阿智胡地亭のShot日乗

日乗は日記。日々の生活と世間の事象記録や写真や書き物などなんでも。
  1942年生まれが東京都江戸川区から。

東日本大震災が起こった翌年の [ 2012年06月17日(日)の阿智胡地亭の非日乗ブログ ] 再掲載

2024年07月18日 | 東日本大震災ブログ
2012年06月17日(日)
 
 
 
もんじゅ故障「メーカーを過信」、それで済む話だから馴れ合い
もんじゅ故障「メーカーを過信」 原子力機構、保安院に報告
(2012年6月16日午前7時03分)福井新聞

 日本原子力研究開発機構は15日、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で燃料交換用の炉内中継装置が原子炉容器内に落下したトラブルについて、根本原因の分析結果を経済産業省原子力安全・保安院に報告した。装置をつり上げる器具の設計段階で潜在的なリスクを検討する視点に欠け、メーカーを過度に信頼していたとの組織的な要因を挙げた。

 報告書では「もんじゅは、設計段階と同じようにメーカーに頼り、自分たちで課題を発見し、解決する姿勢が不足していた」と認めた。

 改善策として、設計管理の充実や設計の妥当性を審査する能力の向上が必要とし、専門チームを設置するなど複数の関門でチェックするほか、専門家ら第三者の目を入れて確認するとした。

 2010年8月に起きた炉内中継装置の落下原因をめぐり、原子力機構は今年3月、装置をつり上げる器具に問題があったとする報告書を提出した。しかし、保安院は4月、設計段階から安全確認が不十分だったとして根本的な原因を報告するよう指示していた。

 同機構は、新たに製造して原子炉容器内に据え付けた炉内中継装置の燃料受け渡し機能の確認試験を19日から行い、21日に保安院の使用前検査を受ける予定。
 
福島県富岡町長 国策に協力してきた町の住民が悲惨な生活
富岡町長「5年は帰宅促さず」

06月16日 10時20分 NHKニュース

 富岡町の遠藤勝也町長は15日、避難区域の見直しをめぐって復興庁の平野大臣と会談し、区域が異なることで損害賠償に差が生じないよう、早期の帰宅を目指す区域であっても、住民には少なくとも5年間は帰宅を促さない考えを伝えました。

現在、警戒区域に指定されている富岡町は放射線量の高さ応じて3つの区域に再編成される見通しで、見直しをめぐって遠藤町長が復興庁の平野大臣と会談しました。

富岡町は、区域が異なることで住民への損害賠償に差が出る場合には、政府の見直し案を受け入れない方針で、これに対し政府は、自治体の判断で5年以上戻らない場合、いずれの区域も土地や建物は同じように賠償するとしています。

会談で遠藤町長は、住民の早期の帰宅を目指す区域であっても、生活できる環境を整えるにはさらに時間がかかるとして、少なくとも5年間は住民に帰宅を促さない考えを伝えました。

この場合、区域の違いによって賠償に差は生じない見込みです。
ただ、政府が示している土地や建物の賠償額の算定基準は不十分だとして、基準を改めるよう求めたということです。

遠藤町長は「賠償の問題はまだまだこれからで、国策に協力してきた町の住民が悲惨な生活を強いられていることを国は忘れてはならない」と話していました。
 
 
福島原発2号機原子炉真上で高放射線量測定
2号機原子炉真上で高放射線量測定
6月15日 5時15分 NHKニュース

 東京電力福島第一原子力発電所で最も多くの放射性物質が放出したとみられる2号機で、ロボットを使って原子炉建屋内部を調べた結果、原子炉の真上付近で1時間当たり880ミリシーベルトという高い放射線量が測定されました。映像を分析した結果、大きな損傷などは見つからず、放射性物質がどこから漏れたのかは確認できなかったということです。

2号機では、福島第一原発で最も多くの放射性物質が「最後のとりで」とされる格納容器から外に放出したとみられていますが、放出の原因や経路は明らかにされていません。
このため東京電力は、13日、2号機の原子炉建屋の中にロボットを入れて内部の状況をカメラ6台で撮影したうえで放射線量を測定しました。

