孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

独仏友好条約(エリゼ条約)の締結から50周年

2013-01-23 21:19:27 | 欧州情勢

(フランス・オランド大統領とドイツ・メルケル首相 【1月23日 Broomberg.co.jp】http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MH23JY6K50XZ01.html

イギリス:EU残留の是非を問う国民投票という賭け
イギリスで高まるEU脱退を求める動きについては、1月20日ブログ「イギリス  強まるEU脱退への動き 対応に苦慮するキャメロン首相」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130120)で取り上げたところですが、キャメロン首相は23日、EUからの離脱を問う国民投票の実施について明らかにしました。

****国民投票、次回総選挙後に実施=EU残留の是非問う―キャメロン英首相****
キャメロン英首相は23日朝、ロンドンで演説し、2015年の次回総選挙以降に、英国が欧州連合(EU)に残留するか離脱するかを問う国民投票の実施を目指す意向を明らかにした。

英国とEUの経済的な結び付きは深く、EUにとどまることが「国益」であるとはキャメロン首相も認める。ただ、債務危機をきっかけにユーロ圏諸国は統合深化にかじを切る一方、英与党保守党や国内世論の反EU感情も根強い。こうした中、首相はあえてEU残留の是非を問う国民投票という賭けに出た。【1月23日 時事】 
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大陸とは一定の距離を保ちながらもEUの単一市場がもたらす経済的利益を重視してきたイギリスと、「不戦の誓い」を出発点に欧州統合を主導してきたドイツやフランスの立ち位置には差があることは、前回ブログでも触れたとおりです。

メルケル独首相「変革への勇気があれば難題を克服できる」】
EU離脱を求める与党・世論の動きに苦慮するイギリスとは対照的に、1月22日は戦後のドイツとフランスの和解の土台となった独仏友好条約(エリゼ条約)の締結から50周年にあたり、独仏両国では記念式典が行われ欧州統合へ向けた姿勢を改めて確認しています。

****独仏友好条約:「勇気あれば難題克服」…50周年記念式典****
戦後のドイツとフランスの和解の土台となった独仏友好条約(エリゼ条約)の締結から50周年を迎えた22日、ベルリンで記念式典が開かれた。

メルケル独首相は「変革への勇気があれば難題を克服できる。両国はこの50年でそれを学んだ」と述べ、憎悪を乗り越えた両国の半世紀の歩みを称賛。オランド仏大統領も「欧州統合というとてつもない冒険を、若者たちのために続けよう」と語った。この日はフランスの閣僚や国会議員ら約400人もベルリンを訪れ、独連邦議会の合同会議などに出席した。

条約は63年1月22日、当時のドゴール仏大統領とアデナウアー西独首相がパリのエリゼ宮で調印。20世紀に2度の大戦を経験した反省に立ち、首脳・閣僚の定期的会談や青少年交流など「人的交流」に重点を置く方針を盛り込んだ。

一方、式典後の記者会見では西アフリカ・マリに軍事介入した仏軍への「協力」について、輸送機2機のみの派遣を決めたメルケル首相は「(戦闘行為参加は)考えていない」と独軍の参戦を改めて否定した。オランド大統領は「ドイツの連帯に感謝する」と述べるにとどめた。【1月23日 毎日】
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現実の課題への対応においては、独仏両国は必ずしも一致している訳ではありません。
財政危機に揺れるユーロ圏経済、その渦中にあるフランスの問題についても、“危機への対応策をめぐり両首脳は合意の取りまとめに苦しんでいる。オランド大統領がドイツの規律重視の財政政策に抵抗する一方で、ドイツ国内では仏雇用市場の抜本的な改革を進めるよう同大統領により迅速に行動するよう求める声が上がっている。”【1月23日 Broomberg.co.jp】とも指摘されています。

ただ、「変革への勇気があれば難題を克服できる」というメルケル首相の信念が、今の独仏関係・ユーロ圏・EUをリードしているように見えます。それを支えるのが、欧州統合という理念の共有でしょう。

【「意見や利害の違いを軍事力で解決するという方法は、もはや考えられない」】
駐日独仏大使は、“対立がもたらす代償がいかに大きく、和解から得られる利点がいかに大きいかを、歴史の教訓から知ったから”こそ、“両国は欧州統合のエンジンとなったし、そうあり続ける”との寄稿文を【1月18日 朝日】に寄せています。

****独仏協力(エリゼ)条約-隣国との和解が互いの利益****
駐日ドイツ大使 フォルカー・シュタンツェル
駐日フランス大使 クリスチャン・マセ

2013年1月22日、ドイツとフランスは「独仏協力条約(エリゼ条約)」の調印から50周年を迎える。戦後の仏独両国の和解の土台となった文書である。

隣国同士の歴史的関係は複雑になりがちで、独仏も例外ではなかった。西暦800年ごろ、シャルルマーニュ皇帝(カール大帝)は、後に仏独国民になる人びとの「故郷」をつくり、共存の基礎とした。大帝は人びとの交流が着実に拡大すると願っていただろう。だが彼の帝国から生まれた二つの国は悲惨な戦争を繰り返し、第一次、第二次の両世界大戦で破滅と苦難を経験した。

ナチ体制による熱狂と苦痛に満ちた戦争体験の後、両国が和解するためには、シューマン元仏外相、ドゴール元仏大統領、アデナウアー元独首相のような、勇気と長期的視野、さらに雅量を備えた政治家が必要だった。彼らは両国は宿敵ではなく、平和と繁栄を生み出す運命にあると考えていた。

63年に署名されたエリゼ条約も、その後の両国民の誠意と努力がなければ、各国の史料館に所蔵されたままの外交文書になっただろう。友情は宣言では生まれない。幅広い草の根交流や互いの言語の習得が不可欠になる。
両国政府は仏独青少年事務所を63年に創設、750万人の若者が隣の国を知った。言語を学ぶ組織も数多くでき、90年に仏独二カ国語放送局、97年には独仏180の大学が参加する「独仏大学」が設立された。欧州の統治と行政に関する独仏共同修士課程プログラムも今年から始まる。

独仏の学校は最もつらい時期を含め全歴史を描いた共通の教科書を使用する。姉妹都市提携数は2200以上にのぼる。防衛分野では89年に独仏合同旅団が創設され、6千人の軍人が活動。いまや欧州合同軍の必須の部隊である。
両国を隔てるより結びつける要素が多くなったのは史上初めてだ。意見や利害の違いを軍事力で解決するという方法は、もはや考えられない。

この50年を振り返ると、仏独ともに将来に向けた責務を一層感じるとともに勇気づけられもする。両国は欧州統合のエンジンとなったし、そうあり続ける。国境の撤廃、共通の通貨、居住の自由など今日の欧州市民が享受している恩恵は、独仏の協働なしには考えられない。
独仏両国民は今後もこの道を歩んでいく。対立がもたらす代償がいかに大きく、和解から得られる利点がいかに大きいかを、歴史の教訓から知ったからである。
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2002年の単一通貨ユーロ流通開始後はユーロ圏に加わらず、域内の自由移動を認めるシェンゲン協定も一部を除き参加していないイギリスと、“国境の撤廃、共通の通貨、居住の自由など今日の欧州市民が享受している恩恵は、独仏の協働なしには考えられない”とするドイツ・フランスでは、その歩む道が大きく異なってきています。
ドイツのギド・ヴェスターヴェレ外務大臣とフランスのローラン・ファビウス外務大臣が、エリゼ条約調印50周年に際し、1月22日付仏『ル・モンド』紙と独『FAZ』紙に共同で寄稿した文書には、以下のようにも述べられています。

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ヨーロッパはかつてないほど我々の協力の中心です。単一市場から、人とモノの自由な移動、共通通貨に至るEUの成功は、両国の意志と共同行動がなければ考えられませんでした。我々は今後も独仏友好をこの計画に資するようにしたいと考えるとともに、希望する国々には我々に合流するよう呼びかけます。ワイマール三角連合の枠内で、ポーランドは我々の側に立ってヨーロッパ統合のために全面的に取り組みました。
意欲ある国々の最初の集まりが有意義な形で形成できるでしょうが、一部の国が義務を遵守せずにEUの特権を要求するような「四分五裂」状態のヨーロッパは、考えられる選択肢ではありません。
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“義務を遵守せずにEUの特権を要求する”云々は、これまでのイギリスの対応への批判のようにも思えます。

