孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

鳥インフルエンザ(H7N9型) 中国で再び感染拡大の兆し

2013-11-30 22:48:10 | 疾病・保健衛生

(中国・青海省西寧市の鳥市場 “flickr”より By M M http://www.flickr.com/photos/43423301@N07/3997443439/in/photolist-76eWEB-7bXDD7-fWAZDN-fWAV2H-fWAXEN-fWBimk-fWAYhk-fWB6Dq-fWASYV-fWBfXc-fWAUza-fWAU8D-fWBjj2-enKhQb-egYXW5-egYYoY-egTgpK-egTgEx-egTdPX-egTdht-egYZ2G-egTeDx-egZ38N-egTfo8-egTgVc-egTfCn-egTg7x-egTf5z-egTcM6-egZ3rh-ebhhJ1-fpZggr-gimRez-gimRu4-ebhWfi-fWBwuM-eaXvz7-en6ch8-fWBiHn-exqWEt-edyYjr-ebtBdW-e9Pjah-hLBAZH-ebW6eM-eg2Y2D-ejayYd)

封じ込めをあきらめた中国
寒さも本格化し、今年もインフルエンザの季節が近づいています。

隣国・中国では今年初めから春にかけて鳥インフルエンザ(H7N9型)の感染者が続出して世界が注目していました。
その後、夏頃には小康状態になっていましたが、ここにきて再燃の兆しが見られるそうで、懸念されます。

また、中国当局は隔離入院などの強制措置はとらない方針で、その背景には軽症ながら感染者が広範囲にいる可能性が指摘されています。

****鳥インフル:中国で再び感染拡大の兆し 5人の感染確認*****
中国で感染者が激減していた鳥インフルエンザ(H7N9型)に再び感染拡大の兆しが出ている。インフルエンザが流行しやすい秋に入り、広東省と浙江省で5人の感染が確認され、衛生当局は警戒を呼び掛けている。

しかし、軽症の「潜在的」な感染者が既に多く出ているとみており、今後は感染防止に向けた患者の隔離入院を実施しない方針だ。(中略)

ただ、感染者に数えられるのは重症で病院にかかった人だけで、中国の呼吸器疾患の専門家、鍾南山氏は中国メディアに「計上されていない軽症者が多くいる」と、広範囲に感染者がいる可能性を指摘している。

国家衛生計画出産委員会は11月4日、H7N9型を危険度が上から2番目の乙類伝染病に指定したと発表した。ペストなど甲類に次ぐものだが、26種類の伝染病の一つとなり、隔離入院などの強制措置はとらない。軽症ながら感染者が広範囲にいる可能性を踏まえ、拡大防止のための隔離入院の効果は低いと判断したとみられる。

中国では今年3月下旬、H7N9型のヒトへの感染が世界で初めて確認された。上海市や浙江、江蘇両省を中心に感染者が一気に拡大し、5月末までに全国で132人に上った。抗ウイルス薬の投与が遅れたことなどから死者も同月末までに37人に達し、国内外に不安が広がった。

ウイルスは市場の家きん類の間で広まった可能性が高いとされ、流行地域の市場の閉鎖後は新たな感染者は激減した。ただ、家きん類との接触歴がない人が感染したケースもあり、感染源と感染経路は不明のまま。

また、農村部ではニワトリやアヒルがどこの家庭でも飼われている。世界保健機関(WHO)は継続的なヒトからヒトへの感染は起きていないとしているが、家族内感染などが疑われるケースもある。

中国メディアによると、浙江省で11月27日、57歳男性の感染が確認された。中国本土の感染者は2市10省で140人(うち死者45人)に上っている。

 ◇情報公開、後退の傾向
H7N9型の感染拡大では、当局の積極的な情報公開が評価を集めたが、ここにきて後退の傾向がみられる。

67歳男性の感染が確認された浙江省嘉興市の王江ケイ鎮では11月4日、64歳女性の感染が確認された。中国衛生当局は世界保健機関(WHO)と台湾、香港当局に連絡したが、これまでと違って国内向けに発表していない。

11月27日にも57歳男性の感染が確認され、一部中国メディアが伝えたが、浙江省の衛生当局のホームページでは11月以降の感染情報は更新されていない。

国家衛生計画出産委員会は、H7N9型を11月から乙類伝染病に指定した。今後の統計は乙類伝染病に統合するとしており、浙江省の当局者は毎日新聞に「これまでのような個別発表はしない」と明らかにした。

今後は月ごとにまとめて発表するとしているが、中国紙記者は「他の伝染病に紛れてしまう。今後、増える可能性があるのに発表しないのはおかしい」と指摘している。【11月29日 毎日】
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日本では指定感染症に認定されており、感染拡大予防のため強制的に感染者を隔離する体制をとっています。

日本への影響は?】
発生源の中国で封じ込めをあきらめたような状況で、日本において鳥インフルエンザ(H7N9型)がどのくらいの脅威になるのかが気になるところです。

いまのところ、濃厚接触による家族内感染が例外的に起きてはいるようですが、そうした「人から人」に感染する能力は限定的だと言われています。

****鳥インフル、「人・人」感染初確認=江蘇省で死亡の親子―中国****
中国江蘇省疾病予防コントロールセンターはこのほど、英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に発表した論文で、H7N9型鳥インフルエンザに感染し5月に死亡した同省無錫市の親子について、ウイルスが父親から娘にうつったとする研究結果を明らかにした。

