『浮草』(うきくさ)1959年 大映製作 監督:小津安二郎
先週、netflix でみた。
上映時間 119分
時代は移り変わり、旅回りの駒十郎(中村鴈治郎)一座は、客入りが悪くなり・・・、
駒十郎のこれまでの浮き草人生が地味に描かれる。そして、これから浮き草は・・・。
若いころは、正直こういう映画のどこがおもしろいのだろう思うもの
(あの東京物語でも)だが、としともにしみじみと味わえる場面が増えることに驚く。
小津映画のもう一つの楽しみは、「小津調」といわれる特徴的な映像世界。
話の筋もわかりやすく、単調なので?
次次につながれるワンシーンワンカットを絵的に楽しめるのが小津安二郎作品の
楽しみの一つと思っている。
カメラはローポジション(ローアングルとはちがう)で固定され、
パンとか寄りとか引きとかはいっさいなく、映像は左右にも上下に、前後にも動かない。
役者はその四角い枠の中に閉じこめられたように思えてきて、
見る側はある種の安心感を得ることができるのだ。
シーンの切り替えは、フェードインアウトなどのトランジション効果も一切なく、
、ワンシーンワンカットをカットカットでつないでいきます。
ほとんどが室内のシーンで、人の動きは、2階に上り下りする動きくらい。
話に集中させれられてしまう。
構図を変えながら、たとえば部屋の中の赤色の小物が画面のどこかに配置され続けていたり、
部屋の背景や、室内にせまる外のちょうちんとか旗や植栽などが、何かを暗示していたりと、
その画面構成だけでも十分に楽しませてくれる。
役者の着物の色や柄も、部屋の縦の柱、障子の桟、ふすまの開け具合、電灯の位置、水屋の棚が
作り出す四角形、その中の小物の位置や色までもこだわりだしたらキリがないほどだが、
急な階段の作り出す鋭角、それをこともなく上り下りする若い人物に年寄りは、ある種、無意識の不安を
感じたりするのだろう。部屋の中には生活臭のする雑然としたものはない。現実の汚れや猥雑なものは映さない。
そうしたことのひとつひとつにも、きっとこだわりがあるのだろうと思わせる端正な画面展開がつづく。
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1934年に松竹蒲田撮影所で製作した『浮草物語』を監督自らがリメイクした作品。宮川一夫撮影によるアグファのカラー映像が、しがない旅役者の世界の情緒を際立たせる作品である。
監督:小津安二郎
製作:永田雅一
企画:松山英夫
脚本:野田高梧、小津安二郎
現像:東京現像所(アグファカラー)
キャスト
嵐駒十郎:中村鴈治郎
すみ子:京マチ子
本間清:川口浩
加代:若尾文子
ほか
笠智衆はノンクレジット
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