ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

充実の読後感 ~「希望の糸」(東野圭吾著;講談社)~

2023-12-08 21:42:40 | 読む

久しぶりに、すごく深みのある小説を読んだ。

そんな気がした。

図書館の返却されたばかりの本コーナーに、立ててあった本たちの中に、この本があった。

「東野圭吾かあ。最近は読んでいないなあ…。」

そう思って手に取ってみた。

普通の本なら、帯となっていた部分が表紙をめくったページに貼られてあるのだが、この本には、なぜか何も貼ってなかった。

どんな内容の本なのだろうと思って、ページをめくって見た。

すると、「プロローグ」から始まっていた。

「逢魔が時、という言葉がある。」

という文章から始まっていた。

その言葉は知っていたが、書き出しが「逢魔が時」からというのはいかにもミステリーだなと思った。

そして、もう1枚ページをめくって見ると、

「子供二人だけで、本当にあんなところまで行けるのか、(略)。あんなところ、というのは新潟県長岡市にある、怜子の実家だ。」

と、2ページ後に書いてあった。

新潟県が出てくるなら興味がある。

 

この「逢魔が時」「新潟県長岡市」に引かれた。

引かれたものがあるということは、読むに値する。

借りてみることにした。

 

読み終えた。

面白かった。

 

東野の小説によく出てくる加賀恭一郎の名前が出てきたところで、彼の名推理によって事件が解決する話なのだろうと思っていたら、まったく違っていた。

ストーリーは複雑さもあるし、ネタバレは避けたいので省略する。

 

お決まりのように殺人事件は起こるのだが、その犯人は、物語の意外と早いうちに判明する。

多くの登場人物が出てくるが、その犯人にも、被害者にも、取り巻く人物にも、主人公として活躍する刑事にも、深い事情があり、そこにスポットライトが当たりながら物語が進んでいく。

 

命の誕生、

血のつながり、

家族・親子の絆、

そして愛情。

…こんなことたちに、深い思いが至った。

 

時空を超えた「親子」ということについては、以前「時生」(ときお)という彼の小説を読んだときにも感銘が深かったが、その作品にはSF的な面があった。

この「希望の糸」という小説については、現代的なテーマを扱い、非常に現実味があった。

冒頭に書いた「新潟県長岡市」の登場は、2004年の中越地震とも関係していた。

そして、ひとひねりどころか、3ひねりも4ひねりもあるストーリーに深みがあり、感心した。

さすがだ。

東野圭吾は、単なるミステリー作家ではない。

そういえば、彼は、直木賞作家でもあった。

その重みを感じさせる1冊。

大満足。いい読書になった。

コメント
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