(3月13日 核廃棄物貯蔵施設があるドイツ北部ゴアレーベン(Gorleben)での原発反対の抗議デモ “Fukushima ist überall”(“Fukushima is everywhere”)のプラカード “flickr”より By cephir
http://www.flickr.com/photos/cephir/5531943110/ )
【消えないチェルノブイリの悪夢】
東電福島第一原発の事故については、今日も最悪シナリオを回避すべく、ヘリからの放水、地上からの放水、送電ラインの確保など、必死の対策が取られていますが、予断を許さない危機的状況が続いています。
“想定外”の事故、“日本ではありえない”とされていた事故、その後の制御不能の状態の衝撃は、温暖化対策や原油価格高騰のなかで“原子力ルネサンス”とも呼ばれる原発重視の姿勢を強めていた世界各国の原子力対応へ深刻な再考を求めています。
****原子力時代終焉・統制不能…各国報道も原発集中****
東京電力福島第一原子力発電所の事故が連日、深刻化するにつれて、各国メディアの報道も、原発の危険性に集中し始めている。
米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は14日、「電力会社幹部はどうすればいいか分からず、完全にパニックだ」とする業界関係者の見方を紹介、最悪の場合は燃料が格納容器の底を突き抜ける「メルトダウン」が起きる恐れを指摘した。
米メディアの関心は、放射性物質の拡散や米国内の原発の耐震性などにも移っている。14日のホワイトハウスでの記者会見では、「同規模の地震に米国の原発は耐えられるのか」「最悪のシナリオでも、アラスカや西海岸に(日本からの)放射性物質は届かないか」といった質問が相次ぎ、米原子力規制委員会(NRC)のグレゴリー・ヤツコ委員長が「距離から見て米国に害が及ぶことは、まずない」などと否定に追われた。
米国内には104の原発があり、電力の2割をまかなっている。カリフォルニア州では地震、中西部では竜巻の脅威があるため、米専門家の間では「日本の事故が、米国内の原発の建築、運用の規制強化につながる可能性がある」との見方が広まっている。
(中略)
ドイツの高級誌シュピーゲル(14日付英語電子版)は、「原子力時代の終焉」という見出しで詳報しながら、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と比較し、「日本政府が安全を確約しているにもかかわらず、再びチェルノブイリが起きる不安が広がっている」と伝えた。【3月15日 読売】
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【アメリカ:引き続き原発推進】
アメリカでは1979年のスリーマイル島原発事故以来、原発の安全性に対する懸念が強く存在していますが、オバマ大統領は、国内のエネルギー需要に対応する狙いで、化石燃料への依存を減らし、原子力発電を推進する方針を打ち出し、昨年には、約30年ぶりに建設する新たな原発に83億ドル(約6800億円)の融資保証を発表しています
原子力関連産業の団体、米国原子力エネルギー協会(NEI)によると、現在、向こう15─20年間に建設予定の原子炉20基の営業免許申請を当局が審査中です。
今回の事態を受け、「日本の地震・津波被害の状況を把握するまで、静かに素早くブレーキをかける必要があると思う」(上院国土安全保障・政府活動委員会のリーバーマン委員長)など、米政府内ではこうしたエネルギー政策を見直す動きも出ているとも伝えられています。
しかし、当面は国内の原子力発電を引き続き推進していく意向があらためて示しされています。
今後、オバマ大統領が提案している360億ドル(2兆9520億円)の原発建設融資策を巡り、議会で議論を呼ぶことが予想されます。
****米国が原発推進をあらためて強調、福島原発事故は「教訓に」****
日本の福島第1原子力発電所で相次いで事故が発生するなか、米政府は14日、国内の原子力発電を引き続き推進していく意向をあらためて示した。
米エネルギー省のポネマン副長官はホワイトハウスで記者団に対し、政府が目指すクリーンエネルギーの発展に向け、原子力発電は非常に重要な位置を占めていると指摘。米国内の原発の安全性を確信していると強調した。
日本での原発事故については、今後の技術改善に教訓として生かすと述べた。
米国では現在、104基の原発が稼動しており、国内電力需要の20%をまかなっている。(後略)【3月15日 ロイター】
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【ドイツ:稼働期間延長方針を棚上げ】
今回事故にもっとも敏感に反応したのがドイツです。メルケル首相は原発稼働期間を延長する決定を棚上げすることを発表しています。
****ドイツが原発稼働延長を棚上げ、福島第1原発の問題受け****
ドイツ政府は、東日本大震災で被災した東京電力福島第1原子力発電所が危険な状況に陥っていることを受け、原子力発電所の稼働期間を延長する方針を棚上げした。
独連立政権は昨年、シュレーダー前政権が掲げた脱原発政策を修正し、原発の稼働停止期限を延長することで合意した。
ところが、地震で被災した福島第1原発の深刻な事態を受け、急きょその方針の見直しを迫られた。
