書店に行くと、今、どこの店にも見やすい場所に山積みされている。
それが、「続 窓ぎわのトットちゃん」。
42年前同様に、表紙はいわさきちひろの描いた女の子の絵。
そこを見ただけでもホッとする。
最近は、人生の先を見据えて、あまり本は買わないことにしている。
だけど、この「続…」は別だ。
やはり買って読み、手元に置いておきたいと思った。
42年前に出ていた「窓ぎわのトットちゃん」も買っていた。
読みやすかったので、子どもたちにも読んでほしいと思い、教室の本棚にいつも置いていた私だった。
それが、まだまだ「育」業をなりわいとしてからまだ日が浅いと言ってもいい頃の私だった。
だから、トモエ学園の先生のように寛容になることも、その余裕もなかった。
でも、どの子どもに対してもいいところを見つけ、伸ばすということに関しては、その後の指針になった本でもあった。
今回の続編にあたっては、本書の表紙裏に、こう語られている。
私は、どう考えても『窓ぎわのトットちゃん』よりおもしろいことは書けない、と思っていた。私の人生でトモエ学園時代ほど、毎日が楽しいことはなかったから。だけど、私のようなものの「それから」を知りたいと思ってくださる方が多いのなら、書いてみようかなと、だんだん思うようになった。よし!と思うまで、なんと42年もかかってしまった。
そして、テレビ等に出演した本人の話では、最終的に書いてみようと決心したのは、ウクライナの戦争のことだったということだった。
戦争で自分が経験したことや感じたことなどを書いて、多くの人に知らせておきたいと思ったからだということだった。
そんな話を聞いていたから、これはぜひ買って読んでみたい、と思ったのだった。
本書は、大きく4章から成っている。
・「寒いし、眠いし、おなかがすいた」
・トット、疎開する
・咲くはわが身のつとめなり
・トット、女優になる
前半が、戦時のことである。
戦争経験者の書いたことだから、内容的に貴重だと思える。
その1つ1つにはふれないが、今の若い人たちや子どもたちには想像のできないことがきっと多いことだろう。
そして、戦争を経てトットちゃんが生き延びてこられたことは、やはり運がよかったとしか言えないとも思った。
また、後半の2章は戦争が終わってからの自分の暮らしや学校生活、そして社会人となってどのように今に至ったのか、出会った人々とのエピソードを交えて書いてある。
ホッとできる内容のものや、懐かしい人名も多く出ていた。
だが、何といっても、最後のあとがきが印象深い。
「徹子の部屋」でインタビューした人たちが語った体験談も、わずかながら載っている。
池部良、三波春夫、淡谷のり子らの話は、作り物ではない、真実ゆえの重さが伝わってきた。
そして、昨年12月のことも書いてあった。
2022年最後の放送のゲストは、例年通りタモリさんだった。「来年はどんな年になりますかね」という私の質問に、「なんていうかな、(日本は)新しい戦前になるんじゃないですかね」という答えが返って来たけど、そんなタモリさんの予想が、これからもずっとはずれ続けることを祈りたい。
この回の「徹子の部屋」は、私も見た覚えがある。
タモリのその言葉に、笑えない怖さを覚えた。
真実味があったからだ。
その言葉のように、ロシアのウクライナ侵攻は続き激しさを増しているし、イスラエルのガザ攻撃は容赦なく人命を奪っている。
日本周辺の国々との領土問題、北朝鮮のミサイル問題もある。
日本の政府は、防衛費を増額すると言っている。
新しい戦前…それは避けたいと思うのだが…。
この本は、単純にトットちゃんの物語として、楽しむのもいい。
だが、「自分が体験した戦争のことを書いておきたかった」と書いてある。
たしかに、読後、これは単純に過去の物語ではないぞ、ゆがんだ歴史を繰り返してはならないぞ、という戒めをも感じたしだいである。