電子制御式燃料噴射装置の続きで、今回は(3)制御系統の内容です。
図1.制御系統の構成
制御系統は、エンジンの運転状態を検出する各種センサーと、センサーからの信号に基づいて燃料噴射量を
決定するコンピュータ(コントロール・ユニット)から構成されている。
図2.制御系統の配置例
各センサーは、吸入空気量やエンジンの負荷、排ガス中の酸素量、水温、吸気温度、排気温度、
加速、減速などの状態を電気信号に変えてコンピュータに送る。
コンピュータは、この信号をもとに各状態に応じた噴射時間を決定し、インジェクターを作動させる。
図3.各種センサーからインジェクターへの信号の流れ
制御系統がコントールする主な内容は
1.燃料の噴射量
2.燃料の噴射時期
3.空燃比
制御系統各部の構造と機能
①センサー類
a)スロットル・ポジション・センサー
スロットル・バルブの開度からアイドルおよび高負荷のエンジン状態を検出し、この信号により
コンピュータで燃料の増量と燃料カットを行う。
燃料カットとはスロットル・バルブ全閉時にエンジン回転数が規定以上になった場合(エンジン・ブレーキ時)、
燃料噴射を停止することで、省エネと触媒コンバーターの過熱を防止している。
b)水温センサー
エンジンの冷却水温を検出して、冷却水温に応じた燃料を増量する。センサーはサーミスターを内蔵し
温度によって抵抗値が大きく変化する性質を利用して水温を検出している。
c)吸気温センサー
水温センサーと同様、サーミスターによって吸入空気温を検出して、吸入空気温に応じた燃料が増減される。
d)スタート・インジェクター・タイムスイッチ
低温始動時(冷却水温22℃以下)に、エンジンが始動中であることを示すスターター信号を受けて、
コールド・スタート・インジェクター(キャブのチョーク系統に該当するもの)から燃料を噴射して
始動性をよくするものであるが、スターターの回し過ぎによるプラグのかぶりを防ぐため、噴射時間を制御している。
②コンピュータ
図4.コンピュータ制御ブロック図
エア・フロー・メーターからの吸入空気量信号とイグニッション・コイル一次側からの
エンジン回転数信号から燃料の基本噴射量を計算し、これに各センサーから送られてくる
信号による補正を加えて最適な噴射量を決定している。
イグニッション・コイル一次側の信号によって、噴射時期も決めている。
③O2センサー
O2センサーは大気と排気ガス中の酸素濃度を感知し、その情報をコンピュータに送る装置。
図5.O2センサー
図5.はセンサーの構造を表したもので、酸素濃度差があると起電力を発生するジルコニア素子の性質により
大気と排気ガスの酸素濃度差を感知し、排気ガス中の酸素濃度すなわち空燃比を検出している。
図6.O2センサーの出力特性
空燃比が理論空燃比より濃い場合いはリッチ信号が、薄い場合はリーン信号がコンピュータに送られる。
④空燃比制御補正特性
O2センサーから送られる信号によって、燃料の噴射量の増減を繰り返し行い、空燃比を
三元触媒の浄化性能の高い理論空燃比付近の狭い範囲だけに限定している。
図6.空燃比制御
図7.空燃比制御サイクル
O2センサーは、空燃比が理論空燃比よりも濃い場合には高い起電力を、薄い場合には低い起電力を
発生しその信号をコンピュータに送っている。
コンピュータは、この信号をある一定の比較電圧と比較し、それよりも高い場合は空燃比が理論空燃比より
高いと判定し燃料を減少させる。逆に薄いと判定した場合には、燃料を増加させ、三元触媒の浄化性能の
高い理論空燃比付近にコントロールしている。
参考サイト:インジェクターの仕組みと構造
参考サイト:理論空燃比制御