2012年06月17日(日)
もんじゅ故障「メーカーを過信」 原子力機構、保安院に報告 (2012年6月16日午前7時03分)福井新聞 日本原子力研究開発機構は15日、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で燃料交換用の炉内中継装置が原子炉容器内に落下したトラブルについて、根本原因の分析結果を経済産業省原子力安全・保安院に報告した。装置をつり上げる器具の設計段階で潜在的なリスクを検討する視点に欠け、メーカーを過度に信頼していたとの組織的な要因を挙げた。 報告書では「もんじゅは、設計段階と同じようにメーカーに頼り、自分たちで課題を発見し、解決する姿勢が不足していた」と認めた。 改善策として、設計管理の充実や設計の妥当性を審査する能力の向上が必要とし、専門チームを設置するなど複数の関門でチェックするほか、専門家ら第三者の目を入れて確認するとした。 2010年8月に起きた炉内中継装置の落下原因をめぐり、原子力機構は今年3月、装置をつり上げる器具に問題があったとする報告書を提出した。しかし、保安院は4月、設計段階から安全確認が不十分だったとして根本的な原因を報告するよう指示していた。 同機構は、新たに製造して原子炉容器内に据え付けた炉内中継装置の燃料受け渡し機能の確認試験を19日から行い、21日に保安院の使用前検査を受ける予定。 |
カメラ映像次々 異例の公開捜査 監視社会を危惧 2012年6月16日 東京新聞 十七年にわたって逃走していた高橋克也容疑者(54)を追い詰めたのは、警視庁による異例の「公開捜査」だった。川崎市内の潜伏先が判明して以降、防犯カメラに写った本人の姿や筆跡、購入したキャリーバッグの画像など計十数枚を公開し、千七百件を超す情報が寄せられた。識者からは「情報化時代に合った手法」との評価がある一方、市民を動員した監視社会の強化や、当局によるメディア操作を危惧する声も根強い。 「国民の皆さまからの多大なご支援、ご協力に深く感謝申し上げます」。逮捕を受け十五日午後、警視庁の吉田尚正刑事部長が会見で謝意を表した。警視庁幹部がカメラの前に立つのは異例だ。 十三日には、捜査一課ナンバー2の理事官がテレビに生出演。出頭を呼び掛けるパフォーマンスまで行い、視聴者を巻き込んだ「劇場型」の捜査が鮮明になった。 高橋容疑者は、逃走中に個室ビデオ店でテレビをチェックしていたといい、「キャリーバッグを鶴見駅のコインロッカーに入れたが、バッグの画像が公開されたので出せなくなり、追加料金を払った」と供述。公開捜査で包囲網が狭まり、プレッシャーを受けていたことがうかがえる。 犯罪社会学が専門の小宮信夫立正大教授は「公開捜査」について「情報化時代の当然の捜査だ。日本の警察はこれまで刑事の聞き込みや勘に頼る捜査が中心で、一般人は捜査の邪魔にならないよう蚊帳の外に置いていた」と指摘。公開捜査は米国ではよく行われるといい、IT時代に合った手法だとする。 ジャーナリストの大谷昭宏さんは「結果的に市民の目で高橋容疑者を封じ込め、逃走できる状況をつくらなかった。警察よりも市民が捕まえた感じが強い。警察もメディアの使い方がうまくなった」とする。 一方で、防犯カメラが至る所に張り巡らされ、映像の分析も素早くできる現状を国民が知る機会になったとの見方も。「市民がどれほど多くの防犯カメラにさらされているかが分かった。プライバシーの問題も含め、防犯カメラを誰がチェック、管理するかの議論になれば」と負の側面に目を向ける。 また、防犯カメラとプライバシー保護の問題に詳しい清水勉弁護士は「標的が追い詰められ、いつ出てくるのかを、国民に楽しませている感覚だった」と分析。「この感覚を利用してカメラへの支持を求めるのは本末転倒だ」と指摘した。 この日、インターネットのツイッターや掲示板にも「監視社会が進むこの流れは不気味に思うよ」など、今回の捜査の在り方に疑問を示す書き込みが見られた。 |
