海上の森の大正池の横を歩いていて、鮮やかな橙色で小さい舟形のものがたくさん落ちているのに気づいた。まるでプラスチックのような感触で、中には舟形の中にしきりを持つのもある。花びらではなく、実を包んだなにかではないかと辺りを見てもなにもない。考えこんで立ち止まっていると、仲間が追いついてきて一緒にさがす。 その仲間が指差す方にツルウメモドキが、ぎっしり実をつけている。そして先ほどの橙色の皮を付けている。仮種皮である。そう、こいつが道から5,6m離れた池の近くまで風で飛ばされたらしい。生け花やリースなどで馴染み深いのに、この部分だけ見せられるとそれが何かさっぱりわからない。不思議なものだ。
ツルウメモドキはニシキギ科ツルウメモドキ属の落葉つる性木本。長さ数メートルになるが、芽生えて1,2メートルの間はまっぐに立ちのび、その後適当な木に巻きつく。実が美しいので庭に植えたいが、雌雄別種なので二本植えなければならぬのが難点。
とて、ツルウメモドキも葉がウメに似ているところから付けられた名前であるが、もう一つ葉がウメに似ているからウメモドキと名付けられている蔓でなくて木がある。こちらはモチノキ科モチノキ属でやはり雌木は直径5mmほどの赤い実をたわわに付ける。葉が落ちたあとも実が残りうつくしい。
ウメモドキとツルウメモドキ、全く違う種類なのにややこしい名前をつけたものだ。これも昔中国への憧れ、舶来の梅への憧れが強くてあれにもこれにも名づけられたのだろう。
蔓もどき情はもつれ易きかな 高濱虚子
蔓もどき枯れ木にからむ振る舞や 追川瑩風
滝音につるうめもどき紅を増す 窪田玲女