■待ちに待った解禁■
ようやくこの季節がやってきた。福井県沖にある、玄達瀬を舞台に2ヶ月間の戦いが始まった。
今回、乗船したのは越前フィッシングセンター(℡0776-22-1095)が斡旋する、SAKAE丸さん。ここは、以前にも紹介したが、僕が今から18年(ほど?)前に初めての玄達瀬チャレンジをサポートしてもらった船だ。
■実釣開始からの前半戦■
約1時間の航海で現地に到着。さっそく準備タックルのセッティングを開始した。
アンカリング後、マキエサを入れてみると、潮流は上潮が玄達にしてはやや緩めで、中~深部がやや速くなるという潮なので、表面上は釣り易そうではあった。
早速、セッティングを始めるが、道糸=10号、ハリス=12号&メジ・カツオ14号バリという、巨マサ狙いタックルのため、通常の設定よりも沈みが速いことを考慮して、発泡ウキは8番+7番を装着した。
期待を込めて流し始めたが、緩い上潮に対して横から吹く風がやや強く、その強弱で船位が左右に大きくブレていた。数投する中、流しが安定せず、エサシサの盗られ具合も安定しないため、タナ決めが難しいが、発泡ウキ8番+8番+6番では残るようになったので、8番+8番にして様子を伺っていた。
あれこれ探るうち、船位と道糸が一直線になった流しで初アタリ。しかし10数m巻き上げた時点で、ハリが外れてしまった。
「バレたのは小マサかマダイ程度の引きだったから、まだアタリは続くさ。」と甘く考えていたが、以後はエサシサが盗られるばかりで行き詰っていった。そうこうするうちに、隣の釣り座では70cm台後半のヒラマサをゲットしていたが…。
しばしの沈黙の後、エサの残り具合から、「そろそろ大型が…。」との野生の勘?がボクに沸き始めたが、意に反して、ここでリールが不調に陥る。これで3年連続のトラブルだ。「恐らくグリスが古く、固着しているからだろう。」と、船長がパーツクリーナーを吹き付けてくれた。すると回転が復調したが、何とそのタイミングで、「ブーンッ!」とリールがうなりを上げて逆転を開始したのだ。
アタリが出たのは180mライン。いつものように、スプールを指で押さえ、クラッチをオンにする。そこからアワセを入れて巻上げを開始したが、一瞬の重みを感じた直後に生命感が伝わらなくなった。
しばし、呆然としたが、回収した仕掛を確認すると、ハリハズレではなく、ハリスが短い範囲で根ズレを起こしてブツリと切れていた。しかも、発泡ウキのずり上がりを防ぐために入れていたウキ止め糸とゴムが10m以上もズリ上がっていたのだ。
その様子から、特大クラスが沈み瀬の向こう側で食って、一気に走った感があったが、やり取りする間も無く12号のハリスを切って行くパワーを、今更ながら思い知らされてしまった。しかし、このパターンのバラシは本人の努力の埒外にあるため、「単に不運だったとしか言いようがない。」と、言い訳をしておこう。
■中盤戦■
その後も船位は安定せず、流す角度がコロコロ変わっていた。上述したように何度か発泡ウキの浮力を調整してエサ盗りをかわそうとしていたが、午前10を前にした頃、8番+8番+6番のセッティングで船尾から一直線に流れた仕掛を回収すると、サシエサが残ってくるようになった。
「もしかして?」との思いから、6番を外して8番+8番にセッティングを変更してみることにした。そしてその流しが140mに差し掛かった頃に、例の「ブーンッ!」が始まったのだ。
アワセを入れた瞬間の「ドスンッ!」とした大型特有の衝撃感と、自らの予感が当たった気持ち良さが相乗してアドレナリンが出まくったが、それに昇天している場合ではなかった。
フルドラグに近い状態、しかも750番という、大型リールをもってしても、デカマサ相手では電動巻き上げはあまりあてにはならないため、道糸を手で掴んでリール側に送り込む=糸抜きを使って、どうにか相手の頭をこっちに向かせる作戦に打って出た。
これが成功したようで、徐々に電動の巻上げに魚がついてくるようになった。しかも、「ズンズン」といった重い衝撃を伴う抵抗感はあるものの、残る距離が100~70mにかけての様子はあまりに素直で「ホンマにヒラマサかいな?。」と思わせるモノだった。
しかし、それはボクを油断させただけに過ぎなかった。足下の水深である65mを切る頃になると、豹変し、牙をむき始めたのだ。
この頃になると、相手との距離が縮まって、道糸の衝撃吸収性も落ちてくるため、徐々にリールのドラグを緩めてゆくのだが、そうすると、15m近くも走られてしまう。そして、それが数度続いた。
そこで、「いつもの8号ハリス感覚ではだめだ。」、「ここが中間の勝負どころだから、12号ハリスの強度を頼みにもっと強気で攻めなくては…。」と、自身に言い聞かせながら次なる作戦を展開する。ここでギヤをパワー側に切り替え、緩め気味だったドラグを、様子を伺いながら少しずつ締めてみることにした。すると、これが当たって何とか40mまでに詰め寄ることができた。
船下の、一応は安全圏まで引き寄せたものの、この辺りからは、更に距離が縮まった分だけ、余計にドラグを緩めなくてはならない区間に差し掛かる。しかも、最後の玉入れで暴れないようにするために、できる限り相手を弱らせることが重要になってくる。
そのうえ、「道糸やハリスが根ズレしていたら、無理すると切れてしまう…。」という、心配事が浮かんでくるから、余計に慎重にならざるを得なかった。
しかし、単にドラグを緩めるだけでは、「電動巻上げと、ドラグ力、それに魚のパワーのバランスが合っていないため」に、簡単に10m近く走られてしまった。
「これでは距離を詰められない。」と判断して、更なる作戦を実行することにした。
まずは「走られても10m程度だろうから、底根までは届かない。」と、こちらが有利であることを自身に言い聞かせることで、「ドラグは緩めにしたままでも、大丈夫。」と判断した。しかし、このセッティングでは、電動巻上げは滑って意味が無いので、アクセルレバーを戻して巻き上げは手巻きとした。
この時のドラグ設定は、竿を倒しながら右手を高速で回すとギリギリ巻き取れる程度まで緩めていたが、これだと普通の、一定の角度で竿を保持する方法では道糸は巻き取れない。
実はこれ、その昔にストッパー無しの、太鼓リールでやっていた頃の、チヌ釣りでのやり取りの際と同じ要領で巻き取れば良いのだ。
この方法では、まず、相手の走りに対しては、右手親指の抵抗を微調整しながら道糸を送り込むことで対処する。やがて走りが緩むと、完全にスプールを押さえて道糸が出ない状態にしながら竿を持ち上げ、次いで下げながら巻き取る=ポンピングで距離を詰めてゆくのだ。
この辺りの用心深さは、昨年4月に、わずか5m先で大マサをバラした苦い経験を糧とした結果だが、この作戦もウマくハマッた。だが、36mまで巻き上げるのが限界で、そこから45mまで一気に走られてしまう。これが何度もあって、40m付近を挟んでの膠着状態が続く、と言うか、あまりにそこから動かないため、船長から「何かに引っ掛かってるのかな?。」との声が上がるほどだった。
それらの繰り返しが10回近くあった後だろうか?。こちらの体力と50肩で痛めている左腕が限界に達しそうな頃だったが、この辺りでようやく相手の泳力が尽きて、「ただ重いだけ」の感覚のみがタックルを通して伝わるようになった。
ここまでのやり取りに、あまりに時間が掛かりすぎたため、今度はハリ穴が広がることによるハリハズレが心配になったので、「ここからは、やや大胆に距離を詰めてやろう。」と、どんどん距離を詰めてゆく。
そして発泡ウキが見える頃、その姿がチラリと見えたが、既にバランスを崩して横向きに泳ぐようになっていた。その様子から「もう大丈夫。」と判断し、一気に浮かせることを決意した。
発泡ウキが穂先の直前に来るまでに、アタリが出てから時間にして20分は経過していただろうか?。私が、もしもの疾走に備えてリールのクラッチをオフにしてスプールを親指で押さえ、竿を前に突き出した状態で身構える中、船長が手でハリスを手繰る。そして、次の瞬間には同船者が構える玉網にデカマサは吸い込まれていった。
デッキに横たわるのは、圧巻でありながらも優美な、ボク自身2本目の110cmオーバーである114cmのデカマサだった。彼女(メスだったため)は、自己記録である、’14年の118cmに次ぐサイズでありながら、今までの釣り人生で獲った魚の中では、一番へこたれない=タフな引き味の持ち主だった。
■後半戦■
デカマサの後は「更なるサイズ・アップを」と、気合を入れ続けたが、意に反してそれに応えてくれる魚は、アタリが無いままに付いていた、65cmほどの小マサ以外に無かった。
何も答えが得られないまま、時間の経過していったが、それと共に上潮が緩んでいったために、船位のブレが更に大きくなっていった。
こうなると、サシエサが残って帰ってきても「ポイントからズレたため」なのか、「エサ盗りが消えたから」なのかが判らなくなり、タナ決めの効率が大幅に悪化するので、状況を見かねた船長が移動を決意するに至った。
次なるポイントは、先ほど攻めていたポイントからさほど遠くない位置だった。しかし、ここでも状況の悪化は止まらず、とうとう船首方向に潮が流れる“アンカー潮”となった。完全フカセ釣りでは、この潮になると高確率でアンカーロープに仕掛けが掛かるので、最悪の状況となる。
この状況への対処として船長が船の胴部からアンカーロープを出し直したことで、何とか仕掛を流せるようにはなったが、「足元にロープがあるので、大型が掛かっても獲れないだろう。」と、心配しながらの流しを続いた。
だが、その必要は無かった。デカマサから6時間近く経ってようやく得た、この日最後のアタリも、
玄達瀬ではレギュラーサイズの、65cm級マダイからのモノだった。
そして最後の流しでは、絡みを防ぐために同船者3人が一斉に投入したのだが、右隣で70cmクラスのマダイが出たものの、ボクに何もナシで、この日の釣りが終わった。
■今シーズンの展望■
今シーズは出足好調で、すでに130cmが1本と、124cmが1本出ている。当日得た感触と、各船のH.P.を覗き見た結果から言えば、こと大型狙い(玄達瀬に来て数釣りがしたい人は少ないと思うが)では、絶好調だった2014年に次ぐ好調さに思える。
具体的に言えば、例年であれば、普通に頑張れば手の届くサイズが、95cmほどだとすれば、今年はそのサイズが5~10cmほど大きいように感じられるのだ。ということは、メーターオーバーを目指す釣り人にとっては、大きなチャンスの年なのかもしれない。で、あるから、ここを目指す人は普段より気合を入れ、太ハリスで臨んで欲しい。
かく言うボクも、残りのシーズンで、最終目標である130cm級のゲットを目指して最大限の努力を重ねるつもりだ。