孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コートジボワール  依然として続く緊張  サハラ以南での民主化は?

2011-03-01 21:43:16 | 国際情勢

(バグボ大統領側は、ワタラ氏を保護する国連のPKOを不当な国際介入と非難、ワタラ氏が拠点としているホテルを攻撃するよう政府幹部が若者に呼びかけるなどの動きもあります。 写真は首都近郊からの難民の様子 2月24日 “flickr”より By jhh510110@ymail.com
http://www.flickr.com/photos/54213354@N04/5475718016/ )

二人の大統領
アフリカ西部コートジボワールでは、昨年11月の大統領選でアルサン・ワタラ元首相が当選したにもかかわらず、ローラン・バグボ氏が大統領辞任を拒否して混乱が続いています。
ワタラ元首相は、国連の平和維持活動によって、軍や警察など国内実権を依然掌握するバグボ大統領側から守られている状況です。

エチオピアの首都アディスアベバで1月30日に開催されたアフリカ連合(AU)首脳会議に出席した国連の潘基文事務総長は、バグボ大統領の「平和で栄誉ある」退陣が重要であり、ワタラ氏には「挙国一致内閣の発足」を求めています。

また、同首脳会議で、AUはコートジボワールで対立するワタラ氏とバグボ氏に1か月以内に拘束力のある勧告を行うために、アフリカの国家元首5人からなる委員会を発足させると発表しました。新委員会は、交渉を通じてワタラ氏の「(大統領としての)権限行使」をしやすくするものだと説明されています。【1月30日 AFPより】
しかし1カ月が経過しますが、目立った前進は伝えられていません。

リビアなどの中東の民主化ドミノの動きに世界が注目するなかで、コートジボワールは世界から忘れさられた感もありますが、依然として緊張状態が続いているとの報道がありました。

****バグボ氏派が国連調査団に発砲、緊迫の度を増すコートジボワール****
コートジボワールで28日、大統領選で敗れた後も大統領職を辞さないローラン・バグボ氏支持派の部隊が、同国の武器禁輸違反を調査していた国連チームに発砲した。
国連筋によると、国連のコートジボワール制裁委員会の専門家たちと国連平和維持部隊の幹部1人が、首都ヤムスクロの空港で武器禁輸違反について調査していたところ、バグボ氏を支持するグループに銃撃され、撤収を余儀なくされたという。報告によると負傷者はいなかった。(中略)

■ベラルーシが攻撃ヘリ輸出か
そんな中、国連安全保障理事会が決めたコートジボワールへの武器禁輸制裁措置を破ってベラルーシから攻撃ヘリコプター3機などがバグボ氏派に送られたとして、潘基文国連事務総長が批判している。
潘事務総長は、コートジボワールは内戦へ逆行しかねないと懸念を表明し、バラク・オバマ米大統領もワシントンで行われた会合で同様の発言をした。

潘事務総長によると、コートジボワールへは27日にベラルーシからヘリコプター1機が届き、残る2機も28日に到着するとみられていた。ベラルーシからコートジボワールへの武器禁輸違反の報告について、潘事務総長は安保理での協議を呼びかけた。
同理事会のコートジボワール専門家パネルはニューヨークで協議し、コートジボワールに派遣されている国連ミッションに武器輸出の事実を確認できるような詳しい情報を提供するよう要請した。

■国連職員が一時誘拐される
発砲と同時刻、やはりバグボ氏支持派の若者がアビジャン市内でウクライナ国籍の国連職員2人を誘拐し、事態はいっそう緊迫したが、数時間後に2人の身柄はバグボ氏直属の治安部隊に移り、その後国連に引き渡された。
一方、ベラルーシは外務省が「安保理による制裁を破ったことなどない」と発表するなど、禁輸違反を否認している。またバグボ氏の広報担当者も、国連の主張は「バグボ大統領の政府に対する攻撃を正当化する詭弁(きべん)だ」と反論している。

