(12日の1号機爆発の状況 「格納容器の健全性は維持されている」とは言え、「大丈夫かよ・・・」と不安になる映像です。今日3号機の爆発はもっとヤバいものだったとか.。更に2号機の危険も・・・
“flickr”より By oracle_de_atlantis_4 http://www.flickr.com/photos/54275244@N06/5521688774/ )
【3号機も水素爆発 「格納容器の健全性は維持されていると思われる」】
“想定外”の巨大地震とは言え、これまでの日本の原子力発電技術に関する安全性神話が大きく揺らいでいます。
福島第一原発では、12日の1号機に続いて3号機でも水素爆発が起き、原子炉建屋が吹き飛ばされ、11名の負傷者を出す事態となっています。
****福島第一原発3号機で水素爆発 屋内待避呼びかけ****
東日本大震災で被害を受けた東京電力の福島第一原子力発電所(福島県大熊町)の3号機で14日午前11時ごろ、大きな爆発が起きた。経済産業省原子力安全・保安院によると、水素爆発が起きたことを確認した。
保安院は、原子炉が入っている圧力容器、それを覆う鋼鉄製の格納容器のいずれも、損傷した可能性は低いとみている。保安院は、20キロ圏内にいる住民に建物内に避難するよう要請した。東電によると、少なくとも11人が負傷しているという。
今回の爆発は、12日に1号機で建屋が吹き飛んだ爆発と同種とみられる。枝野幸男官房長官は14日午後0時40分からの記者会見で「格納容器の健全性は維持されていると思われる」とした上で、周辺の放射線量のデータに大きな変化は確認されておらず、「放射性物質が大量に飛び散っている可能性は低い」と述べた。
同原発で運転中だった1~3号機は地震後、原子炉を冷やす緊急炉心冷却システムが停止。3号機では、炉内の圧力や水位が不安定な状態が続き、燃料棒が一時露出するなどして爆発をしやすい水素が発生していたとみられる。13日午後からは、炉内に海水を注入して冷却を試みていたが、その最中に爆発は起きた。
12日に1号機で起きた爆発では、損壊は原子炉建屋にとどまり、格納容器と圧力容器に異常は確認されていない。保安院は、今回の爆発も原子炉建屋にとどまっているとみている。
保安院によると、20キロ圏には、少なくとも約600人の住民がいるとみており、屋内への避難を要請した。
東電によると、圧力容器、格納容器とも壊れていないことを確認しているという。周辺で中性子線は確認されていないとしている。
原子炉は、内側から圧力容器、格納容器、原子炉建屋の「壁」で守られている。ただ、圧力容器や、格納容器が壊れると、チェルノブイリ事故に匹敵する重大事故となる。【3月14日 朝日】
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枝野官房長官は「格納容器の健全性は維持されていると思われる」としていますが、一方で、今回3号機の爆発は一昨日1号機の爆発とは異なる点もあるとの指摘もあります。
****3号機の爆発、専門家から影響懸念の声も****
福島第一原発3号機の爆発の様子を伝えるテレビ映像を見た専門家からは、事故の深刻さをめぐって厳しい見方が相次いでいる。
小林圭二・元京都大学原子炉実験所講師(原子核工学)は「1号機の爆発とは違うように見えた。赤い炎は建物の高めの所であがっており、格納容器そのものは破壊されなかったと思う」とした上で、「影響範囲がどうだったかが心配だ。配管が破損して冷却できなくなったり、格納容器に変形や亀裂が入っていたりしていないだろうか。亀裂や部分的な破損で、放射性物質が大量に漏れる可能性もある」と話す。
技術評論家の桜井淳さんは「状況は非常によくない。これ以上怖いのは、3号機に冷却水を注入できなくなり、被覆管がボロボロになって圧力容器の底に落ちると、圧力容器が割れるかもしれない。格納容器まで破裂するかもしれない。そうすると、大量の放射能が環境中に放出される。スリーマイルよりひどい事態になるのでは」と推測する。
