孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「ブラッド・ダイヤモンド」(血のダイヤ) シエラレオネ国際戦犯法廷でナオミ・キャンベルさん証言

2010-08-05 23:27:35 | 国際情勢

(映画「ブラッド・ダイヤモンド」の一場面 拉致してきた少年たちに麻薬を与え、殺人を教え込み、少年兵に洗脳していく・・・そんな場面だったように思います。
“flickr”より By rick
http://www.flickr.com/photos/spine/1801821831/)

【国際戦犯法廷で裁かれる最初のアフリカ元国家元首】
西アフリカのシエラレオネで91年から02年にかけて繰り広げられたシエラレオネ内戦の責任を問うシエラレオネ国際戦犯法廷が、スーパーモデルとして有名なナオミ・キャンベルさんへの「ブラッド・ダイヤモンド」(血のダイヤ)の授受をめぐって国際的注目を集めています。
シエラレオネ国際戦犯法廷では、隣国リベリアの元大統領、テーラー被告が国際戦犯法廷で裁かれる最初のアフリカ元国家元首として、戦争犯罪や人道に対する罪などを問われています。

シエラレネオネ内戦の悲惨さ(罪もない何千人もの人々が手足を切り落とされたり、少年兵が戦闘に利用されたりといった事実)については、08年6月26日ブログ「シエラレオネからジンバブエまで  “TIA”(This is Africa.)」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080626)で、また、テーラー被告の国際戦犯法廷については、08年1月30日ブログ「シエラレオネ 元リベリア大統領の国際戦犯法廷再開」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080130)などで、これまでも何回か取り上げたことがあります。

内戦の主役は、シエラレオネで反政府勢力を率いるサンコーと、隣国リベリアで反政府運動を行っていたテーラー被告。
以前からの知り合いでもあった両者は91年、両国を連動した内戦状態にし、テーラー被告はサンコーに協調してシエラレオネに介入します。
シエラレオネからダイヤモンドをリベリアに密輸し、リベリアの大統領となったテーラー被告が見返りに武器・兵士の訓練をシエラレオネのサンコーに供与するという関係がありました。
91年に始まったシエラレオネ内戦は、結局イギリスの介入などもあって02年終結。
サンコーは03年シエラレオネの首都フリータウンの病院で病死します。
テーラー被告は、国際社会の圧力、国内抵抗運動のため大統領の座を追われ、03年ナイジェリアに亡命。
更に、国際社会の圧力を受け06年に拘束され、シエラレオネ内戦に関与、虐殺や非道な行為を働いたとして国際戦犯法廷から起訴されました。

【「ブラッド・ダイヤモンド」(血のダイヤ)】
シエラレオネ、リベリアを結び付け、内戦を可能にしたのが「ブラッド・ダイヤモンド」(血のダイヤ)の存在です。
“西アフリカや中部アフリカなどの内戦・紛争地を原産地とし、反政府勢力が武器調達の資金源とするために違法に取引しているダイヤを指す。「ブラッド・ダイヤモンド」(血のダイヤ)と呼ばれ、シエラレオネ内戦中の紛争ダイヤ取引を描いた同名の米ハリウッド映画で広く知られるようになった。1990年代半ばには、紛争ダイヤが世界のダイヤ原石の推定4~15%を占めていたとされる。00年以降、ダイヤ業界と国際社会が不法取引防止に乗り出し、03年にダイヤ認証制度「キンバリープロセス」を発足。現在では紛争ダイヤの割合は推定0.2%に減ったとされる。”【8月5日 毎日】

****ナオミ・キャンベル:ダイヤ原石の受け取り認める****
英国出身のモデル、ナオミ・キャンベルさん(40)が5日、オランダ・ハーグの国際戦犯法廷に証人として出廷し、西アフリカ・シエラレオネ内戦(91~02年)で戦争犯罪などに問われているテーラー元リベリア大統領(62)からの贈り物とみられるダイヤモンドの原石を受け取ったと認めた。紛争ダイヤの不法取引に元大統領が手を染めていた疑いが深まり、関与の実態解明が今後の裁判の流れを左右する。
 
