(リビアの化学兵器をチェックするOPCW http://www.spacewar.com/reports/Libya_honours_chemical_weapons_plan_deadline_OPCW_999.html)
【国外廃棄の詳細計画は来月に先送り】
つくることより、廃棄すること、処分すること、廃止することが難しいものはたくさんあります。
いろんな“制度”や“組織”も、いったん出来たものを廃止するのは、全く存在理由がないという訳でもないので、関係者の大きな抵抗があってなかなか進みません。
物質的なもので言えば、現在問題になっている原子炉の廃炉処理などもそうした事例でしょう。
原子炉に比べれば、シリアで問題になっている化学兵器の処分はまだ容易と思われますが、それでも受入国がなかなか決まらないようです。
****OPCW:シリア化学兵器廃棄の処理国先送り****
化学兵器禁止機関(OPCW)の決定機関・執行理事会は15日、シリアの化学兵器を国外搬送し、来年6月末までに処理する廃棄計画を決定した。
今後、本格的な廃棄プロセスに入るが、搬送先の有力候補だったアルバニアが同日、受け入れを拒否。受け入れ国名は決定に盛り込まず、国外廃棄の詳細計画は来月に先送りした。
また処理後に出る大量の有害廃棄物は、施設を建設しての燃焼処理が必要で、2億〜3億ユーロ(約260億〜400億円)とみられる費用を国際社会がどう分担するかも課題だ。
シリアは内戦下で資金も技術もないため化学兵器の国外搬出を要請。執行理事会は承認したが、あくまでシリアが処理に責任を持つことを明確にした。
シリアの化学兵器1290トンは、全量が混ぜれば毒ガスを発生する「前駆物質」でタンク保管されている。マスタードガスやサリンの原料など危険度の高い1000トンは年末までに国外搬出、残りの大半は2月5日までに搬出する。
工業原料や消毒剤に使われるイソプロピルアルコールはシリア国内で3月1日までに廃棄する。
マスタードガスやサリンの原料などは3月31日までに処理。残りは6月30日までに処理を完了する。
決定には搬送先や処理方法、必要な資金量は盛り込めなかった。OPCW事務局に来月2日までに報告、17日に詳細な計画を提出するよう求めた。期限が守れない場合は、代替日程を認める。
アルバニアが受け入れを拒否したことでベルギーなどでの処理が有力視されている。
処理は米国の移動式の加水分解処理施設3基を使用。その後、5000〜7000トン出る有毒廃棄物を、燃焼施設を建設して最終的に廃棄する。執行理事会は廃棄費用を工面するため信託基金の設立も決めた。各国に拠出を求める見通し。【11月16日】
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個人的には、ごく少量の化学薬品の廃棄処分で悩んだ経験があります。中和や無害化の作業は個人では無理で、専門業者に持ち込むことになりましたが、時間も費用もかかりました。
ただ、放射性物質などとは違って、それなりの施設で行えば、そんなに危険な作業でもないようにも思えます。
特に、今回は最終物質ではなく前駆物質の形ですから、危険性も大幅に低いのではないでしょうか。
【通常兵器の処理も覚束ないアルバニア】
受入国の有力候補とされていたアルバニアが拒否した経緯については、以下のとおりです。
アルバニアの場合は、確実に処理するだけの状況にはないようです。
****世界が押し付け合うシリア化学兵器の行方****
国外処理の場所探しが難航するなか、「経験者」のアルバ二アが浮上したが・・・
9月に米口が合意した枠組みに基づき、国際管理下におけるシリアの化学兵器の廃棄計画が始動している。
化学兵器禁止機関(OPCW)がシリアに派遣している査察官によると、国内の化学兵器製造設備の破壊は完了。アサド政権はさらに、保有する1300トン以上の化学兵器を来年1月までに国外へ移し、6月末までに廃棄を完了させる予定だ。
ただし、具体的な処理方法は不透明なままだ。最大の問題は、処理をする場所をめぐって迷走が続いていること。NRKノルウェー公共放送局が入手した国連のメモによると、ベルギーとノルウェーのほか、5つの国連安保理常任理事国(アメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリス)が候補に挙げられている。
このうち、ノルウェーは既に受け入れ拒否を表明。処理設備がないことや法律の不備を理由にしている。
そこで注目されていたのが、07年に世界で初めて自国の化学兵器の廃棄を完了させたアルバニアだった。
同国のディトミル・ブシヤティ外相は10月に仏ル・モンド紙に対し、米高官から「打診」があったことを認めていた。
アルバニアの化学兵器は02年12月に、放棄されていた貯蔵庫で偶然、発見された。70年代半ばに中国から輸入されたと考えられているが、記録は見つかっていない。
アルバニア政府はアメリカから資金と技術の支援を受け、18トン以上の化学兵器を処理。費用は約4500万ドルに上った。