一方、佐藤一男・元原子力安全委員長(原子炉安全工学)は「爆発に伴う熱が格納容器に影響を及ぼすのは表面くらいで、長く熱が伝わることもなく大きな影響はないと思う。格納容器の周りは1メートル以上の鉄筋コンクリートがある。程度にもよるが、外側の爆発なら格納容器内までは響かないだろう」とみている。【3月14日 朝日】
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****灰褐色の煙300メートル上昇…爆発の3号機*****
今回の福島第一原発3号機の爆発には、12日の1号機の爆発といくつかの違いがある。
まず、1号機の時には水素爆発で発生した水蒸気を示す白煙がたちこめたが、今回は、白煙以外に、赤い炎を伴う灰褐色の煙が上空高く上った。また、爆発をとらえたニュース画像では、煙の中に、厚みのある大きな塊がいくつも飛び散っていた。詳細は不明だが、この爆発の後にも、爆発があったという。
今のところ、炎や灰褐色の煙、塊が何であるかは不明。3号機にたまった水蒸気の量が1号機よりも多かったので爆発の規模が大きくなったとも考えられるが、かなりの高温で燃焼を伴う別の破壊的な異変が起きていた可能性もある。
また、建屋内の上部にたまった水素が爆発したなら、一度の爆発で済むはずだ。1回目の爆発の影響で、高圧状態の配管などが破損し、爆発音がしたか、建屋上部以外のどこかにたまっていた水素が爆発した可能性がある。最悪の事態を想定すると、1回目の爆発によって、高圧の格納容器が損傷し、新たな爆発を生じたということも考えられる。その場合、原子炉を覆う最後の壁が破れたことになり、放射能を帯びた水、水蒸気などが外部へ放出されることになる。【3月14日 読売】
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東電・保安院や官房長官の説明のように「原子炉格納容器の健全性は保たれている」「大量の放射線量を示すものはない」という状態であることを願うばかりです。
【2号機 一時“空だき”状態 回復へ向かう】
更に、2号機も本日午後には冷却機能が停止、海水注入による冷却を開始していますが、炉心溶融・水素爆発の危険が続いています。
午後8時過ぎには2号機について、「海水注入が確認できず。燃料棒すべて露出の可能性。炉心溶融の可能性否定できず。」との速報も報じられ、事態の推移が懸念されていました。
東電からは、海水注入は一時不具合があったもののその後再開し、今は“空だき”状態は避けられている旨が説明されています。ただ、6時から2時間程度は燃料棒が水からむき出しになった“空だき”状態にあったようです。(午後9時半時点で、燃料棒の下半分が水面下になるまで“回復”しているそうです)
いずれにしても、危険な状況が続いているのは間違いないようです。
なお、午後9時には「周辺の放射能数値が上昇しており、炉心溶融が起こっている可能性がある」との情報も報じられています。
日本の原子炉は格納容器によって守られており、水素爆発が起きても格納容器は守られているので、原子炉の格納容器がなかったチェルノブイリ原発のような致命的な大事故はあり得ないとされています。
****チェルノブイリ級は「あり得ず」=原子力安全委の見解示す―玄葉氏****
玄葉光一郎国家戦略担当相(民主党政調会長)は14日午後、国会内で開かれた同党「東北地方太平洋沖地震対策本部」総会で、東京電力福島第1原発の事故に関し、「絶対にチェルノブイリ(級の事故)はあり得ない」とする原子力安全委員会と原子力安全・保安院の見解を明らかにした。
玄葉氏によると、安全委などはその理由として、チェルノブイリ原発には原子炉の格納容器がなく、福島第1原発では「水素爆発が起きても格納容器は守られている」と指摘したという。
また、玄葉氏は、住民への避難指示に関し、安全委などは最悪の場合でも「半径10キロ圏内」で対応可能とみていたが、政府の判断で「20キロ」に拡大したことも明らかにした。【3月14日 時事】
