孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラム、ヒンドゥー社会における寡婦対策

2010-08-28 17:46:40 | 世相


(戦火で大勢の女性が夫を失うアフガニスタン その寡婦の生活は厳しいものがあります “flkrf”より By quikdra
http://www.flickr.com/photos/22870504@N06/2196129937/)

【クウェート 第2婦人を国家支援】
石油の恵みで「ゆりかごから墓場まで」の福祉制度を持つクウェートで、第2婦人まで補助金の対象になるとか。
男性としては、ちょっと気をそそられるニュースです。

****「2人目の妻を迎える男性に国が支援を」、法案提出 クウェート*****
2010年08月27日 14:14 発信地:クウェート市/クウェート
4人までの妻帯が認められているイスラム教国クウェートの国民議会(国会)で25日、2人目の妻を迎える男性を国が支援する法案が提出された。

同法案を提出したファイサル・ドゥワイサン(Faisal al-Duwaisan)議員は「社会問題となっている単身女性の増加に対処するとともに、伴侶を失った後に新しい家庭をもちたいという男女の力にもなりたい」としている。支援対象は寡婦や離婚した女性、または40歳以上で結婚経験のない女性と結婚する場合となっている。
1人目の妻が健在で離婚していない場合は、2人目の妻を迎えるにあたって夫となる男性は、1人目の妻の許可を書面で得ることを条件とする。法案は議会委員会での審議を経て本会議に上程され、承認されれば成立する。
クウェートは現在、1人目の妻を迎える男性に4000クウェート・ディナール(約120万円)の「結婚支度金」を支給している。その半分は返済の必要がない給付金で、残りは少額ずつ分割返済する無利子の貸し付けだ。

石油輸出国機構(OPEC)第5位の産油国であるクウェートは、多額の補助金を支出して「ゆりかごから墓場まで」式の手厚い福祉を提供しており、国民は教育と医療を無料で受けられる。【8月27日 AFP】
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イスラム社会における寡婦や離婚女性の立場は厳しいものがありますので、その問題の緩和に向けた対策なのでしょうが、結婚を前提とせず女性自身への補助金対策を強化すればいいものを・・・と思ってしまいます。(すでにそういう制度があるのかどうかは知りませんが)
更に言えば、イスラム社会における女性の地位に関する改善に取り組むべきなのも言うまでもないことです。

【イラン 一夫多妻容易化を否定】
一夫多妻制については、イスラム社会でも地域差が大きいようです。
****イラン議会、一夫多妻制を容易にする条項改定案を否決*****
イラン国会の司法委員会は8日、複数の妻を持つための手続きを容易にする「家族保護法(Family Protection Bill)」の条項改定案を否決し、廃案とした。改定案には、有力聖職者や女性人権団体から抗議の声が挙がっていた。国営Iran News Networkが伝えた。
否決された2案のうち第23項の改定案は、「既婚男性が結婚を希望する場合は、複数の妻を養う経済力があること、複数の妻を平等に扱う意志があることを示し、司法当局から許可証受け取るだけでよい」という内容だった。現行の法律では、2番目以降の結婚には「第一夫人の同意」を求めている。
また、結婚持参金、つまり夫から妻に約束され、婚姻中・離婚時にかかわらずいつでも妻が要求できる金銭または財産への課税を義務付けようとした第25項の改定案も否決された。
イラン司法当局によると、2つの条項の改定は政府が推進したものだという。

イランは、イスラム教国ではあるが、一夫多妻制はほとんど根付いていない制度で、多くの国民から嫌悪されてもおり、条項改定案は国内で激しい反発を招いた。
特に女性たちは、改革派・保守派を問わず、「裕福な男性たちが第2夫人を持つようになり、家族の基盤と尊厳が脅かされるようになる」と非難していた。2003年にノーベル平和賞を受賞したシリン・エバディ(Shirin Ebadi)氏は、改定条項は「道徳の退廃」を招くとして、前週国会を訪れ、否決するよう要請していた。【08年9月9日 AFP】
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【ネパール 寡婦・離婚女性対策に女性団体が反対】
女性の権利に問題があるのはイスラム社会に限った話ではなく、ヒンドゥー社会においても同様です。
かつて、ネパールで政権を握ったマオイストの目玉政策として、寡婦や低位カーストと結婚した男性に補助金を与える施策がありました。

*****ネパール「離婚女性と結婚で支給金」…女性団体怒る*****
ネパール政府が、夫を亡くしたり、離婚した女性と結婚する男性に5万ネパール・ルピー(約6万2500円)を支給する案を発表したところ、女性団体などが「侮辱的だ」と猛反発している。
(09年8月)10日には、首都カトマンズで数千人が繰り出す抗議デモが行われ、女性たちは、「私たちに勝手に値段を付けるな」などと叫んだ。
男性への支給案を7月に発表した政府は、「一度結婚した女性が不当にさげすまれ、容易に再婚出来ないネパール社会の実情を少しでも改善するための措置」と説明している。だが、女性団体は、「男たちがカネ目当てに夫を亡くした女性に近寄っては、支給を受けたら捨て去る。そんな弊害は目に見えている」と撤回を求めている。【09年8月12日 読売】
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女性団体は「結婚を押し付けることは寡婦に対する人権侵害であり、金で再婚を促すことはダウリー(持参金)制度を強化させる」と、政府案を批判していました。
最高裁はその後、同制度の実施延期命令を出しています。

人権・女性の権利の主張は正論ではありますが、その一方で、現実に今日・明日の暮らしに困っている女性たちの境遇をどうするのかという視点も忘れずに対応すべき問題でもあります。

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