孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  膠着した議会を通さず大統領令で制度改革を進めるオバマ政権 次の目標は移民改革

2014-07-03 22:57:27 | アメリカ

(オバマ政権でも続く不法移民国外強制退去処分への抗議行動 オバマ大統領への幻滅から、ヒスパニック系政治指導者からは中間選挙での報復も警告されています。 “flickr”より By  Michael Fleshman
https://www.flickr.com/photos/fleshmanpix/13681191505/in/photolist-mQXFAa-mQXNEt-mQXDkt-mQWUiX-mQXpbp-mQZyE1-mQX8Jc-mQXn7e-mQX7Pt-mQXBxi-mQZwJC-mQZ7qs-mQZqeo-mQZizm-mQZdNs-mQXH7g-mQX7hK-mQWZ3X-mQWQaX-mQWRF2-mQZm5G-mQXtrk-mQXb6X-mQXZ46-mQZCE5-ne4E7Z-mYkjWr-mYn6T9-mYkaK2-mYkpZ4-mYnq9h-nbuCGT-nt2tU9-nbuLw9-nbuDjV-nbuHdY-nbuCWv-nsZ3EX-nbuG9a-nbuK3Q-nqWEWU-mmGcwa-mQnx3X-nMgBVK-nx47No-nV8DoQ-jJzuz6-muSN7e-m73RWh-nKJhkg

【「最悪の大統領」】
アメリカ・オバマ大統領は、外交では、シリアの“レッドライン”では迷走し、イラクからの完全撤退という無作為で現在の混乱をまねいた、ウクライナでも有効な手を打てていない、パレスチナ・エジプトもうまくいっていない・・・など、また内政では医療保険制度改革に関する根強い反対や野党・共和党との対立による機能マヒなど、国内評価は芳しくありません。

****米大統領評価:オバマ氏が「戦後最悪」 米大世論調*****
米キニピアック大(コネティカット州)は2日、第二次大戦後の大統領12人の評価を聞いた世論調査結果を発表した。「最悪の大統領」を問う質問ではオバマ大統領を挙げた人が最も多く、11月の中間選挙を前にした与党・民主党に厳しい結果となった。

「最悪の大統領」としては、オバマ氏が33%で、ブッシュ前大統領(28%)、ニクソン元大統領(13%)、カーター元大統領(8%)が続いた。オバマ氏の政策では経済や外交への不満が目立った。2006年の前回調査では、当時のブッシュ大統領が34%で、ニクソン元大統領(17%)らを大きく引き離していた。

また、12年大統領選で敗れた共和党のロムニー候補が大統領になっていたら米国は今と比べてどうかについては、「より良かった」が45%で、「より悪かった」の38%を上回った。

一方、「最高の大統領」は、レーガン元大統領が35%と圧倒的な支持を集め、クリントン元大統領(18%)、ケネディ元大統領(15%)らが続いた。オバマ氏は8%だった。

調査は6月下旬に全米1446人の登録有権者を対象に行われた。【7月3日 毎日】
*******************

敢えて弁護するなら、外交について言えば、“弱腰”とか“優柔不断”とか言われていることは、基本的にはイラク・アフガニスタンでの戦争に疲弊したアメリカ国内世論の厭戦気分を反映したもので、オバマ大統領だけが批判されるものではないようにも思えます。

経済も就任当時から比べれば随分回復してきました。(もっとも、オバマ政権の施策の結果・・・という訳でもありませんが)

内政問題での行き詰まりは、ティーパーティーなどの保守強硬派に引きずられた共和党が反オバマに固執していることによる部分がかなりあります。

【「その気になれば、大統領は何でもできる」】
現在も下院は共和党が過半数を制しており、上院も11月の中間選挙で共和党が多数を握るのでは・・・とも言われているなかで、議会の協力を得て政策を遂行していくことはますます難しい情勢となっています。

そこで、オバマ大統領は二年半に迫った残りの任期で後世に名を残すような改革を実現すべく、議会をとおさない「大統領令(政令)」による統治に向かっているとのことです。

****死に体オバマが励む「遺産作り****
歴史に名を残すため「内政」に邁進
オバマ米大統領が、二年半に迫った残りの任期で「大統領令(政令)」による統治に邁進している。共和党が下院を握り、十一月の中間選挙ではさらに上院制覇も視野に入れる中で、自分の政権の「遺産作り」に入ったのだ。米政治の分極化をさらに進めるのみならず、議会の支持がないままの改革は、尻すぼみに終わる危険もある。