バグボ氏派とワタラ氏派の衝突が増える中、コートジボワール情勢はこのところ日に日に緊迫の度を強めている。現在同国では1万500人を超える要員が国連の平和維持活動を行っており、その一部はワタラ氏陣営の本部を警護している。司令官によると、国連ミッションに対するバグボ氏派の敵意は高まっており、前週末には国連ミッション要員3人がバグボ氏派に撃たれ、負傷している。
コートジボワール大統領選の結果については、アフリカ連合の調停パネルもまもなく独自の裁定を下すものと見込まれている。【3月1日 AFP】
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上記記事最後のAU調停パネルというのが、冒頭で紹介した“1か月以内に拘束力のある勧告を行うための、アフリカの国家元首5人からなる委員会”のことでしょうか。
しかし、“拘束力”はどのように担保されるのでしょうか?

カカオ禁輸
コートジボワールは世界最大のカカオ生産国ですが、大統領の座に居座り続けるバグボ氏に財政的圧力をかける目的で、ワタラ元首相は1月24日、1カ月にわたるカカオの全面輸出禁止を命じています。
カカオ輸出はバグボ派の主要な収入源となっているとか。

****カカオ禁輸、居座る大統領を兵糧攻め…コートジボワール****
カカオ豆を世界で最も多く生産しているアフリカ西部コートジボワールで24日、カカオ豆の輸出を禁止する措置が始まった。昨年から同国で続く政争の打開策だ。国際市場での価格は24日、5カ月ぶりの高値を付けた。

昨年11月の同国の大統領選で、選挙管理委員会や国際社会は野党指導者のワタラ元首相が当選したと認定した。ワタラ氏は内閣も発足させたが、現職バグボ氏は負けを認めず、軍や警察の支援を受けて大統領職に居座っている。バグボ氏を平和的に辞めさせようとの国内外の努力は難航している。
その打開策としてワタラ氏が打ち出したのがカカオ豆輸出禁止令。同国の生産量は世界の3割を占め、2009年には25億3千万ドル(2085億円)を稼いだ。ここからの税収がバグボ氏の資金源だからだ。ロイター通信などによると、24日から1カ月間、新たに売買が決まったカカオ豆の輸出を禁止する。違反業者は国際的な制裁を受ける。

カカオ豆の流通に影響が出るとの観測から、先物市場は高騰した。(中略)
問題はワタラ氏が実質的に国土を支配しておらず、違反者への強制力がないこと。商売は続き、値段だけが上がるのでは逆効果となる。米政府は禁輸令への支持を表明した。同国のカカオ豆の15%を買ってきた実績がある農業ビジネス大手カーギル社(米国)も同日、購入を停止した。国内外でどれだけ多くの同調者が出るか、注目されている。 【1月26日 朝日】
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カカオ禁輸には、アメリカだけでなくEUも同調したもようで、2月17日、カカオ農民が首都アビジャンのEU事務所前で大量のカカオ豆を燃やす抗議デモを行ったことなども報じられています。
こうした抗議デモの背景にバグボ大統領側のコントロールがあるのかはわかりません。
いずれにしても、1か月間という禁輸期間は終了しました。その後はどうなっているのでしょうか?

北アフリカ・中東に比べ困難な民主化運動
コートジボワールのような独裁的指導者による強権支配国家は、サハラ以南のアフリカには多数存在します。
現在進行している北アフリカ・中東の“民主化”抗議行動が、こうしたサハラ以南にも影響するかどうかについては、この地域の民族と宗教の多様性が一致団結を難しくさせている可能性が指摘されています。
また、ソーシャルネットワークの普及が遅れていること、コートジボワールのように軍が政権側に立っていることも抗議行動の広がりを阻んでいます。