キャンベルさんは同日開かれたシエラレオネ特別法廷の公判で、97年9月に南アフリカのマンデラ大統領(当時)がケープタウンの大統領邸で開いた夕食会に参加した夜、「2人の黒人男性」から「贈り物」の布袋を受け取ったと証言。翌朝、袋を開けたところダイヤ原石とみられる「とても小さな汚い石2~3個」が入っていたという。ダイヤはマンデラ財団の代表に渡したと述べた。(中略)
検察側は内戦の「黒幕」とされる元大統領が(シエラレオネのサンコー率いる反政府勢力)RUF支配地域で違法採掘されるダイヤを買い取り、RUFに武器を提供していたと主張している。
キャンベルさんはこれまで米テレビなどで「家族を危険にさらしたくない」とダイヤ受け取りを否定し、法廷での証言を拒んできた。無罪を主張する元大統領はダイヤの贈り物を「でたらめ」と否定しているが、キャンベルさんの証言で紛争ダイヤにかかわっていた疑惑が深まった。【8月5日 毎日】
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「ブラッド・ダイヤモンド」(血のダイヤ)やシエラレオネ内戦については、レオナルド・ディカプリオが悪徳ダイヤモンドトレーダーを演じたハリウッド映画「ブラッド・ダイヤモンド」が、その悲惨さを伝えています。
この映画では、住民を殺害、あるいは手足を切断する狂気的な戦闘の様子、武装勢力が戦費調達のため一般市民にダイヤモンド採掘を強制する様子などが描かれています。
なお、シエラレオネ当局はこの映画について、「紛争ダイヤモンド」について世界に知らせる役割を担った一方、内戦後のシエラレオネに新たな投資を呼び込むうえで障害になっていると、上映禁止措置を求めているとの報道も以前ありました。【08年8月24日 AFP】

【テーラー被告の狂気】
シエラレオネ反政府勢力「革命統一戦線(RUF)」の指導者達(最高指導者サンコーはすでに死亡)については、シエラレオネの首都フリータウンで行われたシエラレオネ特別法廷で最高52年の禁固刑などが命じられています。
ただ、テーラー被告については、その影響力を恐れたシエラレオネが警備上の理由で自国内での裁判を拒否し、
オランダ・ハーグの国際戦犯法廷に委ねられています。
有罪の場合はイギリスが同被告の収監に応じていますが、万一、無罪にでもなったらどこの国が彼を受け入れるのかで関係国が心配している・・・といった報道もありました。【08年1月18日 IPS】

ニコラス・ケイジ主演の「死の商人」を描いた映画「ロード・オブ・ウォー」に、テーラー元リベリア大統領と思われる人物が出てきます。この映画もテーラー被告周辺の狂気を描いています。
ナオミ・キャンベルさんとの関係がどんなものだったかは知る由もありませんが、不用意にテーラー被告のプレゼントを拒否したりすると、どんな災いが待っているか怖いものがあるようにも思えます。
もちろん、もらえばもらったで、これまた災いが待っています。ナオミ・キャンベルさんもとんでもなく厄介な人物に気に入られたようです。

【ジンバブエの「ブラッド・ダイヤモンド」】
「ブラッド・ダイヤモンド」(血のダイヤ)に関して最近目にしたもうひとつの話題は、ジンバブエの独裁者ムガベ大統領に関するものです。

****ジンバブ工 ブラッドダイヤ輸出解禁で独裁ムガベの高笑い****
紛争の資金源となったり人権侵害の元になる「ブラッドダイヤモンド」の取引が禁止されているジンバブエで、再びダイヤ原石の売買が許可されそうだ。
東部のマラングでダイヤ鉱山が発見されたのは06年。政府は年間17億ご相当のダイヤ輸出が見込まれるこの鉱山の採掘権を独占しようとした。政府軍は採掘現場に押し寄せた一般市民を弾圧。人権擁護団体の報告によると、拷問や暴行、銃撃で最大200人が殺害され、強制児童労働も行われたという。これを受け、ブラッドダイヤの流通を取り締まる国際協定キンバリープロセスの下、マラング鉱山のダイヤ取引が禁止された。
ところが最近行った査察の結果を踏まえ、キンバリープロセスは7月15日、一部の取引を許可することで合意した。禁止措置の中でも政府公認で密輸が行われていたため、ムガベ大統領が違法ダイヤを輸出して世界市場を不安定化させることに歯止めをかける狙いもあったといわれる。
9月に行われる予定のさらなる査察に合格すれば、マラング鉱山の輸出許可は拡大する見込みだ。人権擁護団体は、違法でも合法でもダイヤ取引の利益はすべてムガベと、彼の取り巻き連中の懐に収まることになると訴えている。【8月11日号 Newsweek日本版】
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美しい宝石ダイヤモンドも、テーラー元リベリア大統領やジンバブエのムガベ大統領のような権力者と結び付くと、その輝きは血の色に染まります。
ダイヤに限らず、石油や地下資源など貴重なものには、我が物にしようとする権力が群がってくる・・・と言ったほうが正確でしょうか。

コメント (1)
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