来し方も行方も母の秋深し 遅足

９１歳の母が転倒して２週間ほどが経ちました。
どうも骨に異常はないらしいのですが、
だんだんに痛みが広がっていきました。
足の痛みをカバーするために腕に負担がかかり
今度は足も腕も・・・
ついにトイレに座れなくなってしまいました。

横になっていれば痛みはないのですが、
これでは寝たきり状態に。

ついに今日は入院に。
経験充分なので手続きなどは滞りなく。

再転倒は要注意！と何度も言われましたが、
やはり言われるだけのことはあります。
要注意でした。
注意していても、ちょっとした油断で転ぶのですね。
天使の悪戯でしょうかね？

病棟に行ったら顔見知りの看護士さんが
『来ましたね』と一言。

　　　

荻原教室の宿題が「秋深し」でしたので。

　　来し方も行方も母の秋深し　　遅

　　　


　

柘榴が嗤う 鳥野

バス通りに面した我が住まい界隈、花や木の変化で季節を知らされることは、極めて少ないのです。
その中で一軒、玄関先に柘榴を植え、その枝が舗道に張り出しているお宅があります。

夏には朱赤で肉厚な花を開き、今は無骨な実をたわわに付けています。
見上げては、季節を知らされ、もう何年が過ぎたことか。一向に衰えを見せない樹勢です。

よく見ると、なんと恐ろし気な実。真っ赤な種をぎっしり並べ、呵呵大笑の風情。
噛めば人肉の味と例えられているのも、なるほどです。

言い伝えによれば、鬼子母神に釈迦が与えた果物だとか。

自身は千人とも万人ともいう子を持ちながら、他人の子を攫って食うという悪行を重ねていたのを諌めて末子を隠し、悲しみを味わせて、替わりにと柘榴の実を贈ったという。
悔い改め、子安神となった鬼子母神に因んで、柘榴のまたの名を吉祥果といいます。

　　・　子を食うを改めしという鬼子母神　柘榴の歯列永久（とわ）に朱くて

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鳥野

白桃にいれし刃先の種を割る（橋本多佳子） 愚足

　この句の解釈や良さについてはさて置くとして。
　尊敬する山本健吉氏が、この句の技法について述べている。

「この句は動詞終止形で止めた、散文的な直所叙体である。
ことに誓子の即興的な非情の句には、よく調和した表現であった。
たとえば、「夏の河赤き鉄鎖のはし浸かる」のごときがある。
　この表現法は俳句的なイロニックな把握が弱く、悪くすると散文的な
説明調に流れやすいが、切れ字を濫用した大時代な月並み調になる恐れは
少ないわけで、誓子の句のような即物的なメカニックな対象把握には、　　　　　成功する場合が多い。」

誓子の句を並べてみた。

　夏草に気缶車の車輪来て止まる
　蟋蟀が深き地中を覗き込む
　麗しき春の七曜またはじまる
　秋の暮れ山脈いづこへか帰る
　雪の富士雪無き裾を長く曳く

成程と思った。そこで身の程知らずは鉛筆をなめたが・・・景が浮かばない！！

くちびるのごとく乾けるこころかな 遅足

母の介護で、３日ほど家を留守にすることが多く
ブログの書き込みが遅れました。
母は２回の骨折を克服、寝たきりにならずに
頑張ったのですが、最近油断から転んでしまいました。

だんだん足腰の痛みが強くなって病院へ。
整形の先生も原因がよく分からず痛みの対処のみ。
鎮痛剤の効果もあまりなく、イタイイタイを連発。
もう寝たきりは目の前です。

土日と祭日の３日間の看護日記

　一日目　同情
　二日目　ウェットからドライへ
　　　　　自分と母との間にある距離を認識
　三日目　腰痛が再発しそうに

いや話には聞いていましたが、看護は重労働です。

　　　　

虎落笛悪相跋扈ブラウン管 朱露

　　　モガリ笛は冬の風が垣根に当る音。
　　　今や殆ど死語になった哀れな季語。
　　　日本人の人相は確実に悪くなった。
　　　朝鏡の顔が日本人づらで嫌になる。