リクルート事件・江副浩正の真実 (中公新書ラクレ) [単行本]
江副 浩正 (著)
表紙に著者逮捕時(たぶん)の車中の写真が載った旧版は名瀬の書店でも去年見かけていたので、それなりに売れた本なのだろう。買いそびれているうちなくなっていたので、新書版を読むことになった。改訂版になっていて477ページと分厚い。表紙裏の著者の近影が、逮捕当時と比べふっくらとしておだやかで知的な表情なのが印象的。
抑制の効いた語り口で、あまり自己の主張を強く述べるのでもなく、相手(検事や裁判官、時の政権党、マスメディアなど)に対する批判も自己の主観的な疑問としてさらりと提出されるだけである。しかし、それだけに逆に説得力がある。わかりやすい文章だ。長い戦いの中での著者の人生観の変遷にも触れらていて、読み物としての面白さにも配慮されている。詳細な事実の羅列の中でも、重要な、いくつかのポイントは、要所要所で、繰り返され、しっかりと読者に訴える手法はさすがだと読了後に思った。検事や裁判官、時の政権、マスメディアがそれぞれ裏でつながるシステム上の問題、検事の拷問とも言える密室での取調べの様子や調書を取るための脅しなど、時節柄、大相撲の八百長問題の決着?の付け方にも少なからず共通点が見出されると思った。日本の民主主義とは・・・。
リクルート事件は、1988年(昭和63年)に発覚した贈収賄事件。将来値上がり確実も見られる未公開株が賄賂として使われたのが特徴で、多くの政治家や官僚らが次々に逮捕され、当時の一大スキャンダルとなった。マスコミによる調査報道も話題になった。
著者の場合、初公判から一審判決まで13年余りかかり、323回の開廷数は記録的。平成15年3月4日判決「懲役3年・執行猶予5年」。検察被告双方とも控訴せず、判決が確定。
一連のリクルート事件で訴追された者は、贈賄、収賄側双方とも全員有罪で執行猶予付き。
著者の個人に対する、裁判所の情状酌量の理由について、本書を読むと、限りなく無罪に近いという印象を受ける。裁判とは何かということも考えさせられた。本書はタイトルが示す通り、江副浩正がみた真実であって、他の立場から見たらまた別でありうると著者は認めている。
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amazon 内容(「BOOK」データベースより)
「教科書にまで書かれた事件。(中略)黙って死ぬわけにはいかない、という私の気持ちがあった」(「はじめに」)。当事者がすべてを語った、現代史の証言にしてすぐれたノンフィクション。
登録情報
単行本: 477ページ
出版社: 中央公論新社; 改訂版版 (2010/08)
発売日: 2010/08
商品の寸法: 17.6 x 11 x 2.4 cm
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リクルート事件・江副浩正の真実 (中公新書ラクレ) 価格:¥ 1,029(税込) 発売日:2010-08 |
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(英文版) リクルート事件・江副浩正の真実 - Where is the Justice?: Media Attacks, Prosecutorial Abuse, and My 13 Years in Japanese Court 価格:¥ 2,730(税込) 発売日:2010-08-05 |