壁が立ちはだかる東アジア
尖閣諸島をめぐり軍事衝突の可能性すら俎上に上る日中関係、竹島や従軍慰安婦問題などで対立を繰り返すに関関係・・・など、日本をとりまく東アジア情勢を考えると、“意見や利害の違いを軍事力で解決するという方法は、もはや考えられない”とする独仏の関係は羨ましくもあります。

日本にとっては、中国・韓国との歴史認識の違いの問題、人権や民主主義といった基本的価値観に関する日中間の違いなど、関係改善には大きな壁が立ちはだかっています。
ただ、現在の不協和のみに目を奪われ、壁を乗り越える努力を放棄し、内向きの姿勢に転じるのでは、事態の改善は永久に望めないでしょう。

“63年に署名されたエリゼ条約も、その後の両国民の誠意と努力がなければ、各国の史料館に所蔵されたままの外交文書になっただろう。友情は宣言では生まれない。幅広い草の根交流や互いの言語の習得が不可欠になる。”
関係国指導者の大局的見地からの決断が望まれると同時に、20年後、50年後を見据えた地道で息の長い取り組みも必要です。
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西アフリカ・マリ  フランスの軍事加入をエジプト・モルシ大統領が批判

2013-01-23 12:34:16 | アフリカ

(フランス軍を歓迎するマリの住民 立場によっては、新たな植民地支配を目指す侵略といった批判もあります“flickr”より By Pan-African News Wire File Photos http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/8390335149/

世界遺産の都市トンブクトゥに向かって北上
アルジェリアの天然ガス施設人質事件の犯行動機としても挙げられている、西アフリカ・マリ北部を実効支配し、更に南進の動きを見せているイスラム過激派に対するフランスの軍事介入は、地上部隊を展開する形で続けられています。

****マリ:フランス軍などが中部の二つの町を新たに奪還****
西アフリカ・マリに軍事介入したフランス軍とマリ政府軍は21日、イスラム過激派が制圧していた中部の二つの町を新たに奪還した。一方、北部では、仏軍の空爆により過激派がいったん撤退した主要都市トンブクトゥに再び過激派が進入しているとの情報もある。

イスラム過激派が14日に制圧した中部ディアバルでは仏地上部隊が展開。激しい戦闘の末、仏軍とマリ軍が管理下に置いた。さらに過激派が昨年9月以降占拠していた中部ドゥエンザにも仏軍とマリ軍が入った。仏軍側はすでに中部の要衝コンナを奪還しており、攻勢をかけている。

ただ、過激派の戦闘員は激しい攻撃を受けて劣勢になると一般市民の中に紛れ込む戦術をとっていると指摘されている。北部の世界遺産都市トンブクトゥでは、仏軍の空爆を受けて過激派は撤退したものの、ロイター通信は21日、町中に再び過激派が姿を見せているとの地元住民情報を報じている。

また、地元紙「レゼコー」によると、首都バマコや中部セバレといった政府管理下の都市で、イスラム過激派と疑われる人物が拘束されたとの情報を報じており、予断は許さない状況だ。【1月22日 毎日】
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****仏軍、制圧地広げ北進**** 
・・・・ディアバルの21日の制圧で、仏軍はイスラム武装勢力が今月に入って支配下に置いた地域すべてを取り戻した。仏軍はさらに同日、武装勢力の支配下にある世界遺産の都市トンブクトゥに向かって北上を始め、トンブクトゥ南方の町ドゥワンザも制圧した。トンブクトゥ住民の家族によると、武装勢力の数は数日前から激減しているという。武装勢力は北部の主要都市ガオに集結して、戦闘に備えているという情報もある。・・・・【1月23日 朝日】
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フランス軍兵士はすでに2150人投入されていますが、今後のフランスの方針として、イスラム過激派の南進を食い止めるだけでなく、マリから完全掃討することを明らかにしています。

