、そこに仕掛が差し掛かる」だけに過ぎないのだ。だから、安心して止めや引き戻しを活用して欲しい。
ここまで、解り辛い文章で長々と説明したが、何となくでもイメージしてもらえただろうか?。ボクのブログをよく読んでもらうと解るが、大量の40~60mといった送り出しや、途中での停止や巻き戻しを頻繁に行うのは、普通の位置に浮きそうにないヒラマサをほじくり出すように狙うための手段なのだ。ついてはこれらが皆さんへのヒントになれば幸いだ。