575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

枇杷の花               草女

2006年12月25日 | Weblog
  そしてまたいつものあなた枇杷の花      遅足

 枇杷の花がいい。枇杷の花だからこそ幾星霜を経て、今は穏やかに、しかも凛として年の暮れを迎えている夫婦の姿が浮かんでくる。
 花は11月から翌年の1月にかけて、直径1㎝、花弁五枚の白色。それが長さ
10~20cmの円錐の花序(花の集合体)を作る。そして寒さ対策なのだろう花序の内外に褐色の綿毛を密生させる。そして寒中に芳香を放ち、虫を誘い受粉する。この時期、虫にとっても貴重な食料となる。
 ところで枇杷はバラ科ビワ属。中国と日本が原産地だが、現在食べられている物は江戸時代に中国から伝わった物。
 枇杷はもう一つ薬草としての顔を持つ。「本草和名」という昔の本に「比波」と記され正倉院の御物の中にも薬草として残されている。薬効は利尿・健胃・清涼剤
に利用され、風呂に入れると肌を滑らかにするという。
 枇杷の花の句は、冬咲く地味な様子から淋しいものが多い。

 枇杷咲いて長き留守なる館かな       松本たかし
 病む妻に嘘いくつ言ふ枇杷の花       能村登四郎
 たそがれや匂となって枇杷の花       神埼  忠
  
コメント (4)
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