
(写真説明がないので定かではありませんが、イスラム教徒の商店前に集まった仏教徒・・・でしょうか 【7月3日 Iran Japanesu Radio】http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/46372-%E3%83%9F%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%81%AE%E4%BB%8F%E6%95%99%E5%BE%92%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E8%A5%B2%E6%92%83%E3%81%A7%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0%E6%95%99%E5%BE%922%E5%90%8D%E3%81%8C%E6%AD%BB%E4%BA%A1)
【再燃する宗教間憎悪】
このブログでしばしば取り上げているように、ミャンマーが抱える大きな問題に少数民族問題とイスラム教徒との宗教対立があります。
ミャンマーは仏教徒が圧倒的多数を占めますが、イスラム教徒も全人口の5%ほど存在します。
ミャンマーではここ数年、イスラム教徒を標的とした暴力事件が何度か発生しており、「969運動」(「969」とは仏教の三宝(仏法僧)を意味し、イスラム教の聖なる数字「786」に対抗し作られたものです)など、過激な仏教徒による国家主義的運動がイスラム教徒に対する憎悪を煽っているとされています。
そうした過激な仏教徒によるイスラム教徒襲撃事件がまた、中部マンダレーで起きています。
****マンダレーで仏教徒がイスラム教徒を襲撃=夜間外出禁止令が発令****
2014年7月3日、タイのメディアが伝えたところによると、ミャンマー中部のマンダレーで7月1日午後8時頃から翌2日未明にかけて、仏教徒がイスラム教徒が暮らす家屋などを襲撃したという。これまでに死者2名などが伝えられている。
この仏教徒たちは、マンダレー市内で働く同じく仏教徒のウエイトレスが働くイスラム教徒の喫茶店店主によって暴行された、との噂が広まったことをきっかけに、イスラム教徒居住区への襲撃に発展した。
暴動に参加した仏教徒たちは、一部が棒やナイフなどで武装していたため、地元警察が治安部隊を出動。ゴム弾を使用し、鎮圧にあたったことで、暴動は2日未明にはいったん収まった。
しかし、2日午後に市内中心部に約7万人が集まる騒ぎが起き、その最中に2名が死亡した、と地元警察が発表した。死亡したのは仏教徒、イスラム教徒それぞれ1名ずつ。3日には夜間外出禁止令が発令された。
また一部の地元メディアでは、暴動はマンダレー市内だけでなく、さらに北部のラショーでも暴動が発生したと写真付きで伝えている。
ミャンマーの地元メディアによると、事の発端となったのは、あるフェイスブックに仏教徒のウエイトレスがイスラム教徒の雇用者に強姦されたとの書き込みだという。その書き込みが拡散されていき、暴動に発展した模様。噂の元になった喫茶店周辺には地元警察が出動していた。
また、被害にあった女性従業員は、雇用者と首都ネピドーに旅行した際に被害に遭い、地元警察に訴えた、としている。問題となっている喫茶店店主は容疑を完全に否認している。
従来よりミャンマーでは、仏教徒とイスラム教徒とのいさかいが続いており、ティンセイン大統領も毎月行なわれるラジオ演説で、宗教間の和解を呼びかけていた。(後略)【7月4日 グローバルニュースアジア】
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過激な仏教徒による国家主義的運動を主導して、イスラム教徒への憎悪を煽っているとされるのが、仏教僧ウィラツ師です。
(2013年8月17日ブログ「仏教界にもいろいろ タイの贅沢僧侶 ミャンマーの反イスラム・過激僧侶」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130817)
****ミャンマーで夜間外出禁止令発令 宗教間衝突受け*****
・・・・地元紙によると、マンダレーでは2日間で計8件の衝突が発生。暴動には450人が関与し、中には剣、拳銃、ナイフ、棒などで武装した者もいたという。(中略)
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのマシソン氏は、今回の暴動でも、969運動の精神的指導者ウィラツ氏などの過激な僧侶たちが「極めて重要な役割」を果たしたようだ、としている。
イスラム教徒の男性が経営する喫茶店に対する憎悪が高まったのも、ウィラツ氏がフェイスブックに喫茶店主の女性暴行疑惑について書き込みを行い、ミャンマー政府に「イスラム聖戦士」に対する厳しい対応を求めたのがきっかけだった。
マシソン氏によると、暴動に参加した暴徒の中には多くの僧侶が含まれていたという。”【7月5日 CNN】
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【互いの不信感を取り除くには今後も長い時間がかかる】
西部ラカイン州では、かねてよりロヒンギャの問題があります。
ロヒンギャはイスラム教徒であるだけでなく、バングラデシュからの不法侵入者としいてミャンマー国民とはみなされておらず、差別的な扱いを受けています。
そうした民族間の憎悪を背景にした仏教徒との大規模な衝突で、ロヒンギャは今も避難生活を余儀なくされています。(仏教徒側からすれば、悪いのはロヒンギャの方で、自分たちは被害者だ・・・ということにもなりますが)
ミャンマー政府は、ロヒンギャが迫害されているというような事実はないとして、国際社会の介入を拒否しています。
(2014年3月28日「ミャンマー 進展しないロヒンギャ問題 消えない憎しみ 依然続く緊張」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140328)
****ミャンマー:ラカイン州避難民14万人、帰還めど立たず****
来日した国連世界食糧計画(WFP)ミャンマー事務所長のドム・スカルペリ氏(47)が毎日新聞のインタビューに応じ、仏教徒とイスラム教徒の対立が続く西部ラカイン州で避難民約14万人の帰還のめどが立っていないことを明らかにした。
スカルペリ氏は「互いの不信感を取り除くには今後も長い時間がかかる。避難民は焼かれた家を再建できていない」と話した。
同州では2012年6月以降、多数派の仏教徒と少数派のイスラム教徒・ロヒンギャ族の衝突が激化し、多数の死者が出ている。
スカルペリ氏によると、3月には州都シットウェにあるWFP事務所が襲撃されるなど治安が回復しておらず、政府による仲介も効果が出ていないという。
慢性的な栄養不良で成長が遅れている5歳未満の子供も多く、WFPは政府とともに食糧支援を強化する方針だ。(中略)
日本は昨年、WFPミャンマー事務所の活動に20億円を拠出するなど最大の支援国で、スカルペリ氏は「日本の支援のおかげで我々の活動は成り立っている」と述べた。【7月4日 毎日】
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テイン・セイン大統領はラカイン州での宗教対立解決への意欲を表明していますが、“ロヒンギャはミャンマー人ではない”という強い民族的な不信感・嫌悪感が国民一般に強く存在していますので、民主化を牽引してきたテイン・セイン大統領をもってしても困難な課題となっています。
****ミャンマー宗教対立、大統領が政府主導解決に意欲 ****
ミャンマーのテイン・セイン大統領は3日、国民向けのラジオ演説で、西部ラカイン州での宗教対立について「地域の治安確保に私自身が努力する」と述べ、政府主導の解決に意欲を示した。
ラカイン州では2012年以降、仏教徒のラカイン族とイスラム教徒のロヒンギャ族との武力衝突が続き200人以上が死亡している。
ラカイン州とバングラデシュとの国境でも緊張が高まっており、大統領は演説で「対立は国際問題にもなりかねない」と危機感をにじませた。
政府は6月、国軍幹部の少将をラカイン州首相に指名し事態の収拾に乗り出した。ミャンマーでは今月に入り、中部マンダレーでも仏教徒とイスラム教徒との衝突で死者が出ている。【7月3日 日経】
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このロヒンギャの問題については、スー・チー氏などの民主化を求める野党勢力も、世論の反発を恐れてか、敢えて関与しないというのが実態です。