その結果、原子炉の真上付近に当たる建屋の5階で、1時間当たり880ミリシーベルトという高い放射線量が測定されました。

この場所は、格納容器から直線距離で4.5メートル離れたところで、東京電力は事故でメルトダウンが起きて放射性物質が格納容器から出る際の通り道になったとみています。

東京電力によりますと、映像を分析した結果、大きな損傷などは見つからず、放射性物質がどこから漏れたのかは確認できなかったということです。

東京電力は「内部は放射線量が高く頻繁に入れる場所ではない。損傷した場所を特定するにはかなりの時間がかかる」と話しています。
 
 
大飯原発は国際基準「5層の防護」のうち3層目まで
大飯原発「5層の防護」3層目まで 国際基準 程遠く
2012年6月16日 東京新聞夕刊


 大飯原発3、4号機の再稼働が決まった。野田首相らはしきりに安全性が確保されたと強調するが、国際的な安全基準の一部しか満たしていないのが現状だ。このまま再稼働に踏み切れば、国際基準から逸脱した形になる。

 国際原子力機関(IAEA)は、原発の安全性を保つため「五層の防護」という考え方を示している。

 五層の防護とは、故障や誤作動を防ぎ、地震や津波などに襲われても炉心溶融のような重大事故にならないよう備えをするのが一~三層目。事故が起きてしまった場合、いかに事故の被害を最小限に食い止め、住民を被ばくから守るかの備えをするのが四、五層目となる。

 大飯原発はどうか。非常用電源の多様化や建屋が浸水しにくいなどの安全向上策はある程度はできたが、それは三層目までのこと。事故が起きた後に重要となる四、五層目の対応は空手形というのが現状だ。

 ベント(排気)時に放射性物質の放出を最小限にするフィルターの設置、事故収束に当たる作業員を放射線から守る免震施設の整備などが四層目に当たり、適切に住民を避難させたり、内部被ばくを防ぐヨウ素剤を配ったりするのが五層目。

 しかし、四層目が達成されそうなのは三年後で、五層目はいつになるか、めども立っていない。

 原発外で対策拠点となるオフサイトセンターは、いまだに見直し作業の最中。モニタリングポストなど広域に放射線量を監視する体制も整っておらず、福井県の避難計画も近隣の他府県との連携を考えない硬直化した内容のままだ。

 首相らは「福島のような津波と地震が襲っても事故は防げる」と胸を張るが、国際基準に照らせば、重要な対策がすっぽり抜け落ちている。 (福田真悟)
 
野田首相は日本が法治国家であることを壊わす
原発再稼働 これが法治国家なのか
06月15日(金)信濃毎日新聞社説

 関西電力大飯原発の再稼働が秒読みに入った。このままだと安全性をめぐる抜本対策は先送りしたままの暫定的な運転となる。

 野田佳彦首相は「国民の生活を守るため」と強調するが、福島第1原発事故をどこまで深く受け止めているのだろうか。

 野田政権に欠けているのは、ものごとの手順だ。事故の総括を行い、それを踏まえて論議を深め、新たな安全基準をつくる。こうした過程を欠いた再稼働では国民の信頼は得られない。

   <福島の被害を原点に>

 昨年の原発事故は、チェルノブイリと同じ最悪の「レベル7」だった。人類史に記録されるべき大事故は、日本社会を根底から揺さぶりつづけている。

 野田政権が新しいエネルギー政策を打ち立てるに当たっては、事故がもたらした衝撃にまず目を向けなければならない。

 第一は、福島県が受けた傷の深さである。

 原発に近い自治体など11市町村が避難指示区域とされ、基本的に人が住めない状況にある。区域内の人口は8万6千人に上る。

 天災であれば直ちに復興に取り組むことができるが、原発事故は除染を徹底しなければならない。元通りの暮らしに戻るまで何年かかるか分からない地域もある。広範囲に及ぶ故郷喪失の影響は計り知れず、産業だけでなく人々の心にも暗い影を落としている。

 被災自治体の首長らが大飯原発の再稼働に疑問を呈するのは当然だろう。野田政権は、県民が被った傷の深さに思いをはせ、将来のエネルギー政策を検討しなければならないはずだ。

   <根拠を欠いた手続き>

 首相は8日、大飯原発再稼働を決断した理由を国民に語りかけた。被災者の気持ちは「よく、よく理解できる」としながらも、「国政を預かる者として人々の暮らしを守るという責務を放棄するわけにはいかない」と述べている。

 人々の暮らしを台無しにしたのは、政府と東京電力である。それなのに「暮らしを守る責務」を強調するのはふに落ちない。

 福島の被害はひとまず置き、大飯原発を動かして関西圏の暮らしを守る―。首相は、こう言っているに等しい。これが「責務」なのか、首をかしげざるを得ない。

 事故の第二の衝撃は、政府の原子力行政と危機管理能力に対する信頼が根もとから崩れさったことである。

 首相が原発を再稼働させるというのであれば、信頼の土台を再構築しなければならない。

 なぜ事故が起きたのか、政府はなぜ住民を十分に守ることができなかったのか、丁寧に検証する。それを踏まえ、再発防止に向けた抜本対策を講じ、新たなエネルギー政策を国民参加のもとでつくっていくことである。

