
(グリーンランドの町Tinit 将来は文字通りの「緑の島」になるのかも。ただ、そのとき海面は・・・ “flickr”より By Jack Wolfskin https://www.flickr.com/photos/jackwolfskin/8802297007/in/photolist-epQ5ev-dtjJ5n-6Qw6MP-bJiq6r-epQ58K-epQ99F-epQ5Mi-eqLkH5-epQ4S4-dtjJ6z-duxsLP-epQ7p8-epQ7ki-epQ6mx-epQ8rx-eqLnEL-epQ7xk-epQ88e-eqLkc3-epQ6xX-eqLkgu-epQ6z4-eqLnc9-epQ6dg-bLf8Px-eqLnr3-mCbeQ-a89V3A-dzb1hU-aipC1M-dqDJTp-2aevy-86wcQ5-6ZgMCo-6QAaZJ-a8a6J7-3nFdzV-8H8q2Z-eBN8ig-5uxtv4-5nqadN-5nkNwg-dq9511-dxLMh4-aQQWLB-34zPqa-5nqadG-5nq8rd-4i5DUt-axkisS)
【中国:環境汚染対策から温暖化への対応変化も】
2020年以降の地球温暖化対策の新たな枠組みについて話し合う国連気候変動枠組み条約第20回締約国会議(COP20)の準備会合が先月4日~15日、ドイツ・ボンで開かれました。
各国は京都議定書に代わる新しい枠組みはについて15年末にパリで開かれるCOP21での合意を目指していますが、そのためには今年12月にペルー・リマで行われるCOP20で新枠組みの骨格の合意が必要となります。
今回の会議はそのCOP20での骨格合意のための準備会合という位置づけです。
温暖化防止策に関すしては、先進国が引き起こした現象であるから規制等の責任も先進国が負うべきとする途上国と、なるべく広い範囲で規制をかけて実効をあげたい先進国との意見の隔たり依然として大きなものがあります。
ただ、そうしたなかにあっても、これまで規制に消極的だった中国・アメリカがやや前向きの姿勢を見せています。
一方、日本は原発稼働停止状態ということもあって、長期的なエネルギー戦略が決められない状況です。
****温暖化対策:新枠組み合意期限まで1年半 日本は周回遅れ****
◇提出時期も焦点に
新枠組み交渉では、各国が20年以降の削減目標案をいつ提出するかも焦点になっている。提出時期が早いほど、その目標案が十分か互いに評価し合う時間が確保できるからだ。
昨年11月にポーランドで開かれたCOP19で「準備できる国は15年3月までに示す」ことを申し合わせた。
「来年の早期に目標を提出できるだろう」。6日に開かれた閣僚級対話で、中国の閣僚は初めて明言。
最大の排出国でありながら削減対策に後ろ向きとの批判を浴びてきたが、「パリでの合意を最大限支援する」と積極姿勢を見せた。
米国の代表も、環境保護局が2日に発表した国内発電所の二酸化炭素(CO2)排出量を30年までに05年比30%削減する温暖化対策案を説明し、来年3月までの提出を約束。
欧州連合(EU)の代表は30年までにEU全体で1990年比40%削減する案を「10月までに決定する」と宣言した。
こうした中、CO2排出量世界5位の日本は存在感を示せなかった。北川知克副環境相は「エネルギー政策の検討の進展を踏まえ、最大限野心的な目標を検討する」とあいまいな表現に終始した。
東京電力福島第1原発事故から3年以上過ぎても、原発や再生可能エネルギーの比率が決まらず、20年までの「05年比3.8%減目標」ですら「暫定」と位置付ける日本。
準備会合に参加した環境団体からは「周回遅れだ」との批判が上がった。【6月20日 毎日】
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深刻な大気汚染によって、中国も規制に向けて「重い腰」を上げつつあります。
シェールガス革命に沸くアメリカでは、オバマ大統領が任期中に気候変動問題で成果を上げたい思惑があります。
米中両国は、今月9日からの米中戦略・経済対話でも協調を演出しています。
****米中「気候変動で協力」 温室ガス削減、思惑に差 戦略・経済対話****
9日に始まった米中戦略・経済対話では、安全保障で対立が目立つ一方、気候変動への対応で協調を演出した。
世界1、2位の温室効果ガス排出国でもある両国は、天然ガス利用を後押しする国内事情も似ている。
だが、「大国」を巡る考え方の違いがここでも顔をのぞかせている。
中国の習近平(シーチンピン)国家主席は開幕式で、「気候変動への対応」を重要課題に挙げた。
国家発展改革委員会の解振華副主任は、両国が温室効果ガス削減に役立つ八つのプロジェクトに合意したことを紹介。「対話と同時に、実践でも効果をあげていく」と胸を張った。
中国は2006年、米国を抜いて世界最大の二酸化炭素排出国となった。これまでは「先進国とは発展段階に違いがある」として、経済成長にマイナスとなりかねない削減策に消極的だった。排出を減らすための総量目標も掲げていない。
だが、エネルギーの多くを石炭に頼った構造は、微小粒子状物質「PM2・5」などによる深刻な大気汚染を招いている。環境負荷の少ないエネルギー源への切り替えは切実な課題だ。
汚染対策と同時に、排出量も抑える方向へ「重い腰」を上げつつある。
オバマ大統領も9日の声明で「ここ数年、両国は気候変動で協力関係を大いに高めた」と成果を強調した。
オバマ政権は先月、石炭火力を大幅に減らす新規制案を公表。二酸化炭素の排出量を30年までに3割削減する目標を掲げた。
シェールガス革命が続くなか、天然ガスや太陽光発電など排出量が少ないエネルギーの活用を目指す。
国際社会では来年、20年以降の新たな温暖化対策の枠組み作りがヤマ場を迎える。残りの任期が3年を切ったオバマ政権は、中国も巻き込みながら新たな枠組み作りで主導権を握りたい考えだ。
数カ月前から「環境は主なテーマの一つになる」(米政府関係者)と強調するなど、当初から成果にしたい分野でもあった。
ただ米国側の出席者によると、この日の話し合いでも、20年以降の削減目標について踏み込んだ議論を求める米国側と中国側との溝が目立ったという。
米国のトッド・スターン気候変動担当特使は「(先進国と途上国という)二分論的な議論には賛同できない」と話し、「大国」と「途上国」の立場を使い分ける中国の姿勢に釘を刺した。【7月10日 朝日】
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【温暖化で泣く国、笑う国】
温暖化と言うと、そのネガティブな影響が前面に出てきます。
水没してしまう島国などは大問題ですし、温暖化の影響をトータルとして捉えても、人類にとって困った問題であるのは事実でしょう。
ただ、当然ながら、温暖化によって差し当たりの利益を得る国・地域・者もあります。
特に、食糧生産においては、これまでの産地が被害を受ける一方で、これまで生産に適さなかった地域・国が新たな生産地として浮上してきます。
すでに、そのような変化を見越した動きが顕在化しているそうです。
“フランスのボルドー、ブルゴーニュをはじめ欧州の著名なワイン産地では、過去三十年で平均気温が一・五~二度程度も上昇、ワインの質に変化が生じ始めた”一方で、“フランスとスペインの国境に沿って走るピレネー山脈。最高峰のアネート山はじめ三千メートル級の峰が連なる。スキーリゾートくらいしか使い道がないとみられていた山岳地帯の地価がこの数年、上昇している。別荘地やリゾート開発のためではない。買っているのはスペイン、フランスのワイン生産者たちだからだ”【下記 選択7月号記事】とのことです。
カナダのアルバータ、サスカチュワン、マニトバの三州の農地が値上がりしているそうです。
従来春小麦しか耕作できなかったのが、温暖化によって冬小麦やトウモロコシも可能になったためとか。
日本でもこれまでの「コメどころ」新潟県を生産量で北海道が上回ることもあるとか。
品質でも、新潟の「南魚沼産コシヒカリ」に代わって、北海道の「ゆめぴりか」「ななつぼし」や山形県の「つや姫」が美味しさでトップにランクされることが増えてきたそうです。
生産者の努力や品種改良もありますが、“北海道の気候が米作に最も向くようになった”ことも背景にあります。
下記はそうした事情を紹介して非常に興味深い記事です。
ただ、“だが、今、温暖化を悪用しようという農民、企業、土地業者が出現しているのだ”という表現はどうでしょうか?
