孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コソボ  北部セルビア人地区を含む全土で地方選挙 混乱と低投票率

2013-11-05 21:22:10 | 欧州情勢

(投票日の3日、コソボ北部ミトロビツァに架かる橋を警備する国際治安部隊所属のイタリア警察軍メンバーら ミトロビツァはこの橋で北部セルビア系住民エリアと南部アルバニア系住民エリアに分断された街です。
写真の旗は、右はセルビア国旗。左は、そのままならロシア国旗、上下さかさまにすれば紋章なしのセルビア国旗になります。“flickr”より By Cabiria8 http://www.flickr.com/photos/64897154@N00/10657489694/in/photolist-heLqoj-heHvrw-hftL5U-hcBX2y-hecgdv-heb79n-hebdx4-hecoqM-hebmxc-hechY4-hebqFS-hebkyQ-hcw1Ak-hcwi4m-hcwbKh-hcwef7-hcwisN-hcweXQ-hcwdn7-hcxvDM-hcwg1o-hcwfpy-hc1jPp-hc1EBm-hfM4nf-hfMe73-hfLQQa-hfLTtg-hfMf7u

一昨日に取り上げたボスニア・ヘルツェゴビナに続き、やはり旧ユーゴスラビア連邦解体に伴う激しい紛争を経て、セルビアから分離独立したコソボの話題。

アルバニア系住民を主体とするコソボですが、北部地域にはセルビア人が多く居住しており、コソボ政府との対立を続けてきました。

セルビアとコソボ両国も、分離独立を認めるか否かで対立していましたが、ともにEU加盟を目指しており、EUが関係正常化を条件としていることから歩み寄りの動きが出ています。
しかし、両国の歩み寄りは、コソボ北部に残るセルビア系住民からすれば“頭越しの交渉”ということにもなります。

****コソボ:地方選投票始まる セルビア人地区で初の実施****
民族問題を抱えるバルカン半島のコソボで3日朝、北部セルビア人地区を含む全土で地方選の投票が始まった。

2008年にコソボがセルビアからの独立を一方的に宣言して以来、コソボ施政下の選挙に少数派セルビア人が参加するのは初めて。欧州連合(EU)の仲裁で今年4月に合意したコソボ・セルビア間の関係正常化の試金石となる。

ミトロビツァ以北のセルビア人地区で地方選が行われたのは、セルビア国境近くのレポサビッチ、ズビンポトク、ズベチャン、北ミトロビツァの4自治体。
コソボでは南部も含め約5万人のセルビア人が暮らしているが、これまでは独立に反対してコソボ政府施政下の選挙をボイコットしてきた。

しかし、EU加盟を目指すセルビアは、コソボとの関係正常化を加盟条件とするEUの説得に応じ、コソボ北部のセルビア人地区をコソボ政府の施政下へ組み入れることに同意。
同じくEU加盟を目指すコソボ側も、セルビア人地区に自治権に近い権限を与えることを認めた。
一方、セルビア人地区の多くの住民は頭越しの交渉結果に反発している。

北部セルビア人地区では選挙期間中、コソボへの統合に反対する民族主義者らがボイコットの継続を主張。
街には「候補者のポスターよりボイコットを呼び掛けるポスターの方が多かった」(地元紙)と言われる。
また、選挙に立候補したセルビア人が「裏切り者」と糾弾されたり、自宅に爆発物を投げ込まれたりする事件も続発。3日の投票は厳戒態勢の中で行われた。【11月3日 毎日】
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セルビアはまだコソボの独立は承認していませんが、“EU加盟交渉進展を望むセルビアは「われわれの利益となる」(ダチッチ首相)としてセルビア系住民に投票するよう呼びかけていた”【11月5日 産経】と、セルビア系住民に選挙参加を呼びかけました。
しかし、頭越しの交渉に反発するセルビア系住民の反発は強く、投票は混乱しました。

****コソボ:地方選投票所に覆面の一団襲撃 選挙監視団退去も****
コソボ北部の少数派セルビア人地区で初めて実施されたコソボ政府施政下での地方選は3日、投票所が襲撃されるなど混乱を極めた。

コソボへの統合につながるとして選挙に反対していたセルビア人民族主義者の仕業とみられる。投票率も極めて低く、欧州連合(EU)の仲裁によるコソボ・セルビア関係正常化への道のりが依然険しいことを物語った。

選挙監視団を派遣していた全欧安保協力機構(OSCE)によると、投票が行われたセルビア人地区の4自治体のうち、妨害行為が発生したのは北ミトロビツァの主要投票所3カ所。

投票終了まで2時間を残した午後5時ごろ以降、覆面姿の一団が投票所が設けられた小学校に次々と乱入、催涙ガス弾を投げ込み投票箱などを破壊したうえ、監視員に殴る蹴るの暴力を振るった。

こうした事態を受け、OSCEは北ミトロビツァから監視要員を退去させるとともに、コソボ中央選管の指示によって残る3自治体の投票時間も30分切り上げて終了した。
北ミトロビツァなどで投票が再開されるかどうかは不明。(後略)【11月4日 毎日】
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コソボ中央選挙管理員会によれば、“北部にすむセルビア系住民の投票率はわずか13%に留まった”【11月4日 The Indiv Journal】とのことで、“必ずしも成功とは言い難い結果”【同上】に終わったようです。

本国セルビアから“見捨てられた”との思いもあるセルビア系住民には受け入れがたいところでしょうが、現在の状況を考えると、セルビア系住民の権利侵害がなされないように国際的監視体制のもとで、自治権に近い権利を得てコソボ政治に参加していく他に道はないように思えます。
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