白石グリでは遅れていたヒラマサが釣れ始めたようだが、釣行しようにも季節はずれの寒の戻りがあってアウト。そこで今回は、ボクを含む誰もが失敗しがちな、ヒラマサが掛かった後のやり取りについて記してみようと思う。
■異釣種からの知恵■
小学校生の頃から始まるボクの釣り人生中、最も時間を割いて情熱を注いだのは磯のグレ釣りであり、今でも「最も奥の深い釣り」だと思っている。そんな釣りだから初級から中級の壁を越えるのは大変だった。
アタリのあった場所から、釣り人側に有利な深い部分に魚を寄せてくる船釣りとは違って、この釣りでは、異変を感じると根や海溝にツッ込んでゆく習性があるグレを相手に、「2号でも太い(口太グレ狙いの場合)」と言われるハリスを用いて浅い水深側に寄せる必要があるため、釣り人は常に不利な状況下に置かれるのだ。
その上、足下から根が張り出している事もある状況下で、片手で竿を保持したまま、残る手で持つ玉網に誘導してフィニッシュして“一人前”とされるため、最後の最後まで気が抜けない。言わば完全自己完結型の釣りなのだ。
そのため、竿やリールの操作等を間違えると、相手が良型と言われる40cm以上のサイズであれば、根ズレを起こして飛んでしまう確率が高くなる。
ボクが開眼出来たのは当時健在だった釣りサンデーという週刊誌から別冊として出版され、その後を引き継いだ内外出版社から今も発刊されている、「磯釣りスペシャル」という、雑誌のおかげだった。そこに記された内容をどうにか理解し、実践出来るようになると共に自己記録が伸び、釣果も安定していった。
記事を振り返ると、「①道糸を出し過ぎる事」、「②竿と道糸の角度が保持出来ない事」がグレをバラす主な原因だったが、①と②は、実はリンクしている。
グレ釣りでは一般的にレバーブレーキ付きのスピニングリールを使うが、このリールは大型魚が掛かって「持ちこたえられない」となるとレバーを開放してフリーにする事でハリス切れを防ぐという、言わばオン&オフのデジタル的操作でやり取りする点が普通のドラグ付きリールと大きく違う。
しかし、このリールは、慣れない内は良型クラスの引きにこちらがビビッて、つい道糸を出しすぎ、その隙をグレに衝かれると走りを止められなくなって、最終的に、根に張り付かれてアウトになる確率が高まるのだ。
これを防ぐには必要最小限に道糸を出す事につきる。そのためには②の、竿と道糸の角度が重要で、「グレの方に竿尻を向けるくらいの気持ちで竿を絞り込め。」と、よく記されていたものだ。
実際に、そこまでの角度を保つのは難しいが、要はその意識を持って竿を曲げ込んでやるという事だ。竿の反発力が最大限に生かされるのは、「竿と道糸が90度よりもやや鋭角なった頃」と言われるが、その角度を保ちつつ相手にプレッシャーを掛け続け、「相手のパワーが上回って竿が伸されればブレーキを開放しつつ、竿を起こして角度を作り直してやる」という操作が必須になる。その際、魚全般に引っ張られる方向とは逆に走る習性があるので竿は上方に立てず、横方向に弧を描くようにしてやると尚良い。
グレを引き寄せる際、前後方向へ大きなストロークのポンピングは道糸が緩んだ際に走られる可能性があるので、名手&名人と言われる人が、それを使っているのを見た事が無い。釣り人それぞれにスタイルはいろいろとあるが、ボクの場合は竿の角度をあまり変えずに竿の反発力にグレが負けて緩んだ分だけ道糸を巻き取るイメージで距離を詰めていた。
ただし、この操作も中間距離までで、足下近くまで引き寄せる頃になるとそんな角度では手前に張り出すハエ根に擦れてしまう事がある。上述したように、引っ張られる方向とは逆に走る習性があるから、焦って早く上層に引き上げようとするのは逆効果になるのだ。
「磯際まで来ると、どうすれば良いのか?」だが、斜め上方に突き上げるイメージで竿を保持して道糸との角度が90度よりやや鋭角気味にしてやる事だ。そうすると行き場を失ったグレは磯際を左右に走る事になるので、今度は習性を逆利用して、魚の走る方向に竿を振りながらリールに道糸を巻き込み、グレの鼻先を持ち上げてやるのだ。そうなると今度はグレは反転して逆方向に走るので、今度は逆の操作をすれば良い。それを繰り返すと、楕円の螺旋階段を上るようにグレが浮上してくるイメージだ。