議会バイパスの大統領令統治
・・・・大統領が生気を取り戻すのは、内政を語る時だ。カリフォルニア大学アーバイン校卒業式では、六月初旬に発表した地球温暖化対策に触れ、「(温暖化が)手遅れにならないうちに、行動する意思があるか否かが問われている」と語った。

胸を張ったのも当然だ。議会に諮らず、政令で決めたからである。・・・・共和党内には「温暖化理論は大ウソ」との主張も強く、法制化の見込みはなかった。

六月半ばには、連邦政府と契約する企業に、同性愛者差別を固く禁じる大統領令を出した。

米憲法や関連法には政令に関する明確な規定がない。「その気になれば、大統領は何でもできる」(民主党議会筋)のであり、戦争指導者だったルーズベルト大統領は三千回以上、大権を行使した。

ただ、制度改革を伴う大統領令の場合、反対派は法廷闘争で停止を求めることができる。今回の温暖化対策は、大量の訴訟を招くだろう。

オバマの大統領令は、就任から今年六月末までの五年五カ月で約百八十。ジョンソン、ニクソン、カーター、レーガン、クリントン各大統領がいずれも三百以上だったことを考えると、むしろ少ない。前任のブッシュ(息子)大統領の二百九十一よりも少ないペースだ。

「医療保険改革や銃規制、環境対策は法制化が必要ということもあったが、大統領は臆病なほど、大権行使に慎重だった」と前出民主党議会筋は言う。

だが一〇年の中間選挙で共和党が下院を制した後は、オバマ公約の法制化は見込みがなくなった。
第百十二議会(一一~一三年)で成立した法律は二百八十三。第百十一議会の三百八十三を大きく下回って、史上最低を記録した。昨年スタートした第百十三議会は、六月までに百をほんの少し超えただけで、最低記録を大幅に塗り替える情勢だ。

「大統領の我慢も限界ということだ。彼の周囲には元来、同性愛から環境、女性問題や移民問題まで、ラジカルな改革を求める『活動家』が多い。任期が少なくなり、彼らのいらだちも募ってきた」と、在ワシントン政治記者が言う。残る任期は内政の「改革」に専念し、遺産作りを図る。(中略)

六月にはアフガニスタンのタリバンに拘束されていたボウ・バーグダール陸軍軍曹と、グアンタナモ米軍基地内の収容所に拘束されていたタリバン幹部五人の交換を、議会に諮らずに実行した。

同軍曹には「脱走」の疑惑があり、議会が反対する可能性が高かったが、大統領は自分の公約である「グアンタナモ収容所閉鎖」に、少しでもつながる道を選んだ。同収容所にはなお約百五十人の収監者が残っているが、大統領は就任当初の公約をあきらめていない。(後略)【選択 7月号】
*****************

【「議会が仕事をしないのなら、私たちは私たちの仕事をする」】
環境問題、同性愛者の権利擁護に手をつけたオバマ大統領が、議会をバイパスして次に狙っているのは移民改革だと見られています。

“「次は移民改革でしょう。法整備が進まないまま、不法移民の追放だけは続くので、ヒスパニック層から悲鳴が上がっている」と前出政治記者は言う。”【同上】

****移民制度改革、大統領令で実現へ オバマ氏が共和党非難****
オバマ米大統領は6月30日、目玉政策である移民制度改革に関し、議会を通さず大統領令で実現すると表明した。

野党共和党のベイナー下院議長から不法移民の米市民権取得に道を開く関連法案の年内採決見送りを伝えられたことに伴う措置。

11月の中間選挙を前に、議会との対決姿勢を鮮明にした形だが、国境での不法入国対策を含む包括的制度改革は困難になった。

オバマ氏はホワイトハウスで声明を読み上げ、野党共和党のベイナー下院議長が先週、年内は下院で採決をしないと伝えてきたことを暴露。「議会が仕事をしないのなら、私たちは私たちの仕事をする」とし、大統領令でできる改革を実行する考えを強調した。

また、民主党が過半数を握る上院が、昨年6月に関連法案を通過させながら1年間も成立しないことを「共和党は(保守系草の根運動の)茶会に立ち向かおうとしない」と非難した。