 現実はどうか。事故の検証は、民間、東電、国会、政府による事故調査委員会が、それぞれ取り組んできた。民間と東電の事故調は報告をまとめているが、残りはこれからである。

 一方で政府は、(1)大飯原発再稼働(2)原子力の安全規制をめぐる新たな仕組みづくり(3)中長期のエネルギー政策の策定―の作業に取り組んでいる。

 このうち最も急いだのが、(1)大飯原発再稼働である。ストレステストの1次評価や政府が急きょ示した安全基準をクリアし、関西圏の理解や立地自治体の合意も得た―と政府は説明するだろう。

 だが、地震のときに必要な免震重要棟やフィルター付きベント装置の設置などは済んでいない。政府は関西電力に工程表を提出させ、その審査でよしとしている。

 そもそも、(2)の新たな安全規制の仕組みづくりは、民主、自民、公明の3党が基本合意した段階である。再稼働までの政府の手続きが、事故を踏まえた新たな法的根拠を欠いていることは明らかだ。

   <国民的議論とは何か>

 首相は「政府の安全判断の基準は暫定的なものであり、新たな体制が発足した時点で安全規制を見直していく」と述べている。首相自身が、とりあえずの見切り発車であることを認めたといえる。

 大事故が起きたというのに、政府の判断で原発を動かすというのは信じ難い。これで法治国家といえるのだろうか。

 (3)の中長期のエネルギー政策の決め方にも注意が要る。

 首相は「国民的な議論を行いながら、8月をめどに国民が安心できるエネルギーの構成、ベストミックスというものを打ち出していきたい」と述べている。

 首相の言う「国民的議論」は欠かせないプロセスだが、どんな形で国民の声を聞くつもりなのだろうか。(2)の安全規制のように、3党協議で進めるようなことになれば、国民的議論どころか国会軽視と言わざるを得ない。

 「脱原発」とか「脱原発依存」といった言葉が先行している。中身を煮つめるには、国民参加の場が必要だ。首相には有権者に信を問う覚悟で臨んでもらいたい。

 

北方4島はアメリカのソ連に対する贈呈品?
 北方4島は米国がソ連に“戦利品”として与えた2012.06.14   大前研一

 プーチン氏が大統領に返り咲いたロシアと日本の間には、遅々として進まない北方領土問題が横たわる。大前研一氏はこの北方領土について、日本人の間に「2つの誤解」が存在するという。以下、大前氏の解説である。

 * * *
 1つは、ソ連が日ソ中立条約を一方的に破棄し、宣戦布告なしに北方領土に侵攻して占領した、というものだ。

 たしかにソ連は1945年8月8日に日ソ中立条約の破棄を宣言したが、同条約に破棄や失効に関する規定はなかった。宣戦布告は「日本がポツダム宣言を拒否したため連合国の参戦要請を受けた」として条約破棄と同時に在モスクワの日本大使館に行なったと主張している。

 そしてソ連軍は8月9日午前零時に戦闘を開始、11日には日露戦争で日本が奪った南サハリン(南樺太)に攻め込んだ。しかし、千島列島(クリル諸島)の択捉島と国後島、色丹島、歯舞群島を占領したのは、日本が無条件降伏して大本営が正当防衛以外の即時停戦命令を出した15日以降のことである。

 しかも、ソ連がドイツ降伏後3か月以内に日ソ中立条約を破棄して対日参戦する見返りに、サハリン南部をソ連に返還すること、千島列島をソ連に引き渡すことは、1945年2月に行なわれたアメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領、イギリスのウィンストン・チャーチル首相、ソ連のヨシフ・スターリン書記長によるヤルタ会談の協定(ヤルタ秘密協定)で決まっていた。

 それに従ってソ連は、ドイツが無条件降伏した5月8日の約3か月後、日本に宣戦布告したのである。

 また、終戦直後にスターリンは、ルーズベルトの後を継いだハリー・S・トルーマン大統領に、北海道を南北に分割して北半分をよこせと要求している。しかし、日本をドイツのようにしたくないと思っていたトルーマンはこれを拒否した。

 つまり、北方4島はソ連が侵略したのではなく、アメリカが“戦利品”としてソ連に与えたわけで、日本は4島を失った引き換えに北海道の南北分割を避けられたとも言える。これは当時のアメリカの公文書に残っている明確な事実だ。

