ちはやぶる 神世も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは
(古今和歌集 在原業平)
嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり
(後拾遺和歌集 能因法師)
百人一首に興味を持ち始めたのは、中学から高校にかけてだったと記憶する。特に高校の先生の寮に、多くの同好の友達と冬休みに入ったら、行って練習と言うか遊びをさせてもらったのが、一番真剣に覚えた頃だった。
中でも速く覚えるようにしたのが、県内の地名の入った和歌だった。 斑鳩町の竜田川を詠んだ和歌は二首あって、どちらも速く覚えたものだった。
しかし、竜田川を車で通過しても、三室と言う地名のある標識を見ても、ただ通過するのみで、「竜田の川の錦」を目にすることもなかった。また「紅の竜田川」を、和歌と共に鑑賞する機会もなかった。
法隆寺方面へ行く時には必ず通過していて、一度はゆっくり歩いてみたい場所だと思うようになったのはごく最近である。
県内の紅葉情報を見ていると、「色付き始め」の段階のここ2~3日である。体調不良の今、「人・人・人・」の中に出ることはとても抵抗を感じるので、月末の「もみじ祭り」を避けて、人の少ない自然の中なら、動くことを薦められていたので、友人に誘われた時やや躊躇いながらも2時間ばかり、「色付き初めた」もみじの散策路を歩いた。
三室の山までは行かなかったけれど、竜田川を挟んだ両側は、もしこれが全て紅葉したならば、確かに竜田川は、紅を映し錦の流れを見せてくれるものだろうと、まだ見ぬ風景を想像して歩いた。
とにかく今は人ごみの中に自分を置くのが、辛くて嫌なので、こんな静かな竜田川の畔は、癒しの道であった。