孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ジンバブエ  影響力を強める中国も財政支援には慎重姿勢 国内にはムガベ後をにらんだ動きも

2014-09-29 22:00:15 | アフリカ

(2008年撮影のムガベ夫妻 この二人はベアルックで登場することが多いのですが、老体の大統領には痛々しい感も・・・他人の余計なお世話ですが “flickr”より By Abayomi Azikiwe https://www.flickr.com/photos/53911892@N00/3123507394/in/photolist-5L1MVL-4z5fFM-4uTeBk-fbYzPu-4uXnYu-93VsMD-4ZZDTq-aBMhbe-6pGcLP-84WEkh-dvyzJ7-84Twi6-8pw6qx-cCEPa5-dYod8p-e3XmeS-dh5PfG-73qhdh-kvWL3k-oNx5BJ-aTzfD2-4DbC8i-91yGos-fDRZEn-94Ukti-H73Gh-BjGfy-4ZD5s3-4Yq7HT-66PvGL-cjXBzo-eeEeSH-idRzmE-ewqPNm-bAXvAE-eade2G-fiSzd3-dqMNvt-dZsEhv-in1fxQ-in1fAA-8Jxvvk-5daufq-bawk38-94Uktk-dYu1oC-c2v355-c2v39Y-aTzTYt-f7KbAT)

財政難のなかで90歳の誕生パーティーを盛大に
ムガベ大統領が強権支配を続ける南アフリカのジンブブエに関しては、昨年8月6日ブログ「ジンバブエ大統領選挙  欧米から酷評されるムガベ大統領が圧勝」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130806)で、欧米諸国からは不正が批判されるものの大統領選挙で再選されたこと、そうした欧米諸国の批判にもかかわらず国内的には強引な黒人化政策が一定に支持されていることなどを取り上げました。

未だに多くの黒人が貧困から抜け出せないジンバブエや南アフリカなどで、ムガベ流の強引な手法が一定に支持されるというのはわからないではありませんが、だからといって批判勢力を力で抑え込み、選挙を有利に操作していいという話にはなりません。

また、国家破綻を招いた天文学的数字にもなったハイパー・インフレーションなど、その経済政策は責任を問われるべきものです。

ジンバブエの財政は現在も危機的状況にあります。

****深刻な財政難のジンバブエ、大幅増税へ****
ジンバブエのパトリック・チナマサ財務相は11日、携帯電話や通話料金など多数の項目にわたり増税を実施する方針を発表した。経済成長の低迷が続くなか、税収を増加し、歳入の減少に歯止めをかける狙いだ。

同国では事業の廃業が相次ぎ、外国投資が減少。一方で輸入が増加するなど、政府は非常に深刻な財政危機に直面しており、公務員の給与支払いにも影響が出ている。

財務相が明らかにしたところによると、携帯電話の通話料金にかかる税率を5%引き上げるほか、携帯電話機を輸入する際の関税率を25%に変更する。また、ガソリンにかかる消費税を現行の1リットル当たり25米セント(約27円)から30米セント(約32円)に変更するほか、自動車の輸入関税を15~20%の間にまで引き上げる。

財務相は、「歳入増加に向けた追加措置は避けられない」と説明した。

ジンバブエ経済は10年以上にわたって低迷しており、企業の閉鎖や規模縮小、近隣諸国への流出が続いている。財務相は同日、「製造業の業績悪化を踏まえて」、今年の経済成長率の予測をこれまでの6.1%から3.1%に下方修正したことを明らかにした。

同国中央銀行のジョン・マングジュヤ総裁は先月、今年上半期の外国投資は前年同期の半分にも満たない額に減少しており、ジンバブエは外国資本を遠ざけている「ネガティブなイメージを払拭(ふっしょく)するために闘う必要がある」と警告していた。

今年上半期の輸入額は30億ドル(約3220億円)と前年同期比で2倍以上に膨れあがっており、そのうち42%は隣国南アフリカからの輸入が占めている。輸入相手国の第2位はシンガポール、次いで中国からの輸入が多くなっている。【9月14日 AFP】
******************

外国資本を遠ざけているネガティブなイメージを払拭するには、ムガベ大統領の退陣、政権交代が一番効果的ですが、それは選択肢にはないようです。

2月21日には、財政危機にあるなかで100万ドル(約1億200万円)の予算をつぎ込んだぜいたくなムガベ大統領の90歳の誕生パーティーを開催し、その権力を誇示したとか。【2月21日時事より】