 もう1つの誤解、というか日本国民があまり知らない事実は、日本政府が「4島一括返還」を要求することになったいきさつである。実は4島一括返還は日本政府が自ら言い出したのではなく、1956年8月、アメリカのジョン・フォスター・ダレス国務長官が日本の重光葵外相とロンドンで会談した際に求めたものだ。

 当時、日本政府は北方領土問題について歯舞、色丹の2島返還による妥結を模索していたが、アメリカとしては米ソ冷戦が深まる中で日本とソ連が接近すること、とくに平和条約を結んで国交を回復することは防がねばならなかった。そこでダレスはソ連が絶対に呑めない国後、択捉も含めた4島一括返還を要求するよう重光に迫り、2島返還で妥結するなら沖縄の返還はない、と指摘して日本政府に圧力をかけたのである。

 それ以降、日本の外務省は北方4島は日本固有の領土、4島一括返還以外はあり得ない、という頑迷固陋な態度を取るようになった。つまり、4島一括返還はアメリカの差し金であり、沖縄返還とのバーターだったのである。
 
 
沖縄米軍が沖縄県警の交番使用するのは不適切??
交番使用は不適切 警察庁、米軍示談問題で指摘
2012年6月16日 琉球新報

 【東京】警察庁の岩瀬充明生活安全局長は15日の衆院安全保障委員会で、金武町の米兵による器物損壊事件に絡み、米軍担当者が被害者を交番に呼び出し示談を強要した件について「交番が使われたことは適切とはいえない。県警、石川警察署から米軍側に示談交渉場所として使用しないよう申し入れたと承知している」と述べ、交番使用が不適切だったと指摘した。

 森本敏防衛相は、同事件が公務外の事案であることから当事者間で示談交渉し解決されるものだとの認識を示した。

その上で「学校から強い申し入れを受け、米軍に対し事件の再発防止とともに、担当者の言動に誤解を招くような状況があったのであれば、極めて遺憾であるということを申し入れるよう強い指示をした」と述べた。

 社民党の照屋寛徳氏への答弁。

☆海兵隊法務部の曹長は言った、「これまでずっとOKだったのにWhy?」

沖縄駐在の外務省、防衛省の役人がこの事実を知らなかったとは思えない。代々の申し送りは「見て見ぬふりが一番。県民にがまんしてもらえばいい。相手はアメリカさんだから。」
 
 
ここまで監視カメラは設置されていたのか!
カメラ映像次々 異例の公開捜査 監視社会を危惧
2012年6月16日 東京新聞


 十七年にわたって逃走していた高橋克也容疑者(54)を追い詰めたのは、警視庁による異例の「公開捜査」だった。川崎市内の潜伏先が判明して以降、防犯カメラに写った本人の姿や筆跡、購入したキャリーバッグの画像など計十数枚を公開し、千七百件を超す情報が寄せられた。識者からは「情報化時代に合った手法」との評価がある一方、市民を動員した監視社会の強化や、当局によるメディア操作を危惧する声も根強い。

 「国民の皆さまからの多大なご支援、ご協力に深く感謝申し上げます」。逮捕を受け十五日午後、警視庁の吉田尚正刑事部長が会見で謝意を表した。警視庁幹部がカメラの前に立つのは異例だ。

 十三日には、捜査一課ナンバー2の理事官がテレビに生出演。出頭を呼び掛けるパフォーマンスまで行い、視聴者を巻き込んだ「劇場型」の捜査が鮮明になった。

 高橋容疑者は、逃走中に個室ビデオ店でテレビをチェックしていたといい、「キャリーバッグを鶴見駅のコインロッカーに入れたが、バッグの画像が公開されたので出せなくなり、追加料金を払った」と供述。公開捜査で包囲網が狭まり、プレッシャーを受けていたことがうかがえる。

 犯罪社会学が専門の小宮信夫立正大教授は「公開捜査」について「情報化時代の当然の捜査だ。日本の警察はこれまで刑事の聞き込みや勘に頼る捜査が中心で、一般人は捜査の邪魔にならないよう蚊帳の外に置いていた」と指摘。公開捜査は米国ではよく行われるといい、IT時代に合った手法だとする。

 ジャーナリストの大谷昭宏さんは「結果的に市民の目で高橋容疑者を封じ込め、逃走できる状況をつくらなかった。警察よりも市民が捕まえた感じが強い。警察もメディアの使い方がうまくなった」とする。

 一方で、防犯カメラが至る所に張り巡らされ、映像の分析も素早くできる現状を国民が知る機会になったとの見方も。「市民がどれほど多くの防犯カメラにさらされているかが分かった。プライバシーの問題も含め、防犯カメラを誰がチェック、管理するかの議論になれば」と負の側面に目を向ける。

 また、防犯カメラとプライバシー保護の問題に詳しい清水勉弁護士は「標的が追い詰められ、いつ出てくるのかを、国民に楽しませている感覚だった」と分析。「この感覚を利用してカメラへの支持を求めるのは本末転倒だ」と指摘した。

 この日、インターネットのツイッターや掲示板にも「監視社会が進むこの流れは不気味に思うよ」など、今回の捜査の在り方に疑問を示す書き込みが見られた。
 
 
生活保護「扶養義務」の強化懸念
生活保護「扶養義務」の強化懸念 「困窮者の命に関わる」
=2012/06/15付 西日本新聞朝刊=

 拡大する困窮層を支援するのは国か家族か-。お笑い芸人の母親の生活保護受給が発覚したことを受け、親族による扶養義務を強化しようとする動きに、生活困窮者の間で不安が広がっている。小宮山洋子厚生労働相は、扶養義務の運用厳格化の考えを表明したが、専門家からは「家族の助けを強調し過ぎると最後のセーフティーネットの申請を諦め、追いつめられる人が増えかねない」と危ぶむ声も聞かれる。

 「保護申請するにしても娘に恥をかかせたくないから、娘の夫にだけは知られたくない」。弁護士などでつくる「生活保護支援九州ネットワーク」(事務局・北九州市)による緊急電話相談に9日、60代男性が不安な思いを打ち明けた。

 妻と2人暮らしで、年金とパートによる収入は保護基準を約2千円上回る月額約10万9千円。「娘に無理をさせるくらいなら、死んだ方がましだ」。自治体が扶養の可否を親族に問い合わせる「扶養照会」が厳しくなれば、保護申請を諦めざるをえないという。

 同じように、扶養照会の運用強化は、ドメスティック・バイオレンス(DV)の被害者など、加害者側に居場所や経済状況を知られたくない人にとって保護申請のハードルを高くすると、同ネットワークはみる。

 半日間で、「今言われている法改正の詳細が知りたい」など58件の相談があった。対応した同ネットワーク事務局長の高木佳世子弁護士は「受給者や生活に困っている人だけでなく、親族にも不安が広がっている」と指摘する。

   ◇   ◇

 そもそも「扶養義務者」とは誰を指すのか。

 民法は夫婦の相互扶助と、直系親族・兄弟姉妹に扶養義務を課すと定める。民法上は、強い義務を負うのは夫婦間と未成熟の子に対する親のみ。今回の芸人のように、成人した子の老親への義務は「余裕があれば援助」にとどまる。

 自治体関係者によると、生活保護法の規定では扶養義務者が扶養を行っていない場合、自治体は保護費を減額することができるが、実際には調査や手続きの手間の問題などから、実施されないケースも多いという。

 生活保護世帯が3万世帯を超える福岡市保護課の鹿毛(かげ)尚美(なおみ)課長は「困窮している人は申請前から親族とのあつれきを抱えている場合が多いし、親子や兄弟姉妹だからといって一律に扶養義務を果たせるとは限らない」と指摘する。

   ◇   ◇

 核家族化の一方、景気低迷の中で雇用不安や収入減で結婚できない人が増加。家族による助け合いの精神も希薄になっているとされる。

 市民団体「生活保護問題対策全国会議」の代表幹事を務める尾藤広喜弁護士(京都市)は「家族による私的扶助に限界があるから、公的扶助制度が整備された歴史的経緯がある。再び私的扶助に戻そうとするのは時代に逆行している」と警鐘を鳴らす。

 厚労省は、親族が扶養困難なら証明義務を課す法改正も検討する。だが、尾藤弁護士によると、現状でも親族の扶養が期待できない状況でも「親族がいる」というだけで受給を認められなかったり、親族に迷惑が及ぶことを恐れて自ら申請しない例も多いという。

 尾藤弁護士は「生活保護は最後のセーフティーネット。扶養義務が徹底されれば、餓死者や自殺者の増加が心配だ」と危機感を強める。

■生活保護

 今年3月時点の生活保護受給者は全国で210万人を超え、9カ月連続で最多を更新。受給者の増加に伴い、本年度の生活保護費予算は約3兆7千億円に上る。不正受給額も2010年度には、10年前の3倍の約130億円となったほか、高齢者の一部では基礎年金より生活保護費が高いという逆転現象が起き、国民の不公平感が高まっている。保護費の膨張を抑えるため、政府は給付水準の引き下げを視野に入れているほか、自民党は10%の引き下げを求めている。
 

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