H7N9型の「人から人」への感染は、上海で死亡した親子と夫婦の2例でも疑われているが、中国の専門家が公式に確認したのは初めて。

8日付の同省紙・揚子晩報によると、60歳の父親は、市場で生きた鳥を買った数日後の3月8日に発病し、5月4日に死亡。娘も1週間後に発病し、その後死亡した。

娘は有力な感染源とみられる生きた鳥との接触歴がない一方、マスクや手袋をせずに父親の看病に当たっており、父親のたんなどを通じて、ウイルスが娘に感染したとみられるという。

ただ、同様に看病した娘の夫を含め、親子と密接に接触した43人は感染しておらず、「人から人」に感染する能力は限定的だと強調している。【8月8日 時事】
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致死率については、“5月末までに全国で(感染者が)132人に上った。抗ウイルス薬の投与が遅れたことなどから死者も同月末までに37人に達し・・・”ということで、非常に高い致死率のようにも見えますが、実際は把握されていない感染者が多数存在するなかでの“37人”と考えるべきでしょう。(現時点では、感染者138人、死亡者45人と報じられています。)

****H7N9型鳥インフルエンザが新たなステージへ*****
・・・・ここで決して致死率を 45÷138=32.6% としてはなりません。
なぜなら、中国では医療機関を受診しないと感染の確認は行われておらず、つまり母数には「受診するぐらい症状が重かった人」か「健康保険を有しているか、受診できるだけの財力のある人」という条件がつくからです。

これまで中国政府は住民全体に対して感染の有無を確認するサーベイランスは実施しておらず、どの程度、医療機関を訪れていない軽症者もしくは貧困者がいるか明らかではないのです。
【11月18日 apital 高山義浩氏 http://apital.asahi.com/article/takayama/2013111800003.html
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中国社会において、「健康保険を有しているか、受診できるだけの財力のある人」以外の人が多数存在することは極めて大きな問題ですが、その件は今日はパスします。

そもそも、日本における通常のインフルエンザによる感染者・死者がどのくらいいるのか?
厚生労働省のHPによれば以下のとおりです。

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Q10.通常の季節性インフルエンザでは、感染者数と死亡者数はどのくらいですか。

例年のインフルエンザの感染者数は、国内で推定約1000万人いると言われています。国内の2000年以降の死因別死亡者数では、年間でインフルエンザによる死亡数は214(2001年)~1818(2005年)人です。
また、直接的及び間接的にインフルエンザの流行によって生じた死亡を推計する超過死亡概念というものがあり、この推計によりインフルエンザによる年間死亡者数は、世界で約25~50万人、日本で約1万人と推計されています。【厚生労働省HP】
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直接の死因は肺炎や脳炎、あるいは腎不全だっとしても、インフルエンザに掛からなければ、それらの要因で死亡する事は無かった・・・そういう間接的な死亡まで含めた“超過死亡概念”で見ると、年間1万人という訳です。

非常に大きな数字にも思えますが、人間は何らかの原因で必ず死ぬものですから・・・。
この数字に、中国由来の鳥インフルエンザ(H7N9型)感染が上乗せされて、どの程度に膨らむのか・・・よくわかりません。

単純に“上乗せ”なら、そんなに大騒ぎする話でもないかもしれません。
特に、「人から人」への感染が現状のままなら、中国のようにトリとの接触が少ない日本での感染は、中国からの旅行者など例外的なものとなるでしょう。
(トリの感染によって、殺処分を迫られる養鶏農家への影響は大きなものがあるかもしれませんが)

ただ、“季節性インフルエンザとの共感染によるヒト型への変異も起こりやすくなります”【前出 高山義浩氏】というのが怖いところです。当然、毒性も変異します。
中国での感染拡大にともなって、そうした変異の危険性も大きくなります。

抗ウイルス薬の有効性については、タミフルやリレンザが効かない事例もあるようです。
もともと医薬品の有効性は100%ではありませんが、耐性ウイルス云々と言われると不安も増大します。

予防手段としてのワクチンが開発されたというニュースもありました。

****鳥インフル:中国がH7N9型のワクチン開発…中央テレビ****
中国中央テレビによると、中国浙江省の浙江大学医学院付属第1病院と香港大学などは26日までに、鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)のワクチン製造に必要なワクチン株の開発に成功した。
今後、実際にワクチンが生産されれば、感染拡大防止につながる可能性がある。

同ウイルスの感染者は8月に広東省で判明して以降、報告されていなかったが、今月15日と23日に浙江省で相次いで新たに確認された。感染者は台湾の1人も含めて138人となり、うち45人が死亡している。【10月26日 毎日】
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実用化の段階にあるのか・・・わかりません。
技術的な問題以外に、医療保険制度・医療体制が不十分な中国にあっては社会的な問題もあります。

鳥インフルエンザ(H7N9型)は、人間とウイルスの永遠の戦いのひとつですが、鳥インフルエンザ(H7N9型)か、あるいは別のウイルスかはともかく、人の移動が昔に比べて飛躍的に増大した現代社会にあっては、いずれ劇的なパンデミックが起こりそうな感じがします。
コメント
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