温暖化の変化を利用すること自体は、“悪用”ではなく極めてまっとうな経済活動です。
そうしたプラス面の活用がないと、トータルのマイナスが更に膨らみます。
****温暖化で激変する「世界食糧地図」****
南北格差と紛争の新たな「火種」
・・・・気候変動はコメ、小麦など食糧生産にも及び、今世紀末には飢餓発生の予測も出始めた。
だが、今、温暖化を悪用しようという農民、企業、土地業者が出現しているのだ。(中略)
「今世紀末に地球の平均気温が今よりも二度上昇するとコメ、小麦、トウモロコシの三大穀物の生産は大きな打撃を受け、四度上昇すると、主食の生産そのものが困難になる」。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第二作業部会が今年三月末に公表した気候変動の食糧への影響の報告書は衝撃的な内容だった。
ただ、気温上昇を二度、四度などと仮定のものとしているために、一般の人の受け止め方はそれほど深刻ではなかった。
だが、その意味するところは今、生まれた赤ちゃんが老人になるころには地球では大規模な飢饉が生じ、食糧を奪い合う戦争が起きている可能性があるということだ。(中略)
このように気候変動は農業生産に大きな影響を及ぼしつつある。その大部分はマイナスの要因で、変化の方向も予測しにくい。人類にとっては、食糧危機のリスクが着々と高まりつつある。
だが、世界のなかには驚くべきことにこうした温暖化を歓迎する農家や企業、政府も少なくないのだ。
カナダの農家は冬小麦やトウモロコシの生産が可能になることで、一定面積から得られる収入は、少なくとも五〇%以上増えるとの試算がある。米国中部でもトウモロコシの二期作が可能になれば確実な収入増になる。
実はそうした穀物農家にとってのプラス要因は気温上昇だけではない。
大気中の二酸化炭素の濃度が高まることで、小麦やトウモロコシの光合成の効率が高まり、生育期間が短縮されたり、単位面積あたりの収量が増加したりする可能性が高いからだ。
二酸化炭素の「施肥効果」と呼ばれるもので、肥料の大量投入と同じような増産効果が今後、見込まれるという。
シベリアが小麦産地になる可能性
奇妙な一致がある。こうした気温上昇や二酸化炭素濃度の上昇による農業生産へのプラス効果を享受できる国は、二酸化炭素排出の最大の要因である石油、天然ガス、石炭など化石燃料の主要産地と重なるのだ。
コーンベルトが広がるカナダは在来型の天然ガス、石油に加え、サウジアラビアの原油埋蔵量に匹敵するといわれるオイルサンド、さらに開発ブームとなっているシェールガスの埋蔵量も少なくない。
従来型の天然ガス埋蔵量では世界トップクラスで、石油生産も世界二位のロシアはウラル山脈以西の従来の穀倉地帯は温暖化で干魃の影響を受ける。
だが、「不毛の大地」シベリアの永久凍土が解け、短い夏しかなかった土地が小麦生産に向くほどの暖かい土地になる可能性がある。
カナダ、ロシア、米国の農民、農業にとっては地球上の二酸化炭素排出がどんどん増え、温暖化が進み、二酸化炭素濃度も高まることは、実は歓迎すべき面があることを認識すべきだ。
さらにグリーンランドも温暖化で氷床が解け、原油開発が進み始めており、今世紀後半には南部沿海部に農地が生まれる可能性も指摘されている。
そうなれば連合で王国を形成するデンマークは、本国以上の面積の農地をグリーンランドに得るという予測もある。
天然ガス、石油、石炭の消費を抑制するよりも、化石燃料を世界に輸出し、温暖化を加速させた方がカナダ、ロシア、米国には一石二鳥の利益になる。