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【当初の想定では「日本では炉心溶融が起こらない」】
1号機、2号機、3号機すべてで冷却システムがダウンし、外部からの海水注入を行いつつ、格納容器の圧力を下げる「弁」の開放という最後の手段により格納容器破損という最悪シナリオを回避する努力が続けられていますが、このことは、もともと「弁」の必要性をも否定していた日本の原発に関する事故想定が甘かったことを実証するものでもあります。
****甘かった想定 頼った放出弁****
福島第一原発では、1号機に続いて炉心溶融の可能性がある3号機でも格納容器にある弁を開ける作業をとった。このガス放出弁は、実は、原発の建設時には日本では炉心溶融が起こらない」として装備されていなかった。海外の動きにおされて導入したこの弁が、今は最悪の事態を回避する命綱になっている。当初の事故想定がいかに甘かったかを示している。
弁は格納容器内のガスを放射能除去フィルターを通して外部に出すものだ。
1号機は12日に放出を行った。電源がないため、職員の手や小型のコンプレッサトで弁を開いた。圧力容器から出たガスで8気圧まで上昇していた格納容器内の圧力が大きく下がった。格納容器は4気圧まで耐えられる設計。8気圧は厳しい状況だった。
専門家は、もし弁がなければ、格納容器の爆発から大惨事にいたった可能性が高かったとみる。弁に助けられた。
3号機でも13日朝に弁を開けて放出を行った。
福島第一原発の6基の原発は1970年代に、福島第二原発の4幕の原発は80年代に運転を開始した。いずれも建設当時に弁はなかった。炉心溶融などの過酷事故(シビアアクシデント)は起こらないという考えからだった。
しかし、79年、米スリーマイル島(TMI)原発で炉心溶融が起き、爆発の一歩手前までいった。86年には違う炉型の旧ソ運チェルノブイリ原発で炉心爆発が起きた。
このため、フランスやスウェーデン、ドイツ、米国では炉心溶融に備え、格納容器に弁をつける変更を始めた。日本ではその後も「過酷事故は起こらない。対策は不要」とされてきた。しかし、92年に原学力安全委員が「検討が必要」との見解を出し、その後、電力業界も「確率は極めて低いが安全性を高める」として方針を変えた。
東京電力などがもつ沸騰水型炉(BWR)は90年代半ばから弁の設置を始めた。ガスは格納容器下部からフィルターを通って外部に出るようになっている。
一方、関西電力などの加圧水型炉(PWR)は沸騰水型より格納容器が大きく余裕があるとして弁はつくらず、格納容器内のガス冷却策の強化などで対応している。
ただ、弁の開放は、フィルターを通すとはいえ放射性ガスの放出という「やってはならないこと」の実施だ。格納容器の防護機能を自ら放棄して、圧力容器の安全という最後のとりでを守る「究極の選択」といえる。
リスクも大きい。1号機ではガス放出のあと、建屋内で水素爆発がおきた。建屋の壁が吹き飛び、負傷者4人を出した。水素の充満に放出が関係したことも考えられる。
もし大きな爆発が起きれば、大規模な放射能放出も考えられる。ぎりぎりの判断と覚悟が求められる作業だ。
東京電力に弁を開ける考えがどの程度あったのだろう。準備は十分だったのか。
炉心溶融を起こし、大量の避難民を生み、放射性物質を放出させた事実は、日本人の原子力への考えを決定的に変えるだろう。「想定外の……」の繰り返しでは片づけられない。そして、まだ原発の危機は去っていない。【3月14日 朝日 編集委員竹内敬二】
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どうせ格納容器に負担がかかる水素爆発の可能性が高いなら、事前に建屋を開放するなりして爆発を未然あるいは小規模に防ぐことも考えてもいいのでは・・・と素人考えで思ったのですが、実際そうした建屋に穴をあける作業も行われているとも報じられています。
とにもかくにも今は格納容器破損・大量の放射線放出といった最悪事態を何とか避けてもらいたいものです。
今後に向けての議論はそのあとで。