孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

マラリア、鳥インフルエンザ、そしてポリオ  ワクチン開発 政治混乱による感染拡大

2013-11-01 22:10:13 | 疾病・保健衛生

(カメルーン 配布されたマラリア防止用の蚊帳を持ち帰る女性 ただ、こうした蚊帳も魚取りに使われていまうことも多いようです。“flickr”より By Plan International Australia http://www.flickr.com/photos/85364745@N04/7926164842/in/photolist-d5pEEw-7Tjou8-dh15VY-abJ7zP-azk8fW-7H7SBi-baAUQ2-8EqYkH-8Eu8zd-8EqYsv-9LH58L-9LEhrx-9LH557-9LEhtT-9LEhpi-9LEhfr-9LEhAK-8NYZ99-fJZ646-ecWnge-ed31Fj-baATeB-baAT2K-baATVV-ecWn5a-bPVB9T-ebHk3e-aYbjRD-aYbjNi)

マラリア感染を助長する政治的無策
日本では馴染みがないマラリアですが、これまでも何回か取り上げてきたように、熱帯地域、特にアフリカを中心に多くの犠牲者を出している疾患です。
世界保健機関(WHO)発表の2010年の統計によると、世界で約2億2000万人がマラリアに感染し、うち66万人が死亡しています。死亡者数はアフリカの幼い子どもたちが最も多いとのことです。

アフリカ中西部カメルーンでも、今、マラリアが流行しています。

****マラリア流行で死者800人近く、当局対応に批判 カメルーン****
アフリカ中部カメルーンの北部でマラリアが流行し、これまでに800人近くが死亡している。過去3週間で死亡した犠牲者の大半は、幼い子どもと妊婦だという。医師の診察を受けた患者は1万2000人を超えた。

同国北部のマルアでは、豪雨と洪水のためにマラリアを媒介する蚊が大量に繁殖した。同地で2000人以上の患者を診察したマラリア専門医は、「深刻な流行が突然発生した。終わりは見えない」と話す。

同国のメディアは30日、政府がマラリア流行についての情報を周知させず、国際援助も要請しなかったとして批判した。

保健省によると、容体が悪化して入院した患者は1万2000人を超えた。しかし感染者の治療に当たる施設は10カ所にも満たず、何千人もの子どもや女性が満員状態の部屋などで蚊帳もないまま寝かされているという。

マルアの男性は患者で満杯の病院の状況について、「自分の子ども3人がここで死んだ。妻は木からつるした点滴をして寝かされている」「地元の公立病院にはマラリアを処置できる免許を持った医師が数えるほどしかいない」と訴えた。

同国の医療統括組織の推計によると、カメルーンには患者4万人に対して1人の割合でしか医師がいない状況だ。診療を行っている医師の数は1000人に満たず、環境は劣悪で報酬も低いという。

11月6日で就任から31年目を迎えるビヤ大統領は、自分のための記念行事の準備に忙しく、マラリアの死者が増え続ける現状を無視しているとの批判も強まっている。

専門家によると、蚊が大量繁殖する一因となった北部のチャド湖の氾濫(はんらん)は現在も続いており、洪水を食い止めるための堤防も築かれていないという。

カメルーンでは2010年、マラリア予防のための蚊帳が約900万人に無料で配布された。しかし景気が悪化し食料が不足する中で、一部の世帯は魚をとるなど家族のための食料確保の目的でこの蚊帳を使うようになった。
公衆衛生の専門家は、マラリアの流行を食い止めるため、蚊帳を魚捕りに使うのではなく就寝時に使うよう呼びかける啓発活動をマルアで始めた。

しかし当局は、直ちに国際援助を受けなければ、死者は数週間以内に数千人に達すると危機感を募らせている。
世界保健機関(WHO)によれば、マラリアに感染して死亡した人は、2010年で全世界で66万人を超えるという。【10月31日 CNN】
******************

上記記事でもわかるように、マラリアの拡大を許している背景には、貧困、劣悪な衛生・医療環境、そして現状を改善できない政治の問題があります。

期待されるワクチン開発
医療の面で言えば、マラリアはワクチンが存在しないことが感染を防止できない理由です。
マラリアのワクチン開発については、ときどきニュースになりますが、今回は世界的大企業である製薬会社グラクソ・スミスクライン(GSK)による発表ということで、期待できそうです。

