孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン  アメリカ・サウジアラビアと外交交渉 中東情勢への影響は?

2014-09-22 22:53:36 | イラン

(イエメン政府は21日夜、国連仲介の下、反政府デモを主導してきたイスラム教シーア派系武装勢力との停戦合意に署名 “flickr”より By Renars Petersons https://www.flickr.com/photos/126514274@N07/15314327185/in/photolist-p3m4xn-pkgVVT-pkCuZi-p3rri6-pksrkk)

【「イスラム国」対応と“核”を巡るアメリカ・イランの駆け引き
シリアやイラクなど各地のイスラム教シーア派の後ろ盾として中東情勢に大きな影響力を持ち、また、核開発問題で欧米諸国と対立関係にあるイランが活発な外交をアメリカ・ニューヨークで展開しています。

****イスラム国」対応で米・イラン外相会談****
アメリカのケリー国務長官とイランのザリーフ外相が21日、ニューヨークで会談し、公式の会談では初めて、イラクやシリアで勢力を拡大するイスラム過激派組織「イスラム国」への対応について意見を交わしました。

アメリカ国務省の高官によりますと、国連総会に合わせてニューヨークを訪れているケリー国務長官と、イランのザリーフ外相は21日、およそ1時間にわたって会談しました。

協議の具体的なやり取りは明らかになっていませんが、両者は、イスラム過激派組織「イスラム国」への対応について意見を交わしたということで、アメリカはイラン側に、イスラム過激派組織に対する国際的な包囲網の構築について協力を求めたものとみられます。

アメリカとイランはイランの核開発問題などを巡って鋭く対立してきましたが、スンニ派の過激派組織「イスラム国」への対応について、警戒を強めるシーア派の大国イランとアメリカの利害が一致し、協力する可能性が指摘されていました。

アメリカ政府はこれまでも、イスラム過激派組織への対応を巡り、非公式にイランと接触してきましたが、公式の会談で意見を交わすのは初めてです。

また、会談では、今月19日に再開したイランの核開発問題を巡るイランと欧米側との協議についても意見が交わされ、協議で進展した部分と、依然、隔たりの大きな問題を確認したということです。【9月22日 NHK】
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これまでの経緯から、なかなか表立っての協調は難しい両国ですが、公式見解とは別に、暗黙の、あるいは水面下の協調がとられるようになれば、シリア・イラク情勢にも大きな影響が出ます。

一方、双方の溝が深く難しい交渉が続く核開発問題に関する包括交渉も19日から再開されています。

****イラン核問題>包括交渉 NYで2カ月ぶりに再開****
イラン核問題の解決に向け、同国と主要6カ国(米英仏中露独)との包括交渉が19日、国連総会開催中のニューヨークで約2カ月ぶりに再開された。

交渉期限が11月24日に再設定された後、初の全体会合で、1週間続く。
全体会合以外にも、米・イラン外相会談などが予定されており、活発な議論が展開されるとみられる。

会合に先立ち、米国とイランは18日まで2日間、協議をしており、米政府高官は「建設的だった」と述べ、今後の「協議進展のチャンスはある」と語った。

だが、焦点のイランのウラン濃縮の制限幅を巡り、イランと6カ国側との主張の隔たりは大きく、予断は許さない状況だ。【9月20日 毎日】
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利害が一致する面も大きい「イスラム国」への対応で、アメリカとしてはイランの協力をとりつけたい、イランは核開発問題でアメリカから譲歩を引き出したい・・・・という双方の思惑が絡んだ駆け引きのようです。

そんななかで、イラクではシーア派がアメリカへの協力を拒否して戦闘地域から撤収する動きもあり、シーア派勢力への影響力を持つイランのアメリカへの牽制とも考えられます。

****イラク>米の「イスラム国」空爆拡大 シーア派から反発*****
イスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」の侵攻が続くイラクで、イスラム国に対する米軍の空爆拡大について、アバディ首相の支持基盤であるシーア派から反発が起きている。

過去に反米闘争に関わっていたシーア派民兵組織が相次いで米軍との協力を拒絶。イラク政府軍と米軍との共闘体制に暗い影を落としている。

「犯罪者(イスラム国)に対抗するためであっても、別の犯罪者(米国)と協力することはイスラム教に反する」。反米的なシーア派指導者ムクタダ・サドル師は15日、米国のイラク介入を非難する声明を発表した。

シーア派民兵に戦闘地域からの撤収を求め、政府軍にも米軍との協力をやめるよう要求。
シーア派民兵組織「ヒズボラ旅団」も16日、米軍との協力に否定的な見解を示した。

サドル師の影響下にあるマフディ軍やヒズボラ旅団など有力シーア派民兵組織は、2003年のイラク戦争でフセイン政権を打倒した米軍を「占領者」と非難し、反米闘争を続けてきた。

米軍の掃討などで弱体化した時期もあったが、シーア派主導のマリキ前政権下で一部が政府軍や警察に入り込むなど軍事的な影響力は根強い。

イスラム国が今年6月にイラクで攻勢を強め、バグダッド周辺のシーア派居住地域に迫ると、同派は政府軍やクルド人治安部隊と共闘。米国が8月に限定的空爆を開始した後も、空爆に呼応した地上作戦に参加していた。

ところが、オバマ米大統領が今月10日に空爆強化方針を示すと、シーア派は米国批判を強めた。米国のイラク介入に批判的な、隣のシーア派国家イランの意向が働いた可能性もある。

