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「燃えつきた地図」を読む

2024-12-11 | A 読書日記

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『燃えつきた地図』安部公房(新潮文庫1980年発行、2022年38刷)を読んだ。

物語をよく理解できないまま読み終えてしまった。

ドナルド・キーンさんは解説文に**(前略)『燃えつきた地図』の場合、前提から出発する発展は合理的ではなく、むしろ、いつの間にかメービウスの曲面のように、表裏の区別のつかない形になったり、又はポジがネガになるような過程になったりする。(394,5頁)**と書いている。失踪した男とその男の調査を依頼された興信所の男の関係を言い表しているのだろうか・・・。失踪者を探す男が次第に自分を見失っていく・・・。

安部公房はこの物語でも人間の存在とは何か、人間が存在するということはどういうことなのか、という根源的な問いかけをしている(のだと思う)。



**こうして、上から見下ろしていると、人間が歩く動物だということがよく分かる。歩くというより、引力と闘いながら、内臓を入れた重い肉の袋を、せっせと運搬している感じだ。**(17頁)

安部公房はこういう捉え方、表現ができるから、独特の文学的世界を創り出すことができ、読者を惹き付けるのだろう。ぼくはそう思う。

今回も読書メモと割り切り、これで終りにする。


新潮文庫23冊 (戯曲作品は手元にない。再読した作品を赤色表示する。*印の作品は絶版)今年(2024年)中に読み終えるという計画で3月にスタートした安部公房作品再読。12月10日現在20冊読了。予定通り今月中に読了したい。あと3冊!

新潮文庫に収録されている安部公房作品( 発行順)

『他人の顔』1968年12月
『壁』1969年5月
『けものたちは故郷をめざす』1970年5月
『飢餓同盟』1970年9月
『第四間氷期』1970年11月

『水中都市・デンドロカカリヤ』1973年7月
『無関係な死・時の壁』1974年5月
『R62号の発明・鉛の卵』1974年8月
『石の眼』1975年1月*
『終りし道の標べに』1975年8月*

『人間そっくり』1976年4月
『夢の逃亡』1977年10月*
『燃えつきた地図』1980年1月
『砂の女』1981年2月
『箱男』1982年10月

『密会』1983年5月
『笑う月』1984年7月
『カーブの向う・ユープケッチャ』1988年12月*
『方舟さくら丸』1990年10月
『死に急ぐ鯨たち』1991年1月 ※1 

『カンガルー・ノート』1995年2月
『飛ぶ男』2024年3月
『(霊媒の話より)題未定 安部公房初期短編集』2024年4月


※1 『死に急ぐ鯨たち』は「もぐら日記」を加えて2024年8月に復刊された。


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