● いま脳は最先端の研究テーマ。抗体の多様性の謎を解明してノーベル賞を受賞した利根川進さんも、記憶の再生のメカニズムの解明をはじめ脳科学の研究へとシフトした(『私の脳科学講義』岩波新書 なぜか岩波新書の表紙は、アップすると不鮮明になってしまう)。
脳の各領野がそれぞれどんな機能をもっているのか。脳の地図づくり、ブレイン・マッピングが進んでいる。利根川さんの奥さんは大学で脳科学を修めたサイエンスライターだが、彼女がブレイン・マッピングの第一人者の女性科学者(名前などは忘れてしまった)を取材したTV番組を以前みた。
ようやく読了した『脳は美をいかに感じるか』セミール・ゼキ/日本経済新聞社は、美術鑑賞と直接関係する視覚脳のメカニズムについて長年の研究成果に基づいて実証的に論じている。
脳は複雑なシステムだ。例えば抽象絵画の主要な構成要素である線、それも水平線、傾いた線、垂直線などの異なる線の視覚情報をいくつかの細胞が分担して読み取る。
特定の色を知覚する細胞、特定の形を知覚する細胞、動くものを知覚する細胞、それも例えば右から左へ動くものを知覚する細胞・・・。それらの情報を統合するのも脳。
脳損傷事例の研究、神経解剖学などによって次第に明らかにされていく知覚脳のメカニズム。
「美術作品を通じて視覚脳の仕組みが解き明かされる」と本の帯にある。25年以上にも亘って視覚脳の研究に携わってきた著者の知見が存分に披露されてるが、こちらの理解が及ばない・・・。
美術作品によって感情的に高揚するのも、もちろん脳内の事象によることは明らかだけれど、それがどのようなメカニズムによるものなのかは未だ明らかにされていないという。
まだまだ脳は謎に満ちている。