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『欲望の砂糖史』―近代南島アルケオロジー 単行本 2014/6

2014年12月29日 | 本と雑誌

『欲望の砂糖史』―近代南島アルケオロジー 単行本   2014/6

原井 一郎   (著)

この本は、奄美群島に2つある日刊紙の一つ「南海日日新聞」に2010年1月から120回にわたって連載された「南島近代アルケオロジー/暁の跫音」を収録したもの。

一つの記事ごとに2~3ほどの参考文献が挙げられている。小さな南の島の砂糖の歴史の一冊にこれだけの数。写真も豊富。教科書でなじみの人物や風景。

新聞連載中は漢字やカタカナが難しかったせいではないが、ほとんど読んでなかった。

「南島近代アルケオロジー/暁の跫音」 辞書を調べると

アルケオロジーarcheologie
通常は考古学と訳されるが,現代フランスの哲学者 M.フーコーによって歴史 (学) に対立する概念として提出された。歴史は,人間文化を連続性においてとらえるが,アルケオロジーの方法は,記録の集積の中から,多音声の声を聞き取ろうとする。

跫音(きょうおん) 
あしおと

空谷の跫音 くうこくのきょうおん 
【意味】  空谷の跫音とは、退屈でさびしい暮らしを送っているところに、思いがけなく人が訪れたり、嬉しい便りがきたりすること。

読後に、あらためて調べてみて意味がわかると、このタイトルは、よく本書の内容、著者の思いが表れていると感じる。

表紙もそうだ。縦書き赤字の「欲望の砂糖史」。

写真、サトウキビ畑の上空は、どんより重たい雲。
タイトル文字の隙間から、しばらくして浮かび上がってくる、横書き「近代南島アルケオロジー」の文字。

奄美での出来事が日本史、そして世界史の流れの中で語られ、有名な歴史上の出来事や人物の思いがけない関連におどろく。奄美に比べ、私の印象の薄い沖縄の砂糖史関連の記事にもページが割かれているのも新鮮だった。

近年著しい進展を遂げつつある奄美の歴史研究、

そのなかでの最近の「歴史修正主義」や「差別史観」批判など具体例をあげて問題点を指摘している。


進展著しい奄美の歴史研究だが、まだ「最下層の農民視点や、人物論、世界システム論などの欠落に加え、全方位を網羅し関連づけて時代を解くといった域までには至っていない。」

「そうした大論がやがて網あげられるのを期待しつつ、その空隙を少しでも埋めるべく『隙間史」として取り組んでみたのが本書である。」まえがき

大航海時代以降の荒々しい時代の波に翻弄され続けてきた奄美の歴史。

明治維新は遠い物語ではない。小さな南の島々の砂糖の歴史から、現在の奄美が見えてくる。現在の日本の問題も見えてくる。力作だと思う。
奄美に関心のなかった人も知的興味刺激されるだろう。

P313島びと自体を主人公に、琉球や薩摩、日本や世界を相対化する、新しい歴史記述を探し出すこP313

P313「歴史の客体に幽閉されてきた」地域から抜け出し、自らを生かす、「主体的歴史」への昇華策P313

本書の最後に掲げられた参考文献

『ポストコロニアリズム』 本橋哲也 岩波書店 2005年

本書のキモではないかと思い、
借りようとして図書館で検索したが、鹿児島の本館から取り寄せなければならない、ということだった。


amazon 内容(「BOOK」データベースより)

奄美・沖縄の農民が血と涙で産み出してきた世界商品「砂糖」。コメと同様に幕藩政治を支え、日本近代化にも一役買ったその知られざる貢献を、最下層の農民の視点から描きだす。

amazo 登録情報

単行本: 315ページ
出版社: 森話社 (2014/06)

発売日: 2014/06



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