(2012年3月 大統領選挙に臨んだフランス極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン氏の支持集会 “flickr” By Marine Le Pen http://www.flickr.com/photos/68636619@N06/6818521050/in/photolist-bowGKL-bowJsS-bowHsE-bowKiW-bBrB6g-bowHzd-bBrCPi-bBrDfk-bt7Qop-bt7PJe-bt7Q9i-bt7Pot-bt7NUv-bt7NDn-bt7MXV-bBrBHB-bJNEc2-byMZ4p-bkT8ju-byMZit-bkT857-bkT8oN-bkT7Lq-bkT8z5-bkT8aS-bkT8es-bowQY5-bowRWf-bBrMrH-bowSwJ-bBrLFa-bowRKm-bowRmL-bBrKGi-bowRcd-bBrLSz-bBrMhK-bvTFLU-bt5vSx-bt5uJc-bt5vAM-bt5uxg-bt5uTx-bt5v5v-bt5vwk-bt5uCe-bt5vLc-bt5vEx-bt5ujX-bt5tZt-bt5tT4)
【「恐ろしい時代に対する若い世代の関心と理解を深めたい」】
11月9日、ドイツでナチス政権下の1938年に多数のユダヤ人が迫害された「水晶の夜(クリスタルナハト)」から75年になるのに合わせ、記憶を新たにするイベントが行われています。
反ユダヤ主義暴動「水晶の夜」は、“ナチ政権による「官製暴動」の疑惑も指摘されている。(中略)この事件によりドイツにおけるユダヤ人の立場は大幅に悪化し、後に起こるホロコーストへの転換点の一つとなった。”【ウィキペディア】とされています。
****反ユダヤ暴動を再現=「水晶の夜」から75年―ドイツ****
ドイツでナチス政権下の1938年に反ユダヤ主義暴動「水晶の夜」が発生してから75年となる9日、ベルリン中心部の商店や飲食店のショーウインドーに、ガラスが割れたように見える粘着シートが貼り付けられた。
惨状を再現することで、市民が一丸となって差別や偏見に立ち向かう姿勢を示すのが狙いで、国内最大の高級デパート「カーデーウェー」など約140店が参加した。
38年11月にフランス滞在中のユダヤ人青年が在仏ドイツ大使館の書記官を殺害したのをきっかけに、ナチス支持者が9日夜から10日にかけ、ドイツ全土でユダヤ人商店を襲撃し、シナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)を焼き打ちした。割れたガラスが月明かりに照らされてきらめいた様子から、事件は「水晶の夜」と呼ばれる。
事件後、ユダヤ人約3万人が強制収容所に送られた。
粘着シートが貼られたのは、ベルリンの中でも特に被害が大きかったクーダム通りやアレクサンダー広場など3地区の店舗。主催団体の担当者は「恐ろしい時代に対する若い世代の関心と理解を深めたい」と話す。【11月9日 時事】
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****ドイツ「水晶の夜」から75年、大統領が博物館を訪問****
多数のユダヤ人が迫害された「水晶の夜(クリスタルナハト)」から75年になるのに合わせ、ドイツのヨアヒム・ガウク大統領は8日、ユダヤ人従業員を強制収容所移送から救うために闘ったオットー・ワイトさんの元工場を訪れた。
ベルリン中心部でワイトさんが経営していたブラシとほうきの製造工場は、従業員のほとんどがユダヤ人の視覚・聴覚障害者だった。ガウク大統領は、現在は博物館になっているその元工場をユダヤ人元従業員と共に訪れた。
ワイトさんは当時、偽の書類を出したり従業員をかくまったりして、ユダヤ人をナチスから守った。
旧東独出身の元プロテスタント牧師で人権活動家だった同大統領は、ワイトさんの工場を、困難な時にあっても善を行い、己の良心に従うことを選択した人が確かに存在したことを示す「人間性の小島」だと呼んだ。(後略)【11月9日 AFP】
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【「インターネットには反ユダヤ主義の言葉があふれている」】
しかし、ユダヤ人差別は今も欧州に根強く残存し、むしろ近年悪化しているとの指摘があります。
****ユダヤ人差別深刻化=3割が国外移住検討―EU調査****
欧州連合(EU)の欧州基本権機関は8日、域内のユダヤ人を対象とした世論調査で、過去5年間で差別が深刻化したとの回答が76%に達したことを明らかにした。
調査によると、自分の国で反ユダヤ主義は大きな問題となっているとの回答は66%。過去1年間で言葉による嫌がらせを受けた人は26%で、今後1年の間に暴力を受けるのではないかと懸念している人は33%に上った。また、29%は身の危険を感じて他国への移住を検討したことがあった。