中国:「良い友人・・・」とは言いつつも、支援には慎重姿勢も
今のジンブブエ経済を支えているのは、隣の地域大国である南アフリカと中国です。

****ジンバブエで中国台頭 強制収用の白人農地に翻る深紅の旗****
南部アフリカの資源大国ジンバブエで、中国の存在感が著しく増している。

強権的なムガベ政権が30年以上も続く同国から、欧米系企業が離れたところに、豊富な鉱物資源や農産物を求める中国系企業が進出した格好だ。

欧米と対立する政権は中国を歓迎するが、市民の間には反発する声もある。

(中略)ここは元々、白人の農地でムガベ政権が強制収用した土地だった。ジンバブエ政府との契約で「ワンジン」という中国企業が3年ほど前から運営している。

現地責任者によると、現在は5千ヘクタールで小麦や大豆、タバコなどを年2回収穫しており、近く8千ヘクタールまで拡大する予定だ。20人の中国人と500人のジンバブエ人が働くという。

直接運営する他にも、中国企業は現地農家と個々に契約するなどして全国に浸透している。

あるジンバブエ政府幹部は、所有する旧白人農地200ヘクタールの農産品の売却で中国企業と契約する。この企業から無償提供を受けた肥料や農薬を使い、できたタバコを卸してもらっている。

「中国企業は金払いがいい。もちろん日本企業も歓迎するが、中国企業と違うことをしてくれるのか」と話した。
 
一方、商業農場主組合のチャールズ・タフス会長は所有していたすべての農地を失った。「自分たちが整えてきた農地。(中国企業が運営するのは)道理が通らない」と語った。

 ■鉱物資源にも触手
金やダイヤモンド、クロムなどの豊富な鉱物資源に絡むビジネスにも、中国企業の進出は著しい。

首都ハラレから北に約60キロ。北部の中央マショナランド州の未舗装の道を進み、金鉱山を訪ねると、中国製のトラックや重機がフル稼働していた。

警備していたジンバブエ人の制服には「中華人民共和国 保安」と書かれた腕章。入り口付近には、ムガベ大統領の選挙ポスターが貼ってある。

鉱山からほど近い場所に、中国人技術者が住む簡易な建物があった。ネギや春菊などの中国野菜の畑もあり、小部屋で中国人技術者がマージャンをしていた。12人の中国人が住み込み、150人のジンバブエ人を雇用しているのだという。

公用語の英語が堪能な中国人はいない。責任者だという中国人男性は英語で「ビジネス、グッド。ゴールド、メニー」とだけ言った。

ここで働く鉱員のジョーさん(55)によると、この鉱山の運営がイギリス系企業から中国企業に変わってから、待遇は悪化した。「給料も安全性も下がった。地下200メートルでの作業でも、中国人は落盤対策をしてくれない」。周辺の金山では中国企業が採掘規模を拡大しているという。

ジンバブエ商工会議所のエコノミストは「中国による経済植民地化だ。中国系企業下の労働者は悲劇的だ。まるで奴隷のように扱われている」と語った。

 ■欧米の制裁後に関係強化
ジンバブエは元々、英国の植民地。アフリカ諸国の独立が始まった1950年代以降も少数派の白人支配が続いた。「民族解放」を訴えて独立闘争を展開したムガベ大統領は、80年に独立を勝ち取って以来、「国民の英雄」としてずっと政権の座にある。

中国はかつて、ムガベ氏の独立運動を支持した経緯があるが、2002年ごろから、経済、軍事の両面で急速にジンバブエとの関係を強めた。ムガベ政権が、00年ごろから白人の大規模農地の強制収用を始め、欧米との関係を悪化させて以降のことだ。

欧米からの経済制裁を受けて苦しむジンバブエは、「ルックイースト」というアジア重視の外交政策を掲げ、中国との経済関係強化に活路を見いだした。

中国も、ジンバブエの豊富な鉱物資源と、高い農業生産性に目をつけ、「古くからの友人」(中国外務省)の立場を生かして、ジンバブエへの経済進出を加速させた。

欧米は、7月に実施された大統領選で親欧米のツァンギライ首相を支援し、政権交代をきっかけとした経済関係の復活に期待していた。だが、結果はムガベ氏の圧勝。状況は変わらなかった。

報道によると、ムガベ氏は24日、国連総会が開かれているニューヨークで、中国の王毅(ワンイー)外相と会談。「中国はわれわれが最も信頼できるパートナーだ」と述べた。

日本政府関係者は「西側との関係が悪化した間に中国が入ってきてしまった。欧米は、振り上げた拳を下ろすきっかけを探している状態だ」と話す。(ハラレ=杉山正)【2013年9月26日 朝日】
**********************

