透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

乖離

2007-04-05 | A あれこれ


    信濃毎日新聞 070402

● 数日前の朝刊に建築家 坂茂さんが紹介されていた(写真)。坂さんが東京お台場の移動美術館の設計者であることについては既に書いた。

95年、阪神大震災で焼失した教会にペーパードーム(新聞の下の写真)を造った経験によって建築家としてのスタイルを確立した、と記事にある。坂さんはペーパードームを設計しただけなく、建設資金も自ら集めたという。

巻物の芯に使う紙管を柱に転用するというユニークなアイデアとテント地の屋根は移動美術館にも採用されている。

新聞に載っている坂さんのコメントは手厳しい。「コンピューターだけで設計した、とんでもない形の建築が増えている。表皮と構造が一致しない張りぼて。全く感動しない」

コンピューターを使うことで、建築設計が様々な拘束から解放されたことは事実だと思う。一致しなくなってしまったのは表皮と構造だけではない。人の感覚と意匠との乖離。コンピューターによって高度な構造解析、手描きでは到底出来ない形の表現が可能になって、感覚的にどうしても馴染めないデザインの建築が出現するようになった。

それはバーチャルな世界とリアルな世界の出会いの「負」の側面なのだろう・・・。