****目的はマリ再統一=軍事介入、完全掃討目指す―仏国防相****
フランスのルドリアン国防相は20日、テレビ出演し、アフリカ西部マリへの仏軍介入は「(マリ)国土の完全な再統一が目的だ。(抵抗を続ける)余地は残さない」と強調した。南下したイスラム武装勢力を、既に1年近く占領中のマリ北部へ押し戻すだけでなく、マリから完全掃討する考えを明確にした。【1月21日 時事】
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ただ、フランス軍はイスラム過激派の激しい抵抗にあっていることも報じられています。
リビア・カダフィ政権崩壊で流入した武器などによって、イスラム過激派の装備が予想以上に充実しており、また、住民の中に紛れるゲリラ戦術を採り始めていることが、仏軍・マリ軍苦戦の要因とも言われています。【1月19日 毎日より】

欧州各国は輸送機派遣や医療、後方支援
欧州各国は、イスラム過激派の聖地となりつつあるマリ北部の状況を改善するため、フランスの軍事介入を支持し、イギリス、ドイツ、イタリア、スペインなどが輸送機派遣や医療、後方支援でフランスに協力を表明しています。
ただ、軍部隊を派遣して戦闘行為に直接参加する考えはないようです。

****EU、戦闘活動行わず=仏介入のマリで****
欧州連合(EU)のアシュトン外交安全保障上級代表(外相)の報道官は14日、イスラム武装勢力が攻勢を強める西アフリカのマリにフランスが軍事介入したことについて、EUがフランスとともに戦闘活動を行う可能性はないと述べた。
北大西洋条約機構(NATO)の当局者も、NATOはフランスの行動を支持するが、マリへの介入は議論になっていないと語った。【1月14日 時事】
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なお、EUは、マリ政府軍を訓練する250人規模の部隊を今秋派遣することを予定していましたが、フランスの軍事介入を受けて、450人規模に倍増し、派遣時期も2月中旬以降に前倒しする方針が伝えられています。

費用問題を抱える西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の部隊派遣
こうした状況で、フランスとしても新たな植民地主義との批判も受けかねない軍事介入を実質的に単独で進める現状は早急に回避したいところで、周辺アフリカ諸国からなる西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の早期の部隊派遣を望んでいると思われます。
しかし、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の部隊派遣は経済的な負担の面で困難も抱えています。

****アルジェリアの隣国マリ 安定化、国際支援カギ 莫大費用/不十分な装備****
マリ北部を実効支配するイスラム過激派武装勢力掃討に向け、フランスやマリ周辺国が態勢構築を急いでいる。隣国アルジェリアの外国人拘束事件は、北・西アフリカに巣くうテロリストの脅威を世界に突きつけた。
ただ、軍事作戦を担う周辺国には限界があり、マリの「テロの拠点化」を防ぐには、後方支援をはじめとした国際社会の関与が欠かせない。

マリに部隊を送る西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は19日、コートジボワールで緊急の首脳会議を開き、軍事作戦遂行のため、財政支援などを国際社会に求めた。同国のワタラ大統領は「さらなる国や機関がフランスやアフリカへ連帯を示すときがきた」と強調した。

フランスの軍事介入を受け、マリ周辺国の部隊派遣準備は加速。その規模も、ECOWAS非加盟のチャドの2千人派遣などで、当初計画の3300人から5千人超に拡大する見通し。欧米は輸送支援に乗り出して部隊編成を急ぎ、ロシアも協力を申し出た。

ただ、部隊運用費用は年間2億ドル(約180億円)に上ると試算され、どう工面するかが課題だ。ECOWASだけでは難しく、作戦の主導権を早く譲り渡したいフランスも、29日にエチオピアで開かれる支援国会合の成果に期待する。

作戦遂行のための装備の不十分さも懸案となっている。ロイター通信は、セネガルでは武器弾薬の不足で部隊の派遣準備が遅れていると伝えた。武装勢力掃討で想定される砂漠地帯での戦闘も、チャド以外は装備・経験面で不足しているとされる。部隊の指揮に必要な通信システムも異なるため、関連装備提供の必要性が指摘されている。