自由回答では「反ユダヤ主義との戦いはますます絶望的になっている」(ハンガリーの60代女性)、「インターネットには反ユダヤ主義の言葉があふれている」(フランスの40代男性)と不安を訴える声が相次いだ。同機関はEU各国に対し、インターネットの監視を含めた対策強化を呼び掛けた。【11月9日 時事】
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欧州において伝統的に差別の対象となっている主な民族は、ユダヤ人とロマです。
ギリシャの「金髪の天使事件」(10月24日ブログ「移民・外国人への風当たりが強まる欧州で、相次ぐ被差別民族ロマの話題」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20131024)にみるように、ロマに関しても差別感情が悪化しているように思われます。
****ロマ差別助長を懸念=「金髪の天使」騒ぎ―国連専門家****
国連の少数民族問題に関する独立専門家リタ・イザク氏は29日、ギリシャでロマの男女に育てられ、警察に保護された少女「金髪の天使」をめぐる騒ぎに関し声明を出し、一連の報道は差別を助長すると懸念を表明した。「ロマは生まれながらにして犯罪者」という誤った認識を招きかねないと警告している。
イザク氏は一部の当局やメディアが「十分な捜査が行われる前に、誘拐や虐待といった紋切り型の告発を行った」と指摘。こうした「疑わしきは罰せよ」と受け取れる反応を批判した。【10月30日 時事】
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【極右政党が欧州議会の一大勢力になる可能性】
欧州におけるこうした民族差別の高まりは、政治的には欧州各国における極右政党の台頭と軌を一にしています。
極右政党台頭の背景には、欧州経済の悪化と移民の増加によって「移民に職を奪われている」といった移民排斥的な風潮があることが指摘されています。
排外主義の高まりや、民族主義の強調は、伝統的な被差別対象であるユダヤやロマの人々に対する差別意識にもつながっていきます。
来年5月に行われる欧州議会選挙においては、こうした極右政党が「反EU」を掲げて躍進することも予想されています。
フランスでは、マリーヌ・ルペン党首率いる「国民戦線」が、政権与党の社会党や保守の国民運動連合(UMP)を上回る支持率を獲得しています。
****欧州極右政党が危険な「合従連衡」へ*****
EU結束を妨害する「攪乱要因」に
ヨーロッパ各国の極右・民族主義政党が、「欧州統合妨害」に向けて連携に走っている。
各党は、ユーロ危機の中で「反欧州連合(EU)」を叫んで支持を伸ばしており、来年五月投票の欧州議会選挙では、二〇~三〇%の得票予測も出始めた。
「欧州懐疑派(ユーロスケプティックス)」と総称される政党が、欧州議会の一大勢力になれば、米国議会の共和党のように経済改革の妨害役になるのは間違いない。
経済改革の動きはもっと鈍る
フランスの極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首が、世界に向かって吠えた。
十月半ば、「EUは、ソ連が崩壊したのと同じように、崩壊する」と、ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)に語った。共産党独裁国家と西欧資本主義の牙城を同列に論じる、特異な歴史観はさておき、メディアの選択が注目された。「RFIは各国語放送があり、ヨーロッパの他の反EU政党への呼びかけを狙った。
ルペン党首は、国民戦線を『国民政党』として、仏政治の主流に据えたいという悲願があり、他国の有力政党との連携はその一助」と、全国紙在パリ特派員が言う。
ルペン党首の狙いは当たり、反EU気運の強い英国では、各メディアが発言を一斉に報じた。
ルペン党首は昨年の大統領選で一七・九%を得票して、極右の大物である父親の二〇〇二年の得票率さえ上回って、過去最高を記録した。来年の欧州議会選に関する世論調査では二〇%台前半で、フランソワ・オランド大統領の社会党、保守の国民運動連合(UMP)を上回る勢いだ。
ルペンの呼びかけに、最も前向きなのはオランダ自由党のヘルト・ウィルダース党首だ。
二人は今春、パリ郊外のレストラン「ラ・グランド・カスカード」での「昼食デート」以来、親交を深めている。「ルペン党首をオランダ議会に招く」との構想も検討中だ。
オランダ、フランス両国は、EUの起源になったローマ条約の原締結国であり、統合の推進役だった。
ところが近年は、国民の間に反EU、反移民感情が高まり、極右政党が格好の受け皿になった。
アンゲラ・メルケル独首相がEUの不動の舵取り役なのに対し、オランド仏大統領も、オランダのマルク・ルッテ首相も、足を引っ張ったり、陰で反独勢力と結んだりと、脇役に回っている。