****北アフリカ・中東の反体制デモはサハラ以南にも波及するか****
抑圧、貧困、汚職が代名詞となっているサハラ以南のアフリカ諸国は今、アフリカ北部などのアラブ世界を席巻する革命の波に、希望のまなざしを向けている。

サハラ以南には、ワンマン体制が20~30年以上続いている国が数多く存在する。だが、富裕エリート層と貧困にあえぐ大多数とのギャップがあまりにも大きく開き、圧政も当たり前のように続いているこれらの国々は、チュニジアやエジプト、リビアにおけるような怒れる大衆の大きなうねりを作り出すことができるのだろうか?
ナイジェリアの人権活動家シェフ・サニ(Shehu Sani)氏は、「北アフリカの反体制デモはアンゴラからブルキナファソ、ナイジェリアからエリトリアに至るまで、サハラ以南のアフリカを刺激することになるだろう。サハラ以南の民衆が蜂起するのは時間の問題だ」と話す。

しかし、サニ氏自身、(サハラ以南の)民族と宗教の多様性が一致団結を難しくさせている可能性を認識している。
ナイジェリアの学者、エゼ・オシタ(Eze Osita)氏は、「北アフリカはサハラ以南と違い、人種、文化、宗教の点で同質であり、このことが国民の動員をたやすくした」と解説する。

■サハラ以南の各地でデモ
それでも、サハラ以南の野党指導者らは支持者に対し、アラブの例にならって反乱を起こすよう呼びかけている。その一方で、国の指導者たちはそうした動きの封じ込めに躍起になっている。

赤道ギニアは「報道管制」を行い、チュニジアとエジプトの大統領退陣に関するニュースを一切国民の目に触れさせないようにしている。
アンゴラでは、匿名の人物が政府への大規模な抗議デモを呼びかけたが、1975年の独立時から政権の座にある与党は「デモ参加者には重い刑罰が科される」と警告した。
ロバート・ムガベ大統領(87)の政権が1980年から続いているジンバブエでは、エジプトの反政府デモに関する研究会を開いたとして、元国会議員1人を含む47人が逮捕された。
国民がそれほど抑圧されていないモザンビークやブルキナファソ、民主主義が進んでいるとされる南アフリカやセネガルといった国々でも、デモが起きている。いずれも、貧困・失業対策、インフラ整備を求めるといった内容だ。
 
■サハラ以南で反体制デモが置きにくいその他の理由
チュニジアとエジプトでの政権崩壊の鍵となったのが「ソーシャルネットワークによる動員」と「軍の中立的態度」だと指摘されているが、サハラ以南の各国の軍は権力者に擦り寄る傾向が強く、インターネットの普及率もマグレブ諸国に比べると圧倒的に低い。 

前者の例は、コートジボワールが良い例だ。前年11月の大統領選でアルサン・ワタラ元首相が現職のローラン・バグボ大統領を破って当選したが、バグボ氏は権力移譲を拒否。軍はバグボ氏の後ろ盾に回った。

ウガンダでは、 ヨウェリ・カグタ・ムセベニ大統領が1986年から政権の座にあり、前月の大統領選でも再選されたが、選挙に不正があったと指摘されている。同国マケレレ大のフレデリック・ムテビ教授は、「ウガンダの軍は政権を強く支持しており、政府の民兵として振る舞うことも多い」と指摘した。
ムテビ氏はさらに、サハラ以南、特にウガンダは、教育を受けた中流階級が少ない上、北アフリカに比べて都市化も進んでいないと話した。
「反体制デモを開始、継続していくためのインフラは、北アフリカではここよりはるかに整備されている。エジプトのデモ隊は、インターネットにせよ、ほかの手段にせよ、緊密に連絡を取り合っていた。そのようなことを可能にするインフラはここにはない」(ムテビ氏)

一方、ジンバブエ国立マスビンゴ大のある専門家は、北アフリカの反体制デモは別の方面にも影響をもたらす恐れがあると警鐘を鳴らす。独裁者が地位を固めようと努めるようになり、その結果、強権体制が強化されることになりかねないという。【3月1日 AFP】
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