イスラム国が支配する北・西部はスンニ派居住地域のため、シーア派側の戦意はもともと高くない。シーア派民兵が戦線離脱すれば、政府軍が兵力確保に窮する可能性もある。

米軍の空爆拡大を巡っては、スンニ派からも市民の犠牲拡大を招きかねないとの懸念が出ている。【9月22日 毎日】
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イラン・サウジ「両国関係の新しい1ページだ」】
一方、利害が共通する「イスラム国」対応を軸に、シーア派の盟主イランとスンニ派の盟主を自任するサウジアラビアとの関係改善の動きも活発化しています。

****イランとサウジアラビアの外相が会談****
これまでシリア情勢などで鋭く対立してきたイランとサウジアラビアの外相が、国連総会に合わせ訪問しているニューヨークで会談を行い、今後、両国の関係が改善に向かうのか注目されます。

イランのザリーフ外相とサウジアラビアのサウド外相は21日、国連総会が開かれているニューヨークで、およそ1時間にわたって会談しました。

イスラム教シーア派のイランと、スンニ派が実権を握るサウジアラビアは、これまでイランの核開発問題やシリアの内戦などを巡って鋭く対立してきましたが、去年8月、イランで国際社会との対話路線を掲げたロウハニ政権が発足したことから、両国関係にも関心が集まっていました。

イランのメディアによりますと、今回の会談で両外相は、シリアとイラクで勢力を広げるイスラム過激派組織「イスラム国」への対応など、中東地域の重要課題について意見を交わしたということです。

会談のあと、イランのザリーフ外相は「会談は、両国関係の新しい1ページだ」と述べたのに対し、サウジアラビアのサウド外相も「影響力のある両国間の協力は、中東地域の平和構築によい影響をもたらすだろう」と述べ、それぞれ関係改善と今後の連携に前向きな姿勢を示しました。

ザリーフ外相は、今後、サウジアラビアを訪問する意向も示しており、今回の会談をきっかけに、中東地域の安定化で大きなカギを握るとされる両国の関係が改善に向かうのか注目されます。【9月22日 NHK】
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イラン・サウジアラビア両国が関係を深めることでシーア派とスンニ派の軋轢が緩和されれば、混乱を極める中東情勢は大きく前進します。

もっとも、そうそう簡単に事が運ぶ問題でもありません。
イエメンでは、イランが支援していると見られているシーア派勢力の攻勢で政変が起きています。

****<イエメン>新内閣創設へ 武装組織フシと和解成立****
イスラム教シーア派の武装組織フシによる反政府運動が激化するイエメンで21日、1カ月以内に新内閣を創設することなどを条件に政府とフシの和解が成立した。

フシは和解直前に首相府や国防省など首都中枢を占拠し、武力によって政府側に譲歩させた。

イエメンでは2011年、民主化要求運動「アラブの春」で、サレハ独裁政権が崩壊。ハディ大統領は民主化を進めてきたが、フシの圧力に屈したことで求心力低下は避けられず、混乱が続きそうだ。

イエメンからの報道によると、政府とフシは国連の仲介で和解交渉を開始。即時停戦と暴力停止▽実務者を中心にした新内閣の創設▽デモ隊の首都からの撤収--などを条件に和解が成立した。新内閣は10月にも発足する見通し。それまでは現内閣が暫定的に統治する。

フシは21日、政府庁舎や中央銀行、国営ラジオ局などを新たに占拠。国営通信によると、内務省は21日、傘下の治安部隊に対して、フシと敵対しないよう命令した。

軍や警察の一部がフシと協力していたとの情報もあり、事実上のクーデターとの見方もある。首都サヌアの一部には20日から夜間外出禁止令が出され、数千人の住民が市外に避難した。

イエメンでは北部にシーア派、南部にスンニ派が多い。

フシは2004年、シーア派が多い北部の自治権などを求めて、反政府武装闘争を開始。今年8月中旬、サヌアで大規模デモを開始。今月中旬以降は戦闘部隊が首都に入り、政府軍との戦闘で140人以上が死亡した。

政府は、シーア派国家イランがフシを支援しているとみているが、イランは関与を否定している。

フシの他にも、国際テロ組織アルカイダや南部の独立主義者の活動が活発で、国家は分裂傾向を強めている。【9月22日 毎日】
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イラン国内事情もあって、どのように展開するのか・・・・
スンニ派の過激派組織「イスラム国」の台頭を機に、アメリカやスン二派サウジアラビアとの関係を動かそうというイラン外交ですが、イラン内部では穏健派ロウハニ大統領の政権基盤は非常に危ういものがあることはこれまでも何回か取り上げたところです。

7月の核協議において、イスラエルの存在を否定してきイランのザリフ外相がケリー米国務長官に対し、「イランはイスラエルの直接的な脅威にならないと確約する」と伝えていたことが報じられるなど、穏健派ロウハニ政権のアメリカとの関係修復を探る動きも見られました。

しかし、イランの最高指導者ハメネイ師は15日、アメリカとは安易に協調しないイランの姿勢を強調しています。

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イランの最高指導者ハメネイ師は15日、イスラム過激派組織「イスラム国」掃討に向けた協力要請が米国からあり、これを自らの判断で拒否したと明らかにした。

また、対イスラム国で米国が主導する有志国連合を「中身がない」と批判し、米国への不信感を改めて強調した。【9月16日 毎日】
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今後、どこまでイランがアメリカやサウジアラビアとの協調行動をとれるのか、注目されるところです。
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