■ヒラマサの、ファーストランへの転用■
魚が掛かる位置が遠い事が多く、パワーも桁違いなので、全く同じには出来ないが、グレ釣りでの経験は根や海溝に突っ込まれての根ズレが多発するという、似た習性のあるヒラマサを釣る(完全フカセ釣り)際においても役立った。(上段で長々と書いたのはそのため)
以下はボクがアタリが出た際にとる、ヒラマサのファーストランへの対処だが、順に記すと次のようになる。
①左手でスプールを押さえつつ、右手の親指でクラッチ・オン。
続いて右手でアクセル・レバーをフルスロットルにする。
②左手は竿のフォアグリップを握り、右手は竿受けの付近を握りつつクランプを外す。
③糸フケが取れたタイミングで両手で大アワセを入れる。(アクセル・レバーは全開のまま)
④出来うる限りの範囲で竿を立てて保持する。
⑤電動リールの巻き上げ具合を確認する。
⑥電動巻き上げが可能ならば、竿の角度を維持し続け、
巻き上げ不能なら、道糸を右手で掴んでリール側に送り込む。
⑦相手がこっちを向かず、竿の角度も保てなくなったら、
道糸から手を離して、締め気味に設定したドラグを効かせつつ道糸を出す。
「なぜ、そうするのか?」だが、上段のグレ釣りに当てはめると解り易い。要は竿と道糸の、角度の保持を重視し、ヒラマサが竿の反発力に負けた分だけ巻き取りたいからだ。しかし、残念だが近頃の船竿全般に胴まで曲がり過ぎる竿が多く“胴の張りで魚を起こす調子”になっていない。それを補うのが相手に対して常にプレッシャーが掛けられる電動リールの巻上げで、アワセる際に道糸のフケを高速で巻き取れる点も加えて武器になる。
ただし、相手がそこそこサイズ以上のヒラマサであると、大枚をはたいた電動リールであっても、ダイワ500番(シマノ3000番)、メーターを優に超える頃になると750番(シマノ6000番)であっても多くの場合でウンウン唸るだけで道糸の巻上げが出来ないのが現実だ。従って⑤は必須になるし、⑥の判断も素早くしないと、そのまま根や海溝に走られてアウトになる。
●ダイワ750MTの巻上げを停止させた、玄達の114cm('17初夏)●
踏ん張り切れず竿が伸されそうになると、⑦の操作をすれば良いのだが、その間に竿の角度の保持をし直すイメージで操作すれば、グレ釣りにおけるレバーブレーキ・リールの操作に似た状態が演出できるのだ。
因みにボクが“フリー回転性能が高い”という大きな利点のある、手巻きリールを優先使用しないのは、以前にも記したが、20年近く前の玄達瀬で下手なポンピングを繰り返して竿が伸され、大型を「入れ喰いさせた」ものの、ことごとく、「入れバラシさせた」ためだ。因みに左手で竿を保持しながら右手でリールをゴリ巻きすれば、同様の操作が出来ると思うが、「玄達瀬でメーターを余裕で越えるサイズのヒラマサを相手に、150m以上の距離を絶え間なく巻き続けるパワー」が今の自分の体から湧き出てくるとは思い難い。
また、「ヒラマサの方に竿尻を向ける“気持ち”」で竿の角度を保ちつつ、「巻き上げ状況の確認」を実現するには、上体をのけぞるほどにした状態で竿を立てなければならない。(ボクのように老眼の場合は特に…。)
乗合船での同船者やポイント周囲に集まる釣り人に魚が掛かれば、ボクはつい目を向けてしまうが、魚が遠くにありながらも竿の角度は海面から45度程度、あるいはそれ以下の人が多く、そんな姿を見ると「そんな角度やったら、竿要らんやん!」と、ツッ込みたくななるほどだ。原因は「早く魚の姿が見たい」という心理が働いて、つい海面に入る道糸の延長方向を注視してしまうからだ。それを防ぐには見えもしない魚を追うのではなく、竿の曲がり具合全体を水平線より上、もっと言えば空にかざして確認しようとすれば、自ずと良いポジショニングが出来るので、思い当たる人は意識して実践して欲しい。
また、大型~超大型が掛かってリールが巻けていない状況に本人が気付かず、慌てて駆けつけた船長が道糸を引き抜く場面や、逆に滑りっぱなしのドラグを操作してもらっている場面をよく見かけるので、電動リールの「ドラグを滑らせながら巻き取る」、「高負荷では巻上げを停止する」といった特性を常に意識しておくべきだ。
長いので、~その2へ続く。