武装勢力掃討に成功しても、長期的にはマリ自身が国内の安定を維持できなければ、再び過激派の標的になりかねない。そのため、軍だけでなく政治や財政、司法分野などの支援も必要となる。英国の国際戦略研究所(IISS)は「周辺国の部隊が(マリに)配置されても、幅広い国際社会の関与は重要であり続けるだろう」としている。【1月21日 産経】
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【「全国民が仏軍の介入を喜んでいる」】
マリの混乱は多くの難民を発生させています。
****マリ避難民、70万人超へ=軍事衝突で数カ月内に―UNHCR****
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は18日、フランスが軍事介入したアフリカ西部マリ情勢に関し、今後数カ月でマリの国内避難民と周辺国へ逃れる難民が計70万7000人に達するとの予測を明らかにした。
UNHCRによると、軍事衝突後にマリを逃れた難民は、処刑や手足が切断された事例を目撃したと証言。また武装勢力は政府軍と戦うよう市民に多額の金銭を配っているという。【1月18日 時事】
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フランスが介入した現地からは、介入を歓迎する住民の声が報じられています。
****市民「ずっと介入を祈っていた」 仏軍歓迎、はためく国旗 マリ****
アルジェリアの人質事件で、犯人グループはフランス軍のマリからの撤退を要求していた。そのマリ国内では、仏軍を歓迎する声が圧倒的で、人々は人質事件の犯人への怒りを口にした。
首都バマコ市内では、至るところでフランス国旗が売られ、バイクの後ろに国旗を立てて走る人も多い。
バマコに住むヤヤさん(51)は「全国民が仏軍の介入を喜んでいる」と話す。昨年4月に北部が無政府化した後、なかなか介入の気配がないフランスに「北部を見捨てるな」と不満の声ばかりが聞こえたのとは一転した。 (後略)【1月19日 朝日】
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モルシ大統領「マリへの軍事介入は容認しない」】
欧米各国がフランスの軍事介入を支援し、周辺アフリカ諸国も経済的な問題は抱えながらも部隊派遣を急いでいる、また、現地でもフランス軍の過激派掃討を歓迎する声が多い・・・という状況で、フランスの介入に反対を表明しているのが「アラブの春」で誕生したエジプト・モルシ政権です。

****マリへの軍事介入批判=エジプト大統領****
エジプトのモルシ大統領は21日、サウジアラビアで開催された会議で、イスラム武装勢力が支配したマリ北部へのフランスの軍事介入について、「地域の紛争の火に油を注ぐことになるため、マリへの軍事介入は容認しない」と述べた。【1月22日 時事】
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詳細はわかりませんが、やはりイスラム主義穏健派のムスリム同胞団を母体とするモルシ政権と欧米諸国では、イスラム過激派・武装勢力に対する対応も異なってくるようです。

「アラブの春」によって各地にイスラム勢力が主導する政権が誕生したことが、過激派がアフリカで活発に活動しやすい下地になっているとの指摘については、1月20日ブログ「アフリカで拡大するイスラム過激派勢力 アルカイダ「聖戦」を触媒に連携を強化」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130120)で取り上げたところです。

“「アラブの春」が起きて以来、各地で抑圧されていたイスラム勢力は選挙で躍進を果たした。エジプトやチュニジアでは、“穏健派”とされるイスラム原理主義組織、ムスリム同胞団系の政権の誕生に結びついた。
これらの政権は表向き、過激なイスラム勢力とは一線を画す姿勢を示している。しかし、シャリーア(イスラム法)による統治というイデオロギーは共有しており、政権の支持基盤を維持する上でも、強硬な態度に出にくいのが実情だ。治安機関の取り締まりや国境の管理が緩み、国をまたいで過激派の連携が広がっているとも指摘される。”【1月18日 産経】

もちろん、モルシ政権が武装勢力のテロ行為を容認している訳ではなく、エジプト自身もシナイ半島でも武装勢力の跋扈を抑え込もうとしているところですが・・・
ただ、エジプトなどでは、ムスリム同胞団より更に厳格なイスラム主義を求めるサラフィー主義も台頭しています。
こうしたイスラム主義の台頭が、イスラム過激派助長につながらないのか・・・という懸念はやはり残ります。

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