オバマ政権はここにきて、地球温暖化問題への取り組みを強め、石炭火力発電の抑制に動こうとしている。
だが、米国の農民票の八〇%以上は共和党支持で、民主党は農民に擦り寄っても、もともと票が取れないという隠れた事情がある。
オバマ大統領は地球温暖化への取り組み実績を残すだけで、実効があがらなくても構わないという発想だろう。
ポスト・オバマが共和党の大統領になれば、かつてのブッシュ政権のように温暖化対策のグローバルな協定から再び離脱しないとも限らない。
一方で、温暖化が進めば近い将来、確実に食糧問題に直面する国がある。その代表はバングラデシュとインドだ。両国ともコメが主食で、現状ではかろうじて国内生産で大人口を支えている。
特にバングラデシュは国土のほとんどが海抜十二メートル以下で、海岸部のコメ生産地域にはゼロメートル地帯も多い。
温暖化による海面上昇が進めば、国土の水没が加速し、沿海部の水田が次々に海に呑まれていくとともに、残った農地でも塩害が深刻化する。コメ生産が大きく減少するのは確実だ。
海水面の上昇は南太平洋の島嶼国の水没が注目されているが、バングラデシュでは食糧問題に直結する。
インドは近年、温暖化とともにモンスーン期の豪雨が激しさを増しており、米作地帯のガンジス川流域は大洪水で大きな人的被害を出すだけでなく、コメの生産でも冠水による稲の全滅など大きな打撃を受けている。
一方で、デカン高原などでは温暖化で干魃が恒常化。陸稲や小麦、トウモロコシの生産には不安が広がっている。
温暖化で笑う国と泣く国の対立
中国への影響は不透明だ。「江浙実れば、天下足る」と言われた長江下流域の穀倉地帯は海水面上昇の影響で塩害が懸念されているほか、大洪水の頻発という不安もある。
一方で、黒竜江省など北部はカナダと同様に温暖化で耕地面積が着実に拡大し、小麦、トウモロコシに加え、今や中国有数の水田地帯にもなっているからだ。
そのほか人口九千万人を抱え、世界最大の小麦輸入国であるエジプトは穀倉地帯のナイル・デルタの海抜が一~二メートルと低く、海水面の上昇で耕地が激減し、主食の輸入依存度がさらに高まる懸念がある。
一〇年末から中東地域でわき起こった「アラブの春」はエジプトのムバラク政権やリビアのカダフィ政権の長期圧政に対する不満だけでなく、穀物価格の値上がりが直接的な原因だった。
中東では地球温暖化による食糧危機が政治的不安定の度合いをさらに強める恐れがある。
こうした気候変動の農業への影響を計算して動いている企業がある。世界の種子を支配するといわれる米モンサントなどだ。
干魃や降雨量への減少に対しては耐乾品種のトウモロコシ、小麦を開発、すでにアフリカやメキシコ、ブラジルに売り込んでいる。
アジアに対しては大洪水で二週間冠水しても生き残る稲が開発され、インド、タイなどで試されている。その多くは交配による品種改良ではなく、遺伝子組み換えだ。
さらに乾燥に伴う病害虫の発生に強い農薬も開発されており、種子・農薬メーカーには温暖化は巨大なビジネスチャンスになっている。
地球温暖化で笑うカナダ、米国、ロシアなど北に位置する国と温暖化で泣く南のインド、バングラデシュやエジプトなどの中東諸国。
地球温暖化は食糧、農業を通じて新たな「二十一世紀の南北問題」も引き起こそうとしている。温暖化はもはや将来の問題ではなく、足元の危機になりつつある。【選択7月号】
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