生活保護「扶養義務」の強化懸念 「困窮者の命に関わる」 =2012/06/15付 西日本新聞朝刊= 拡大する困窮層を支援するのは国か家族か-。お笑い芸人の母親の生活保護受給が発覚したことを受け、親族による扶養義務を強化しようとする動きに、生活困窮者の間で不安が広がっている。小宮山洋子厚生労働相は、扶養義務の運用厳格化の考えを表明したが、専門家からは「家族の助けを強調し過ぎると最後のセーフティーネットの申請を諦め、追いつめられる人が増えかねない」と危ぶむ声も聞かれる。 「保護申請するにしても娘に恥をかかせたくないから、娘の夫にだけは知られたくない」。弁護士などでつくる「生活保護支援九州ネットワーク」(事務局・北九州市)による緊急電話相談に9日、60代男性が不安な思いを打ち明けた。 妻と2人暮らしで、年金とパートによる収入は保護基準を約2千円上回る月額約10万9千円。「娘に無理をさせるくらいなら、死んだ方がましだ」。自治体が扶養の可否を親族に問い合わせる「扶養照会」が厳しくなれば、保護申請を諦めざるをえないという。 同じように、扶養照会の運用強化は、ドメスティック・バイオレンス(DV)の被害者など、加害者側に居場所や経済状況を知られたくない人にとって保護申請のハードルを高くすると、同ネットワークはみる。 半日間で、「今言われている法改正の詳細が知りたい」など58件の相談があった。対応した同ネットワーク事務局長の高木佳世子弁護士は「受給者や生活に困っている人だけでなく、親族にも不安が広がっている」と指摘する。 ◇ ◇ そもそも「扶養義務者」とは誰を指すのか。 民法は夫婦の相互扶助と、直系親族・兄弟姉妹に扶養義務を課すと定める。民法上は、強い義務を負うのは夫婦間と未成熟の子に対する親のみ。今回の芸人のように、成人した子の老親への義務は「余裕があれば援助」にとどまる。 自治体関係者によると、生活保護法の規定では扶養義務者が扶養を行っていない場合、自治体は保護費を減額することができるが、実際には調査や手続きの手間の問題などから、実施されないケースも多いという。 生活保護世帯が3万世帯を超える福岡市保護課の鹿毛(かげ)尚美(なおみ)課長は「困窮している人は申請前から親族とのあつれきを抱えている場合が多いし、親子や兄弟姉妹だからといって一律に扶養義務を果たせるとは限らない」と指摘する。 ◇ ◇ 核家族化の一方、景気低迷の中で雇用不安や収入減で結婚できない人が増加。家族による助け合いの精神も希薄になっているとされる。 市民団体「生活保護問題対策全国会議」の代表幹事を務める尾藤広喜弁護士(京都市)は「家族による私的扶助に限界があるから、公的扶助制度が整備された歴史的経緯がある。再び私的扶助に戻そうとするのは時代に逆行している」と警鐘を鳴らす。 厚労省は、親族が扶養困難なら証明義務を課す法改正も検討する。だが、尾藤弁護士によると、現状でも親族の扶養が期待できない状況でも「親族がいる」というだけで受給を認められなかったり、親族に迷惑が及ぶことを恐れて自ら申請しない例も多いという。 尾藤弁護士は「生活保護は最後のセーフティーネット。扶養義務が徹底されれば、餓死者や自殺者の増加が心配だ」と危機感を強める。 ■生活保護 今年3月時点の生活保護受給者は全国で210万人を超え、9カ月連続で最多を更新。受給者の増加に伴い、本年度の生活保護費予算は約3兆7千億円に上る。不正受給額も2010年度には、10年前の3倍の約130億円となったほか、高齢者の一部では基礎年金より生活保護費が高いという逆転現象が起き、国民の不公平感が高まっている。保護費の膨張を抑えるため、政府は給付水準の引き下げを視野に入れているほか、自民党は10%の引き下げを求めている。 |
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