「この上、両党に『反統合』『ユーロ反対』のキャンペーンをされたら、首脳たちは重債務国の救済や財政再建、経済改革といった、痛みを伴う政策が全く導入できなくなる。
緊縮や改革は目下棚上げだが、動きはもっと鈍くなる」と、EU外交筋は懸念を強める。
英国は国全体でEU離れに傾いており、反EUの急先鋒・英国独立党(UKIP)は、デビッド・キャメロン首相にとっても頭痛の種だ。
独立党は、前回の欧州議会選で労働党を抑えて二位に躍進し、今回も「EU脱退」のスローガンで大量集票を狙う。
ナイジェル・ファラージュ党首は、国民戦線の反ユダヤ主義を嫌って、仏蘭両党の枢軸からは距離を置くが、イタリア「五つ星運動」の創設者ベッペ・グリッロとは、互いに「すごいね」「がんばれ」と、エールを送り合う仲である
。
一方の五つ星は、イタリア総選挙で大旋風を巻き起こしたものの、早くも党内が分裂気味で、欧州議会選は団結を固める好機。その五つ星に票をさらわれた「北部同盟」は、「反EU」で失地回復をねらう。
経済危機が長引くイタリアでは、「反ユーロ」気運が強く、十月中旬には、大規模なゼネスト、デモが首都ローマを襲った。
北欧各国でも、移民排斥と反EUを掲げる政党が連携している。一一年のフィンランド総選挙で第三党に躍進した「真のフィンランド人」は、今年七月の党大会に、デンマーク国民党のスター、モーテン・メッサーシュミット欧州議員を招いた。
今年三十三歳の同議員は、前回の欧州議会選で三十万票近くを得票した「反EU」の論客で、大会を大いに盛り上げた。
フィンランドはユーロ圏屈指の健全財政を誇る。だが、「真のフィンランド人」が、重債務国救済に猛反対するため、国会審議は立ち往生の連続だ。
ユルキ・カタイネン首相は、ユーロ問題でメルケル首相を困らせることがめっきり増えた。
北欧各国での民族政党は、すでに強固な支持層を持っている。
デンマーク国民党は最近の各種選挙で第三党に定着し、スウェーデン民主党は前回総選挙で初めて議席を獲得した。
「欧州議会選は、国政選挙より投票率が二〇~三〇%低いので、現状不満層が抗議票に動くと、『反EU諸党』は三割近くまで議席を伸ばす可能性もある」とEU筋は言う。
折から欧州議会は権限を強めている。過去には「無用の長物」と嘲笑されたが、EUがリスボン条約の下で「欧州連邦」色を強める中で、EUの閣僚である欧州委員や、EU予算の承認も権限に加わった。
EUが域外の国と結ぶ条約も、自由貿易協定(FTA)を含め、発効には議会の承認が必要だ。
「欧州委員は、各国政界の『上がり』の政治家たちに割り振られてきたが、評判の悪い人物には、議会が『ダメ出し』をするようになって、欧州委員承認のハードルが高くなった」とEU外交筋は言う。
それでも、保守政党の連合体である中道右派グループと、社会民主主義政党を束ねた中道左派グループが、合計で過半数を占める限り、議会の反乱は想定の範囲内だった。
しかし、反EUグループが伸びれば、事態は激変する。
FTA交渉中の日本にも
影響各国の極右政党は元来、排外主義が看板なので、汎ヨーロッパ的結束の動きは鈍かった。
欧州議会内での団結にも不得手で、数年ごとに会派の名称や構成が変わった。
現在の「自由と民主主義のヨーロッパ」は、英国独立党と北部同盟が主力で、三十人あまりの小所帯。
ルペンらが画策するEU懐疑勢力の大同団結も、規律や結束は期待できない。
それでも、EU関係者は「彼らが常々唱える『ブリュッセル官僚を止める』には、十分の働きをする」と警戒する。
もっとも、注意すべきは、各党の本音である。
「極右」は本当に、社会の周縁から主流に変貌したのだろうか。
来年の仏地方選挙で、アルデンヌ地方の自治体に立候補予定だった国民戦線の女性が、フランスのテレビに本音を語った。仏海外県ギアナ出身の黒人女性であるクリチャーヌ・トビラ法相を、チンパンジーになぞらえて「木の上で暮らすのがふさわしい」と評したのである。
同様の侮辱を、イタリアの女性黒人閣僚に行ったのは、同国の反EU政党、北部同盟の上院議員だった。
どちらの発言も、両党政治家の野卑な世界観を露呈したものだ。
EUとFTAを交渉中の日本にとって、統合プロセスと単一通貨に反対する政治勢力の蠢動は、無関心でいられることではない。【選択 11月号】
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フランスのマリーヌ・ルペン氏については、“昨年の大統領選第1回投票でFN過去最高の得票率を記録したルペン氏は最近、イメージ転換も進めている。FNを「極右」と報じるメディアに対し裁判も辞さないと牽制(けんせい)。実際、「人種差別」的言動を行った候補を処分してもいる。”【10月21日 産経】とのことですが、彼女を支持する勢力が本音で望んでいるものが何か?というところが問題です。