メルケル首相は記者会見で「わが国の原発の稼働期間を延長する決定を棚上げにする。期間は3カ月を予定している」と述べたうえで、原発の安全性検査について、「一切聖域を設けず」行う方針を示した。【3月15日 ロイター】
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これまでは「ドイツの原発は安全だ」と強調していたメルケル首相ですが、15日には、1980年以前に稼働した7基すべての稼働を少なくとも6月まで一時停止する方針も表明しています。「世論調査では最大70%ものドイツ人が原発に反対している」(ニューヨークタイムズ)と言われるように原発への批判が強い世論を考慮して、“今月実施される地方選挙で大敗を避けようとする思惑があるとみている”【3月16日 ロイター】とも。
また、政策変更を迫られたメルケル首相は、日本政府の情報提供のありように苛立ちを募らせているようです。
イギリスでは、ヒューン・エネルギー相が日本の原発事故を受け、イギリスの原発に関する安全点検の報告書をまとめるよう関係者に指示しています。
“英下院にも、ドイツのような全面的政策見直しを視野に入れた対応を求める声があるが、エネルギー相は「(欧州)大陸側の一部の政治家は原発問題についての判断を急いでいるようにみえ、残念だ」と述べた。”【3月16日 時事】とも。
なお、EU全体としての対応としては、EU域内14か国で稼働している原子炉143基の安全性の総点検を実施することで原則合意しています。
【ロシア:原発輸出策を続ける方針】
チェルノブイリ原発事故を経験したロシアは、原発輸出策を続ける方針を鮮明にしています。
****原発建設にロシアとベラルーシ合意 「計画とめない」****
ロシアは15日、ベラルーシと共同で同国に原発を建設することで合意した。ロシアは原子力を成長産業と位置づけ、外交ツールとしても重視しており、福島第一原発の事故で広がる「原発敬遠」の動きを牽制(けんせい)する狙いがあると見られている。
ロシアのプーチン首相が同日、ベラルーシのルカシェンコ大統領らと会談して合意にこぎ着けた。インタファクス通信によると、プーチン首相は「ベラルーシは日本のような地震ゾーンにはないが、我々の原発は最新世代で安全性がより高い」と主張。14日には「日本の出来事の教訓は学ぶが、自らの計画を止める予定はない」と述べていた。
ロシア国営原子力企業「ロスアトム」の専門家も、福島のケースはチェルノブイリ原発事故とは根本的に違い、福島タイプの炉はロシアにはないと強調。こうした発言には「原発批判の高まりやパニックを払拭(ふっしょく)する試みだ」(独立新聞)との指摘が出ている。
チェルノブイリ事故で放射能被害を受けたベラルーシでの原発建設には、欧州連合(EU)加盟国の隣国リトアニアが反対している。
ロシアは中国やベトナムで原発を建設中で、計30基の原発輸出計画があるという。国内でも現在16%の原発電力シェアを2030年までに25%へ拡大する予定で、今後28基をつくる計画とされる。【3月16日 朝日】
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【中国:安全確保を最優先し見直し】
中国は安全確保を最優先し、中長期計画を見直す方針を決めています。
****中国:新規の原発建設計画の審査・承認を暫定的に凍結****
中国政府は16日、温家宝首相が主宰する国務院(政府)常務会議を開き、福島第1原発の事故を受けて、新規の原発建設計画の審査・承認を暫定的に凍結することを決めた。
常務会議は、稼働中の原発の全面的な安全検査を行うほか、原子力安全計画の策定を急ぐとしており、凍結は計画が確定するまでの措置。
原発増設などに関する中長期計画も見直される。中国政府はこれまで電力需要の急拡大に合わせて原発の増設を急速に進めてきたが、今回の事故で再検討を迫られた格好だ。
常務会議は、建設中の原発も再度チェックし、安全基準に合わなければ建設を停止することを決めた。【3月16日 毎日】
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【台湾・韓国、東南アジア各国でも高まる議論】
台湾・韓国でも安全性に関する議論が高まっています。
****台湾が原発公開、安全性を強調 韓国も原発の安全報告****
すでに原発のある台湾や韓国でも安全性への疑問の声が高まっている。
3カ所の原発を運営する台湾電力は15日、北部の海沿いにある第一原発をメディアに公開した。運転開始が1970年代末でやや古く、半径20キロ圏に台北市北部が入る。
陳台裕所長らは「福島にはないものが我々にはある」と安全性を強調した。敷地は海面から12メートルで、津波に耐えられる。予備電源にはガスタービン発電機2基とディーゼル発電機があるという。だが地元記者の一人は「いくら備えてもそれを上回る災害がありうることを考えないのか」と疑問を呈した。
台湾の電力供給のうち原子力は現在2割ほど。原発反対の機運が高まり、現在建設している第四原発の扱いが焦点となっている。馬英九(マー・インチウ)政権は、原発推進の政策は変更しない考えだ。しかし馬総統自身、「第四原発の防災対策を強化したい」と表明した。
韓国大統領府は16日、幹部会議を開いた。出席者によると、韓国国内で稼働中の21基の原発について設計段階から安全に配慮して建設されたことなどが報告された。