中間選挙の予備選で、共和党の茶会系候補は関連法案に前向きな対立候補を攻撃。6月には下院共和党ナンバー2のカンター院内総務が茶会系候補に敗れた。オバマ氏は移民政策をめぐる同党内の亀裂を利用する意向とみられる。

これに対し、ベイナー氏は30日、中米から未成年の不法入国が急増している問題を関連法案と結びつけ、「子供たちや家族に、不法入国しても許されるという間違った希望を与えている」とオバマ氏を批判する声明を発表した。【7月2日 産経】
*******************

米国には1100万人の不法移民がいるとされています。
こうした移民の置かれている状況に対する人道的な問題以外に、アメリカ経済が“不法移民”労働力を必要としているという側面もあります。

また政治的には、近年急増しているヒスパニック系の票が大統領選挙などの帰趨を決めるという状況で、移民改革を求めるヒスパニック系を取り込むという重要な意味をもっています。

オバマ政権がまとめた、罰金支払いなど一定条件を満たした不法移民に暫定的な法的地位を与え、13年かけ市民権を獲得できる道を開く▽新規不法移民の流入を防ぐためメキシコとの国境警備を強化▽高技能労働者などへのビザ発給枠の拡大−−を柱とする移民改革法案が昨年6月に上院を通過しましたが、下院で“漂流”しています。

こうした移民改革をめぐる政治状況、アメリカでの生活を夢見てホンジュラス・ニカラグアなど中南米からメキシコ国境を越えようとする不法移民少年・少女の話は、2013年8月26日ブログ「アメリカ 難航する移民制度改革」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130826)でも取り上げました。

現在、この中南米からの子供の不法移民が、ある“噂”が原因で急増しているそうです。

****中南米から米国に不法移民が殺到 国境の州で収容所がパンク状態****
今年に入り、中南米から米国への不法移民が激増、テキサス、アリゾナなど国境の州では収容施設がパンク状態だ。幼い子どもを連れた母親や、親を伴わない未成年が移民の大半を占める。

理由は「未成年は不法移民でも無条件で米国に受け入れられるが、六月末までに入国の必要がある」との噂が中南米で広まった点にある。

不法移民の子弟に合法的な滞在許可を期限付きで与える法律の延長にオバマ大統領が今年三月同意したことが誤解されたもようだ。

米国内では収容施設の現状が報道され「あまりにも非人道的」と人権団体が動き始めた。

しかし移民管理局も数の多さに対応しきれず、不法移民の多くがコンクリートの床に寝ている実態の改善策は見つかっていない。【選択 7月号】
*******************

共和党の言うように、移民改革の大統領令が「子供たちや家族に、不法入国しても許されるという間違った希望を与る」という影響は確かにあるかも。

ただ、医療保険改革を廃止する法案が下院で50回以上繰り返し採択され、上院がその都度これを否決するという時間の浪費が続いている状況、国際的にはもはやあまり意味のない一昨年に起きたリビア・ベンガジの米外交官四人殺害事件について、「米政府の責任を追及する」公聴会が無限に続いている状況を生み出している共和党に政権を批判する資格はないようにも思えます。

なお、共和党でも移民の多い州から選出された議員は改革に前向きですが、大半の共和党議員は、ヒスパニックに市民権、つまり選挙権を与えても民主党を利するだけ・・・ということで、市民権付与には消極的であるとか。

いずれにしても、1100万人にも及ぶ不法移民の立場を早急に整理・明確にする必要があるでしょう。

強まる共和党からの“大統領権限の乱用”批判
大統領令については次善の策であり、本来は議会を通すべきであることは言うまでもないところです。

“だが、これらを大統領令で執行していけば、議会の共和党は歳出を拒否して対抗する。カネの裏付けがない政策は必ず行き詰まるばかりか、連邦や地方自治体レベルでは行政訴訟のラッシュが起こる。議会の同意がない改革は、骨抜きになる危険が高い。”【前出選択】とのことです。

共和党のベイナー下院議長は6月25日、オバマ大統領が大統領令などを多用して政策を進めているのは大統領権限の乱用に当たるとして、下院として大統領を提訴する計画を公表しています。

アメリカ連邦最高裁は6月26日、オバマ大統領が2012年に人事承認手続きを行う上院が3日間開かれていない間に、上院を「休会中」とみなし全国労働関係委員会の委員を指名したのは憲法に反するとの判断を下しました。

中間選挙を見据えて共和党サイドの攻勢が強まることが予想されます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする