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(プーチン首相お気に入りのソチ五輪公式マスコット 首相の“不正操作”にメドベージェフ大統領が怒ったとか・・・ “flickr”より By Sochi 2014 Winter Games http://www.flickr.com/photos/43767123@N02/5480063620/ )
【「過激主義を助長する」】
17日の国連安全保障理事会は、リビアのカダフィ政権による反体制派への空爆などを防ぐため、リビア上空に飛行禁止空域を設定する決議を賛成多数で採択しましたが、この決議を棄権したロシアのチュルキン大使は「飛行禁止空域の実効性に疑問がある」と棄権理由を述べています。
その後も、多国籍軍によるリビア攻撃開始にあたり、ロシア外務省は19日、一般市民の被害回避と速やかな攻撃停止を求める声明を発表しています。また、ロシアのロゴジン駐北大西洋条約機構(NATO)大使は、リビア攻撃が「紛争の拡大と制御不能の連鎖反応につながり、北アフリカや中東地域全体の過激主義を助長する」と警告しています。【3月20日 毎日より】
21日には、プーチン首相が「キリスト教徒が宗教の聖地を取り戻すためにイスラム教徒を攻撃した中世の十字軍を思い起こさせる」と多国籍軍のリビア攻撃を批判しています。
****ロシア首相 リビア攻撃を批判*****
欧米諸国によるリビアへの攻撃について慎重な姿勢を取ってきたロシアのプーチン首相は21日、軍事行動を容認した国連安全保障理事会の決議には欠陥があると指摘し、「主権国家に対してどのような行動を取っても許されることが明らかになった」と述べて批判しました。
そして、「キリスト教徒が宗教の聖地を取り戻すためにイスラム教徒を攻撃した中世の十字軍を思い起こさせる」と述べて、欧米諸国の攻撃によって、中東地域に新たな宗教間の対立を生むおそれもあるとの懸念を示しました。これに対して、メドベージェフ大統領は、軍事攻撃に慎重な姿勢をプーチン首相と共有しながらも「文明間の対立をもたらす十字軍などの表現を使うことは容認できない」と批判し、これまで二人三脚でロシアを率いてきたプーチン首相との関係に微妙な影を落とす結果となっています。【3月22日 NHK】
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【プーチンVSメドベージェフ】
このプーチン首相の“十字軍発言”をメドベージェフ大統領が「文明間の対立をもたらす十字軍などの表現を使うことは容認できない」と批判したことは、かねてより注目されている両者の関係、次期大統領選挙へどちらが立候補するのかという問題に絡んで、注目を集めています。
****露大統領「十字軍発言は容認できぬ」、プーチン首相を暗に批判****
ロシアのメドベージェフ大統領は21日、米英仏軍などによるリビア攻撃を中世の十字軍に例えたプーチン首相の発言を、名指しは避けながらも批判した。
プーチン首相は同日、ミサイル製造工場を訪れた際、リビアへの軍事行動を認めた国連安全保障理事会の決議について、「中世の十字軍を思い起こさせる」と述べていた。
同首相の発言を受け、メドベージェフ大統領は記者団に対し、「物事を評価する際には、十分な注意が必要だ。文明間の対立をもたらす十字軍などの表現を使うことは容認できない」と強調した。
プーチン首相に対する痛烈批判と受け取られる大統領の公の発言は、2012年に迫った大統領選を前に、「双頭体制」を築く両氏の間の不和を示すものではないかとの声も上がっている。【3月22日 ロイター】
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いつもながら両者の関係は部外者にはわからないところす。恐らく当人同士も、次期大統領選挙に向けて、相手の腹を探り合っている状況ではないでしょうか。
なお、両者の関係に関する話題として、ソチ冬季五輪公式マスコット選びでのさや当てもあったとか。
****ソチ五輪のマスコット選びでプーチンVSメドベージェフ*****
2014年にソチ冬季五輪を開催するロシアが、公式マスコット選びで「炎上」した。
事の発端は、先月末に国営テレビが実施したマスコット選びの人気投票。
140万人による投票で、最終候補に残った10種類のうち、スノーボード片手のヒョウ、マフラーを巻いたホッキョクグマ、そして無邪気な顔の野ウサギの3匹が選ばれた。
だがこの結果に、ロシア国民がキレた。プーチン首相が投票結果の発表直前にヒョウをべた褒めする発言をしたため、その夜の発表までにヒョウ人気が急騰して1位になった、と結果の不正操作を疑っているのだ。
この結果には、メドベージェフ大統領も怒り心頭の様子。近く導入を予定しているIDカードのデザイン選びは「オリンピックのマスコット選びよりも公正であってほしい」と皮肉たっぷりに述べた。メドベージェフは人気投票で2位だったホッキョクグマを推していたという(ちなみにロシア語でクマの発音は「メドベージ」)。
さらにこのシロクマが、80年のモスクワ夏季五輪のマスコット「こぐまのミーシャ」の盗作ではないかとの疑惑も浮上した。愛らしさがすっかり台無しだ。【3月16日号 Newsweek日本版】
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まあ、こちらは他愛もない話ではありますが。
一方、ロシア下院は23日、リビアでの戦闘行為の即時停止を求める声明を賛成多数で採択しています。