ただ、野党の孫鶴圭・民主党代表は16日、「原発を基本とするエネルギー政策を根本的に検討すべきだ」と発言。与党からも原発の徹底した再点検を求める声が出始めている。(村上太輝夫、箱田哲也) 【3月17日 朝日】
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原発導入を予定している東南アジア各国にも強い衝撃を与えています。
****原発導入予定の東南アジア各国に不安 見直し促す声も*****
福島原発で相次ぐ事故のニュースは、経済成長に伴う電力需要の急増などから原発導入を予定する東南アジア各国に驚きと不安を持って受け止められている。
「建設予定地で地震発生は予想されていない」「地震対策は万全だ」。昨年10月、国内で初めて建設する4基の原発のうち、2基を日本企業に発注することを決めたベトナム。メディアが連日事故を詳しく報じるなか、14日付の政府系ラオドン(労働)紙は、科学者の言葉を引用して、原発の安全性を強調した。
政府が世論の動きに敏感になっている表れだ。設置場所や災害時の冷却方法などでより慎重な計画を求める論評も出てきている。グエン・フォン・ガー外務省報道官は14日、朝日新聞の取材に「日本と協力し、最高の計画を作る」と語り、予定に変更のないことを確認した。
地震大国インドネシアでも、国内初の原発建設に向けた計画が進行中だ。有力紙コンパスは、16日付で複数の原発関係者らのコメントを掲載。原子力専門家のイワン・クルニアワン氏は「日本は原発施設で長年の歴史がある。日本人は勤勉で規律を守る国民にもかかわらず、事故が起きた」と、見直しを促した。
同国原子力庁の職員も16日、朝日新聞の電話取材に対し、匿名を条件に「日本の経験は多くの教訓を与えた。再考すべきだ、急ぐ必要はないではないか、という雰囲気になっている」と話した。(中略)
2021年をめどに初めて原発を導入する方針を打ち出しているマレーシア。野党が政権を握るペナン州のトップ、リム・グアンエン首席大臣が福島原発の事故直後から、同州内での原発建設に反対する考えを訴えるなど、複数の政治家や専門家から、政府に見直しを迫る声が上がっている。
リム氏は「先進国の日本ですら、原発をうまく制御できないでいるのに、マレーシアの与党政権が(原発事故に対し)どのような対応をするのか想像もできない」と述べた。
28年までに原発5基の建設計画があるタイ。アピシット首相は13日、「日本の原発での爆発はタイの計画に影響を与える」と発言。15日には建設候補地の東北部カラシン県で建設反対の住民約1千人が集会を開くなど、建設に否定的な発言や動きが相次ぐ。
また、温室効果ガス削減を理由に、一部で原発建設論議も出ているオーストラリアでは、与党労働党のギラード首相が14日、「豪州には太陽光や風力など代替エネルギーがほかにもあり、原発は必要ない」と語り、原発を推進しない姿勢を示した。【3月17日 朝日】
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このほか、メキシコ政府が14日、6月末までに決定するはずだった原子力発電所の建設計画について福島第1原発の事故状況が判明するまで保留する方針を明らかにしたこと、トルコのユルドゥズ・エネルギー相が、2カ所の原子力発電所の建設計画について予定通り進める方針を示したことなどが報じられています。
【イラン・ブシェール原発 「我々のは現在の高い基準で造られた」】
最後にイランのブシェール原発に関する話題。
****イラン原発、トラブル続発****
稼働を控えたイラン南部のブシェール原発(出力100万キロワット)が、相次いでトラブルに見舞われている。政府は4月の発電開始を目指すが、遅れは必至。ペルシャ湾を挟んで向き合う湾岸諸国からは、安全性を疑問視する声が上がっている。
「日本のもの(福島第一原発)は40年前の古い安全基準で造られ、我々のは現在の高い基準で造られた。問題が起きるとは思わない」。アフマディネジャド大統領は15日、スペインのテレビ局との会見でブシェール原発の安全性を強調した。
しかし、大統領の言葉とは裏腹に問題が立て続けに発覚している。建設を担ったロシアは2月末、炉心に装填した163本の燃料棒を取り外して点検すると発表した。冷却ポンプが破損し、炉心などに微細な金属片が散らばったためとしている。
昨年秋に発覚したコンピューターウイルス「スタクスネット」も影響した。詳細は不明だが、ロシアのロゴジン駐北大西洋条約機構(NATO)大使は1月、「チェルノブイリ原発事故に匹敵する惨事が起きるところだった」と述べた。
イランは地震大国だ。仮に放射能漏れが起きれば、風向きの関係で湾岸諸国に真っ先に被害が及ぶとされる。クウェートの専門家は米ブルームバーグ通信に「イランは『信用してほしい』というが、信じる方が難しい」と警戒感をあらわにする。
ブシェール原発は1974年、ドイツ企業により建股が始まった。79年のイスラム革命で中断した後、ロシアの協力で95年に再開され、昨年夏に完成。燃料棒もロシアが管理するため、米国も稼働を容認した経緯がある。【3月17日 朝日】
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原発建設をこれまでどおり推進する立場の政府の説明は「我々のものは日本のものとは違い安全だ」というものですが、どうでしょうか・・・・。日本でも“安全だ”と言われていました。