孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中東和平 直接交渉開始へ 困難な条件クリア

2010-08-24 23:22:49 | 国際情勢

09年9月22日 ネタニヤフ首相(背中)、アッバス議長(右)、オバマ大統領の三者会談
このときはオバマ大統領は中東和平交渉の再開を強く促しましたが、焦点のユダヤ人入植地の建設凍結問題などで具体的な進展はなく、交渉再開の見通しは立たないまま終わりました。“flickr”より By The White House
http://www.flickr.com/photos/whitehouse/3994560770/)

【「1年以内の解決」を目指す】
イスラエルが希望していたパレスチナとの中東和平の直接交渉が、アメリカの後押しもあって、9月からワシントンで行われることになりました。
****中東和平:直接交渉開始を発表…米国務長官****
中東和平に関し、クリントン米国務長官は20日に記者会見し、イスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナのアッバス自治政府議長による直接交渉を9月2日、ワシントンで開始すると正式発表した。長官はイスラエル、パレスチナの2国家共存に向け、国境や入植地などすべての最終地位問題の「1年以内の解決」を目指す方針を明らかにした。
交渉にはエジプトのムバラク大統領、ヨルダンのアブドラ国王も参加する。中東和平の直接交渉は、イスラエルによる08年12月のパレスチナ自治区ガザ地区攻撃を機に中断しており、今回はそれ以来の再開となる。
長官は会見で、交渉進展には今後も障害があるとの見通しを示す一方で、「中東地域の持続的な和平のため、歩みを止めないように求める」と語った。

パレスチナとイスラエルも交渉開始に合意したとし、その理由について、仲介役のミッチェル中東特使は「直接交渉を通じてのみ問題が解決できることを双方の指導者が認識した」と述べた。
また米国、ロシア、欧州連合(EU)、国連で構成する中東和平4者協議も20日、直接交渉開始を支持する声明を発表した。声明は1年以内の合意を期待するとともに、「1967年に始まった(イスラエルによる)占領状態を終結させ、独立した民主的なパレスチナ国家の誕生につながる」ことを求めた。【8月21日 毎日】
******************************

「直接交渉を通じてのみ問題が解決できることを双方の指導者が認識した」・・・・では、アメリカが行ってきた間接交渉はなんだったのか?
パレスチナ側はこれまで、入植凍結や国境画定の原則などパレスチナ側が求めてきた交渉の前提条件が受け入れられる「保証」が明確ではないとして、直接交渉には消極的でしたが、“中間選挙を控えるオバマ米大統領がユダヤ系有権者に配慮する形でイスラエルの求める直接交渉を後押し。パレスチナの後ろ盾のアラブ連盟も交渉開始を支持したことから、アッバス議長は直接交渉を受け入れざるを得ない立場に追い込まれた。”【8月21日 時事】といった状況です。

アラブ連盟が交渉開始を支持したのは、オバマ大統領がアッバス議長あての書簡で直接交渉に関する一連の「保証」を行ったためとされていますが、「保証」の中身がよくわかりません。
中間選挙を前にユダヤ系有権者に顔が向いているアメリカが、パレスチナを納得させるような「保証」を実行できるようにも思えませんが。

【双方譲る気配なし】
*****直接交渉を受け入れ=入植継続なら中止と警告―パレスチナ******
パレスチナ解放機構(PLO)は20日夜、同自治区ラマラで幹部会合を開き、中東和平の間接交渉から直接交渉への移行受け入れを決定した。イスラエル側は既に歓迎の意向を表明しており、中東和平は1年8カ月ぶりに本格的交渉が再開する。
ただ、アリカットPLO交渉局長は会合後、記者団に「イスラエルが、9月末の入植凍結期限後に入植活動を再開すれば、直接交渉を続けることはできない」と警告した。
イスラエルのネタニヤフ首相は、先月下旬のモラティノス・スペイン外相との会談で、9月末以降は凍結を継続しない意向を示しており、入植問題が交渉進展を阻害する火種として依然残っている。【8月21日 時事】
********************************

一方のイスラエル側も今のところは譲歩の姿勢は見せていません。
*****難民帰還権放棄、和平合意の原則に イスラエル首相表明*****
イスラエルのネタニヤフ首相は22日、9月初旬に再開するパレスチナとの直接和平交渉について、パレスチナ難民の帰還権放棄などを和平合意の原則とする方針を改めて示した。
ネタニヤフ氏は、同日の閣議で直接交渉に臨む政府の方針を確認。和平合意の原則として(1)イスラエルの安全保障の確保(2)パレスチナ側がイスラエルを「ユダヤ人国家」として認めること(3)パレスチナ国家の非武装化、を掲げた。(2)は、イスラエル建国に伴い発生したパレスチナ難民が、現在、イスラエル領になっている故郷に戻ることを同国が拒否するもので、パレスチナ側は反発している。
一方、パレスチナのマアン通信によると、アッバス自治政府議長は同日、中東和平を仲介する米国、ロシア、欧州連合(EU)、国連の各首脳に書簡を送り、「入植と和平は、決して両立しない」と指摘。イスラエルが占領地ヨルダン川西岸でのユダヤ人入植を続けた場合、交渉を打ち切る方針を伝えた。
イスラエルは米国の要請で昨年11月から西岸での新規入植住宅の建設を停止しているが、9月下旬にその期限が迫っている。ネタニヤフ政権内の右派は期限延長を認めない姿勢を示しており、ネタニヤフ氏の対応が注目される。
*******************************

イスラエル、パレスチナ双方が、相手が容易にのめない条件を主張しあっています。
交渉前なので・・・と言えばそうなのでしょうが、始める前から合意の期待が殆どもてない展開です。
聞こえてくるのは、交渉打ち切りの話ばかりです。

*****PLO:直接交渉打ち切りも 入植地の住宅建設凍結を要求*****
中東和平交渉でパレスチナ解放機構(PLO)の実務責任者、エラカト交渉局長が23日、ヨルダン川西岸ラマラで記者会見した。イスラエルがユダヤ人入植地の住宅建設を完全に凍結しなければ、「(9月2日に始まる)直接交渉は打ち切られる」と警告した。これに対しイスラエルの首相府は反論する声明を発表し、交渉は入り口から危うさを露呈している。

国際社会が違法だとみなしている占領地での入植住宅建設を巡っては、イスラエルが9月26日を期限に、ヨルダン川西岸での部分的な「凍結」を実施している。67年に占領・併合した東エルサレムでの建設や入植者の自然増に応じた建設は、凍結の対象としていない。エラカト局長は会見で、従来通り、東エルサレムなどを含む完全な凍結を求めた。さらに「26日以降に建設が許可されるならば、それは(イスラエルの)ネタニヤフ首相が交渉を打ち切ったという意味だ」と断言した。
イスラエル首相府はこの会見を受け、声明で「イスラエルは直接交渉の開始にあたり、前提条件を一切設けない」として、建設凍結の延長を打ち出すことを拒否。ネタニヤフ首相は同声明で「(西岸の)非武装化と治安維持が和平で重要だ」と強調した。
イスラエル・メディアによると、同国の右派連立政権では主要閣僚が建設凍結の延長に強く反対。「部分凍結」案を推す閣僚もいるという。【8月24日 毎日】
*******************************

【右派ネタニヤフ首相だからできることも・・・】
9月2日に交渉を開始して、9月26日にイスラエルが「凍結」延期を認めず、交渉打ち切り。双方は国内・内部向けに主張を貫いたことをアピールしておしまい・・・というのでは茶番です。
直接交渉とは言いながら、合意に向けてアメリカがイスラエルをどこまで説得できるかが重要なポイントですが、右派連立政権のネタニヤフ首相ですので難しいところです。
ただ、極右政党を含む右派連立政権だからこそ、保守派反対をおさえて妥協することも可能・・・という見方もできます。保守派の批判にさらされる左派政権では妥協は国内的に困難です。
アメリカの中国との国交成立も、反共と見られていたニクソンだからこそできたということもありますので。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする