■待ちに待った出漁■
今秋は、日本海方面の経ヶ岬~若狭湾周辺と福井県沖に、途切れて久しかった中型のヒラマサが回遊していた。船釣りの対象魚の中ではヒラマサが一番好きなボクとしては、釣りたくてウズウズしていたのだが、如何せん、先週もこのブログで触れていたように、荒天続きでどうにもならず、たて釣りで狙おうとした中秋までと、完全フカセで狙おうとしたそれ以降を合わせると、この方面での釣りが8回も飛んでいたのだ。こんなことは、長い釣り人生では経験したことの無い出来事である。
基本的に遊び?の我々であれば「残念!」で済むが、長引く不景気のあおりを受けてか、以前にお世話になった船頭さんの中でも、廃業する人がチラホラと居るだけに、かき入れ時に売り上げのないことを考えると気の毒でならない。
そんな心配をする中、ようやく福井県鷹巣沖への出漁機会がやってきた。それも前日はアウト、そして翌日もアウトという、ボクにしては奇跡のタイミングだった。しかし、こんな好機が素直にボクの前にやって来るハズもないから、「天候面で運を使い果たしてしまって、沖で潮が動かなかったらどうしようか…」と、つい心配をしてしまう。そんなことを思い浮かべながら福井県へと車を走らせた。
乗船するのは近頃鷹巣沖でお世話になることが多くなった、晴海丸さんだ。乗船場のある福井新港の朝は、前日までの北西の季節風が収まり、その結果、放射冷却が起こって、寒いこと寒いこと。逆に水温の下がりは気温に対して遅れるため、その差から水蒸気が湯気のように沸き上がる、幻想的な「けあらし(気嵐もしくは毛嵐と書く)」の中、晴海丸は定刻通りに福井新港を後にした。
●湯だっているかのような、海●
■いきなりのヒラマサ■
15分ほどの航海でポイントに到着。アンカーが入って船の振れが落ち着いたあとにマキエサのオキアミを撒いてみると、イヤな予感通りにほとんど潮が動かず、真下の方向に落ちてゆくいわゆる「ドボン潮」の状態だった。
だが、晴海丸の船長は、「こんな潮でも不思議と食うんですよ。」と、余裕の表情だった。水深は50mほどの場所だったのだが、完全フカセ仕掛のためにリールを逆転させて出している道糸が水深分まで流れるのに15分近く掛かるという、超スロー潮の中、何と兄のタックルに一投目からヒットがあって、兄の竿が大きく曲がっていった。
●開始1投目から、曲がる竿●
船際まで来た後の強烈な締め込みから中型のヒラマサだと予想したが、その通りの魚を兄は無事にゲットする。
続いて超スローに流れていたボクの仕掛も、これまた一投目に魚をキャッチしたのだが、コイツはハマチとも呼べないようなサイズの、ブリの幼魚だったためにガックリと肩を落とす。
この様子から夏場に差をつけられた「玄達での出来事」を思い出して、恐々としていたが、次の流しでは嬉しいことにボクのリールからフルスピードで糸が引き出されていった。
●嬉しい本命らしき魚との対決●
締め込み具合から、これまた中型のヒラマサと判断したが、腰が浮かされるほどの引きではない。そして無事に取り込んだのは、70cm級のヒラマサだった。
●待望のヒラマサをゲット!●
■絶好調!■
続いてまたもやボクのリールが逆転した。完全フカセ釣りをしていて、アタリ=リールの急速逆転があった際、ボクの場合は通常であれば「もしも」のリール破損防止のために指でスプールを押さえてからクラッチを入れる手順を踏む。この時、押さえる指から滑っていこうとするラインの抵抗感で魚の大きさをを感じることができるのだが、今回はその時点でどこか様子が変だった。
実際にやり取りを始めると、魚が付いていることは間違いのないところだが、引きがやたらに重々しくて、スピードがそんなに無い。
●重々しい引き●
船際まで寄せた後、水中を確認するとビックリ!。二本のハリにそれぞれ掛かる、ヒラマサのダブルだったのだ。
「ダブル」と言えば、経験のない人が想像すると、「物凄く引く」と思うかも知れないが、実は二匹の魚が牽制し合うのか、互いの引きが相殺されて、この日のように「重いだけ」という結果になることも多いのだ。
●人生初!ヒラマサのダブル●
長いこと釣りをしていてヒラマサのダブルは初めての経験であったが、その後もヒラマサは食い続き、結局最初のポイントではボクが6本、兄が3本という釣果を得た。
食った時間は朝マヅメの時合いが終わる2時間ほどの間であって、その中で仕掛が流せたのは8回であったから、小型ならいざ知らず、中型のヒラマサがこれだけ連続で食ったのも初めてに近い経験だった。
しかし、この釣果はボク達の実力ではなく、船長判断の正しさに起因する。だから、ただただそれに驚くばかりであった。
しばらく経つと、時合いが過ぎたことが明らかとなって、やがて全くアタリが出なくなってしまった。そして、それを受けて晴海丸は次なるポイントを目指して移動を開始した。
●ポイントを求めて移動する、晴海丸のコックピット●
~その2に続く