575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

黄昏や稜線に月夕星と  泉

2022年11月10日 | Weblog

 一昨日夜の442年ぶりの皆既月食と惑星食のダブルの天体ショー。多くの方が夜空を見上げました。徐々に月が欠けていき、やがて赤銅色になった立体感あふれる皆既月食に魅了されたことでしょう。そして肉眼では見えなかったけれど小さな小さな天王星食。こちらはネットのライブ映像で鑑賞。宇宙の壮大さと不思議さを堪能しました。ちなみに信長の時代に起きた1580年の惑星食は土星だったのですね。今回の天王星食は記録をたどれる4000年間では一度もないそうで、その意味でも貴重な天体ショーでした。

次に日本で皆既月食と惑星食が見られるのは325年後とか。今生きている私たちはだれもこの世にはいないけれど、月や惑星はその道をたがえず周り続けるのですね。天王星の公転周期は84年だそうでうす。遠いはずです。325年後の人たちもまたダブルの天体ショーを見る時、同じように「前回は2022年の11月8日でした。」という情報を見聞きするのでしょう。

さて、泉さんのこの黄昏時の空。夕方西の空に輝く明るい金星。宵の明星のことを夕星(ゆうずつ、ゆうづつ)というそうです。稜線に月も出ていて思わず見とれてしまう美しさを俳句にされました。作者の故郷、綾部ではなおさらはっきりと見えることでしょう。

万葉集に「夕月も通う天道(あまぢ)をいつまでか仰ぎて待たむ月人をとこ」という歌があります。万葉時代の人も同じように夜空を眺めて思いにふけったのですね。

   吊り尾根の壁屹立す星月夜   能登

こちらは山での星月夜です。圧倒的な星の数なのでしょう。

竹葉さん:穂高連峰の写真を見てる感じがしました。

晴代さん:こうゆう場所で星月夜を見たい。

亜子さん:「吊り尾根」という言葉に初めて出会ったが、危険な断崖絶壁が屹立している様子が想像できる。「星月夜」という言葉で美しくも厳しい非日常の世界に心魅かれた。

 

作者の能登さんに句の背景をお聞きしました。

「吊り尾根とは、前穂高岳と奥穂高岳を繋ぐ細い痩せ尾根のことです。上高地河童橋から見ると、両峰から尾根が吊るされて岩の壁のようです。星月夜の条件下では、その壁が覆いかぶさってくるような圧迫感があります。今から40年ほど前、この場所で越冬取材をしたことがあり、その時の実体験です。随分古い記憶ですが、それ以来、それに勝る星月夜は見ていません。」

カメラマンをしている能登さんならではの一句。人を寄せつけない厳しさもあるでしょうが、こんな夜空も見てみたいものです。

それにしても、いつの時代も人は夜空を見上げて祈り、月や星に何かを感じます。月食でなくても時々は一昨日のように夜空を見上げる時間を持ちたいものです。麗子

 

 

コメント (2)
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