****多国籍軍に即時停戦求める ロシア下院が声明採択*****
多国籍軍によるリビアへの軍事行動について、ロシア下院は23日、軍事作戦の規模や形態に憂慮を示し、戦闘行為の即時停止を求める声明を賛成多数で採択した。このままでは一般住民の新たな犠牲を生むとして、英米仏やイタリア、カナダなどの議会に呼びかけている。
カダフィ政権の市民弾圧も非難するロシアは、飛行禁止空域を確保する国連安保理決議の採択に拒否権を行使せず「棄権」を選択した。だが、声明では「安保理決議が一般住民の保護とは別の目的を達成するための口実に使われている」などと指摘、「リビア領土へのミサイル爆撃は飛行禁止空域とは直接関係がない」と批判している。
また、インタファクス通信によると、ロシアのプーチン首相は同日、訪問先のセルビアでの記者会見で「リビア全土への攻撃は一般住民の犠牲を増やすだけ。どうやって一般住民の保護が果たせるのか」と懸念を示した。
ロシアは、欧米の対リビア軍事介入によって「新たな国際テロを誘発する可能性がある」(ラブロフ外相)などと主張している。【3月24日 朝日】
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【リビア混乱によるロシアの損失】
リビアの混乱、カダフィ政権崩壊はリビアへの武器輸出停止、海軍基地建設の関係で、ロシアとって大きな損失になっているとの指摘もあります。
****リビアの政情不安はロシアに損か得か****
内戦目前のリビアをはじめ、不安定な情勢が続く中東・北アフリカ。この地域には産油国が多いことから供給不安が強まり、世界的に原油価格が高騰している。だが不安どころか笑いが止まらない国もある。ロシアだ。
今年初めから、ロシア産の原油価格は24%上昇。ロシアのクドリン財務相によれば、国家財政の補填用に原油収入の一部を積み立てている基金が、このままいけば昨年末の409億ドルが、今年末までに500億ドルに達する見込みだ。
ロシア政府首脳は笑いが止まらないかもしれないが、いい話ばかりではない。アラブ諸国、とりわけリビアの混乱でロシアが失うものは実はかなり大きい。
ロシアのメドベージェフ大統領は先週、リビアヘの武器輸出を禁止する大統領今に署名した。先月末、国連安保理が採択したリビア制裁決議を受けた措置だ。
両国は今回の騒乱前に、20億ドル相当の武器契約を結ぶことで合意していた。軍用機や対空ミサイルなど18億ドル以上の売却契約も進められていたという。今回の武器輸出の禁止でロシアが被る損失は約40値ドルとも言われている。
国連安保理で、ロシアはリビアヘの武器禁輸制裁を支持せざるを得なかった。「大国の責任として拒否権は行使できなかったのだろう」と、米シンクタンクの大西洋協議会アフリカ部門の責任者J・ピーター・ファムは言う。「ロシアは武器輸出全体の5分のIを失うことになる。大きな収入源がなくなる」
このままリビアで騒乱が長引いても、あるいはカダフィ政権が崩壊しても、武器売却に関わるすべての契約が履行されない可能性が高い。ロシアのセルジュコフ国防相は「危機感を募らせている。契約と合意が実行されることを望む」と語っていた。
それだけではない。リビアの最高指導者カダフィは08年、ロシアによる海軍基地建設を受け入れると申し出ていた。中東・北アフリカで欧米に対抗して影響力を維持しようとしてきたロシアにとって、基地に前向きだったリビアを失うのは痛手だ。
動乱の続くアラブ諸国の中でロシアから武器を購入している国は、リビア以外にもある。同じく騒乱が起きたエジプトやイエメン、アルジェリアなどだ。ロシアはこの地域に向けた武器売却で100億ドルの損出を出すとも指摘されている。 今回の中東革命で最も損害を被った国は、実はロシアなのかもしれない。【3月23日号 Newsweek日本版】
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もっとも、お金の話になれば、リビア攻撃を行っている英仏米の出費も大きなものがあります。
アメリカ国内ではオバマ大統領がリビア攻撃について事前に議会の同意を得ていなかったとの批判が噴出していますが、財政赤字削減が最優先課題となる中、多額の戦費負担を強いられるとの懸念も高まっています。
21日までに米英両軍のミサイル駆逐艦や潜水艦から、巡航ミサイル「トマホーク」124発を発射していますが、トマホーク巡航ミサイルの発射費用は1発140万ドル(約1億1300万円)ともいわれています。
また、飛行禁止区域のパトロール費用は1週間当たり3000万─1億ドルかかるとも言われています。
****リビアの飛行禁止区域、長期化なら10億ドル超のコストも****
リビア上空の飛行禁止区域の設定が数カ月に及ぶ場合、米英仏などによる多国籍軍の軍事費は10億ドル(約808億円)を超える可能性があると、米アナリストが明らかにした。
米シンクタンク、戦略予算評価センター(CSBA)のザック・クーパー氏は、リビア政権軍の防空施設を排除するための初期費用は4億─8億ドルになると予想。飛行禁止区域のパトロール費用は1週間当たり3000万─1億ドルかかるとしている。
また、米英軍がこれまでに使用した巡航ミサイル「トマホーク」の費用は約2億ドルに上ると述べた。(後略)【3月23日 ロイター】
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こうしたお金の話が早々に出てくるあたりに、アメリカ国内の慎重姿勢が窺えるとも言えます。
もちろん、もしカダフィ政権崩壊ということになれば、反政府勢力を支援した英仏米には戦費をカバーできる巨額の石油利権などのメリットがあるのではないかとも思われます。
その意味では、ロシアは失うものが多いのかも。