中国との関係を強化したいムガベ大統領は今年8月24日に中国を訪問し、中国側も「良い友人、よい仲間、良い兄弟」(人民日報)と歓迎しました。

ただ、その中国も財政破たん状態のジンバブエを無条件に支援するほど甘くはなかったようです。

****中国のアフリカ支援に変化=無条件援助に慎重姿勢=****
アフリカ南部ジンバブエのムガベ大統領は28日、経済破綻(はたん)を回避するために中国政府に求めていた無条件の支援を得ることなく、訪問先の中国を離れることになった。

中国がアフリカの盟友にさえ、やみくもな資金援助を約束しようとしない姿勢の表れだ。

90歳のムガベ大統領は、毛沢東主義者の革命闘争に参加していた時代から、中国政府にとってアフリカで最も信頼できる盟友の一人だ。

オバマ米大統領はワシントンでのアフリカ諸国との首脳会議へのムガベ氏の参加を拒否したが、北京では中国の習近平国家主席から最大限の歓待を受けた。

欧米ではここ数年、中国が条件をつけない援助を通じたアフリカなどの発展途上国と関係を築き、経済的な見返りを得ているとの認識が広がっている。

だが、中国政府がどちらかというと実務的にムガベ氏に接したことは、同国の積極的な資金援助にも限界があることを示している。

ジンバブエでの報道によると、アフリカ各国の首脳の中でも在任期間が長いムガベ氏は、経済制裁で欧米から融資を受けられないため、40億ドルの初期支援を含む100億ドルの資金援助を求めていたとされる。

だが、手にしたのは炭鉱や発電所、ダム建設費用20億ドルだった。
ジンバブエの将来的な鉱業からの税収を担保にするという条件も付いた。

ほかも通信・インフラ事業の企業化調査や、コメの寄付800万ドルなど、形ばかりの支援にとどまった。

これは中国のジンバブエ経済に対する不安の大きさを示している。

中国は経済不安にあえぐほかの友好国にも同じような慎重姿勢をとっている。
ベネズエラとエクアドルへの融資では両国の石油輸出で保証することを条件としている。

西アフリカのガーナは今年初め、3年にわたる交渉にもかかわらず、中国からの融資を受けられていないと明らかにした。

上海国際問題研究所の西アジア・アフリカ研究室の張春氏は、ジンバブエでは過去に融資が使途不明となったことがあったため、中国政府は融資が本来の目的に使われるかを懸念していると指摘している。【8月29日 英フィナンシャル・タイムズ 日経より】
******************

ムガベ大統領の後継者は?】
90歳という高齢のムガベ大統領には健康不安が度々話題になります。

おそらく実際の政策遂行はムガベ大統領というよりは、その周囲の人間によって行われているのでしょうが、そういう権力周辺の者にとっては、権力を維持するために、ムガベ大統領が亡くなった後に担ぐ“神輿”が必要です

****ジンバブエ大学、大統領夫人に「不当な」博士号授与か****
ジンバブエの学生連合は26日、同国のトップ大学であるジンバブエ大学がロバート・ムガベ大統領夫人に「不当な」博士号を授与したと主張し、関係者の辞任を求めた。

博士号は、大統領府の元タイピストであるグレース・ムガベ夫人(49)が、博士課程に入学してわずか数か月後に授与された。しかも、夫人が与党ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)の女性会派の代表に就任した直後だった。

この突然の就任は、ムガベ大統領の後継者をめぐる派閥間の緊張をさらに高めている。博士号は、彼女の政治家への道を開き、ムガベ氏が亡くなった後の次期大統領を目指すための資格として与えられたものではないかとみられている。

ジンバブエ全国学生連合は声明を発表し、「副学長も含め、この詐欺に加担した者は皆、辞任するべきだ。そのようなでっち上げの不当な博士号を取得した者は、恥を知るべきだ」と述べた。

この批判にもかかわらず、国営企業は大統領夫人を祝福する新聞広告を数多く打ち、ある企業は「彼女の博士号はすべてのジンバブエ人の教育を後押ししてくれる」とまでうたった。

ジンバブエ大学はこの件について、後日声明を発表するとしている。【9月29日 AFP】
*******************

“神輿”の有力候補は、41歳年下の大統領夫人のようです。
ただ、当然に権力層内部にも異論があるでしょう。自分が・・・と考えている政治家がいるでしょう。

なお、グレース夫人は、“独立当時は比較的良政を行ったと評価されたムガベが狂ってしまったのは、41歳年下の愛妻のせい、と噂される派手好きな美女”とも評されており、浮気スキャンダルも何度かあります。

そう遠くない将来、後継者問題が表面化しそうです。
逆に言えば、それまではムガベ独裁体制が続くということでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする