孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ  マレーシア航空機撃墜事件 プーチン大統領に残された最後の機会

2014-07-20 23:12:01 | ロシア

(事故現場を掌握する親ロシア派武装集団 遺品略奪や証拠隠滅も危惧されています “flickr”より By scrolleditorial https://www.flickr.com/photos/115313787@N08/14501511719/in/photolist-o6s3d8-ookEfn-oorhjM-oovi3q-ooHzfH-ooHz2X-oovi1b-o5LLJE-opTMnF-onAAQq-ontWEu-opgu8n-oksT8q-onGyVc-o6cY4W-one1su-onwanF-onADu4-oohe64-o6zBUS-oocUkB-onZEyb-onGz24-ondwBM-okF9RL-ooi66U-o6YVEB-omrL1W-omrGJW-o6Z7SX-oo5X29-o6Z4Qd-o6Zan6-onGxMk-o5UZS8-o6ZX8H-oosBpj-oocMBH-o6YZCW-onpPNi-oogeXW-omrFAJ-o71Liq-o711Az-o6ZjmE-o71vvZ-oou8Rn-o6ZrZJ-o71uW2-oms7H7)

【「たった今、飛行機を撃ち落とした」】
ウクライナ東部で17日にマレーシア航空機が撃墜され、乗客283人と乗員15人全員が死亡した事件については、ウクライナ東部で政府軍と戦闘状態にある親ロシア派武装集団が地対空ミサイルで誤射したことを、報じられる多くの事象が示しています。

殆ど決定的と思われるのは、“自白”ともとれる親ロシア派武装集団によるSNS投稿や交信記録です。

****マレーシア機、ウクライナ親露派が軍用機と誤認して撃墜か ツイート削除****
・・・親露派は17日午後、ウクライナ軍との戦闘が続く東部の工業地帯上空を飛行中のウクライナ軍機少なくとも1機を撃墜したとの最初の一報を投稿した。

一方的に独立を宣言している「ドネツク人民共和国(Donetsk People's Republic)の自称防衛相イーゴリ・ストレルコフ氏は、ロシアの交流サイト最大手「フコンタクチェ」 の自身のページに、「たった今、トレーズ(ドネツク州の都市)近郊でアントノフ26(An-26)型機を撃墜した」と書き込んでいた。(中略)

この書き込みは直後に削除されたが、ウクライナ東部の同国軍司令部はこの投稿が表示されたディスプレーの画像を保存しており、英文の報道機関向け発表に添えて公開した。

ストレルコフ氏のものとされる書き込みでは、同機の撃墜に使用されたミサイルの詳細は明らかにされていない。しかしドネツク人民共和国は、その数時間前にマイクロブログのツイッターの公式アカウントから次のように投稿し、墜落したマレーシア航空機が飛行していた高度1万メートルまで到達可能なロシア製ミサイルを親露派が手に入れていたことを明らかにしていた。

「@dnrpress:DNRは(ウクライナの)地対空ミサイルA1402連隊から自走式ブーク(Buk)地対空ミサイルを奪った」。この投稿も後に削除された。

ロシアの国営メディアはこれらの書き込みについては言及しておらず、ウクライナ空軍がマレーシア航空機を撃墜したという親露派指導者の発言を伝えている。

■露工作員との通信で悪態
その後、ウクライナ政府を強く支持している野党系ニュースサイト「ウクライナ・プラウダ(ウクライナの真実)」は、撃墜後に親露派のメンバーとロシアの工作員が行った通信を傍受して録音したとされる音声を公開した。

その中でベース(悪霊)と名乗る親露派メンバーがロシア軍情報機関将校とされる人物に対し、「たった今、飛行機を撃ち落とした」と話していた。また別の録音では、戦闘員らしき人物が飛行機の残骸が残る墜落現場から、「100パーセント間違いなくこれは民間機だ」と報告している。

この戦闘員は、乗客がたくさん乗っていたかどうかと質問されると、ロシア語で悪態をついたという。【7月18日 AFP】
******************

撃墜に使用された地対空ミサイルが、ウクライナ政府軍から奪ったものか、ロシアから供与されたものかはまだわかりませんが、ウクライナ保安局(SBU)報道官は19日、撃墜に使用されたBUKミサイルが対ロシア国境から持ち込まれ、事件後にロシア側に戻されたことを示す写真などを根拠として、使用にロシア人要員が関与していたと主張、「ロシアはテロの証拠隠滅を図っている」と強く非難しています。

BUKミサイルの使用には専門的知識が必要とされ、アメリカもウクライナ政府同様に、「ロシアから技術支援があったことを除外できない」(パワー国連大使)と断言しています。

オバマ米大統領も、ミサイルは親ロシア派支配地域から発射された証拠があるとして、親ロシアを支援するロシアの責任を厳しく指摘しています。

****親ロ派地域からミサイル=マレーシア機「撃墜の証拠」―米大統領****
オバマ米大統領は18日、ホワイトハウスで記者会見し、ウクライナ東部でのマレーシア機墜落に関して「ロシアが支援するウクライナ国内の親ロシア派支配地域から発射された地対空ミサイルで撃墜された証拠がある」と明言した。

撃墜の実行者や指揮系統、意図については「何が起きたのか正確には分かっていない」と語り、独立した調査結果を待つ方針を示した。

大統領は「この言語道断の出来事に関与した者に責任を取らせる」と表明。真相究明への国際調査の実施に向け、ロシアと親ロ派、ウクライナは即時停戦を受け入れなければならないと呼び掛けた。

さらに「親ロ派はロシアから武器や訓練、重火器、対空兵器の支援を受けている」と批判し、ロシアのプーチン大統領に対し、兵器供与の停止を決断するよう重ねて促した。ロシアが緊張緩和への措置を講じなければ、今後も代償を支払わせると警告した。

一方、国防総省のカービー報道官も18日の記者会見で、マレーシア機が「(旧ソ連製の)地対空ミサイルSA11(ブク)によって撃墜された強い証拠がある」と説明。また、親ロシア派が車両搭載型の対空兵器に関してロシアから訓練を受けているのは間違いないと強調した。【7月19日 時事】 
*****************

そのほか、ウクライナ東部では14日にもウクライナ政府軍輸送機が撃墜されていること、親ロシア派は戦闘機等を保有していないので政府軍には地対空ミサイルによる航空機攻撃の理由がないこと・・・等々を含め、上記のように状況的には“真っ黒”な親ロシア派です。

親ロシア派はロシアからの武器支援で急速に戦闘力を高めてきました。
ただ、戦闘機は保有しておらず、制空権を有する政府軍の空爆にさらされており、この状況を打開するために地対空ミサイルを使用したものと推測されます。結果的にはこれが自らの首を絞めることになりました。

***************
親ロシア派が東部ドネツク州などの庁舎占拠を始めた4月には自動小銃や手投げ弾程度だった武装集団の装備は、わずか3カ月の間に著しく増強された。

14日に動画サイトで公開された「親ロシア派武装勢力が東部で行進する様子」の映像は、かつてロシアの主力戦車だった「T64型戦車」のほか、ロシア軍の装備として有名な「BM21(多連装ロケット砲)」など軍用の重火器がずらりと並ぶ。武装勢力単独では入手不可能な兵器ばかりだ。

ポロシェンコ大統領が6月に就任してから、ウクライナ軍は親ロシア派に対する空爆を強めていた。
親ロシア派は戦闘機を保有していないからだ。

親ロシア派が次第に入手し始めたのは地対空ミサイル。空爆に対抗しようと、流れ込んでいた兵器が、民間機の撃墜につながった可能性がある。【7月20日 朝日】
**********************

【「プーチン大統領には今こそロシアが協力する意志があることを世界に示す最後のチャンスだ」】
こうした事態を受けて、国際的批判の矛先は上記オバマ発言のように、親ロシア派の後ろ盾となり、ミサイル等の武器を供与し、その使用を支援し、事態沈静化への影響力を行使していないロシア・プーチン大統領に向けられています。

ロシアとの経済的関係が強い欧州は、これまで対ロシアでは足並みが乱れたり、やや自制的なところが目立ちましたが、犠牲者の多くをオランダ国民が占め、ドイツ国民も含まれることなどもあって、民間機撃墜という暴挙にロシアに対する対応を硬化させています。

また、事故現場の調査や遺体収容が親ロシアの非協力的対応で進まないことにも関係国が苛立ちを強めており、この点でもロシアに早急の対応を迫っています。

****オランダとロシアの首脳 電話で激しいやり取り****
マレーシア航空機の撃墜で、最も多い193人の犠牲者が出たオランダのルッテ首相が19日、記者会見し、遺体の収容や調査が進まない現状についてロシアのプーチン大統領と電話会談を行い、激しいやり取りを交わしたことを明らかにしたうえで、「プーチン大統領には今こそロシアが協力する意志があることを世界に示す最後のチャンスだと伝えた」と述べ、ロシアに対し親ロシア派に影響力を行使するよう強く求めました。【7月20日 NHK】
*****************

****経済的な結びつきが強い欧州も離れつつある****
「ロシアはウクライナ問題に責任を負っている。ロシアの大統領と政府は政治解決に向けて役割を果たすべきだ」。ドイツのメルケル首相は18日の記者会見で、いつもより厳しい表現でロシアに対応を迫った。

ドイツは天然ガスの3割以上をロシアに頼り、ロシアに一定の理解を示す世論も根強かった。だが独国民4人が死亡した墜落事件で風向きは変わりつつある。

欧州連合(EU)の変化はロシア経済にとって深刻だ。同国の金融市場では、16日の米国の追加制裁を受け、すでに株や通貨ルーブルが売られている。輸出も輸入も約4割を依存するEUが米国の制裁に同調すれば、影響ははるかに大きい。【7月20日 朝日】
******************

プーチン大統領は、戦闘状態を招いたウクライナ政府に事故の責任もある・・・としていますが、日増しにロシア・プーチン大統領の責任を問う国際圧力が強まっています。

ロシア・プーチン大統領としては親ロシア派勢力を支援することでウクライナ情勢を不安定化させ、連邦制や自治権などで、できるだけロシアに有利な方向に持って行こうという戦略でしたが、民間航空機撃墜という想定外の事態で非常に苦しい立場に追い込まれつつあります。

このまま放置すれば、アメリカ・欧州の制裁措置は更に強化され、ロシア経済への悪影響も強まります。

クリミア併合を巡り主要国(G8)から排除されたばかりですが、“多数の犠牲を出したオーストラリアでは、11月に(自国の)ブリスベンで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議に「ロシアのプーチン大統領を呼ぶべきではない」との声が高まっている”【7月20日 朝日】というように、国際的孤立が決定的となってしまいます。

中国は欧米のロシア批判には同調しないでしょうが、ウイグル族やチベットの問題を抱えて、ロシアの“分離独立”支援に協調することも難しいでしょう。

ロシアの政治的・経済的な得失を考えれば、プーチン大統領にとっては、親ロシア派勢力を見限る方向で舵を大きく切るべきタイミングでしょう。

昨日まで言ってきたことと全く違う言動をとったとても、国際的には“君子豹変す”で、不整合性・矛盾などの指摘は無視すればいいだけです。
ロシアの協力を必要としている欧米も、その点をあまりつつくこともないでしょう。

問題は、これまでロシア民族主義を煽ってきた国内がそれでおさまるか・・・というところでしょう。
もちろん自由な批判を許さない強権的政権ですからおさまるのでしょうが、大統領の威信が揺らぐ・・・ということは懸念するところでしょう。

****プーチン大統領は正念場に直面している*****
・・・・この危機を解決する鍵を握るのは、究極的にはプーチン氏だ。
自分が命令すれば事態を動かせる内に、なんとかしなくてはならない。

プーチン氏のせいで地元ロシアの国営メディアは、分離独立派を支持する論調で大騒ぎしており、このままいくと下手をすると行き着くところまで行ってしまう。

ウクライナ東部ではプーチン氏のせいで、重装備の武装勢力が好き勝手をしており、プーチン氏も制御しきれずに苦労している。

ウクライナの紛争はとんでもなく制御不能になりつつある。MH17の悲劇がこのことを悲惨な形で露わにした。方向転換するにしても、プーチン氏は急がなくてはならない。残された時間はほとんどない。【7月18日 フィナンシャル・タイムズ】
*******************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする