去年、急性白血病から奇跡的に現役に復帰し、「そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常」(徳間書店)を出版した、アルビレックス新潟の早川史哉選手。
このたび、大中祐二氏との共著で、「生きる、夢をかなえる 僕は白血病になったJリーガー」(ベースボールマガジン社)を出版した。
内容は、前著で早川選手自身が語っていたものが多いとはいえ、共著に大中氏が加わったために、独自の視点で彼の体験が広がりを見せている。
前著にはない、今季のキャンプやコロナ禍での彼の心身の保持の仕方などについても加わっている。
それは当然のこととして、それ以外に、彼にかかわって大切な役割を果たしてきた人たちへの大中氏のインタビューが、早川選手の闘病の様子や人間性について、深まりを持たせている。
骨髄バンク関係者、リハビリ担当者、ユース及びトップでの片渕監督、子ども時代からの憧れの野澤洋輔元選手らの話が、彼の体験にすごく重みを加えている。
そして、人間性については、水泳の池江璃花子選手の白血病発病のときに、同様の病気から復帰してきた早川選手が、どのように対応しどのようなコメントを出すか、悩んだ時のことが細かく書かれている。
その対応や出されたコメントには、もともと誠実で優しく、真摯な彼の人柄がよく出ている。
特に、周辺の人たちに求める気遣いの内容は、彼ならではのものがあった。
この本全体を通して、早川選手が、難病を克服して生きる希望を、Jリーガーとしての活躍に見出し、努力してきたこと、生きてきたことがよく伝わってきた。
そして、Jリーガーとして活躍するための努力は、今も、こだわりをもって続けている。
その彼を支えてきたものは、彼自身の強い思いのほか、彼を取り巻く多くの人々だった。
このことは、誰の人生にでも通じることなのではないかと思う。
自身の思いと人とのつながり。
人が生きていくには、このことが大切なのだと私自身も思う。
改めてその思いを強くさせてくれる1冊だ。
この時期になって、チームでの早川選手の存在価値は、さらに高まっている。
毎試合ベンチ入りしていることは、期待の表れだ。
試合を作る先発メンバーで起用されたり、試合を大きく動かすための交代メンバーとして起用されたりして、期待に応える貴重な働きをしている。
早川選手のJリーガーとしてのさらなる活躍と、彼の人生がさらに豊かなものとなるよう、心から祈る。