****マラリア:アフリカで年間60万人死亡 ワクチン実用化へ****
アフリカの子どもを中心に年間60万人以上が死亡するマラリアについて、英製薬大手グラクソ・スミスクラインは21日までに、臨床試験で一定の成果が得られたとして、来年にもワクチンの承認を申請する方針を発表した。実用化されれば世界初のケースとなり、マラリア被害の劇的改善へ期待が高まっている。

臨床試験はケニアなどアフリカ7カ国で1万5千人以上を対象に実施。生後5〜17カ月の乳幼児にワクチンを接種したところ、18カ月後の時点で、接種しなかった乳幼児に比べて感染するリスクが46%減った。【10月21日 毎日】
*****************

“ワクチン接種時で生後6~12週の0歳児では有効性は低くなり、リスクの減少は27%にとどまった。”【10月9日 AFP】という問題はあるようですが、実用化されれば大きな前進でしょう。

“GSKの広報担当者がAFPに語ったところによると、同社は貧困国への新薬投入の円滑化を目的とするプロセスの下で、欧州医薬品審査庁(EMA)に申請書を2014年に提出する予定だという。EMAはこのプロセスの下で、ワクチンの安全性と有効性に関する「科学的意見」を提示する。
これにより、ワクチンがWHOの検討対象になる道が開ける。そうなれば、WHOがアフリカの個々の国々におけるワクチン承認の加速化が可能になる。”【10月9日 AFP】

ワクチン開発では、中国で感染が拡大して世界を不安にした鳥インフルエンザ(H7N9型)でも開発が進んでいるようです。

****鳥インフル:中国がH7N9型のワクチン開発…中央テレビ****
中国中央テレビによると、中国浙江省の浙江大学医学院付属第1病院と香港大学などは26日までに、鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)のワクチン製造に必要なワクチン株の開発に成功した。今後、実際にワクチンが生産されれば、感染拡大防止につながる可能性がある。

同ウイルスの感染者は8月に広東省で判明して以降、報告されていなかったが、今月15日と23日に浙江省で相次いで新たに確認された。感染者は台湾の1人も含めて138人となり、うち45人が死亡している。【10月26日 毎日】
*****************

シリア内戦でポリオ感染拡大の懸念
ただ、ワクチンが存在しても、政治が混乱し、紛争状態になるとワクチン接種もできません。

****シリア:東部でポリオ感染確認 政府が緊急予防接種開始****
 ◇周辺国への感染拡大 WHOが警告
世界保健機関(WHO)は29日、内戦が続くシリア東部デリゾール県で、10人がポリオに感染したことが確認されたと発表した。シリア政府は、感染の危険が高い幼児への緊急予防接種を開始。WHOは、220万人以上のシリア難民を受け入れる周辺国にも「感染が拡大する高いリスクがある」と警告した。

WHOなどによると、デリゾール県で10月上旬以降、2歳以下が中心の子供22人にポリオの典型的症状である手足に力が入らない急性弛緩(しかん)性まひ症状が報告された。WHOが検査した結果、10人分の検体からポリオウイルスが確認された。

シリア政府は今月24日、WHOやユニセフと協力し、5歳以下の幼児を対象にポリオの予防接種を始めた。
ただデリゾール県やシリアの主要都市では激しい戦闘が継続。予防接種用医療施設を訪問できる幼児は限られているとみられ、感染の拡大が懸念される。

約80万人の難民を受け入れている隣国レバノンは、5歳以下の全幼児を対象に、11〜12月にワクチン接種を行うことを決めた。

ポリオは、食事などを通して口から体内に入り、手足にまひを引き起こす。ワクチン接種による予防が可能だが、発症した場合の有効な治療法はない。

シリアでは1999年を最後にポリオの発症例はなく、内戦前は約95%がポリオの予防接種を受けていた。だが2011年3月に始まった武力衝突の影響で、国連の推定で約50万人の子供が未接種となっている。【10月30日 毎日】
********************

パキスタンでは国際テロ組織アルカイダのウサマ・ビンラディン容疑者の行方を追っていた米中央情報局(CIA)に協力したパキスタン人医師が、その活動を隠すために肝炎のワクチン接種プログラムを利用していたことから、イスラム過激派によってポリオワクチン接種活動が妨害され、350万人以上の子供がワクチンを受けられない事態も生じています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする