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(アフガニスタン国軍の士官育成機関卒業生のようです。これからのアフガニスタンを担うことになります。 “flickr”より By North Atlantic Treaty Organization https://www.flickr.com/photos/n-a-t-o/15134429678)
【「権力を分け合うという意味ではなく、全ての国民が参加できる政府だ」】
アフガニスタン大統領選挙は、4月5日に1回目投票、6月14日には上位2名(アブドラ元外相とガニ元財務相)で決選投票が行われたものの、アブドラ氏側が選挙で大規模不正があったと主張、全投票の再検査や権限分担協議などで結果が確定されないまま混乱が続いていました。
両陣営の協議が破たんすれば、それぞれの支持民族が異なることもあって国家の分裂や、年末に迫っている外国部隊の撤退スケジュールの混乱、政治混乱に乗じたタリバン勢力の攻勢なども懸念されていましたが、選挙で勝利したガニ氏が大統領、敗れたアブドラ氏が行政長官(将来の首相職)となり挙国一致内閣をつくることで決着したようです。
****アフガン ガニ氏、挙国一致約束 アブドラ氏と閣僚配分へ****
アフガニスタンの大統領選で当選したガニ元財務相は22日、カブール市内で演説し、「民主的で平和的に政権移行が行われることは、アフガン人にとって大きな勝利だ」と勝利宣言した。
選挙で敗北し、行政長官に就任予定のアブドラ元外相と挙国一致政権で緊密な関係を維持することを約束した。
今後は、ガニ、アブドラ両氏の間で閣僚割り振りの協議が行われる。
選挙管理委員会は21日の結果発表で、両候補の得票数を発表しなかったが、「得票数に基づいた閣僚ポストの配分争いを避けたかった」(外交筋)支援国側の意向が働いたもようだ。
ただ、選管筋が産経新聞に明らかにしたところでは、投票の再集計の結果、ガニ氏がアブドラ氏に約10ポイント(約80万票)の差をつけた。アブドラ氏は、小差での敗北とするよう主張していた。
21日に両氏が署名した挙国一致政権の合意文書によると、今後、憲法改正を経て首相職を創設するが、行政長官はそれまでの間、首相の機能を持つ。
行政長官が取り仕切る閣僚評議会には、大統領や副大統領は参加しないと決められた。
イスラム原理主義勢力タリバンは22日、挙国一致政権について「偽りの選挙の産物だ」と受け入れを拒否し、新政権になってもテロを継続する声明を出した。【9月23日 産経】
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再集計内容については、以下のようにも報じられています。
****<アフガニスタン>大統領選 不正票は82万票か****
アフガニスタンのパジュワク通信は21日、大統領選の両候補の得票差が約75万票だったと伝えた。2人の合計得票数は、7月に発表された暫定結果より約82万票減少しており、不正票と判断されたとみられる。
独立選挙委員会(中央選管)は同日夕、アシュラフ・ガニ元財務相(65)が勝利したと発表したが、得票数など内訳は公表しなかった。
同通信によると、得票数はガニ氏が約393万票(55.27%)、アブドラ・アブドラ元外相(54)が約318万票(44.73%)。暫定結果と比べガニ氏が約55万票、アブドラ氏が約27万票減らした。(後略)【9月22日 毎日】
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どのように“不正票”を判断したのかは知りませんが、80万票を超す不正というのは、相当に大規模な組織的不正があったことが推察されます。
民主主義が未だ根付いておらず、戦闘も続いているアフガニスタンの現状を考えれば、一部に不正が行われることもやむを得ない現実ではありますが、大統領となるべき指導者にも民意を反映すべき選挙の意味が理解されておらず、権力奪取の手段としかみなされていないことは非常に残念なことです。
****<アフガニスタン>ガニ氏演説「初の民主的な政権交代」****
アフガニスタンの新大統領に決まったアシュラフ・ガニ元財務相は22日夕、首都カブールで報道陣や支持者らを前に演説し「(今回の選挙は)初めての民主的な政権交代となった。政治とは銃ではなく対話を通じて解決することだ、と我々は証明した」と述べた。当選後に公式に発言するのは初めて。
ガニ氏はアブドラ氏と合意した「挙国一致政府」について、「権力を分け合うという意味ではなく、全ての国民が参加できる政府だ」と説明。「すべての約束を守る。国家を分割することはできない」と団結を強調した。
また「新政権は縁故主義とは無縁。憲法にのっとり法の支配をもたらす」と約束した。【9月22日 毎日】
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これまでの経緯を考えると、いろいろと“突っ込みどころ”もある発言ではありますが、それはさておき、今後ガニ新大統領とアブドラ行政長官が、その言葉のとおりの政治を実現していくことを期待します。
【NATO:安全保障協定の早期署名を期待】
