★「記念日俳句」というHPがあります。
http://www7.ocn.ne.jp/~haisato/kinenbi-home.htm
日本記念日協会と里俳句会が共催で立ち上げているHPです。365日記念日の無い日は無いのですが、その記念日に合わせたお題で俳句の応募を募り載せています。応募の作品はそれぞれ個性的な秀句揃いです。そして、選者が鋭くも温かい講評を載せていて楽しいHPです。
今回はその中から、十二月八日の終戦記念日の句会の様子を紹介させていただきます。
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12.8:太平洋戦争開戦記念日 寒蝉選
Date: 2005年12月08日 (木)
【天】
太平洋戦争開戦記念日梵鐘の流離譚 青榧
【地】
文箱冠水す太平洋戦争開戦記念日 中村安伸
【人】
太平洋戦争開戦記念日 謝らぬ子を押し入れに ほにゃらか
【佳作】
太平洋戦争開戦記念日滅法からす鳴き 紅椿
消しゴムで消えぬペン文字太平洋戦争開戦記念日 きみえ
太平洋戦争開戦記念日馬鹿と云ふ字の難しき 百花
パールのピアス太平洋戦争開戦記念日 まなぶ
幾万の母へ太平洋戦争開戦記念日 園を
太平洋戦争開戦記念日日米対抗餃子早喰競争 流鬢力
彼の名もジョンといった太平洋開戦記念日 雪うさぎ
【選評】
天の句は戦争を真正面から批判するのでなく、梵鐘たちの流離譚を思い起こさせることによって却って反省を促す効果がある。梵鐘や銅像は供出されて軍艦や飛行機になり、例えば大和のように轟沈し海の藻屑となったり、例えば長門のように武装解除された後水爆実験で沈められたり・・・。
地の句のシュールな光景もまた先の戦争への痛烈な批判となっている。文箱は日本の伝統的な文化を象徴すると見た。それが冠水するとは勿論軍艦の沈没するイメージを重ねながらアメリカ文化に染まって失われていく日本の文化の状況を言っているとも取れる。いやそのような戦後の状況と取らなくても戦争が起こることによって文化の被る軍部からの圧迫(例えば新興俳句の弾圧など)を指しているのかもしれない。実に深い句だ。
人の句は誰にも覚えのある幼い頃叱られた思い出に戦争で負けたわが国の状態を喩えている。押入れに押し込めようとしているのはアメリカとも取れるし「謝らぬ子を」という表現からは中国とも。いずれにせよ先の戦争は子供が親に反抗するような無謀なものだったとの見方。
佳作。「滅法」からすが鳴くとは不吉な、つまりは戦争を忌避する姿勢。「消しゴム」は拭い去りたい愚かな戦争の記憶、でも消えはしないし忘れてはならない。「馬鹿と」云う字は別に難しくもない、しかし馬鹿には自分が見えないから難しいだろうなあと、先の戦争を引き起こした馬鹿な人達への批判。「パールのピアス」は勿論真珠湾のイメージ、戦争と平和。「幾万の母へ」は流石に女性らしい思い、戦争で辛い目をするのは戦う男達ばかりではない。「日米対抗」のあほらしさ、でも戦争はもっとあほらしいのだとの穏やかな批判、このくらいの対抗戦なら人も死なず金もかからぬのに。「彼の名も」は戦争で殺されたり殺したりした何千ものジョンと、後に歌を通して戦争を批判する活動を続け凶弾に倒れたジョン・レノンという同じ名の男との対比。選外だが「太平洋戦争開戦記念日トラ三匹放つ(淡々)」の駄洒落の馬鹿馬鹿しさ。
【選者詠】
太平洋戦争開戦記念日草鞋のやうなステーキ食ふ 寒蝉