しかし、焼却後の有害廃棄物は25個の容器に入れられ、首都ティラナから20キロ近く離れた村で屋外のコンクリートの上に置かれている。
EUの協力で有害廃棄物の貯蔵施設を建設する計画もあるがいまだに完成していない。
環境保護団体は、アルバニアは化学兵器どころか通常兵器の処理も覚束ないと批判。有害廃棄物の管理がおろそかで、今も自然界に脅威を垂れ流していると指摘する。
技術的な能力があるか
ウィキリークスが暴露したアメリカの外交公電によれば、08年に容器から有害物質が漏れ始めた。移し替えたプラスチック容器の寿命は20年。残り15年だが、安全な廃棄方法はまだ見つかっていない。
アルバニアの活動団体「AKIP(ゴミの輸入に反対する連盟)」はアルバニア政府に対し、シリアからの化学兵器の持ち込みに関する情報開示を要求。
「アルバニアに化学兵器を持ち込める法の抜け穴はなく、極めて危険な処理がこの国にできるという技術的保証もない」と主張し、処理の引き受けについては見直しを強く求めていた。
こうした批判の高まりは先週、ピークを迎えた。
ティラナの首相官邸前では、化学兵器の処理引き受けに反対する2000人のデモ隊が2日間にわたり大規模な抗議を行った。
デモに参加した大学生のマリア・ペーシヤは、「この国に化学兵器を処理できる施設はない。自分たちの化学兵器すら処理できないのにシリアの兵器を引き受けるなんてあり得ない」と話した。「アルバニアはこの件で誰かに従う義務などない。NATOにもアメリカにも」
ラマ首相は先週、ついに「アルバニアがこの任務に参加することは不可能だ」との声明を発表し、アメリカ政府からの要請を正式に拒否した。
いちるの望みだったアルバニアから手痛い拒否を食らったアメリカ。シリアの化学兵器問題は、再びしばらく漂流することになりそうだ。【11月26日号 Newsweek日本版】
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【「洋上廃棄」案も】
アルバニアに続いて、ベルギーも受け入れを否定しています。
****シリアの化学兵器、次の候補ベルギーも処理否定****
ベルギーのデクレム国防相は18日放送の国営ラジオVRTで、シリアの化学兵器廃棄を巡り「輸送面で協力したい」と語り、ベルギーで廃棄処理を行う可能性を否定した。
シリアの化学兵器の廃棄場所を巡っては、米国の打診を受けたノルウェーとアルバニアが拒否。第1次大戦中に使用された化学兵器の廃棄で実績を持つベルギーが次の有力候補との観測が出ていた。【11月18日 読売】
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化学兵器廃棄の経験・・・という点では、中国で旧日本軍の残存化学兵器処理を行っている日本も、無関係ではありません。
サリンとは非常に因縁もあります。
ただ、中国での作業自体があまり進捗していないということは、10月22日ブログ「中国に残る旧日本軍化学兵器」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20131022)で取り上げました。
こうした情勢で、「洋上廃棄」も検討されているようです。
****「洋上廃棄」検討か=シリア化学兵器****
ロイター通信は19日、シリアの化学兵器を国外に搬出して廃棄する計画をめぐり、受け入れ先が決まらない場合の選択肢として、化学兵器禁止機関(OPCW、本部オランダ・ハーグ)が洋上での廃棄作業を検討していると報じた。船上か、海上に特殊な装置を浮かべての処理が技術的に可能という。
搬出先の有力候補だったアルバニアが15日に受け入れ拒否を表明したため、代替案の模索が始まった。ただ、次の候補とされるベルギーも廃棄の受け入れに消極的で、2014年半ばまでにシリアの化学兵器を全廃する目標達成のための苦肉の策として、洋上案が浮上したとみられる。【11月20日 時事】
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素人考えでは、放射性物質などに比べれば、万一事故が起きて海上に流れ出してもそれほど大きな影響はないのでは・・・とも思えます。
もっとも、今回のシリア化学兵器処理問題で道筋をつけたロシア・アメリカ両国とも、居住者のいない広大な土地を有していますので、最後まで責任を持つ形で、自国内で処理してもいいのではないか・・・とも思いますが。
【一般論として】
原発、放射性廃棄物、化学兵器処理、ゴミ処理場、基地・・・危険性が否定できないもの、厄介なものは自分の近くにあってほしくないというのはもちろんわかりますが、その一点で譲らないというのは、あまり共感できません。
100%の安全性が保障されないというのは当然ですが、世の中の出来事・事象はすべて何らかのリスクを伴っています。生きるということは、そういうリスクを負担していくということでもあります。
必要性を否定して、その便益にも一切関与しないというのであれば、それはひとつの見識として尊重しますが、誰かがやればいい、自分は嫌だ、便益は享受したい・・・というのでは・・・。