とにもかくにも“挙国一致内閣”が発足することで、アフガニスタンから早く手を引きたいNATOも“やれやれ・・・”というところでしょう。
今後は戦闘部隊撤退と教育・訓練・支援部隊展開に向けて動き出します。
****<アフガン大統領選>ガニ氏勝利 NATO「国民支援続行」****
アフガニスタン独立選挙委員会(中央選管)が21日、ガニ元財務相の大統領選決選投票での勝利を認定したことを受け、北大西洋条約機構(NATO)は同日、認定を歓迎、「アフガン国民を支援し続ける」との声明を発表した。
民主的な政権交代と、今後の駐留の前提となる安全保障協定署名への見通しがたったことで、NATOは来年からの約1万2000人規模の訓練部隊展開と長期的な財政支援への具体的な準備に踏み出す。
ラスムセンNATO事務総長は声明で、ガニ氏と対抗馬のアブドラ元外相が「挙国一致政府」の合意書に署名したことを歓迎。
NATOの兵員の治外法権を認める安全保障協定が「国際社会が支援を続けるカギになる」として「早期に締結するよう」促した。ガニ氏は就任後に署名する意向を表明している。
協定署名後、NATOは年末までに現在約4万人の国際治安支援部隊(ISAF)を撤収させ、来年1月から1万2000人規模の教育・訓練・支援部隊を展開させる準備に入る。
NATOは今月初めの英ウェールズでの首脳会議で「アフガン宣言」を採択した。(1)短期的に2016年まで訓練部隊を展開(2)中期的にアフガン国軍維持のため年41億ドル(約4400億円)を17年まで拠出。アフガン国軍の規模を縮小させながら、遅くとも24年まで財政支援(3)長期的にNATOのパートナーとして支援--する内容だ。
NATO同様、アフガンとの安全保障協定署名が懸案となっていた米国のケリー国務長官は、「(ガニ氏とアブドラ氏の合意は)1週間前後で署名できる大きなチャンス」と期待感を示した。
ホワイトハウスも「アフガンの政治的危機を終わらせ、自信を取り戻すことにつながる」と評価し、新政権と協力する用意があるとする声明を発表した。
一方、選挙に抵抗しテロ攻撃を続けてきた旧支配勢力タリバンの報道担当者は合意について「米国によって振り付けされたいんちきだ」と批判し、戦闘を継続させていくと表明した。ロイター通信などが報じた。【9月22日 毎日】
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【今後への期待と不安】
交代することになるカルザイ現大統領は、最後までアメリカへの恨みが捨てきれない様子です。
****カルザイ大統領 退任演説で米を批判****
アフガニスタンで新しい大統領が決まったことを受け、退任の演説を行ったカルザイ大統領はアメリカへの批判を繰り返し、かつて後ろ盾だったアメリカとの亀裂を物語るものとなりました。
アフガニスタンでは、今月21日、混乱が続いた大統領選挙の結果が発表され、元財務相のガニ氏が新しい大統領に選ばれました。
これを受けて、13年にわたって国を率いてきたカルザイ大統領が23日、首都カブールで退任の演説を行いました。
この中で、カルザイ大統領は、来年以降も一部のアメリカ軍の駐留を認める協定への署名を拒んだことについて、「アメリカが和平プロセスについて協力的だったら、署名していただろう」と述べ、反政府武装勢力タリバンとの和平交渉を巡り、立場の違いがあったことを理由に挙げました。
そのうえで、カルザイ大統領は、「アメリカはみずからの利益だけを追い求め、アフガニスタンの平和は望んでいなかった。次の政権は気をつけるべきだ」と述べるなど、アメリカへの批判を繰り返しました。
カルザイ大統領は、タリバン政権の崩壊後、アメリカの後ろ盾で新たなリーダーになりましたが、今回の演説は、その後のアメリカとの亀裂を物語るものとなりました。今月29日に新たな大統領に就任するガニ氏は、アメリカ軍の駐留延長を認める協定を早期に結ぶ考えを示していて、アメリカとの関係改善を進める方針です。【9月24日 NHK】
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腐敗・汚職が蔓延し、経済復興は進まない、一方でアメリカ批判を再三繰り返すカルザイ大統領へのアメリカの不満、また、民間人犠牲が一向になくならないアメリカの軍事作戦へのカルザイ大統領の不満・・・それぞれ故あってのことではありますが、新体制へ人心を一新することでアフガニスタン政府とアメリカ等の関係が円滑に進むようになればいいのですが。
腐敗・汚職については、「新政権は縁故主義とは無縁。憲法にのっとり法の支配をもたらす」という新大統領の言葉に期待しましょう。非常に難しい話ではありますが・・・。
そこがうまくいけば、経済復興もおのずからうまく回り始めるでしょう。
外国戦闘部隊が撤退しますので、誤爆などによる外国部隊による民間人殺害はなくなります。
ただ、外国部隊にとってかわるアフガニスタン治安部隊に、住民の生命・財産を守るという人権意識がどれだけあるかという話になると、はなはだ心もとないところではありますが・・・・。
対タリバン戦闘能力と同じぐらい不安な面でもあります。
国民の信頼を失えば、タリバンの攻勢を待たずに統治体制は崩壊するでしょう。