三田 完さんの最近作です。
物語は、昭和十年。東京・日暮里の暮愁先生の句会に
集う三人の麗人の紹介から始まります。
女子医専(現在の東京女子医大)を卒業し満洲・大連へ赴任する壽子(ひさこ)、
新進の科学者と結婚して身籠るも流産、失意の日々を送るちゑ、
歌舞伎界の大立者・六代目菊五郎の妾となった浅草芸者の松太郎。
この日の席題は、引鶴と霞。
投句は各一句、一時間後が締め切り、というルール。
引鶴やふたたびの日はおもふまじ
大連に渡る気持ちを詠んだ壽子の句が最高点。
お話の主人公は、俳句を詠む三人の若き女性ということで、
俳風三麗花と名づけられた三人。
六代目のほか、満州国の愛親覚羅溥儀陛下、甘粕大尉や、
川島芳子、永井荷風なども登場。
東京と大連を舞台に、2・26事件から敗戦という
激動の時代が描かれています。
章立てが、柳絮・草の花・春泥など季語。
各章に句会が開かれて、お話の進行に重要な役割を果たしています。
星祭という章では、この季語を題詠に溥儀陛下の前で
句会が行われます。
ここで溥儀陛下が選んだ句は壽子がつくった句
水の帯まじはりゆかし星祭
俳句好きの私には楽しめる本でした。秋の夜長の一冊にどうぞ。