昨日からききはじめた、セルゲイ・マーロフの「Sergey Malov: Bach - 300 Years Of Solitude」。意味深な表題「300年の孤独」は、自筆譜表紙に記入された「Sei solo」に関係しています。ふつう「Sei solo」は「6曲の独奏曲」という意味にとらえますが、そうなると文法的にはまちがいとなります(正しくは「Sei soli」)。そこで「Sei solo」をそのまま「あなたは孤独」と訳すと、1720年という日付をもつ独奏曲は、マーロフのいう「300年の孤独」へとつながるわけです。
今日きくパルティータ第2番(BWV1004)のシャコンヌ(チャッコーナ)には、コラール「キリストは死の縄目につながれたり」が織り込まれているという説もあり、1720年はマリア・バルバラが亡くなった年です。マーロフはそういうあたりも意識して、意味深な表題を付けたのかもしれません。ただし、自筆譜は浄書譜なので、すでに1720年以前に6曲は成立していたと考えられ、「Sei solo」はすなおに「6曲の独奏曲」の文法まちがい、でよいのではないでしょうか。
File : 2048270(EuroArts)