孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

7年ぶりにエルサレムで爆弾テロ 高まるイスラエル・パレスチナ間の緊張

2011-03-25 22:08:11 | 国際情勢

(エルサレム23日 バス停で爆発した爆弾で死者1名、負傷者約50名 7年ぶりの爆弾テロはイスラエルに衝撃を与えています。 “flickr”より By IsraelMFA http://www.flickr.com/photos/israel-mfa/5555720304/

米の拒否権発動で和平交渉は破綻
世界の目は日本の震災・原発事故とリビア等の中東・北アフリカの政変・民主化運動に向いており、パレスチナ関連のニュースはあまり最近見ませんでしたが、パレスチナ・イスラエルの緊張が高まっているようです。

パレスチナ和平に関しては、2月18日、アラブ諸国が提出したイスラエル入植活動をめぐる非難決議案について、国連安全保障理事会はメンバー15カ国中14カ国が賛成したもののアメリカが拒否権を発動、同決議案は廃案となって、暗礁に乗り上げた形になっています。

おりからの中東での民主化運動の流れを受けて、アメリカ側には、中東で拡大する政変が中東和平を進展させる契機となるとの判断もあって、採決突入による決裂を回避したいとの思惑もありましたが、結局アラブ側の強硬姿勢を変えることはできませんでした。
アメリカのライス国連大使は拒否権発動後、「われわれは入植活動に賛成しているわけではない。安保理の場で取り上げることは双方の対立を激化させるだけで、賛成できない」と釈明しています。【2月20日 産経より】

アッバス議長などパレスチナ自治政府側には、中東で反体制デモが相次ぐ中、米国の圧力で決議案を撤回すれば、パレスチナ指導部批判が噴出するとの危機感も強かったとの指摘もあります。【2月19日 読売より】
双方、揺れ動く中東情勢を睨みながらも、結局妥協に至らず、拒否権行使による否決という状況に陥っています。

ロケット弾攻撃、報復、爆弾テロ
その後、ガザ地区からのロケット弾攻撃、イスラエル側の報復攻撃で事態は悪化しています。

****パレスチナ:イスラエル軍砲撃で少年3人ら死亡 ガザ地区*****
パレスチナ自治区ガザ地区で22日、少年3人を含む市民4人がイスラエル軍の砲撃で死亡した。軍は「誤射」だとしている。ここ数日、武装勢力がガザ地区から発射したロケット弾数十発がイスラエル領内に着弾し、軍が報復攻撃に乗り出していた。

AP通信によると、死亡したのはガザ市の一家で、少年3人と成人男性。他に13人が負傷した。少年たちはガザ市内の自宅の庭でサッカーをしていた。
イスラエル軍は、誤射だったとしたうえで、武装勢力が現場近くからロケット弾で攻撃してきたと主張。ネタニヤフ首相は声明で「(イスラム原理主義勢力)ハマスが人間を盾にしている」と非難した。【3月23日 毎日】
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更に、23日には、イスラエルの首都エルサレムで爆弾テロがあり多数の死傷者を出しています。
****エルサレムで爆発、31人死傷し警察は「テロ攻撃」と非難****
イスラエルの首都エルサレムのバス停付近で23日午後、かばんの中に仕掛けられた爆弾が爆発、60代の女性1人が死亡、少なくとも30人が負傷した。
犯行声明は現在のところ出ていないものの、警察当局はパレスチナ武装勢力による「テロ攻撃」だと非難した。エルサレムで爆弾攻撃が起きたのは2004年以来7年ぶり。

イスラエルのネタニヤフ首相は、「イスラエルは、ここ2年間維持されてきた平穏と安全を守るため、積極的かつ責任を持って、賢明な対応を取る」と強調した。
パレスチナ自治区ガザの境界線周辺では、イスラエル軍とガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとの間で戦闘が激化しており、両者の緊張が高まっている。【3月24日 ロイター】
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【「攻撃を控える時期は終わった」】
エルサレム市内での爆破事件は04年以来で、イスラエル国内では好戦論が高まっているとも報じられています。
****イスラエル:高まる対パレスチナ好戦論 爆弾テロで死傷者*****
イスラエルとパレスチナとの間での軍事的緊張が急速に高まり、イスラエル政府内に好戦論が高まるなど、08年末のイスラエル軍によるガザ侵攻の「直前の情勢と似ている」との見方が出始めた。エルサレムでは23日、英国人女性が死亡する爆破事件があり、警察はパレスチナ武装勢力による爆破テロとみて捜査。24日にはイスラエル軍が自治区ガザ地区を空爆し、攻撃の応酬が激化している。(中略)

同市内での爆破事件は04年以来で、国民に衝撃が走った。イスラエルのシャローム副首相が同日、「(パレスチナへの)攻撃を控える時期は終わった」と語るなど、一部政治家から好戦的な発言が目立つ。
12日にも、自治区ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地イタマルで、入植者一家の親子5人が自宅で刺殺される事件が発生。当局はパレスチナ人の犯行とみており、強硬的な世論があおられ、入植者からの報復とみられる放火なども起きている。

両事件と関連づけなくても、パレスチナ人の間で占領国イスラエルへの怒りが再燃しているのは事実。昨年9月に和平交渉が中断して以降、入植住宅の建設が本格的に再開。また西岸では事件の容疑者と誤認された一般市民が就寝中にイスラエル軍に射殺されるなど人権侵害が日常化している。ガザでも22日、同国軍の誤射で子供3人が死亡した。

自治区住民の間では、現状を変えられない自治政府主流派ファタハだけでなく、その対抗勢力でガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスへの不満も増大している。
中東に広がった民主化要求に触発され、今月15日以降、両派の和解を求める若者の大規模デモが両地区で起きた。ガザではさらに、武装勢力「イスラム聖戦」がハマスの監視を逃れ、イスラエルへロケット弾を撃ち込む事態が起きている。

現在のところ、自治政府側は沈静化を図る言動を続けているが、イスラエル側の姿勢は不透明だ。
自治政府のアッバス議長は23日、エルサレムでの爆破テロを糾弾し、ハマスのハニヤ最高幹部は「イスラム聖戦」側に自制を求めた模様。一方、イスラエルのネタニヤフ首相は「イスラエルは断固として責任ある賢明な行動をとり、過去2年は続いた平穏と安全を守る」と語り、軍事行動と対話の両にらみの発言をした。
双方の対応次第では暴力的対立がエスカレートする恐れがあり、和平交渉を再開する土壌は完全に崩れている。【3月24日 毎日】
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毎日のようにパキスタンやイラク・アフガニスタンでのテロ報道を目にしている第三者の目から見ると、エルサレム市内での爆破事件が04年からこれまで7年間なかったという事実の方が驚異的です。
ガザ封鎖やヨルダン川西岸地区での“壁”による封じ込めによって、パレスチナ側の抵抗運動が抑え込まれていたという側面がありますが、イスラエル国内ではここ数年のテロ沈静化によって、パレスチナ問題への意識が希薄になってきているとの見方もありました。

今回テロは、そうしたイスラエル国内の幻想を打ち砕きパレスチナ問題の現実を突き付けた形ともなっています。
パレスチナ側にしても、イスラエル側にしても、従来通りの強硬姿勢だけでは憎悪の連鎖を断ち切ることは不可能だという事実を直視して、和平構築に向けた建設的な対応をとってもらいたいものですが、現実はなかなか・・・・。


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